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メキシコにおける特許の補正の制限

1.パリ条約優先権出願およびPCT出願の国内移行前の内容変更
 メキシコでは、産業財産法および同規則に、先に提出された出願(パリ条約優先権出願またはPCT出願)の修正・内容変更に関する規定がなく、メキシコは、PCT出願の国内移行に際して、国際出願から内容を変更して移行手続をすることが認められる中南米では数少ない国の一つである。メキシコの実務では、対応する国際出願の国際公開から明細書およびクレームの内容を変更した出願書類の提出が認められる。つまり、パリ条約優先権出願およびPCT出願のメキシコ国内移行に際して、明細書およびクレームとして、優先権出願時またはPCT出願時の明細書およびクレームに基づいて手続できるだけでなく、優先権の基礎となる出願(日本企業の多くの場合は日本出願)の明細書およびクレーム、または、それらの内容に変更を加えた書面で移行手続を行うことも可能である。ただし、メキシコへの国内移行手続時の内容の変更は、優先権の基礎となる出願の当初の開示範囲を超えてはならず、優先権出願またはPCT出願に対して追加された場合、追加された事項については優先権の恩恵は受けられない。

2.特許付与前の補正
 出願が提出された後、自発的に、あるいは、IMPIからの庁指令に応じて特許要件を満たすため、特許付与前に補正を行うことができる。自発補正の場合も、庁指令に対する補正の場合も、特許付与通知が発行される前であれば、出願の係属中はいつでも、特許出願における明細書、クレーム、図面または配列表などのあらゆる特許付与前補正を行うことができる。ただし、原出願の全体に含まれる開示範囲を拡大するような新規事項の追加や、クレームの追加は認められない。これらの制限は、産業財産法第116条に規定されている

2-1.自発補正
 自発補正は、主として出願の本文もしくはデータにおける誤りを訂正するために、または出願を特許可能な状態にする目的でクレームを減縮するために、出願人により自発的に行われる補正である。この自発補正は特許査定または拒絶査定が発せられる前までに限り、行うことができる(産業財産法第116条)。一方、特許の存続期間中のあらゆる時点で、修正または訂正を申請することが可能である(産業財産法第121条)。
 出願を早期に権利化するための手続として、PPH申請の他、自発補正の活用が挙げられる。前述のとおり、出願人は出願係属中、いつでも自発補正を提出することができる。審査開始前に、出願の本文もしくはデータの誤りの訂正や、出願を特許可能な状態にする目的でクレームを減縮する補正を行うことが、出願の早期権利化に有効な場合が多い。

2-2.IMPIからの庁指令に対する補正
 補正は通常、IMPIにより行われた方式および実体審査の結果として生じる庁指令に応じて出願人が提出する。メキシコの実務によれば、方式要件に関する庁指令は最大で2回、実体要件を満たすための庁指令は最大4回発行され、その応答として出願を補正する機会が与えられる。かかる庁指令への応答期限は2か月であり、2か月の延長が可能である。これらの期限は、産業財産法第106条および第117条に規定されている。
 自発補正の場合と同様に、IMPIからの要求に対する明細書、図面またはクレームの補正は、出願当初の開示の範囲を拡大するような新規事項を含めてはならない(産業財産法第116条)。つまり補正後の記載内容が、優先権の基礎となる出願当初の明細書によって完全に裏づけられていなければならない。

2-3.PPH申請時の補正
 出願の早期権利化を目的として提出される特許審査ハイウェイ(Patent Prosecution Highway:PPH)での補正は、基本的に出願クレームを優先権の基礎となる出願のクレームと一致させるために行われるものであり、PPHプログラム参加国の特許庁により認められている。なお、メキシコは、JPO(日本特許庁)の他、USPTO(米国特許商標庁)、EPO(欧州特許庁)、KIPO(韓国特許庁)、CNIPA(中国国家知識産権局)、CIPO(カナダ知的財産局)およびIPOS(シンガポール知的財産庁)などとPPH協定を結んでいる。
 IMPIに出願し、さらにPPH申請により国外へ出願する場合に適用される要件の概略は、以下のとおりである。
・メキシコ出願の審査が始まっていてはならない。つまり、実体審査に対応する庁指令がIMPIにより発行された後は、PPH申請は認められない。
・メキシコ特許出願の公開日から2か月の第三者情報提供期間(observation period)の後に、PPH申請しなければならない。
・ビジネス方法、コンピュータプログラムまたは手術、診断もしくは治療方法といった、メキシコ特許法上では特許されない主題が、クレームに含まれていてはならない。

関連情報:特許審査ハイウェイのガイドライン(JPO、メキシコ編)
https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/soki/pph/document/guideline/mexico_impi_ja.pdf

3.特許付与後の訂正および減縮
 特許付与後の訂正および減縮は、特許権が付与された後に提出するものであり、明白な誤りもしくは方式上の誤りの訂正、または特許付与された主題の範囲の減縮のみに制限されている。これらの制限は、産業財産法第121条、第122条および第123条に規定されている。

第121条
特許又は登録の所有者は,その権利の存続期間内であれば,本法の施行規則に定める条件で,本庁宛の申請書及び対応する手数料証明書とともに,権利について,放棄,訂正及び減縮を申請することができる。
申請が受理されれば,本庁は申請者に通知し,対応する権利の,放棄,訂正及び減縮を公報に掲載する。
本庁が申請書に不備があると認めた場合,所有者に必要とみなすものを特定又は明確にして不備の解消を求めることができる。申請者が上記不備を2月以内に解消しない場合,申請は却下される。

第122条
本法第119条に規定されている,特許又は登録における正式な名称の誤記を訂正することは承認される。
訂正がクレーム又はそれらを解釈するために供される要素に関連する場合,誤記は当該技術の熟練者にとって明白でなければならない。
名称の訂正は,与える保護を拡張するような方法であってはならない。

第123条
特許又は実用新案登録によって付与される権利の減縮が次のような場合,承認される。
(1) 1つ以上のクレームの削除,又は
(2) 独立クレームに従属するように1以上の従属クレームを含めること。
減縮案が特許又は登録によって付与された保護を拡張する場合,当該減縮案は認められない。減縮の前に発せられた,特許又は実用新案登録の侵害に関する強制力のある処分は,減縮によって損なわれることはない。

 特許出願に対して特許付与通知が発行された後、特許登録料の納付とともに、特許付与前に訂正および減縮を提出したとしても、この段階での訂正および減縮は、特許付与後の訂正および減縮と同様に取り扱われる。すなわち、この段階の訂正および減縮は、明白な誤りもしくは方式上の誤りの訂正、または特許付与された主題の範囲の減縮のみに制限される。特許権存続期間中は、特許付与後の訂正および減縮を提出することができる。
 ただし、特許の無効手続が係属中の場合、付与後の訂正および減縮は認められない(産業財産法第125条)。

第125条
本節に関する如何なる申請書も,次の場合は拒絶される。
(1) 特許又は登録の有効性に関する手続の審査が係属中である場合。
本節に基づく申請書の提出後に行政処分手続が開始された場合,それぞれの申請書に係わる許容性に関する審査が決定されるまで,当該手続は一時停止される。
(2) 特許又は登録の名称の訂正に関する申請を除き,特許若しくは登録の所有権又はそれらに対する他の権利の承認を主張する訴訟がある場合。

【留意事項】
 産業財産法等に明文規定は無いが、メキシコにおいて特許出願の補正を行う際には、補正の提出書面、または発行された庁指令に対する応答書において、特許出願の補正を裏づける明確な正当性および根拠を明示することが必要である。特許出願の補正が、優先権基礎出願の明細書(パリルートおよびPCTルートの場合いずれも)により適正に裏づけられていることは、修正案が承認される可能性を最大化するためには、重要である。その他の内容的な制限は、その提出時期によっても異なるので注意が必要である。

インドネシアにおける特許出願の実体審査と特許庁からの指令書に対する応答期間

 2016年8月26日施行された2016年特許に関する法律第13号(以下、特許法)は、実体審査や方式の期間について、以下のように規定している。
 
1.方式審査に対する応答期間
 2016年特許に関する法律第13号(以下、特許法)第34条は、出願日を確保するために必要な最低要件を規定している。その最低要件とは以下のとおりである。
(a) 出願年月日、発明者の氏名・住所・国籍、出願人の名称・住所、代理人の氏名・住所(第25条第1項)
(b) 発明の名称、明細書(外国語可)、特許請求の範囲、要約、存在する場合は図面(第25条第2項a~e号、第3項)
(c) 出願手数料納付の証明

 最低要件の明細書は外国語で記載されていてもよいが、インドネシア語に翻訳された明細書は出願日から30日以内に提出されなければならず(第34条第3項)、期間内に提出されない場合、出願は取下げられたものとみなされる(第34条第4項)。
 これ以外の方式要件は、委任状、発明者宣言書、譲渡書、微生物寄託証明書である。方式要件が満たされていない場合、大臣は出願人に対し書面をもって、通知発送の日から起算して3か月以内に方式要件を充たすように通知する(第35条第1項)。この応答期間は最大2か月間延長でき(第35条第2項)、さらに手数料の支払いにより1か月間延長できる(第35条第3項)。また、自然災害等、特別な事情のある場合はさらに6か月間の延長が可能である(第35条第5項、第6項)。延長期間内に要件が満たされない場合、出願が取下げられたとみなされる(第36条)。

2.審査請求期間
 特許出願の実体審査は実体審査請求を待って行われる。出願人は特許法第51条第1項に定めるとおり、手数料を納付し、実体審査を請求しなければならない。実体審査請求のできる期間は、出願日から36か月以内である(第51条第2項)。実体審査は、出願公開後6か月の異議申立期間(第48条第1項、第49条第1項)が経過した後着手される(第51条第5項)。

3.実体審査と応答期間
 実体審査官は、出願された発明の産業上利用性、新規性、進歩性、記載不備等を審査する(第54条)。審査官が特許出願された発明が登録要件を満たさないと報告した場合、大臣は出願人に対して書面によりその要件を満たすよう通知する(第62条第1項)。通知には、a)充足されるべき要件、b)実体審査において用いられる理由と引用文献が記載される(第62条第2項)。
 実体審査を受ける出願が優先権を伴う場合、大臣は出願人に対して、他国での審査結果に関する書類の提出を求めることができる(第55条)。その特許出願の発明が既に他国において特許が付与されている場合には、後述のとおり、審査官から出願人に対して、係属中の出願を対応国で登録された特許に一致させるような補正を提案することが多い。発明が単一性を満たさない場合、審査官は分割出願を行うよう提案することもできる。

 出願人は、通知書の日から3か月以内に意見書および/または補正書を提出しなければならない(第62条第3項)。その期間は、2か月延長でき(第62条第4項)、さらに手数料の納付を条件として1か月延長できる(第62条第5項)。また、自然災害等特別な事情のある場合はさらに6か月間の延長が可能である(第62条第7項、第8項)。
 期間内に応答しない場合、大臣は書面で出願人に対し2か月以内に出願は取下げられたとみなされる旨通知する(第62条第10項)。
 なお実情では、2回目の拒絶理由への応答期間は2か月のみである。2回目の拒絶理由通知の応答期間は、審査官の裁量により認められる場合がある。
 特許法第57条は、実体審査請求日または公開期間満了日のうち遅い方から30か月以内に登録または拒絶の査定をするように規定している。この期限が迫っている場合は、応答期間の延長が認められない。
 応答期間の起算日は、通知の送達日ではなく、通知の日である。現状として通知が起案されてから代理人等に送達するまで1か月程度要しているため、出願人が応答を準備するために与えられる時間は十分でないことがある。
 審査官が、2回目の通知への応答を審査しても、やはり特許出願は特許要件を満たさないと判断した場合、審査官は拒絶査定書を発行する。拒絶査定を不服とする場合、出願人は、拒絶査定書の日から3か月以内に、当該拒絶査定に対して審判請求をすることができる(第72条第1項、第2項)。一方、通知に対する応答により、拒絶理由が解消されたと認められる場合、特許査定書が送付され、その後の特許付与の段階へと移行する。

4.優先権を主張する特許出願および国際特許出願(PCTルート)の実体審査
 特許法第55条では、優先権を主張する特許出願について、他国の審査において先行技術調査または実体審査が行われている場合、または特許査定が下されている場合、他国の審査結果を参照することができる旨が定められている。ただし実務上、以下の国の官庁の審査結果は参照されない。
(a) ASEAN加盟国(シンガポールを除く)
(b) アフリカ諸国
(c) 東ヨーロッパ諸国(ロシアとEPO加盟国を除く)
(d) 台湾
 PCTルートの場合、審査官は、国際調査報告、見解書または国際予備審査報告を、発明の特許性を判断するための主たる参考資料として参照する。ただし、これらは審査官を拘束するものではなく、特許査定の可否は、あくまでインドネシア特許法に定められた不特許事由を考慮した審査官の判断に委ねられるのはいうまでもない。

【留意点】
 拒絶理由通知の発送に遅延が生じているため、出願人の応答準備期間が不十分になってしまうことがあるが、審査官は期間延長に柔軟に対応している。

オーストラリアにおける庁指令に対する応答期間

 オーストラリアにおける実体審査においては、実体審査の結果、拒絶理由が見出された場合、拒絶理由を指摘する第一回庁指令の日付から起算する所定期間内(以下、「受理期限」)に、全ての拒絶理由を解消し、出願が受理されなければならない。この受理期限までに、全ての拒絶理由が解消されない場合、受理期限の経過後、出願は失効する。庁指令毎に応答期間は定められていない。庁指令の発行とそれに対する応答を受理期限までに複数回行う場合にも、受理期限までに全ての拒絶理由を解消し、出願が受理されなければならない。従って、受理期限までに出願が受理されるように、全ての拒絶理由に対する応答を受理期限より前に十分余裕をもって出願人は提出する必要がある。
(特許法第49条、第49A条)

 実体審査は、審査請求により開始される。審査請求は、標準特許出願(存続期間:20年間)においては出願人が、登録されたイノベーション特許(存続期間:8年間、無審査登録主義)においては特許権者および第三者が行い得る。なお、イノベーション特許出願制度は段階的な廃止が決定されており、2021年8月26日以降は新規の出願ができなくなっているが、存続している登録されたイノベーション特許については、引き続き審査請求可能であり、関係条文が残っている。実体審査において、標準特許出願については出願の受理を、イノベーション特許についてはイノベーション特許が特許要件を満たしていることを決定する審査証明書を、下記期限までに受けなければならない。

 (1)標準特許出願:2013年4月15日より前に審査請求された場合は第一回庁指令の日から21か月、2013年4月15日以降に審査請求された場合は第一回庁指令の日から12か月(2013年4月15日、2012年法律第35号で改正された1990年特許法が施行)。
 (2)イノベーション特許:第一回庁指令の日から6か月。
(特許法第44条、第49条、第67条、第68条、第101B条、第101E条、特許規則9A.4、規則13.4)

 標準特許の付与を受けるためには、付与前の審査請求が必要である。イノベーション特許は、実体審査を経ずに登録されるが、登録後に実体審査を受け、特許要件を満たしていることを決定する審査証明書を受けた後でなければ権利行使をすることができない。イノベーション特許の登録後の審査の請求は、特許権者だけでなく第三者も請求することができる。
(特許法第44条、第101A条)

 標準特許出願では、当該受理期限までに、審査官が提起する全ての拒絶理由を解消し、審査官がその出願を受理できる状態にしないと標準特許出願は失効する。また、イノベーション特許は、所定期間内に特許要件を満たしている旨の「認証(審査証明書)」を取得できないと失効する。
(特許法第101E条、第142条、特許規則9A.4、規則13.4)

 いずれの場合も、特許庁による拒絶に対して裁判所に不服申立をすると、受理期限は延長される。なお、受理期限は、後述する場合を除き、期間延長の請求や料金の支払いをしても延長することはできない。
(特許法第51条、第142条、第223条、特許規則13.4)

 なお受理期限が第一回庁指令の日から21か月の場合(すなわち、2013年4月15日より前に審査請求した場合)、第一回庁指令の日付から12か月以降に庁指令への応答書を提出する際には、応答の遅延による手数料が必要となるが、延長申請は必要ではない。
(特許規則13.4)

 受理期限の延長に関する規定は、受理期限までに全ての拒絶理由を解消し、出願の受理を受けることができなかったことが、故意によるものではないと立証できる場合にのみ適用される。「故意によるものではない」事情としては、例えば、「自然災害のように出願人が制御することができない状況」または「過誤または遺漏」が挙げられる。延長のためには、証拠の提出を伴った詳細な理由を提示しなければならず、証拠の準備および詳細な理由の作成のために費用と労力を要する。
(特許法第223条、特許規則22.11))

 また受理期限までに全ての拒絶理由を解消し、出願の受理を受けることが困難であることが事前に判断できる場合には、受理期限までに分割出願を行い、分割出願において審査を継続することが、出願の権利化を進めるための安全な方法である(イノベーション特許出願についても、分割出願は可能である)。一方、上述の「故意によるものではない」事情がある場合には、受理期限の経過後に延長に関する規定を適用することもできる。この際に申請する延長期間の長さは制限されていない。ただし、受理期限の経過を知った後、延長申請までに不当な遅延がある場合、これは延長申請の却下理由となる。
(特許法第79B条、第79C条、特許規則2.3、規則6A.1、規則6A.2)

シンガポールの庁指令に対する応答期間

特許出願の審査手続は、パリ条約に基づく出願、または特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の国内移行出願のいずれの出願形式を選択するかにより異なる。特に調査および審査の段階において、その相違は大きい。また、発行される庁指令および通知は、出願形式や以下に説明する調査および審査の種類により異なる。

 

パリ条約に基づく出願では、出願人は、審査請求について以下の選択肢(オプション)を有する。(図1のフロー参照)

(1)基準日から13か月以内に調査を請求し(第29条(1)(a))、その後、基準日から36か月以内に審査を請求する(第29条(3))。

(2)基準日から36か月以内に調査と審査を同時に請求する(第29条(1)(b))。

(3)基準日から36か月以内に、対応する出願または対応する国際出願の調査報告書に基づく審査を請求する(第29条(1)(c)(i))。

(4)基準日から54か月以内に、対応する出願または対応する国際出願の肯定的な最終結果・審査結果に基づく補充審査を請求する(第29条(1)(d)(i)(A))*1

 

*1:補充審査は、2017年10月30日付けで改正された特許法により、2020年1月1日以降の出願では、利用できなくなる。(シンガポール特許法29条(11A)、およびシンガポール特許規則43(4))。

 

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(図1)パリ条約に基づく出願の場合

 PCTに基づく国内移行出願では、出願人は審査請求について以下の選択肢を有する。(図2のフロー参照)

(1)基準日から36か月以内に調査と審査を同時に請求する(第29条(1)(b))。

(2)基準日から36か月以内に、対応する出願、対応する国際出願、国内段階に移行した関連特許または国内段階に移行した関連特許出願の調査報告書に基づく審査を請求する(第29条(1)(c)(i))。

(3)基準日から36か月以内に、シンガポール国内移行出願の元となるPCT国際出願の国際調査報告書に基づく審査を請求する(第29条(1)(c)(ii))。

(4)基準日から54か月以内に、対応する出願、対応する国際出願、国内段階に移行した関連特許または国内段階に移行した関連特許出願の肯定的な最終結果または審査結果に基づく補充審査を請求する(第29条(1)(d)(i)(A);補充審査は、上記*1のとおり、2020年1月1日以降の出願では利用できない。補充審査については、以下同じ。)。

(5)基準日から54か月以内に、シンガポール国内移行出願の元となるPCT国際出願の特許性に関する国際予備報告(IPRP)に基づく補充審査を請求する(第29条(1)(d)(i)(B))。

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(図2)PCTに基づく国内移行出願の場合

1.不備を指摘する通知に対する応答期間

 

1-1.予備審査において指摘された不備

シンガポール特許規則33に基づいて規定された方式要件を満たしていない出願について登録官(Registrar)が、不備を指摘する場合、該不備に対応するための応答期限は、通知の日から2か月である。延長に関する手数料を納付することにより、この期限は最大18か月延長することができる。この延長手続きは、最初の期限の前または後のいずれにおいても行うことができる。

 

登録官が、図面または明細書の一部が欠落した出願について不備を指摘する場合、該不備に対応するための応答期限は、通知の日から3か月である。この期限は延長することができない。

 

1-2.その他審査関連事項に関する不備

提出された書類または様式に何らかの不備が見つかった場合や、書類の提出に漏れがあった場合には、審査手続の様々な段階において、登録官により該不備が指摘されることがある。また、登録官は、以上のような類型に該当しない不備に関しても、該不備を指摘する通知を発行することができる。

このような不備に対応するための応答期間は、該通知に記載されている。応答期間は登録官の裁量であり、特許法または特許規則では規定されていない。

 

2.調査報告に対する応答期間

 

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(図3)パリ条約に基づく出願の場合

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(図4)PCTに基づく国内移行出願の場合

 第29条(1)(a)または(b)に基づいて請求された調査報告により(図3および図4のフロー参照)、当該特許出願において、単一の発明概念に関する単一性の欠如が判明した場合、登録官は出願人にその旨を通知する必要がある。

 

出願人は、単一性を有しないと判断されたために調査が行われなかった発明について補足調査(Supplementary Search)を請求することができる。この請求は、登録官の通知の日から2か月以内に行う必要がある。この期限は、延長に関する手数料を納付することにより、最大6か月延長することができる。

 

第29条(1)(a)に基づいて請求された調査報告が、審査請求期限の1か月前以降に出願人に送付された場合、審査請求期限は、調査報告が出願人に通知された日から1か月延長される。

 

3.調査見解書に対する応答期間

 

3-1.実体審査が請求される場合

 

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(図5)パリ条約に基づく出願の場合

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(図6)PCTに基づく国内移行出願の場合

 特許法第29条(1)(b)もしくは(c)または第29条(3)に基づいて、審査または調査および審査が請求され(図5および図6のフロー参照)、見解書が発行された場合、その見解書に対する応答期限は、見解書の通知の日から5か月であり、この期限は延長することができない。

 

3-2.補充審査が請求される場合*1

 

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(図7)パリ条約に基づく出願の場合

 

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(図8)PCTに基づく国内移行出願の場合

 

特許法第29条(1)(d)に基づいて補充審査が請求され(図7および図8のフロー参照)、見解書が発行された場合、その見解書に対する応答期限は、見解書の通知の日から3か月であり、この期限は延長することができない。

 

3-3.見解書に対する応答

出願人は、見解書に対して、反論または補正を提出して応答することができる。

出願人が見解書に対して応答を行わない場合には、見解書に基づいて審査報告書(3-1の場合)または補充審査報告書(3-2の場合)が作成される。審査報告書または補充審査報告書に未解決の拒絶理由が含まれる場合、登録官は出願人に拒絶をする旨の通知を発行する。

 

4.拒絶をする旨の通知に対する応答期間

出願人は、未解決の拒絶理由が含まれる審査報告書に対し、再審査を請求することができる。再審査は、拒絶をする旨の通知の日から2か月以内に請求することができる。

延長に関する手数料を納付することにより、この期限は最大6か月延長することができる。この延長手続きは、最初の期限の前または後のいずれにおいても行うことができる。最初の期限より後に期限延長を請求する場合、期限延長を請求するまでの間、当該出願は放棄された状態となる。

 

5.特許を付与する旨の通知に対する応答期間

登録官により特許を付与する旨の通知が発行される場合、出願人には、当該出願を整理し、登録料を納付するための期間として2か月が与えられる。

この期限は、延長に関する手数料を納付することにより、最大18か月延長することができる。

応答を行わない場合、当該出願は放棄されたものとみなされる。最初の期限より後に期限延長を請求する場合、期限延長を請求するまでの間、当該出願は放棄された状態となる。

 

6.特許付与後の応答期間

シンガポールにおいて最初に支払う年金は第5年次年金であり、第4年次までの年金を支払う必要は無い。第5年次年金の納付期限は特許出願日から4年目が満了する3か月前、すなわち、特許出願日から45か月である。

特許出願日から45か月が経過した後に特許が付与される場合、支払期限を迎えた年金(前年までに支払期限のある全ての費用を含む)は、特許付与の日から3か月以内であればいつでも納付することができる。

 

以降の各年の年金は毎年納付することとなり、期間満了前3か月以内に納付することができる。

 

【留意事項】

庁指令または通知に対する応答期間は、庁から発行される書面に記載されている。庁書面によっては、応答期間の延長が認められない場合もあり、そのような応答期間ついては、特に注意を払う必要がある。

 

インドネシアにおける特許出願の実体審査と特許庁からの指令書に対する応答期間

2016年8月26日施行された2016年特許に関する法律第13号(以下、特許法)は、実体審査や方式の期間について、以下のように規定している。

 

1. 方式審査に対する応答期間

2016年特許に関する法律第13号(以下、特許法)第34条は、出願日を確保するために必要な最低要件を規定している。その最低要件とは以下のとおりである。

  • 出願年月日、発明者の氏名・住所・国籍、 出願人の名称・住所、代理人の氏名・住所(第25条第1項)
  • 発明の名称、明細書(外国語可)、特許請求の範囲、要約、存在する場合は図面(第25条第2項a~e号、第3項)
  • 出願手数料納付の証明

 

最低要件の明細書は外国語で記載されていてもよいが、インドネシア語に翻訳された明細書は出願日から30日以内に提出されなければならず(第25条第3項)、期間内に提出されない場合、出願は取下げられたものとみなされる(第4項)。

これ以外の方式要件は、委任状、発明者宣言書、譲渡書、微生物寄託証明書である。方式要件が満たされていない場合、大臣は出願人に対し書面をもって、通知発送の日から起算して3か月以内に方式要件を充たすように通知する(第35条第1項)。この応答期間は最大2か月間延長でき(第2項)、さらに手数料の支払いにより1か月間延長できる(第3項)。また、自然災害等特別な事情のある場合はさらに6か月間の延長が可能である(第5項、第6項)。延長期間内に要件が満たされない場合、出願が取下げられたとみなされる(第36条)。

 

2. 審査請求期間

特許出願の実体審査は実体審査請求を待って行われる。出願人は特許法第51条第1項に定めるとおり、手数料を納付し、実体審査を請求しなければならない。実体審査請求のできる期間は、出願日から36か月以内である(第2項)。実体審査は、出願公開後6か月の異議申立期間(第48条第1項、第49条第1項)が経過した後着手される(第51条第5項)。

 

3. 実体審査と応答期間

実体審査官は、出願された発明の産業上利用性、新規性、進歩性、記載不備等を審査する(第54条)。審査官が特許出願された発明が登録要件を満たさないと報告した場合、大臣は出願人に対して書面によりその要件を満たすよう通知する(第62条第1項)。通知には、a)充足されるべき要件、b)実体審査において用いられる理由と引用文献が記載される(第62条第2項)。

実体審査を受ける出願が優先権を伴う場合、大臣は出願人に対して、他国での審査結果に関する書類の提出を求めることができる(第55条)。その特許出願の発明が既に他国において特許が付与されている場合には、後述のとおり、審査官から出願人に対して、係属中の出願を対応国で登録された特許に一致させるような補正を提案することが多い。発明が単一性を満たさない場合、審査官は分割出願を行うよう提案することもできる。

 

出願人は、通知書の日から3か月以内に意見書および/または補正書を提出しなければならない(第62条第3項)。その期間は、2か月延長でき(第4項)、さらに手数料の納付を条件として1か月延長できる(第5項)。また、自然災害等特別な事情のある場合はさらに6か月間の延長が可能である(第7項、第8項)。

期間内に応答しない場合、大臣は書面で出願人に対し2か月以内に出願は取下げられたとみなされる旨通知する(第10項)。

なお実情では、2回目の拒絶理由への応答期間は2か月のみである。2回目の拒絶理由通知の応答期間は、審査官の裁量により認められる場合がある。

特許法第57条は、実体審査請求日または公開期間満了日のうち遅い方から30か月以内に登録または拒絶の査定をするように規定している。この期限が迫っている場合は、応答期間の延長が認められない。

応答期間の起算日は、通知の送達日ではなく、通知の日である。現状として通知が起案されてから代理人等に送達するまで1か月程度要しているため、出願人が応答を準備するために与えられる時間は十分でないことがある。

審査官が、2回目の通知への応答を審査しても、やはり特許出願は特許要件を満たさないと判断した場合、審査官は拒絶査定書を発行する。拒絶査定を不服とする場合、出願人は、拒絶査定書の日から3か月以内に、当該拒絶査定に対して審判請求をすることができる。一方、通知に対する応答により、拒絶理由が解消されたと認められる場合、特許査定書が送付され、その後の特許付与の段階へと移行する。

 

4. 優先権を主張する特許出願および国際特許出願(PCTルート)の実体審査

特許法第55条では、優先権を主張する特許出願について、他国の審査において先行技術調査または実体審査が行われている場合、または特許査定が下されている場合、審査官は、他国の審査結果を参照することができる旨が定められている。ただし大臣令により、以下の国の官庁の審査結果は参照できない。

  1. ASEAN加盟国(シンガポールを除く)
  2. アフリカ諸国
  3. 東ヨーロッパ諸国(ロシアとEPO加盟国を除く)
  4. 台湾

PCTルートの場合、審査官は、国際調査報告、見解書または国際予備審査報告を、発明の特許性を判断するための主たる参考資料として参照する。ただし、これらは審査官を拘束するものではなく、特許査定の可否は、あくまでインドネシア特許法に定められた不特許事由を考慮した審査官の判断に委ねられるのは言うまでもない。

 

【留意点】

拒絶理由通知の発送に遅延が生じているため、出願人の応答準備期間が不十分になってしまうことがあるが、審査官は期間延長に柔軟に対応している。

 

シンガポールの庁指令に対する応答期間

【詳細】

特許出願の審査手続は、パリ条約に基づく出願、または特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の国内移行出願のいずれの出願形式を選択するかにより異なる。特に調査および審査の段階において、その相違は大きい。また、発行される庁指令および通知は、出願形式および/または以下に説明する調査および審査の種類により異なる。

 

パリ条約に基づく出願では、出願人は、審査請求について以下の選択肢を有する。(図1のフロー参照)

(1)基準日から13ヶ月以内に調査を請求し(第29条(1)(a))、その後、基準日から36ヶ月以内に審査を請求する(第29条(3))。

(2)基準日から36ヶ月以内に調査と審査を同時に請求する(第29条(1)(b))。

(3)基準日から36ヶ月以内に、対応する出願または対応する国際出願の調査報告書に基づく審査を請求する(第29条(1)(c)(i))。

(4)基準日から54ヶ月以内に、対応する出願または対応する国際出願の肯定的な最終結果・審査結果に基づく補充審査を請求する(第29条(1)(d)(i)(A))。

(図1)パリ条約に基づく出願の場合

(図1)パリ条約に基づく出願の場合

 

PCTに基づく国内移行出願では、出願人は審査請求について以下の選択肢を有する。(図2のフロー参照)

(1)基準日から36ヶ月以内に調査と審査を同時に請求する(第29条(1)(b))。

(2)基準日から36ヶ月以内に、対応する出願、対応する国際出願、国内段階に移行した関連特許または国内段階に移行した関連特許出願の調査報告書に基づく審査を請求する(第29条(1)(c)(i))。

(3)基準日から36ヶ月以内に、シンガポール国内移行出願の元となるPCT国際出願の国際調査報告書に基づく審査を請求する(第29条(1)(c)(ii))。

(4)基準日から54ヶ月以内に、対応する出願、対応する国際出願、国内段階に移行した関連特許または国内段階に移行した関連特許出願の肯定的な最終結果または審査結果に基づく補充審査を請求する(第29条(1)(d)(i)(A))。

(5)基準日から54ヶ月以内に、シンガポール国内移行出願の元となるPCT国際出願の特許性に関する国際予備報告(IPRP)に基づく補充審査を請求する(第29条(1)(d)(i)(B))。

(図2)PCTに基づく国内移行出願の場合

(図2)PCTに基づく国内移行出願の場合

 

1.不備を指摘する通知に対する応答期間

1-1.予備審査において指摘された不備

シンガポール特許規則第33条に基づいて規定された方式要件を満たしていない出願について登録官(Registrar)が、不備を指摘する場合、該不備に対応するための応答期限は、通知の日から2ヶ月である。延長に関する手数料を納付することにより、この期限は最大18ヶ月延長することができる。この延長手続きは、最初の期限の前または後のいずれにおいても行うことができる。

登録官が、図面または明細書の一部が欠落した出願について不備を指摘する場合、該不備に対応するための応答期限は、通知の日から3ヶ月である。この期限は延長することができない。

 

1-2.その他審査関連事項に関する不備

提出された書類または様式に何らかの不備が見つかった場合や、書類の提出に漏れがあった場合には、審査手続の様々な段階において、登録官により該不備が指摘されることがある。また、登録官は、以上のような類型に該当しない不備に関しても、該不備を指摘する通知を発行することができる。

このような不備に対応するための応答期間は、該通知に記載されている。応答期間は登録官の裁量であり、特許法または特許規則では規定されていない。

 

2.調査報告に対する応答期間

(図3)パリ条約に基づく出願の場合

(図3)パリ条約に基づく出願の場合

(図4)PCTに基づく国内移行出願の場合

(図4)PCTに基づく国内移行出願の場合

 

第29条(1)(a)または(b)に基づいて請求された調査報告により(図3および図4のフロー参照)、当該特許出願において、単一の発明概念に関する単一性の欠如が判明した場合、登録官は出願人にその旨を通知する必要がある。 出願人は、単一性を有しないと判断されたために調査が行われなかった発明について補足調査(Supplementary Search)を請求することができる。この請求は、登録官の通知の日から2ヶ月以内に行う必要がある。この期限は、延長に関する手数料を納付することにより、最大6ヶ月延長することができる。

第29条(1)(a)に基づいて請求された調査報告が、審査請求期限の1ヶ月前以降に出願人に送付された場合、審査請求期限は、調査報告が出願人に通知された日から1ヶ月延長される。

 

3.調査見解書に対する応答期間

3-1.実体審査が請求される場合

(図5)パリ条約に基づく出願の場合

(図5)パリ条約に基づく出願の場合

(図6)PCTに基づく国内移行出願の場合

(図6)PCTに基づく国内移行出願の場合

 

特許法第29条(1)(b)もしくは(c)または第29条(3)に基づいて、審査または調査および審査が請求され(図5および図6のフロー参照)、見解書が発行された場合、その見解書に対する応答期限は、見解書の通知の日から5ヶ月であり、この期限は延長することができない。

 

3-2.補充審査が請求される場合

(図7)パリ条約に基づく出願の場合

(図7)パリ条約に基づく出願の場合

(図8)PCTに基づく国内移行出願の場合

(図8)PCTに基づく国内移行出願の場合

 

特許法第29条(1)(d)に基づいて補充審査が請求され(図7および図8のフロー参照)、見解書が発行された場合、その見解書に対する応答期限は、見解書の通知の日から3ヶ月であり、この期限は延長することができない。

 

3-3.見解書に対する応答

出願人は、見解書に対して、反論または補正を提出して応答することができる。

出願人が見解書に対して応答を行わない場合には、見解書に基づいて審査報告書(3-1の場合)または補充審査報告書(3-2の場合)が作成される。審査報告書または補充審査報告書に未解決の拒絶理由が含まれる場合、登録官は出願人に拒絶をする旨の通知を発行する。

 

4.拒絶をする旨の通知に対する応答期間

出願人は、未解決の拒絶理由が含まれる審査報告書に対し、再審査を請求することができる。再審査は、拒絶をする旨の通知の日から2ヶ月以内に請求することができる。

延長に関する手数料を納付することにより、この期限は最大6ヶ月延長することができる。この延長手続きは、最初の期限の前または後のいずれにおいても行うことができる。最初の期限より後に期限延長を請求する場合、期限延長を請求するまでの間、当該出願は放棄された状態となる。

 

5.特許を付与する旨の通知に対する応答期間

登録官により特許を付与する旨の通知が発行される場合、出願人には、当該出願を整理し、登録料を納付するための期間として2ヶ月が与えられる。

この期限は、延長に関する手数料を納付することにより、最大18ヶ月延長することができる。

応答を行わない場合、当該出願は放棄されたものとみなされる。最初の期限より後に期限延長を請求する場合、期限延長を請求するまでの間、当該出願は放棄された状態となる。

 

6.特許付与後の応答期間

シンガポールにおいて最初に支払う年金は第5年次年金であり、第4年次までの年金を支払う必要は無い。第5年次年金の納付期限は特許出願日から4年目が満了する3ヶ月前、すなわち、特許出願日から45ヶ月である。

特許出願日から45ヶ月が経過した後に特許が付与される場合、支払期限を迎えた年金(前年までに支払期限のある全ての費用を含む)は、特許付与の日から3ヶ月以内であればいつでも納付することができる。

以降の各年の年金は毎年納付することとなり、期間満了前3ヶ月以内に納付することができる。

 

【留意事項】

庁指令または通知に対する応答期間は、庁から発行される書面に記載されている。庁書面によっては、応答期間の延長が認められない場合もあり、そのような応答期間ついては、特に注意を払う必要がある。

オーストラリアにおける庁指令に対する応答期間

【詳細】

オーストラリアにおける実体審査においては、実体審査の結果、拒絶理由が見出された場合、拒絶理由を指摘する第一回庁指令の日付から起算する所定期間内(以下“受理期限”)に、全ての拒絶理由を解消し、出願の受理を受けなければならない。この受理期限までに全ての拒絶理由が解消されない場合、受理期限の経過後、出願は失効する。庁指令毎の応答期間は定められていない。庁指令の発行とそれに対する応答を受理期限までに複数回行う場合にも、受理期限までに全ての拒絶理由を解消し、出願の受理を受けなければならない。従って、受理期限までに出願が受理されるように、全ての拒絶理由に対する応答を受理期限より十分前に出願人は提出する必要がある。

 

実体審査は、審査請求により開始される。審査請求は、「標準」特許出願(存続期間:20年間)においては出願人が、登録された「イノベーション(革新)」特許(存続期間:8年間、無審査登録主義)においては特許権者および第三者が行い得る。実体審査において、「標準」特許出願については出願の受理を、「イノベーション」特許については「イノベーション」特許が特許要件を満たしていることを決定する審査証明書を、下記期限までに受けなければならない。

(1)標準特許出願:2013年4月15日より前に審査請求された場合は第一回庁指令の日から21ヶ月、2013年4月15日以降に審査請求された場合は第一回庁指令の日から12ヶ月(2013年4月15日付で特許法改正が施行)。

(2)イノベーション特許:第一回庁指令の日から6ヶ月。

 

標準特許の付与を受けるためには、付与前の審査請求が必要である。イノベーション特許は、実体審査を経ずに登録されるが、登録後に実体審査を受け、特許要件を満たしていることを決定する審査証明書を受けた後でなければ権利行使をすることができない。イノベーション特許の登録後の審査の請求は、特許権者だけでなく第三者も請求することができる。

標準特許出願では、当該受理期限までに、審査官が提起する全ての拒絶理由を解消し、審査官がその出願を受理できる状態にしないと標準特許出願は失効する。また、イノベーション特許は、所定期間内に特許要件を満たしている旨の「認証(審査証明書)」を取得できないと失効する。

 

いずれの場合も、特許庁による拒絶に対して裁判所に不服申立をすると、受理期限は延長される。なお、受理期限は、後述する場合を除き、期限延長の請求や料金の支払いをしても延長することはできない。

なお受理期限が第一回庁指令の日から21ヶ月の場合(すなわち、2013年4月15日より前に審査請求した場合)、第一回庁指令の日付から12ヶ月以降に庁指令への応答書を提出する際には、応答の遅延による手数料が必要となるが、延長申請は必要ではない。

 

受理期限の延長に関する規定は、受理期限までに全ての拒絶理由を解消し、出願の受理を受けることができなかったことが、故意によるものではないと立証できる場合にのみ適用される。“故意によるものではない”事情としては、例えば、「自然災害のように出願人が制御することができない状況」または「過誤または遺漏」が挙げられる。延長のためには、証拠の提出を伴った詳細な理由を提示しなければならず、証拠の準備および詳細な理由の作成のために費用と労力を要する。

 

また受理期限までに全ての拒絶理由を解消し、出願の受理を受けることが困難であることが事前に判断できる場合には、受理期限までに分割出願を行い、分割出願において審査を継続することが、出願の権利化を進めるための安全な方法である。一方、上述の“故意によるものではない”事情がある場合には、受理期限の経過後に延長に関する規定を適用することもできる。この際に申請する延長期間の長さは制限されていない。ただし、受理期限の経過を知った後、延長申請までに不当な遅延がある場合、これは延長申請の却下理由となる。

メキシコにおける特許の補正の制限

【詳細】

1.出願提出前の内容変更

メキシコでは、PCT出願の国内移行に際して、国際出願から内容を変更して移行手続きをすることが認められる中南米では数少ない国の一つである。メキシコの実務では、対応する国際出願の国際公開から明細書およびクレームの内容を変更した出願書類の提出が認められる。つまり、メキシコ国内移行に際して、明細書およびクレームとして、PCT出願時の明細書およびクレームに基づいて手続きできるだけでなく、優先権の基礎となる出願(日本企業の多くの場合は日本出願)の明細書およびクレーム、または、それらの内容に変更を加えた書面で移行手続きを行うことも可能である。ただし、メキシコへの国内移行手続き時の内容の変更は、優先権の基礎となる出願の当初の開示の範囲を超えてはならない。

 

一方、メキシコ特許法に明文規定はないものの、メキシコでの実務では、パリルート出願は優先権の基礎となる出願と実質同一でなければならない。メキシコ出願の内容を基礎となる出願から変更する場合には、明細書およびクレームの補正として出願後に提出しなければならない。原出願から修正を加えた明細書およびクレームに基づき提出されたパリルート出願の場合、IMPIは拒絶理由通知を発行し、メキシコ出願の出願書類を優先権の基礎となる出願と一致するよう要求することが実務となっている。

 

2.特許付与前の補正

出願が提出された後、自発的に、あるいは、IMPIからの庁指令に応じて特許要件を満たすため、特許付与前に補正を行うことができる。自発補正の場合も、庁指令に対する補正の場合も、特許出願における明細書、図面またはクレームのあらゆる特許付与前補正は、特許付与通知が発行される前であれば、出願の係属中はいつでも行うことができる。ただし、原出願の全体に含まれる開示の範囲を拡大するような新規事項の追加や、クレームの追加は認められない。これらの制限は、産業財産法第55条の2に定められている。

 

2-1.自発補正

自発補正は、主として出願の本文もしくはデータにおける誤りを訂正するために、または出願を特許可能な状態にする目的でクレームを減縮するために、出願人により自発的に行われる補正である。特許の存続期間中のあらゆる時点で、自発補正を提出することが可能である。

 

出願を早期に権利化するための手続きとして、PPH申請の他、自発補正の活用が挙げられる。前述のとおり、出願人は出願係属中、いつでも自発補正を提出することができる。審査開始前で、出願の本文もしくはデータの誤りの訂正や、出願を特許可能な状態にする目的でクレームを減縮する補正を行うことが、出願の早期権利化に有効な場合が多い。

 

2-2. IMPIからの庁指令に対する補正

補正は通常、IMPIにより行われた方式および実体審査の結果として生じる庁指令に応じて出願人が提出する。メキシコの実務によれば、方式要件に関する庁指令は最大で2回、実体要件を満たすための庁指令は最大4回発行され、その応答として出願を補正する機会が与えられる。かかる庁指令への応答期限は2か月であり、2か月の延長が可能である。これらの期限は、産業財産法第55条および第58条に定められている。

 

自発補正の場合と同様に、IMPIからの要求に対する明細書、図面またはクレームの補正は、出願当初の開示の範囲を拡大するような新規事項を含めてはならない(産業財産法第55条の2)。つまり補正後の記載内容が、優先権の基礎となる出願当初の明細書によって完全に裏づけられていなければならない。

 

2-3. PPH申請時の補正

出願の早期権利化を目的として提出される特許審査ハイウェイ(Patent Prosecution Highway:PPH)での補正は、基本的に出願クレームを優先権の基礎となる出願のクレームと一致させるために行われるものであり、PPHプログラム参加国の特許庁により認められている。なお、メキシコは、JPO(日本特許庁)の他、USPTO(米国特許商標庁)、EPO(欧州特許庁)、KIPO(韓国特許庁)、SIPO(中国特許庁)、CIPO(カナダ知的財産局)およびIPOS(シンガポール知的財産事務局)などとPPH協定を結んでいる。

 

PPH申請に適用される一般的な補正の制限は、概略以下のとおりである。

・メキシコ出願の審査が始まっていてはならない。つまり、実体審査に対応する庁指令がIMPIにより発行された後は、PPH申請は認められない。

・メキシコ特許出願の公開日から6か月の第三者情報提供期間(observation period)の後に、PPH申請しなければならない。

・ビジネス方法、コンピュータプログラムまたは手術、診断もしくは治療方法といった、メキシコ特許法上では特許されない主題が、クレームに含まれていてはならない。

 

3.特許付与後補正

特許付与後補正は、特許権が付与された後に提出するものであり、明白な誤りもしくは方式上の誤りの訂正、または特許付与された主題の範囲の減縮のみに制限されている。これらの制限は、産業財産法第61条に定められている。

 

特許出願に対して特許付与通知が発行された後、特許登録料を納付とともに、特許付与前に補正を提出したとしても、この段階での補正は、特許付与後の補正と同様に取り扱われる。すなわち、この段階の補正は、明白な誤りもしくは方式上の誤りの訂正、または特許付与された主題の範囲の減縮のみに制限される。特許権存続期間中は、特許付与後補正を提出することができる。

 

【留意事項】

メキシコにおいて特許または特許出願の補正を行う際には、補正の提出書面、または発行された庁指令に対する応答書において、特許の補正を裏づける明確な正当性および根拠をはっきりと示すことが必要である。特許または特許出願の補正は、原出願の明細書(パリルートおよびPCTルートの場合いずれも)により適正に裏づけられていることは必須の要件であり、その他の内容的な制限は、その提出時期によっても異なるので注意が必要である。

インドネシアにおける特許出願の実体審査と特許庁からの指令書に対する応答期間

【詳細】

1. 方式審査に対する応答期間

インドネシアにおいて、特許出願されると、インドネシア特許庁(以下、特許庁という。)は方式的要件が満たされているか否かの方式審査を行う。方式的要件に不備がある場合、特許庁は出願人に対し(なお、代理人がある場合には代理人、以下、単に出願人とする)、当該不備を補完するよう通知する。出願人は、通知の日付から3ヶ月以内に当該不備を補完(出願時に準備できなかった補正を含む追加の書面を提出すること)しなければならない。この補完期限は、出願人の申請により2ヶ月延長することができる。また、追加の手数料を納付することを条件にさらに1ヶ月の延長も可能である。

 

2. 審査請求期間

特許出願の実体審査は実体審査請求を待って行われる。出願人はインドネシア特許法(特許に関する法律第14/2001号、以下、特許法という)第48条(1)に定める通り、手数料を納付し、特許庁に実体審査を請求しなければならない。実体審査請求のできる期限は、出願日から36ヶ月以内である(特許法第49条(1))。なお、出願公開後6ヶ月の異議申立期間(特許法第44条)の経過前に実体審査が請求された場合であっても、当該異議申立期間の経過後に実体審査が着手される(特許法第49条(4))。

 

3. 実体審査の応答期間

公開後6ヶ月の異議申立期間内には、何人も、特許出願に対する異議申立を提出することができる(特許法第45条)。異議申立が提出された場合、当該異議申立の内容は、実体審査において、審査官が内容検討を行い、審査報告書の参考資料または判断資料として使用される。

特許法第54条に基づき、特許出願に対する特許付与または拒絶の決定は、実体審査請求の日から36ヶ月以内になされなければならない。ただし、実体審査請求が公開期間満了前に行われた場合には、異議申立期間の経過から36ヶ月以内に上記決定がなされなければならない。小特許(実用新案)の場合は、出願日から24ヶ月以内になされなければならない。

 

4. 実体審査の内容

実体審査は、原則インドネシア特許庁の審査官により行われるが、特許法第50条(1)の規定により、特許庁が外部の専門家や他国の特許庁の審査官の支援を要請することもできる。

実体審査において、特許法第52条(1)に基づき、審査官は審査報告書を作成する。特許が請求されている発明が不明瞭、新規性なし、進歩性なし、またはその他の拒絶理由が含まれていると判断される場合、出願人に対して、拒絶理由に対する意見または補正を求める指令書を発行する。

指令書には、出願人の明細書に対する審査官からのコメントが記載される。第1回指令書に対しては、出願人は、通知から3ヶ月以内に応答書を提出しなければならない。第2回指令書が発行される場合は通知から2ヶ月以内に、第3回指令書が発行される場合は通知から1ヶ月以内に応答書を提出しなければならない。なお、実務上、最大3回まで指令書が発行される場合があるが、審査官が、出願人のさらなる応答を求めても特許出願は特許要件を満たさないと判断した場合、第1回目の指令書の後でも、審査官は拒絶査定を発行する場合がある。

なお、出願人が期限内に応答することができない場合、出願人は、審査官にその旨を説明し、期限延長を請求することができる。特許法は、期限延長については規定がなく、期限延長を認めるか否かは審査官の裁量に委ねられている。

指令書において、拒絶理由の記載は、問題となる請求項や記載部分の指摘とともに通知される。さらに、審査官から、拒絶理由を解消するための提案を行うことができる。

また、その特許出願の発明が既に他国において特許が付与されている場合には、後述のとおり、審査官から出願人に対して、係属中の出願を対応国で登録された特許に一致させるように提案することもできる。発明が単一性を満たさない場合、分割出願を行うよう提案することもできる。

出願人の応答で拒絶理由が解消されていないと審査官が認める場合、さらに、第2回目以降の指令書を発行することができる。審査官が、出願人のさらなる応答を求めても特許出願は特許要件を満たさないと判断した場合、審査官は拒絶査定を発行する。拒絶査定を不服とする場合、出願人は、拒絶査定の送付の日から3ヶ月以内に、当該拒絶査定に対して審判請求をすることができる。

一方、指令書に対する応答により、拒絶理由が解消されたと認められる場合、特許査定が送付され、その後の特許付与の段階へと移行する。

 

5.  指令書への応答の実務上の留意点

指令書への応答の実務上の留意点として、以下が挙げられる。

(1)審査官の提起するすべての拒絶理由に応答しなければならない。

(2)出願人は、クレームを補正すること、またクレームに記載された発明と引用文献と相違を主張することができる。

(3)明細書の補正が可能であるが、新規事項を追加することはできない。

(4)出願人は、審査官との面談(電話面談も含む)を行うことができる。

(5)応答期限内に指令書に応答しなかった場合、出願は取り下げたものとみなされる。

 

6. 優先権を主張する特許出願および国際特許出願(PCTルート)の実体審査

特許法第28条(2)では、優先権を主張する特許出願について、他国の審査において先行技術調査または実体審査が行われている場合、または特許査定が下されている場合、審査官は、他国の審査結果を参照することができる旨が定められている。外国特許庁の審査結果については、通常、欧州特許庁(European Patent Office)、米国特許商標庁(United States Patent and Trademark Office)、日本国特許庁(Japan Patent Office)およびオーストラリア特許庁(Austrian Patent Office)の結果を参照する。

PCTルートの場合、審査官は、通常は、国際調査報告、見解書または国際予備審査報告を、発明の特許性を判断するための主たる参考資料として参照する。ただし、これらは審査官を拘束するものではなく、特許査定の可否は、あくまで審査官の判断に委ねられている。審査官は、国際調査報告、見解書または国際予備審査報告の内容にかかわらず、インドネシア特許法に定められた不特許事由(特許法第7条)に関する規定を考慮して特許査定の可否を判断しなければならない。

 

7. 特許審査ハイウェイプログラム

インドネシア特許庁は、日本特許庁と、特許審査ハイウェイプログラム(PPH: Patent Prosecution Highway Program)を実施している。日本の出願人は、このPPHプログラムを適用し、インドネシアにおける特許出願において早期権利化を図ることができる場合がある。