韓国におけるデザイン(意匠)の登録要件
【詳細】
デザイン(意匠)とは、物品の形状・模様・色彩またはこれらを結合したものであって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。デザイン登録出願し登録を受けるためには、デザインの成立要件として物品性と形態性(形状、模様、色彩)、視覚性、審美性を満たさなければならない。
デザイン保護法第33条に定める登録要件としては、i)新規性、ii)創作性、iii)工業上の利用可能性などを満たさなければならず、iv)拡大された先出願主義に違反してはならない。また、v)前記i)~iv)の要件を満たしたデザインであって、類似のデザインが2以上出願された場合には、一番先に出願した者のみが登録を受けることができる。
デザイン登録の要件
1.工業上の利用可能性
「工業上の利用可能性」とは、工業的な生産方法によって同一のデザイン物品が量産可能なことをいう。「工業上の利用可能性」の要件を満たすためには、出願したデザインに関して物品の繰り返し生産が可能でなければならず、最初から量産を意図していなければならない。また、単純なアイディアに過ぎないだけではなく、技術的に十分達成できる程の物品でなければならない。
自然物をそのままデザインの構成主体に使用したものや、大量生産できないものや、純粋美術の分野に属する著作物は「工業上の利用可能性」がない場合に該当する。
2.新規性
「新規性」とは、そのデザインが出願前に刊行物やカタログなどに掲載されたり、販売、展示などを通じて一般大衆に公開されたり、または誰でも知り得る状態に置かれているものであってはならないという意味である。
デザイン登録を受けることができる権利を有する者自身のデザインもしくは当該デザインと類似のデザインであって、当該デザインが韓国国内外で公知であったり、公然実施されていたり、韓国国内外の頒布刊行物に記載されていたりした場合には、公知日や公然実施された日や刊行物に記載された日などから6ヶ月以内に出願すれば、新規性を喪失しないものとみなされる(新規性喪失の例外)。
3.創作性
「創作性」とは、そのデザインが属する分野で通常の知識を有する者が韓国国内で広く知られた形状、模様、色彩、またはこれらの結合によって容易に創作することができないデザインでなければならないという意味である。
容易に創作することができるデザインは以下の通りである。
3-1.周知の形状、模様などによる容易創作
・三角形、四角形、円形、円柱、正多面体など周知の図形の形状をそのまま利用したものに過ぎない場合や、ありふれた模様を単純配列したものに過ぎない場合(市松模様、水玉模様など)が相当する。
3-2.自然物、有名な著作物、有名な建造物、有名な景色などを基にした容易創作
3-3.周知デザインを基にした容易創作
・当業界で刊行物やテレビなどを通じて広く知られているデザインを転用した場合で、例えば、有名な自動車の形状、周知の模様を玩具に転用した場合、著名なキャラクター等の形状、周知の模様を貯金箱に転用した場合、周知のラジオ形状と周知の時計形状が結合した場合などが相当する。
4.拡大された先願主義
デザイン登録出願した日には未公開であったが、当該デザイン登録出願を行った日より前にデザイン登録出願をしてあって、当該デザイン登録出願をした後に出願公開されたり登録公告されたりした他のデザイン登録出願の出願書の記載事項、および出願書に添付された図面・写真、または見本に表現されたデザインの一部と同一または類似している場合、当該デザインはデザイン登録を受けることができない。
先出願が全体デザインであり当該出願が部分デザインの場合、先出願が完成品のデザインであり当該出願が部品や付属品のデザインである場合、先出願が一組の物品デザインであり当該出願が構成品のデザインである場合にも拡大された先願は適用される。
なお2014年7月1日施行の改正デザイン保護法より、拡大された先願は同一の出願人の場合には適用されない。
5.先願主義
「先願主義」とは、同一または類似のデザインに関して、互いに異なる日に2つ以上の出願がある場合、先に出願した者のみがそのデザインに関して登録を受けることができることを言う。
デザイン権は独占権を付与するものであるため、同一または類似のデザインが偶然2つ以上創作されて出願されている場合、ただ一人にだけ独占権を付与するために最初の出願人のみが登録を受けることができるとするものである。
【留意事項】
・意匠登録を行うためには、登録要件を備えるとともに、不登録事由に該当してはならない。
・衣服、かばん、事務用品類、電子計算機等の流行性が強くライフサイクルが短い物品である無審査登録の対象となるデザインに対しては、上記の登録要件のうち新規性、創作性、拡大された先願主義、先願主義などを審査せず、方式審査以外に、成立要件、工業上の利用可能性および不登録事由に該当するか否かに関する審査のみを行う。
ベトナムにおける冒認意匠出願への異議申立による対応
【詳細】
ベトナムにおける意匠保護に関する現行法の下では、意匠出願は方式審査と実体審査の2段階を経て審査される。意匠出願は、第三者への告知と当該意匠の登録可能性に関する第三者からの意見公募を目的として、意匠公報によって公開される。審査官が特定の意匠の保護適格性を判断する際には、主として既存のデータシステムの情報を根拠にしており、審査官は実際の市場における意匠の利用状況について最新情報を常に得ることはできないし、意匠の利用実態を十分に認識することもできない。それゆえ、意匠を正確に評価するための有用な情報を得る機会を設けることが、出願意匠の公開の主要な役割である。
冒認意匠出願に対する異議申立は、期限内に行われなければならない。これは、悪意を抑制し、企業ならびに社会の利益を保護するための重要な解決策である。本稿では、冒認意匠出願を阻止するために、NOIPに異議申立を提出する際の手続きについて説明する。
(1)異議申立
ベトナム知的財産法第112条 意匠出願の登録付与に対する第三者意見
意匠出願が意匠公報に公開された日から、特許査定通知発行の日まで、いかなる第三者も、当該出願に関する登録証の付与に関して、NOIPに意見を提示する権利を有する。当該意見は、書面様式で提示し、かつ、資料を添付しなければならず、または立証に使用する情報の出所を明示しなければならない。
上記規定に基づき、何人も異議申立書を提出する権利を有する。なお、第三者がベトナム国民の場合には直接NOIPに対し前記の異議申立を行うことができるが、第三者が外国人の場合には、ベトナム国内の認可された工業所有権代理人を通じて異議申立を行う必要がある。
(2)異議申立期限
意匠出願は方式要件を満たすと公開され、異議申立期間に入る。以下の図は、異議申立の提出に関わる期間を時系列に示したものである。
(3)異議申立理由
〇法的根拠
意匠出願に対する異議申立の法的根拠は、知的財産法第65条、第66条、第67条に規定された保護要件、すなわち新規性、創作性、産業上の利用可能性である。
知的財産法第65条 意匠の新規性
意匠は、意匠登録出願の出願日前、または優先権主張日前に、ベトナム国内または国外において、使用によりまたは書面での説明その他何らかの形態により、既に開示されている他の意匠と著しく異なるときは、新規であるとみなす。
知的財産法第66条 意匠の創作性
意匠は、意匠登録出願の出願日前、または優先日前に、ベトナム国内または国外において、使用によりまたは書面もしくは口頭での説明その他何らかの形態の手段により、既に公然と開示された意匠に基づいて、それが当該技術の熟練者により容易に創作できないものであるときは、創作性を有するとみなす。
知的財産法第67条 意匠の産業上の利用可能性
意匠は、それが工業的または手工業的方法による、意匠を具体化した外観を有する製品を大量生産するための型(model)となる場合は、産業上の利用可能性があるとみなす。
第三者は異議申立に際して、上記の一ないし複数の根拠に依拠することができる。実務的には、新規性の欠如を理由とする異議申立が最も多い。異議申立をする第三者は、その根拠を裏付ける証拠を収集する必要がある。
〇判断基準
異議申立対象の特定
通常、異議申立において、意匠の新規性の判断にあたっては、出願意匠と異議証拠としての意匠の2つの意匠の差異を評価するが、その際に意匠の実質的な特徴と実質的でない特徴を比較しなければならない。現時点では、これら特徴を識別するための具体的な基準は存在しないため、審査官は主として主観に基づき、かつ、科学技術省・省令第01/2007/TT-BKHCN号第33条7項(c)に定められた以下の一般原則に基づいて判断を下している。
「意匠の実質的な特徴とは、ある意匠を特定し、当該意匠と同じ種類の製品に使用されている他の意匠とを区別するために、視認され、識別される意匠の特徴部分である。意匠の特徴であるが、上記条件を満たしていないものは、実質的でない特徴とみなされる。」
異議申立にかかる証拠
第三者は、異議申立の法的根拠を立証するために、あらゆる証拠を提供する必要がある。証拠としては、意匠を含む画像、情報源となる資料および当該資料の発行年月日等が含まれる。情報源としては、あらゆる国での登録意匠公報、公開公報並びにそれらに類する様々なものが考えられる。インターネットから得られたデータもまた意匠の開示に関する証拠と見なされる。多くの場合、出願人自身が自らのウェブサイトもしくはインターネット販売サイト等に意匠を開示している。インターネットアーカイブ(http://www.archive.org)等の検索ツールも、意匠の開示日を特定するために利用できる。
なお、意匠創作者の許可なく、意匠が開示された場合であっても、知的財産法第65条第4項の規定により、その意匠の新規性が欠如しているとはみなされない(新規性喪失の例外)、という点に留意しなければならない。
知的財産法第65条(4)
(4)意匠は、次の状況において公開されたときは、新規性を欠くとはみなさない。ただし、意匠登録出願が公開又は展示の日から6 月以内に行われることを条件とする。
(a)第86 条に規定する登録を受ける権利を有する者の許可なしに他人により公開された。
(b)第86 条に規定する登録を受ける権利を有する者により学術的発表の形態で公開された。
(c)第86 条に規定する登録を受ける権利を有する者によりベトナム国内博覧会又は公式若しくは公認の国際博覧会において展示された。
(4)異議申立書の要件
方式要件
・異議申立はベトナム語の書面にて作成されなければならない。電話、審査官との直接面談など非公式な情報交換は、正式な異議申立として記録されない。
・第三者が知的財産代理人を通じて異議申立を提出しようとする場合、委任状が必須とされる。
・NOIPがいつでも簡便に異議申立人と連絡をとれるようにするため、異議申立書には、氏名、電話番号、eメールもしくはそれに類する個人の連絡先(携帯電話番号等)が正確に記載されていなければならない。
・前記の第三者は所定の料金を支払わなければならない。
(5) 異議申立書作成における推奨事項
・前述した法的根拠および判断基準が首尾一貫して明瞭に記載されるべきである。
・異議申立の説得力を高めるため、評価ならびに推論を示すべきである。
・第三者は、提供された情報および提出された文書の正統性を保証し、それについて責任を負う必要がある。
(6)異議申立手続の流れ
なお異議申立て手続きの流れは、以下科学技術省・省令第第01/2007/TT-BKHCN号第6条に規定されている。
科学技術省・省令第第01/2007/TT-BKHCN号 第6条
保護証書付与決定以前の第三者の意見の処理
6.1 いかなる組織又は個人も、産業財産権登録申請書が産業財産官報に掲載された時から、保護証書を付与する決定を下すまでに、登録権、優先権、保護要件及び知的財産法の第112条に規定する産業財産権登録申請書関連のその他の諸問題についての意見を国家知的財産庁に文書で送付することができる。第三者意見書は、産業財産権登録申請書の処理過程における情報源とみなされる。
6.2 国家知的財産庁は、第三者の意見を文書で受けた時から1ヶ月以内に、出願人にその意見を通知し、かつ通知日から最大1ヶ月の期限を設定して、文書で応答するよう通知する。国家知的財産庁は、出願人の応答意見を受けた後に、必要に応じて第三者に対応意見を通知し、かつ通知日から1ヶ月の最大の期限を設定し、第三者に、文書で、その対応意見に応答するよう求める。国家知的財産庁は、各関係者により提供された証拠、論拠及び申請書の資料に基づき、出願人及び第三者の意見を処理する。
6.3 国家知的財産庁は、第三者の意見に根拠がないと判断する場合、出願人に対してはその意見を通知する必要はないが、第三者に対しては拒絶の理由を明確にして意見書の拒絶を通知する。
6.4 国家知的財産庁は、第三者の意見が登録権に関連し、第三者の意見に根拠があるか否かを判定できない場合、裁判所に提訴できるよう第三者に通知する。国家知的財産庁が通知書を発出した時から1ヶ月以内に、第三者が裁判所に提訴したことについて、国家知的財産庁に通知しない場合、国家知的財産庁は、第三者が意見を撤回したものと判断する。国家知的財産庁が上記の期限内に第三者から通知書を受けた場合、国家知的財産庁が申請書の処理を中止し、裁判所の紛争解決結果を待機する。裁判所の解決結果の受領後、申請書の処理がその結果に基づいて行われる。
6.5 国家知的財産庁は、必要に応じて、かつ両当事者の請求があれば、第三者と出願人との直接対話を組織し、異議のある問題を明確化する。
6.6 出願人が第三者の異議に応答する期間は、国家知的財産庁が関連の手続を行う期間に計上しないものとする。