香港における指定商品・役務に関わる留意事項
1.出願分類
商標出願または商標登録により保護される指定商品・役務は、ニース分類としても知られる、ニース協定に基づく商品・役務の国際分類にしたがい分類される。
香港知的財産庁登録局(商標)は、指定商品・役務の分類に際して、ニース分類の最新版を使用している。本稿の執筆時点において、2023年1月1日から第12-2023版が使用されている。
指定商品・役務は、通常、ニース分類のアルファベット順リストにしたがって分類され、アルファベット順リストに記載されていない商品・役務が記載されている場合、その分類の判断は、ニース分類に定められた注釈(Explanatory Notes)と一般的注釈(General Remarks)にしたがって分類される。
香港知的財産庁登録局(商標)は、以下のような他国の商標庁により提供される商品・役務の分類に関する情報も参照する。
(a) EUIPO(欧州知的財産庁)http://euipo.europa.eu/ec2/
(b)IP Australia(オーストラリア知的財産庁)https://www.ipaustralia.gov.au/trade-marks/what-are-trade-marks/what-are-classes-of-goods-and-services/how-to-pick-classes-of-goods-and-services
(c)USPTO(米国特許商標庁)https://idm-tmng.uspto.gov/id-master-list-public.html
出願に際し、一区分における商品・役務の数に制限はない。一件の商標出願に含められる区分の数にも制限はない。ただし、オフィシャルフィーは、当該出願において申請されたニース分類の区分数に基づき課される。
2.指定商品・役務に関する審査
商標出願の指定商品・役務は、明瞭かつ簡潔な説明であって、国際分類に適合するものを含まなければならない(香港商標規則7(1)および(2))。かかる要件を充足していないと判断された場合は、不備通知が発行される(香港商標規則11(1)(a))。これに対し、2ヶ月以内(期限延長不可)に適切な商品・役務へ補正しなければならない(香港商標規則11(2))。
一部の商品・役務について適切に記載されている一方で、「本区分に属するその他すべての商品」や「その他すべての関連する役務」、「関連役務」といった広範または不明確な記述や、意図された商品・役務を判断することができないような曖昧な商品または役務の記述を含む出願についても不備通知が発行される(香港商標規則7(2))。
3.広範な用語および類見出し(クラスヘディング)
商標出願の指定商品・役務の特定の区分において、「全ての商品」、「全ての役務」のような広範な用語は明確ではないとみなされる(香港商標規則7)。また、「健康製品」、「顧問サービス」、「コンサルタントサービス」、「オンラインサービス」のような用語は、不明確な記述として受理されない。
なお、香港知的財産庁登録局(商標)は、ニース分類に記載された類見出しを使用して、商標出願をすることを認めている。
香港における判例法は、香港の現地裁判所の判決とともに、欧州連合司法裁判所(ECJ)を含む英国における判決を考慮する。「IP Translator」事件(英国弁理士会 vs 商標登録局(ECJ事件番号第C-307/10号))に関するECJの画期的判決にしたがい、当時の欧州共同体商標意匠庁(OHIM)が、共同体商標出願および登録についての商品・役務リストにおける類見出しの使用に関する長官通達第2/12号を発行したことが注目に値する。この通達は、商標出願または登録における類見出しの使用が、当該区分におけるすべての商品・役務に対する保護を与えるものではないため、出願人は、すべての商品・役務に対する保護を意図する場合は、その登録出願において、商品・役務を全て特定しなければならないことを明確にしている。
したがって、出願にかかる指定商品・役務の作成に際しては、広範な用語または類見出しを指定する場合、出願人にとって重要な具体的な商品・役務を出願時に含めることが重要である。なお、商標登録されている指定商品・役務の全部または一部が使用されていない場合には、第三者からの商標登録の取消請求により、3年間継続して不使用であることを理由として当該商品・役務の全部または一部についての登録を取り消す可能性がある(香港商標条例第52条(2)(a)および(6))。
4.多区分における類見出しまたは広範な商品または役務に関する出願
商標出願に、多区分における類見出しまたは多区分における広範な商品または役務が含まれる場合、香港知的財産庁登録局(商標)は、出願人の事業内容が、そうした全般的な商品または役務を対象としたものとは考えられないとの理由で、拒絶することができる。
このような場合、出願人は、申請された商品または役務に関連した商標の使用意図または現在の使用の正当性を示す証拠を提出することが要求される(香港商標規則7(4))。なお、出願されたすべての商品または役務についてではなく、その一部についてのみしか上記の正当性を示すことができない場合、当該商品または役務に限定しなければ、拒絶理由は解消しない。
5.商標が明らかに記述的であり、誤認を生じるおそれがある場合における指定商品の限定
商品または役務の特徴(例えば、性質、品質または地理的由来)を明らかに記述したり、消費者が誤認を生じたりするおそれの高い商標は、香港商標条例第11条(3)または(4)に基づき拒絶される。
最も一般的な例は、商品または役務について、名声を有する地名、または地理的由来を示すものとして使用されるシンボルを含んだ商標である。このような場合、消費者が誤認を生じるおそれがあるとする拒絶理由を回避するために、指定商品を限定しなければならない。例えば、第33類の「シャンパン(CHAMPAGNE)」という名称を含む商標は、指定商品を「シャンパン」のみに限定しなければならない。
6.登録商標である言葉
指定商品において、登録商標である言葉を使用してはならず、通常の商業用語に置き換えなければならない。例えば、「カラオケ(Karaoke)」は、「カラオケ装置付音声および映像装置(audio and video apparatus with sing along devices)」に、「ウォークマン(Walkman)」は「携帯用オーディオテーププレーヤーおよびレコーダー(handheld audio tape players/recorders)」に、「ジャグジー(Jacuzzi)」は「渦巻き風呂(whirlpool baths)」にそれぞれ置き換えなければならない。その他、登録商標とこれに対する代替用語案のさらなる例については、以下において確認することができる。
(https://www.ipd.gov.hk/filemanager/ipd/common/trade-marks/specifications_e.pdf)
7.小売および卸売サービス
第35類に分類される「小売サービス」は、小売される商品(例:「被服の小売)、または役務の提供方法(例:「グローバルコンピュータネットワークを介して提供される小売サービス」)を述べることにより、適切に定義しなければならない。「卸売サービス」についても同様である。
8.参考情報
香港知的財産庁登録局(商標)では「商標登録ワークマニュアル(TradeMarks Registry Work Manual)」において、商品・役務の分類(Classification)を含む登録実務に関してさらに詳細なガイドラインを示している。
韓国における商標の一出願多区分制度
(1)商標出願は一商標ごとに行わなければならない(一商標一出願)。しかし、出願書に含める商品またはサービス業の区分の数については、制限されない(商標法第38条)。
(2)特許庁に納付する印紙代は、多区分出願の場合でも1区分ごとに計算される(1区分あたり64,000ウォン)。また、指定する商品またはサービス業が20を超過する場合、21個目から超過商品またはサービス業1つあたり2,000ウォンを追加納付しなければならない(特許料等の徴収規則第5条第1項)。20の数え方は一区分ごとに行うので、たとえば、2区分出願で、1区分目が15個の商品、2区分目が10個のサービス業を含んでいる場合、何れの区分も20個以下の商品またはサービス業で構成されているため、超過商品および超過サービス業は存在しないことになる(特許料等の徴収規則第5条第1項第1号)。
(3)区分は商品の区分とサービス業の区分に分けられているが、複数区分の出願である場合、1つの出願書に商品区分とサービス業区分を同時に含めることができる。
(4)指定する商品またはサービス業はハングル表記のみでしなければならない。ただし、指定する商品またはサービス業が理解しにくい場合には、括弧書きで漢字または外国語を併記して表示することができる(商標審査基準第31条)。
(5)出願書に記載した区分が、指定商品または指定サービス業に照らして、ニース国際分類に従っているとはいえず、不適切である場合は、拒絶理由を通知して補正の機会を与える(商標審査基準第2部第4章)。
(6)指定商品または指定サービス業が明確ではない場合にも、拒絶理由を通知して補正の機会を与える。その際には、要旨変更にならない範囲の補正をすれば、認められる。
(7)商品およびサービス業の記載について、韓国は日本に比べて、商品や役務表示について具体的表記を求める傾向があり、日本で認められている商品をそのまま記載すると包括的な記載であるとして拒絶されることもあるので留意が必要である。しかしながら、2007年1月以降、随時、一部商品で包括名称が認められるようになっているので、全ての商品または役務において具体的な記載が必要なわけではない。例えば、2012年1月1日からはデパート業、スーパーマーケット業、コンビニエンスストア業といった総合小売業の記述が認められるようになったため、それ以前のように対象商品を具体的に指定する必要はなくなっている。商品表示や役務表示については、「類似商標・役務審査基準」の商品・役務表示分類名称目録に羅列される例示のように具体的に表示することが求められる。
(8)多区分出願で拒絶理由通知書(韓国語「의견제출통지서(意見提出通知書)」)を受けて意見書を提出した場合、1区分の一部の指定商品または指定サービス業に拒絶理由が存在していれば、多区分出願全体が拒絶査定を受ける。したがって、拒絶理由が解消していないと審査官に判断されるおそれがある場合は、拒絶理由に該当する商品またはサービス業を含む区分について、分割出願を行うことが望ましい。
(9)拒絶理由に該当する区分を分割する場合、分割出願の印紙料として、一増加区分あたり10,000ウォンを納付しなければならない(特許料等の徴収規則第5条第1項第3号)。
【留意事項】
(1)一出願で多区分を指定して拒絶理由通知を受けた場合は、拒絶理由に該当する区分を分割出願手続によって新たな出願に含めるのが望ましい。一つの区分の一部の商品やサービス業に拒絶理由が残れば、出願全体が拒絶になり、拒絶査定不服審判を起こす場合も区分の数に応じて費用を納めなければならないため、無駄な費用がかかることになる。
(2)多区分の商品またはサービス業を指定する場合、使用意思確認制度の適用を受けることもあり得る(使用意思確認制度については、本データベース内コンテンツ「韓国における商標の使用意思確認制度」参照)ので、使用する意思のない商品等を指定することは避けるなど、指定する商品またはサービス業について、よく吟味する必要がある。
中国における小売・卸売役務商標の保護の現状について
記事本文はこちらをご覧ください。
香港における小売役務の保護の現状
記事本文はこちらをご覧ください。
タイにおける小売役務の保護の現状
記事本文はこちらをご覧ください。
マレーシアにおける小売役務の保護の現状
記事本文はこちらをご覧ください。
ロシアにおける小売役務の保護の現状
記事本文はこちらをご覧ください。
インドネシアにおける小売役務の保護の現状
記事本文はこちらをご覧ください。
香港における指定商品もしくは指定役務に関わる留意事項
【詳細】
1. 出願分類
商標出願または商標登録によりカバーされる指定商品または指定役務は、ニース分類としても知られる、ニース協定に基づく商品および役務の国際分類に従い分類される。
香港知的財産局商標登録所は、商品および役務の分類に際して、ニース分類の最新版を使用している。本稿の執筆時点において、2015年1月1日に発効した第10-2015版が使用されている。
ニース分類に記載されていない用語は、その通常および自然の意味に従い認められる(Ofrex [1963] RPC 169-171)。したがって、ニース分類のアルファベット順リストに記載された商品および役務の文言に従う必要はない。商標登録所は、アルファベット順リストに記載されていない商品または役務の分類の判断に際して、ニース分類に定められた注釈(Explanatory Notes)と一般的注釈(General Remarks)に原則として従う。
商標登録所は、以下のような他国の商標庁により提供される商品および役務の分類に関する情報も参照する。
(a)UK Intellectual Property Office(英国知的財産庁) http://oami.europa.eu/ec2/
(b)IP Australia(オーストラリア知財庁) http://xeno.ipaustralia.gov.au/tmgoods.htm
(c)USPTO(米国特許商標庁) http://tess2.uspto.gov/netahtml/tidm.html
出願に際し、一区分(一分類)における商品または役務の数に制限はない。一件の商標出願に含められる区分(分類)の数にも制限はない。ただし、オフィシャルフィーは、当該出願において申請された区分(分類)の数に基づき課される。
2. 「全ての商品」または「全ての役務」に関する出願
特定の区分における「全ての商品」または「全ての役務」と記載された出願、あるいは、記述が曖昧でどのような商品または役務を意図しているかがわからない出願は、商品または役務に関する記述が含まれていないとの理由で出願日が付与されず(香港商標条例第38条(2)(c))、不備通知が発行される(香港商標規則第11条(1)(b))。これに対し、2ヶ月以内に適切な商品または役務記述へ補正することによって当該不備が是正された場合にのみ、出願日が付与される(香港商標条例第39条(2))。
一部の商品または役務について適切に記載されている一方で、「本区分に属するその他すべての商品」や「その他すべての関連する役務」、「関連役務」といった不明確な記述や、意図された商品または役務を判断することができないような曖昧な商品または役務記述を含む出願については出願日が付与されるが、2ヶ月の法定期間内に不適切な用語を削除することが要求される(香港商標規則第7条(2))。
3. 広範な用語および類見出し(クラスヘディング)
商標出願の指定商品における広範な用語の使用に関する制限はないが、広範な用語は明瞭かつ正確でなければならない(香港商標規則第7条(2))。「健康製品」、「顧問サービス」「コンサルタントサービス」、「オンラインサービス」のような用語は、不正確な記述として受理されない。なお、香港知的財産局商標登録所は、ニース分類に記載された類見出しを使用して、商標出願をすることを認めている。
香港における判例法は、香港の現地裁判所の判決とともに、欧州司法裁判所(ECJ)を含む英国における判決を考慮する。「IP Translator」(英国弁理士会 vs 商標登録局(ECJ事件番号第C-307/10号))事件に関するECJの画期的判決に従い、欧州共同体商標意匠庁(OHIM)が、共同体商標出願および登録についての商品および役務リストにおける類見出しの使用に関する長官通達第2/12号を発行したことが注目に値する。(http://oami.europa.eu/tunnel-web/secure/webdav/guest/document_library/contentPdfs/law_and_practice/communications_president/co2-12_en.pdf) この通達は、商標出願または登録における類見出しの使用が、当該区分におけるすべての商品または役務に対する保護を与えるものではないため、出願人は、すべての商品または役務に対する保護を意図する場合は、その登録出願において商品または役務を全て特定しなければならないことを明確にしている。
したがって、出願にかかる指定商品または指定役務の作成に際しては、広範な用語または類見出しによってカバーされる場合であっても、出願人にとって重要な具体的商品または役務を含めることが重要である。なお、商標登録されている商品または役務の中に、使用されていない商品または役務がある場合には、第三者からの商標登録の取消請求により、3年間継続して不使用であることを理由として登録を取り消される可能性がある。(香港商標条例第52条(2)(a)および(6))。
4. 多区分における類見出しまたは広範な商品または役務に関する出願
商標出願に、多区分における類見出しまたは多区分における広範な商品または役務が含まれる場合、香港知的財産局商標登録所は、出願人の事業内容が、そうした全般的な商品または役務を対象としたものとは考えられないとの理由で、拒絶することができる。
このような場合、出願人は、申請された商品または役務に関連した商標の使用意図または現在の使用の正当性を示す証拠を提出することが要求される(香港商標規則第7条(4))。さらに、申請されたすべての商品または役務についてではなく、その一部についてのみしか商標の誠実な使用意図または現在の使用の正当性を示すことができない場合、当該商品または役務に限定しなければ、拒絶理由は解消できない。
5. 商標が明らかに記述的であり、誤認を生じるおそれがある場合における指定商品の限定
商品または役務の特徴(例えば、性質、品質または地理的出所)を明らかに記述し、消費者が誤認を生じるおそれが高い商標は、香港商標条例第11条(4)に基づき拒絶される。
最も一般的な例は、商品または役務について名声を有する地名、または地理的出所を示すものとして使用されるシンボルを含んだ商標である。このような場合、消費者が誤認を生じるおそれがあるとする拒絶理由を回避するために、指定商品を限定しなければならない。例えば、第33類の「シャンパン(CHAMPAGNE)」という名称を含む商標は、指定商品は「シャンパン」のみに限定されなければならない。
6.登録商標である言葉
指定商品において、登録商標である言葉は使用されてはならず、通常の商業用語に置き換えなければならない。例えば、「カラオケ(Karaoke)」は、「カラオケ装置付音声および映像装置(audio and video apparatus with sing along devices)」に、「ウォークマン(Walkman)」は「携帯用オーディオテーププレーヤーおよびレコーダー(handheld audio tape players/recorders)」に、「ジャグジー(Jacuzzi)」は「渦巻き風呂(whirlpool baths)」にそれぞれ置き換えなければならない。その他、登録商標とこれに対する代替用語案のさらなる例については、以下において確認することができる。
(http://www.ipd.gov.hk/eng/intellectual_property/trademarks/specifications_e.pdf for reference.)
7.小売および卸売サービス
第35類に分類される「小売サービス」は、小売される商品(例:「被服の小売)、または役務の提供方法(例:「グローバルコンピュータネットワークを介して提供される小売サービス」)を述べることにより適切に定義されなければならない。「卸売サービス」についても同様である。
商標登録所ワークマニュアルは、商品および役務の分類についての登録所実務に関してさらに有用なガイドラインを定めている。