中国における専利局の審査体制および審査状況
(1)中国専利局の内部機構
専利局は国家知識産権局に直属しているもので、その内部には以下の組織図のように事務室、人事教育部、審査業務管理部、方式審査およびプロセッシング管理部、機械発明審査部、電気発明審査部、通信発明審査部、医薬バイオ発明審査部、化学発明審査部、光電技術発明審査部、材料工程発明審査部、実用新案審査部、意匠審査部、特許文献部、自動化部、党委員会、審査協力北京センター(2001年設立)、審査協力江蘇センター(2011年9月設立)、審査協力広東センター(2011年9月設立)、審査協力河南センター(2012年11月)、審査協力湖北センター(2013年1月設立)、審査協力天津センター(2013年9月設立)、審査協力四川センター(2013年10月設立)、中国特許技術開発公司の24の内部機構が設けられている。
(2)専利(特許、実用新案、意匠)の審査に関わる各内部機構の役割
上記24の内部機構のうち専利出願の審査と直接関係している部門は、審査業務管理部、方式審査およびプロセッシング管理部、機械発明審査部、電気発明審査部、通信発明審査部、医薬バイオ発明審査部、化学発明審査部、光電技術発明審査部、材料工程発明審査部、実用新案審査部、意匠審査部、審査協力北京センター、審査協力江蘇センター、審査協力広東センター、審査協力河南センター、審査協力湖北センター、審査協力天津センター、審査協力四川センターとなっている。これらの内設機構には各々多くの役割があるが、具体的な専利審査手続における主な役割は以下の通りである。
(3)特許出願が専利局に提出された後、専利局の各内部機構間での通常の移転過程
通常、特許出願が専利局に提出されると、まず方式審査およびプロセッシング管理部にて受理され、公開手続のための情報の編集と加工(分類番号の付与、要約の編集等)が行われる。実体審査の条件が充たされると、管理システムにおいては「実体審査待ち」の旨の標識が付与され、各実体審査部門の審査官が管理システムから取り出しうる状態になる。
各審査部門に属する審査官は、担当分野等に応じて、予め割り当てられた管轄分類番号に基づき、管理システムからランダムに案件を取出し、実体審査を行う。実体審査完了後、案件は方式審査およびプロセッシング管理部に戻され、関係通知書(拒絶理由通知書、補正通知書、特許査定通知書または拒絶査定通知書等)が発行されることになる。
(4)専利局本庁にある各発明審査部と各地方に設けられた審査協力センターの役割
専利局本庁にある各発明審査部と各地方に設けられた審査協力センターはいずれも特許出願を審査する役割を担っているが、特許出願は以下の基準で審査部門が決められる。
現在、専利局本庁にある各発明審査部は、主にPCT出願の審査、新人審査官への業務指導、課題研究、およびPCT出願以外の出願の一部について実体審査を担当している。
各地方の審査協力センターは、主に特許出願の実体審査や課題研究を担当し、PCT出願の国際段階の検索と予備審査作業の一部を担当している。また、一部の地方センターは拒絶査定不服審判作業にも関与している。各審査協力センターは、その所有する審査官の所属分野の状況等に応じて担当技術分野に偏りがある。例えば、湖北センターは武漢光谷に設立されており、光通信技術背景の審査官が相対的に多いため、この分野の特許出願の審査は湖北センターの審査官により担当される可能性が高くなる。
(5)専利局における審査の品質評価体制
専利局には、審査の品質評価体制がある。通常、4段階の品質検査が設けられており、1段階目は処(審査部内でさらに技術分野に応じて細分化した単位)内での品質検査、2段階目は審査部レベルの品質検査、3段階目は審査協力センターレベルの品質検査、4段階目は局レベルの品質検査となっている。
処内での検査に関しては、審査官間の相互検査であり、互いに審査の問題を検査および解決することを図る。
審査部レベルの品質検査に関しては、部内に副部長が統括する品質検査グループが設けられており、当該品質検査グループにより所定の抽出率で部内の案件をサンプリングして検査し、問題が発見されると、即時に審査官にフィードバックされる。審査官の担当案件に問題が多く発見されると、部長からの個別相談を受けるのみならず、年間評価にも反映される。
審査協力センターレベルの品質検査は、主に審査部レベルで検査を受けた案件の一部を対象として再検査を実施するものである。この段階の品質検査で発見された問題は、その審査部にフィードバックされ、当該審査部の年間評価に反映される。
局レベルの品質検査は、主に専利局長官への報告用のものであり、各審査協力センターや審査部門、審査官にフィードバックされない。
上記4段階の品質検査のうち、1、2段階は関係オフィスアクションの発行前に実施される検査であるため、事前検査と呼ばれる一方、3、4段階は関係オフィスアクションの発行後に実施される検査であるため、事後検査と言われる。
以上のような体制で特許審査の品質が保証される。
(6)専利局の審査状況
近年、中国専利局は専利の審査周期を短縮するために審査スピードを加速しつつあり、2016年の平均審査周期は、特許は22ヶ月、実用新案と意匠は3ヶ月と言われている。
以下に示すのは、専利局のホームページに公開された図表データの一部を利用した専利局の審査状況である。
図1:中国専利出願件数の遷移(2008~2016年)
図2:中国PCT国際出願受理件数の遷移(2008~2016年)
図3:中国専利登録件数の遷移(2008~2016年)
中国における専利局の審査体制および審査状況
【詳細】
(1)中国専利局の内部機構
専利局は国家知識産権局に直属しているもので、その内部には以下の組織図のように事務室、人事教育部、審査業務管理部、方式審査およびプロセッシング管理部、機械発明審査部、電気発明審査部、通信発明審査部、医薬バイオ発明審査部、化学発明審査部、光電技術発明審査部、材料工程発明審査部、実用新案審査部、意匠審査部、特許文献部、自動化部、党委員会、審査協力北京センター(2001年設立)、審査協力江蘇センター(2011年9月設立)、審査協力広東センター(2011年9月設立)、審査協力河南センター(2012年11月)、審査協力湖北センター(2013年1月設立)、審査協力天津センター(2013年9月設立)、審査協力四川センター(2013年10月設立)の24の内部機構が設けられている。
(2)専利(特許、実用新案、意匠)の審査に関わる各内部機構の役割
上記24の内部機構のうち特許の審査と直接関係している部門は、審査業務管理部、方式審査およびプロセッシング管理部、機械発明審査部、電気発明審査部、通信発明審査部、医薬バイオ発明審査部、化学発明審査部、光電技術発明審査部、材料工程発明審査部、実用新案審査部、意匠審査部、審査協力北京センター、審査協力江蘇センター、審査協力広東センター、審査協力河南センター、審査協力湖北センター、審査協力天津センター、審査協力四川センターとなっている。これらの内設機構には各々多くの役割があるが、具体的な専利審査手続きにおける主な役割は以下の通り。
審査業務管理部 | 特許審査手続きにおける各業務部門間および代理機構との調整、出願書類の移送および管理、関係データの収集、期限の管理、および統計作業等 |
方式審査およびプロセッシング管理部 | 出願関係書類の受理、発明特許の方式審査、特許出願書類の管理、特許証書の発行、特許公報の編集および出版、出願のための庁費用の管理、発明特許と実用新案の分類等 |
機械発明審査部
電気発明審査部 通信発明審査部 医薬バイオ発明審査部 化学発明審査部 光電技術発明審査部 材料工程発明審査部 |
各技術分野に属する発明特許出願の実体審査等 |
実用新案審査部 | 実用新案出願の方式審査、出願書類の管理等 |
意匠審査部 | 意匠出願の分類・審査・登録、登録前後のプロセッシング管理および事務処理、意匠出願および出願書類の管理、意匠に関する庁費用の管理、書誌事項の修正等 |
審査協力北京センター
審査協力江蘇センター 審査協力広東センター 審査協力河南センター 審査協力湖北センター 審査協力天津センター 審査協力四川センター |
特許出願の方式審査・実体審査、PCT出願の国際段階の予備審査等 |
(3)発明特許出願が専利局に提出された後、専利局の各内部機構間での通常の移送方法
通常、発明特許出願が専利局に提出されると、まず方式審査およびプロセッシング管理部にて受理され、公開手続きのための情報の編集と加工(分類番号の付与、要約の編集等)が行われる。実体審査の条件を充たすと、分類番号に応じて管理システムを通じて各実体審査部門へ自動的に分配され、実体審査を待つこととなる。
各審査部門に属する審査官は、担当分野等に応じて、予め割り当てられた管轄分類番号に基づき、管理システムを通じてランダムに審査官に分配された案件を受領し、実体審査を行う。実体審査終了後、案件は方式審査およびプロセッシング管理部に戻され、特許査定または拒絶査定が発行されることになる。
(4)特許局本庁にある各発明審査部と各地方に設けられた審査協力センターの役割
特許局本庁にある各発明審査部と各地方に設けられた審査協力センターはいずれも発明特許出願を審査する役割を担っているが、発明特許出願は以下の基準で審査部門が決められる。
現在、専利局本庁にある各発明審査部は、主にPCT出願の審査、新人審査官への業務指導、課題研究、およびPCT出願以外の出願の一部について実体審査を担当している。
各地方の審査協力センターは、主に特許出願の実体審査や課題研究を担当し、PCT出願の国際段階の検索と予備審査作業の一部を担当している。また、一部の地方センターは拒絶査定不服審判作業にも関与している。各審査協力センターは、その地域の状況等に応じて担当技術分野に偏りがある。例えば、湖北センターは武漢光谷に設立されており、光通信技術関係出願が相対的に多く分配される。
発明特許出願の審査が行われる地域は主にその分類番号に応じてシステムを通じてランダムに分配されるが、利便性も考慮され、例えば、湖北の地方知識産権局で受け取られた出願(出願人の出願手続きの便利のために、各地方知識産権局には新規出願の受取窓口が設けられている)であって、湖北センターの審査能力範囲内の案件であれば、その審査作業は湖北センターに分配される可能性が高くなる。
(5)専利局における審査の品質評価体制
専利局には、審査の品質評価体制がある。通常、4段階の品質検査が設けられており、1段階目は処(審査部内で更に技術分野に応じて細分化した単位)内での相互検査、2段階目は処レベルの品質検査、3段階目は部レベルの品質検査、4段階目は局レベルの品質検査となっている。
処内での相互検査に関しては、ペアとなる審査官間の相互検査であり、互いに審査の問題を検査および解決することを図る。
処レベルの品質検査に関しては、処内に副処長が統括する品質検査グループが設けられており、当該品質検査グループにより所定の抽出率で処内の案件をサンプリングして検査し、問題が発見されると、即時に審査官にフィードバックされる。審査官の担当案件に問題が多く発見されると、処長からの個別相談を受けるのみならず、年間評価にも反映される。
部レベルの品質検査に関しては、それぞれの実体審査部門にも副部長がグループ長を担当し、各処の副処長以上の職員をメンバーとする品質検査グループが設けられている。部門内の案件をサンプリングして品質検査を行い、例えば月一回の頻度で問題をまとめて部内で共有および分析する。この段階の品質検査で発見された問題は、その問題に係る処の年間評価のみならず、関係審査官の年間評価にも反映される。
局レベルの品質検査に関しては、専利局には、審査業務を主管する副局長が責任者となる審査業務管理委員会に属し、ある審査部門の部長または副部長がグループ長を担当し、各部の業務中堅をメンバーとした品質検査グループが設けられている。これらの業務中堅は各業務部門から選出され、品質検査に専従する職員である。品質検査グループは、各審査部門の案件をランダムにサンプリングして検査し、問題が発見されると、グループ意見をその部門にフィードバックし、異議がなければ、決定を下して通報する。
一方、その部門からの異議がありかつ異議の理由が十分である場合(一般的には大きな争議が存在する問題の場合)、審査業務指導委員会へ報告する。審査業務指導委員会は検討を経て、今後の審査作業を指導するよう規範的通告の形で各業務部門に発布する。
以上のような体制で特許審査の品質が保障される。
(6)専利局の審査状況
以下に示すのは、専利局のホームページに公開された図表データの一部を利用した専利局の審査状況である。