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シンガポールにおける商標出願に際しての商品および役務の記述に関する留意事項

【詳細】

 本稿では、シンガポールでの商標出願における商品および役務の指定に関する通達および実務指令において、シンガポール知的財産権庁商標登録局(以下、商標登録局という)により取り上げられた問題の一部に焦点を当てて説明する。なお、関連する通達および実務指令のリストについては、下記の知的財産権庁ウェブサイトで入手可能である:

 シンガポール知的財産権庁ウェブサイト

 

(1)指定商品および役務の記載に関する先例

  商標登録局は現在、シンガポール、英国、オーストラリア、香港、ニュージーランドおよび米国の先例を考慮に入れている。商標出願人は、自己の商品もしくは役務の指定を裏付けるために、これら各国の先例を提出することができる。

  ただし登録官は、下記のいずれかに該当する先例は考慮しない。

 ・明らかに誤った区分で許可されたもの

・商品および役務の国際分類の現行版に照らして、正確ではないもの

・商標登録局の現行実務または該当する外国知的財産官庁の現行実務と矛盾するもの

 

(2)広範または曖昧な指定商品および役務

  商標登録局は、出願人による商品の記載が極めて曖昧である、またはその範囲が極めて広いという理由で、指定商品や役務を拒絶することができる。いくつかの例を以下に示す。

  登録局の2004年11月12日付通達第20/2004号によると、「pouches and the like(パウチなど)」という記載における表現「and the like(など)」は、出願人がパウチ以外に指定する他の商品が明確ではないため、極めて曖昧と見なされる。また、明細の最後に「all included in this class(本区分に含まれる全てのもの)」などの記載を挿入しても、記載が曖昧であるという登録官の指摘に対して拒絶回避とならない(2010年6月25日付通達第3/2010号)。

  「コンピューターサービス」それ自体のような広義の記載は許容されず、下記のように、提供されるサービスの内容を記載する必要がある。

 ・「コンピューターサービス、すなわちコンピューターハードウェアのインストール」(第37類)

・「コンピューターサービス、すなわちインターネット用検索エンジンの提供」(第42類)

・「本質的に他者のためにウェブサイトを運用するコンピューターサービス」(第42類)

 

(3)適切な句読点の使用

  出願人が明細において句読点を使用する際は、下記のガイドラインに留意する必要がある。

 (i)一つの区分内の区切りとして商品および役務を分けるために、セミコロン(;)を使用する

(ii)指定商品または役務が相互に関連する場合に限り、同じ区切りの中で、コンマ(,)を使用する

(iii)コロン(:)の使用を避ける

  例えば、一つの商標がコンピューター、コンピューターソフトウェア、マウスパッド、眼鏡およびスポーツ用ゴーグルに使用される場合、これら全てが第9類に分類されるため、商品リストは「コンピューター,コンピューターソフトウェア,マウスパッド;眼鏡,スポーツ用ゴーグル」と記載しなければならない。上記の例において、関連性のある商品はコンマで分けられ、関連性のない商品はセミコロンで分けられている。

  例えば、一つの商標が医薬製剤、絆創膏、包帯材料および消毒薬に使用される場合、商品リストは「医薬製剤;絆創膏,包帯材料;消毒薬」と記載しなければならない。「絆創膏」と「包帯材料」は傷の手当に用いられるため、これらはセミコロンではなく、コンマで分けることができる。

 

(4)小売サービスおよび流通サービスに係る実務の変更について

  商標登録局は最近、「小売サービス」および同様のサービス(第35類)ならびに「流通サービス」(第35類、第39類および第41類)に関する実務を変更した。許容されるサービスの記載例として、下記が含まれる。

 ○「小売サービス」(第35類)

・小売販売サービス

・小売店サービス

・卸売店サービス

・オンライン小売サービス

・オンライン卸売サービス

・オンライン小売店サービス

・オンライン卸売店サービス

 ○「流通サービス」(第35類、第39類および第41類)

・第35類の「広告資料の配布」

・第35類の「サンプルの配布」

・第39類の「商品の流通(輸送)」

・第39類の「電力の流通」

・第41類の「映画の流通(輸送以外)」

・第41類の「録音物の流通(輸送以外)」

・第35類の「流通サービス、すなわち、小売および卸売サービス」

・第35類の「流通サービス、すなわち、商品のマーケティング」

・第35類の「流通サービス、すなわち、顧客が商品を見て、販売店から購入しやすいように、様々な商品を他者のために一堂に集めるサービス(その輸送を除く)」

シンガポールにおける意匠によるコンピュータ生成画像(CGI)の保護

【詳細】

 近年、コンピュータ生成画像(CGI)をはじめとする電子的デザインは、意匠登録出願における一般的な主題となっているにもかかわらず、シンガポールでは、その登録可能性に関する考え方が長らく曖昧であった。シンガポール意匠法が定める意匠の定義によると、CGIは、登録可能な意匠にはあたらないように見受けられる。また、現在のところ、シンガポールでは、CGIの登録可能性に関する問題を扱った判例はない。

 

 しかし、2014年12月10日、シンガポール知的財産庁(Intellectual Property Office of Singapore :IPOS)は、2014年実務指令第4号(GUIの登録)を発行し、シンガポールにおいてGUIを含むCGIを意匠登録する際に採用すべき実務を定めている。この実務指令により、シンガポールでは現在、意匠法に基づきGUIを含むCGIの意匠登録が可能である。

 

 シンガポール意匠法第2条(1)によると、「意匠」とは「工業上の方法により物品に適用された形状、輪郭、模様または装飾の特徴」をいい、「物品」とは製造品をいい、次を含む。

(a)物品の一部で、別個に製造および販売されるもの、および

(b)組物

 

 この実務指令は、シンガポールにおける意匠出願の主題としてのGUIの登録可能性について、待ち望んでいた明確な説明を提供するものであるが、関連法はまだ改正されていない。

 

 実務指令の重要な点を以下に紹介する。

 

(1)出願人は、GUIが適用される物品を指定しなければならない。

 意匠法第2条(1)に基づく「意匠」の定義を満たすには、GUIが工業上の方法による製造品に適用されなければならない。したがって、出願人は、GUIに関する意匠登録出願に際して、GUIが適用される物品を、例えば「グラフィカルユーザーインターフェースが用いられる電子機器ディスプレイ」のように指定しなければならない。

 

(2)出願人は、当該意匠の一連の静的表示として、動的GUIを出願しなければならない。

 動的あるいは動画GUIは、意匠出願において、各表示がGUIの動作のストップモーションを示す、一連の静的表現として出願されなければならない。出願人は、GUIの要素を明確に説明するため、例えばこれらの要素の相互作用または起動方法など、各表示について説明書を提出しなければならない。

 

(3)GUIに関して認められる図面の数

 GUIに関する各意匠出願は、保護を求める意匠の外観を完全に開示するために、十分な数の異なる図面を含まなければならず、同一のGUIに関する1件の出願において表現物として提出可能な図面は最大40である。

 

 シンガポールでは、意匠出願について実体審査は行われない。方式審査のみ行われ、方式要件が満たされている場合、当該出願は公告および登録の手続へと進む。GUIに関する登録意匠の有効性については、知的財産庁または裁判所における取消手続においてのみ争うことができる。しかし、これまでに知的財産庁または裁判所が、GUI意匠登録の有効性について審理した事例はない。