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台湾における特許の早期権利化の方法

1.発明特許早期審査(AEP)制度
 台湾では、2010年1月1日から「発明特許早期審査の運用方案(AEP)」を正式に施行しているが、2014年1月1日からグリーンエネルギー技術に関する出願についても、早期審査申請事由(事由4)に追加された。その後、2022年1月1日に事由4「グリーンエネルギー技術」が「グリーンテクノロジー関連発明」に修正された。
 AEP制度を利用できる要件として、まず実体審査請求を行い、台湾知的財産局が発行した実体審査段階に入ることを通知する書簡が届いた後に早期審査を申請することができるが、第1回審査意見通知書が発行される前に提出しなければならない。また、早期審査申請事由としては、以下に示す(ⅰ)事由1、(ⅱ)事由2、(ⅲ)事由3、(ⅳ)事由4のいずれかを満たす必要がある。

 早期審査申請事由
(ⅰ)事由1 対応する外国出願が、外国特許庁の実体審査を経て、登録査定されたもの

必要書類 外国特許庁 審査結果までの処理期間
1. 申請書
2. 外国特許庁が登録査定公告したクレーム(中国語訳を含む)、または外国特許庁の登録査定通知(*1)の写しおよび公告が予定されているクレーム(中国語訳を含む)。
3. 外国特許庁の審査過程で出された審査意見通知書およびサーチレポート。中国語、英語以外の場合は、中国語の要点説明書を提出しなければならない。
4. 上記2.のクレームの中国語訳と台湾出願で提出したクレームとの差異の説明。差異のない場合は、上記1.の申請書における「差異なし」の項目に印を付けること。
5. 上記3.で、対応出願が、新規性または進歩性の欠如を指摘され非特許文献が引用された場合は、その写し(特許文献の場合は、提出不要)。
6. 手数料:無料
限定なし 6か月
ただし、実際の審査期間は、出願の属する技術領域により異なる。

*1:米国特許庁の「Notice of Allowance and Fees Due(PTOL-85)」、日本国特許庁の「特許査定」、欧州特許庁の「Decision to Grant a European Patent」等が該当する。

注1. 台湾で優先権を主張している基礎出願で、同一のパテントファミリーに属するものを「対応する外国出願」とすることができる。但し、台湾において優先権を主張していない対応出願を除外するものではなく、出願のクレームに記載されている発明が対応出願の明細書または図面に開示されているかどうかによって判断することを原則とする。

注2. 必要書類1~3は、提出必須。但し、サーチレポートが発行されていない場合は、提出しなくてよい。4~5は該当しない場合は不要。

注3. 出願人が早期審査のために有利と考える場合は、以下を提出することができる。
・ 外国特許庁に提出した答弁書
・ 引用文献により、対応出願が新規性または進歩性の欠如を指摘された場合、出願人は台湾出願が特許性を有する理由を説明することができる。

注4. 台湾出願において、出願人に対してクレームの減縮を要求する審査意見通知が出され、出願人が既に減縮したときは、出願人は、その補正クレームより広い範囲で登録査定された外国出願に基づいて早期審査を申請することはできない。

(ⅱ) 事由2 対応する外国出願が、米国、日本、欧州特許庁の審査意見通知書およびサーチレポートの発給を受けているが、審査結果は出ていないもの

必要書類 外国特許庁 審査結果までの処理期間
1. 申請書
2. 米国、日本、欧州特許庁の審査意見通知書で依拠したクレーム(中国語訳を含む)。
3. 米国、日本、欧州特許庁が発行した審査意見通知書(*2)およびサーチレポート(*3)の写し。英語以外のものは、中国語の要点説明書を提出しなければならない。
4. 上記2.のクレームの中国語訳と台湾出願で提出したクレームとの差異の説明。差異のない場合は上記1.の申請書における「差異なし」の項目に印を付けること。
5. 上記3.の審査意見通知書およびサーチレポートにおいて、引用文献により対応出願が新規性または進歩性欠如を指摘されている場合は、台湾出願が特許性を有する理由を説明しなければならない。
6. 上記5.の引用文献に非特許文献が含まれている場合は、その写し(特許文献の場合は提出不要)。
7. 手数料:無料
米国、日本、欧州特許庁 6か月(クレームに差異がない場合)

9か月(クレームに差異がある場合)

ただし、実際の審査期間は、出願の属する技術領域により異なる。

*2:米国特許庁の「Non-final rejection」、日本国特許庁の「拒絶理由通知書」、欧州特許庁の「Communication pursuant to Article96(2)EPC」または「Intention to Grant」または「Communication about Intention to Grant a European Patent」等が該当する。
*3:米国特許庁、 日本国特許庁または欧州特許庁を指定するPCT出願で国際調査機関(ISA)が作成した国際調査報告(ISR)または欧州特許庁が作成する欧州調査報告(European Search Report)

注1. 必要書類1~3は、提出必須。4~6は、該当しない場合は不要。

注2. 出願人が早期審査のために有利と考える場合は、以下を提出することができる。
・ 外国特許庁に提出した答弁書
・ 第2次またはそれ以降の審査意見等

(ⅲ) 事由3 ビジネスの実施上、必要とするもの

必要書類 審査結果までの処理期間
1. 申請書
2. 申請者のビジネス実施証明書(例:すでに交渉された実施許諾契約、販売カタログ等)
3. 手数料:NT$4,000
6か月
ただし実際の審査期間は、出願の属する技術領域により異なる。


(ⅳ) 事由4 グリーンテクノロジー関連発明に関するもの

必要書類 審査結果までの処理期間
1. 申請書
2. クレーム(特許請求の範囲)に記載された発明が、台湾のグリーンテクノロジー関連カテゴリーに該当することの説明
3. 手数料:NT$4,000
6か月
ただし、実際の審査期間は、出願の属する技術領域により異なる。

注1. グリーンテクノロジー関連発明の範囲は以下を含む。
ⅰ. 省エネルギー技術、新エネルギー技術、新エネルギー自動車等に関する技術分野
ⅱ. 二酸化炭素削減および省資源に関する発明
 具体的には、例えば、以下の技術分野: 1. 太陽エネルギー、2. 風力エネルギー、3. バイオエネルギー、4. 水力発電、5. 地熱エネルギー、6. 海洋エネルギー、7. 水素エネルギーおよび燃料電池、8. 二酸化炭素貯蔵、9. 廃棄物エネルギー、10. LED照明、11. グリーンおよび環境に優しい自動車の技術分野。

2.台日特許審査ハイウェイ(PPH MOTTAINAI)制度
 2012年5月から、台湾と日本との間で特許審査ハイウェイの試行プログラムが実施され、2014年5月1日に3年間の継続および新スキーム(PPH MOTTAINAI)が導入された。また、2017年5月1日より、更に3年間の継続合意がなされた後、2020年5月1日より、台湾と日本との間では「台日特許審査ハイウェイ(PPH MOTTAINAI)」制度が試行プログラムから永続型プログラムへと移行された。
 PPHの場合も、AEPの場合と同様に、まず実体審査請求を行い、台湾知的財産局が発行した実体審査段階に入ることを通知する書簡が届いた後に申請することができる。また、PPH申請は、第1回審査意見通知書が発行される前に提出しなければならない。
 PPH MOTTAINAI制度を利用できる要件として、日本国特許庁(以下、「JPO」という。)が審査を経て日本の優先権基礎出願の少なくとも1項以上の請求項を特許可能と認めれば、出願人はそれに基づき台湾の対応出願について、早期審査を申請できる。但し、JPOの特許査定を取得した出願人が、台湾でPPHを申請する場合、台湾での特許請求範囲は、JPOが特許査定した特許請求範囲と完全に同一、または減縮するよう補正しなければならない。

必要書類
1. 申請書
2. JPO発行の日本優先権基礎出願の各オフィスアクション(以下、「OA」という。)、特許査定された特許請求の範囲およびその翻訳(但し、日本の特許請求の範囲がJPO AIPN (Advanced Industrial Property Network)から取得することができれば、提出不要)
3. 台湾出願と日本の優先権基礎出願との特許請求の範囲の比較表
4. JPOでの審査時に引用された非特許文献
5. 手数料:無料

 2022年の統計によると、発明出願全体の平均特許査定率は77.91%であるが、PPHを利用した件の特許査定率は93.01%に達する。

3.AEP/PPH申請の効果
 2022年、一般の発明特許出願に係る第1回OA発行までの平均日数および審査終結までの平均日数は、それぞれ8.8か月および14.3か月である。
 しかし、AEPまたはPPHを利用した場合の平均日数は、下記の通りに短縮される。

AEP PPH (日本出願人)
事由1 事由2 事由3 事由4
第1回OA発行までの平均期間 48.9日 92.3日 73.5日 57.9日 42.3日
審査終結までの平均期間 155.1日 258.7日 207.9日 219.4日 118.3日

 もし、台湾発明特許出願に対応する日本出願が既に特許査定を取得していた場合、台湾でPPHを申請することが好ましい。一方、対応する日本出願が、OAの発給を受けているが審査結果は出ていないもの、ビジネスの実施上、必要とするもの、あるいはグリーンテクノロジーに関するものであれば、台湾でAEPを申請することができる。

ロシアにおける特許制度のまとめ-手続編

1. 出願に必要な書類

 発明または実用新案に関する出願は、以下を含まなければならない。
・特許付与を求める請求書(願書、弁理士が作成する。)
・クレームされた発明(または実用新案)を実施できるよう十分詳細に開示する明細書
・発明(実用新案)の本質的な特徴を記載し、明細書によって完全に裏付けられた特許請求の範囲
・発明(実用新案)を理解するために必要な図面その他の資料
・要約
(連邦民法第4法典第1375条、第1376条)

 出願は、1つの発明のみ、または単一の一般的な発明概念を形成するために関連付けられた一群の発明についてのみ行うことができる(発明の単一性の要件)。実用新案登録出願は、1つの実用新案(1つの独立請求項)についてのみ行うことができる。
(連邦民法第4法典第1375条、第1376条)

 出願日は、付与を求める請求書、明細書および明細書に図面の記載がある場合は図面を提出した日に成立するものとする。前述の書類が同時に提出されない場合、出願日は、それらの書類のうち最後のものを受領した日に与えられる。
 優先権書類の認証謄本は、優先日から16月以内にロシア特許庁に提出しなければならない。
(連邦民法第4法典第1375条、第1376条、第1382条)

関連記事:
「ロシアにおける優先権主張の手続」(2020.12.24)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/19645/
「ロシアにおける特許・実用新案出願制度の概要」(2019.11.12)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17907/
「日本とロシアにおける特許出願書類・手続の比較」(2019.09.17)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17715/

2. 記載が認められるクレーム形式

2-1. クレームの許容される形式
 以下の請求項が認められる。
・デバイス(装置・製品)のクレーム
・組成物(化合物)のクレーム
・方法(プロセス)クレーム
・プロダクト・バイ・プロセス・クレーム
・用途クレーム

 単一請求項と複数請求項の両方が認められる。請求項は、発明の目的を反映した前文と、発明の特徴を含む本文を含むべきである。本文は、特徴の前提部分と特徴部分から構成されてもよい(義務ではない)。特許請求の範囲は、発明の本質を定義し、明細書によって完全に裏付けられなければならない。発明の単一性の要件を満たせば、複数の独立請求項を記載することができる。

 独立請求項の数に制限はない。1つの独立請求項は、1つの発明のみを特定すべきである。代替的特徴(マーカッシュ形式による発明特定事項の記載)は、独立請求項と従属請求項の両方で使用することができる。1つの独立請求項は、1文であるべきである。プロダクト・バイ・プロセス・クレームが許容される。
 先行する独立請求項を引用する従属請求項が認められる。複数の請求項を引用する請求項は、他の複数の請求項を引用する請求項を引用してはならない(マルチ-マルチクレームは許容されない)。従属請求項は、付加的な特徴および/または詳細化した特徴を含むことができ、詳細化した特徴は、独立請求項の一部の特徴および/または特徴の前提部分の特徴を発展させたものである。従属請求項の数には制限はない。
(2016年5月25日付のロシア連邦経済開発省の命令第316号(以下「命令第316号」という) I.申請書を提出するための一般的な要件、IV.請求項の要件、発明の国家登録と発明特許の付与という公共サービスの提供の枠内での行政手続と行為に関するガイドライン 第5節(発明の単一性))

関連記事:
「ロシアにおけるプロダクト・バイ・プロセスクレーム解釈のプラクティス」(2017.05.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/13689/
「ロシアにおける特許の審査基準・審査マニュアル」(2014.11.20)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/7134/

2-2. 認められないクレーム形式
 複数の請求項を引用する請求項は、他の複数の請求項を引用する請求項を引用してはならない。
(2016年5月25日付のロシア連邦経済開発省の命令第316号 IV.請求項の要件)

関連記事:
「ロシアにおける特許および実用新案登録を受けることができる発明とできない発明」(2020.12.22)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/19643/

3. 出願の言語

 特許出願は、外国語で行うことができる。ロシア語の翻訳文は、出願と一緒に提出することができ、正式なオフィスアクションに対応して後から提出することもできる。
(連邦民法第4法典第1374条、第1384条、命令第316号 II.申請書類の審査(第28条))

関連記事:
「日本とロシアにおける特許出願書類・手続の比較」(2019.09.17)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17715/

4. グレースピリオド

 出願日の6月前までのグレースピリオドが適用される。発明者、出願人、または発明者もしくは出願人から直接もしくは間接に情報を得た者による発明に関する情報の公開は、その情報が公開されてから6月以内に特許庁に発明が出願されれば、その発明の特許性を喪失させない。立証責任は出願人にある。
(連邦民法第4法典1350条第3項)

関連記事:
「ロシアにおける特許新規性喪失の例外」(2017.05.30)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/13706/

5. 審査

5-1. 方式審査
 特許出願は、方式審査の対象となる。方式審査では、以下の要件がチェックされる。
a) 必要な出願書類がすべて提出されており、すべての書類が方式要件を満たしていること。いずれかの要件が満たされていない場合、出願人に通知され、不備を修正するための3月の期間が与えられる(手数料の支払いで、期間延長を請求することができる)。出願人が期限内に不備を修正できない場合、修正または不足する書類を提出できない場合、出願は取下げられたものとみなされる。
b) 手数料が正しく支払われていること。
c) 発明の単一性の要件が満たされていること(発明の内容は確認されず、明らかな矛盾点のみが判断される)。発明の単一性の要件が満たされない場合、出願人は、審査官の要請により3月以内に請求された発明のどれを審査すべきかを示すことができる。この期間内に出願人が審査すべき発明を示さない場合、審査は最初にクレームされた発明に関してのみ行われる。
d) IPC(国際特許分類)が付されている場合、正しく付されていること(付されていない場合は、審査官が付与する)。
(連邦民法第4法典第1384条、命令第316号 II.申請書類の審査(第23条、第31条、第32条)およびIII.規則第3条に基づく請求書の審査(第108条))

関連記事:
「ロシアにおける特許・実用新案出願制度の概要」(2019.11.12)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17907/

5-2. 実体審査
 出願が方式審査に合格すると、出願人は実体審査請求書を提出し、手数料を支払わなければならない。ロシアでは、発明の繰延べ審査制度がある。
 審査請求は、出願人または第三者が行う。審査請求は、出願時または出願日(PCTの場合は国際出願日)から3年以内に行わなければならない。審査請求期間は,2月延長することができる。前記期間内に審査請求が行われなかった場合、出願は放棄される。期間徒過は、期間徒過の日から1年間は回復することができる。
 再審査および異議申立は行われない。しかし、ロシア特許庁によって出願中の発明に関する情報が公表された後、何人もロシア特許庁に対して発明の特許性に関する意見を提供する権利を有し、意見は出願の実体審査において考慮される。ただし、当該意見の提出は、出願の審査における手続上の権利を当該者に与えるものではない。
(連邦民法第4法典第1386条、1389条、命令第316号 I.発明の国家登録に関する法的措置の根拠となる文書の作成および提出(第8条))

関連記事:
「日本とロシアの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較」(2019.08.29)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17659/
「ロシアにおける特許制度」(2017.07.04)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/statistics/13867/

5-3. 早期審査(優先審査)
 特許出願から特許権取得までの期間は、短縮される傾向にあるが、案件によって大きく異なる。平均では、1年またはそれ以下となる場合もある。
 ロシアはPPH(特許審査ハイウェイ)制度に加盟している。ロシア特許庁は、オーストリア、カナダ、中国、デンマーク、ドイツ、エストニア、欧州(EPO)、ハンガリー、イスラエル、チリ、ペルー、ポルトガル、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、アイスランド、日本、韓国、ノルウェイ、ポーランド、フィンランド、スウェーデン、コロンビア、スペイン、トルコ、英国、米国の27か国・地域の特許庁と、PPH協定およびPPH-MOTTAINAI協定を締結している。また、上記27か国・地域から中国を除く26か国・地域の特許庁とPCT-PPH協定を、上記27か国・地域から中国、欧州(EPO)、トルコを除き北欧特許庁およびヴィシェグラード特許機構を加えた26か国・地域の特許庁とGlobal PPH協定を締結している。

注)2022年5月10日、日本国特許庁(JPO)は、ロシア連邦知的財産・特許・商標庁(ROSPATENT) の間の特許審査ハイウェイ(PPH)を一時停止することを決定いたしました。

参考情報:https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/soki/pph/japan_russia_highway.html

関連情報:
「PPHプログラム」(ロシア特許庁の公表、ロシア語)(2021.02.20)
https://rospatent.gov.ru/ru/activities/inter/bicoop/pph/patent-prosecution-highway
「PCT-PPHプログラム」(ロシア特許庁の公表、ロシア語)(2021.02.20)
https://rospatent.gov.ru/ru/activities/inter/bicoop/pph/pct-pph
「PPH-MOTTAINAIプログラム」(ロシア特許庁の公表、ロシア語)(2021.02.20)
https://rospatent.gov.ru/ru/activities/inter/bicoop/pph/pph-mottainai
「グローバルな優先特許手続(Global PPH)」(ロシア特許庁の公表、ロシア語)(2021.02.20)
https://rospatent.gov.ru/ru/activities/inter/bicoop/pph/gpph
「PPHネットワーク」(JPOの公表、日本語)(日付不明)
https://www.jpo.go.jp/toppage/pph-portal-j/network.html
※Global PPH加盟国については次の情報を参照されたい。
「PCT-特許審査ハイウェイプログラム(PCT-PPHおよびグローバルPPH)」(WIPOの公表、英語)(2022.01.26)
https://www.wipo.int/pct/en/filing/pct_pph.html

関連記事:
「ロシアにおける特許権早期取得のテクニック」(2016.06.21)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/11804/
「ロシアにおける特許および実用新案に関する統計」(2018.06.21)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/statistics/15360/

6. 出願から登録までのフローチャート

6-1. 出願から登録までの特許出願のフローチャート

フローチャート

6-2. フローチャートの簡単な説明
 発明に対する特許は、発明毎にされた特許出願の審査の肯定的な結果に基づいて、連邦知的財産庁(ロスパテント、ロシア特許庁、RUPTO)により特許証が発行される。特許出願は、一般に、出願に応じて作成された願書、明細書、図、請求の範囲および要約書を含み、願書はすべてロシア語で、その他の出願書類はロシア語または他言語(ロシア語による翻訳文を添付)で作成されなければならない(連邦民法第4法典第1374条)。
 出願は、ロシア特許庁に直接、郵送またはオンラインで行うことができる。

 発明の出願がロシア特許庁に受理された後、その出願は審査に付される。審査は、方式審査(連邦民法第4法典第1384条)および実体審査(連邦民法第4法典第1386条)から構成される(上記5.を参照)。
 発明の出願は、ロシア特許庁への出願日から18月を経過した後に公開される(連邦民法第4法典1385条)。実用新案出願は公開されず、方式審査を通過後、直ちに実体審査に移行する。
 出願公開後は、誰でも出願書類(審査経過を含む)を閲覧することができ、出願書類の写しを取り寄せることができる。
 特許審査ハイウェイ(PPH)は、ロシアで利用できる効率的な早期審査の機会であり、よく利用されている。PPHは、実体審査前または実体審査請求時に請求することが望ましい。

 最終的な決定に先立ち、通常、1~2回のオフィスアクションまたは通知が行われ、最初のオフィスアクションまたは通知(または、それがない場合は、肯定的な決定自体)は、通常、実体審査の開始から6~7月で行われる。前記早期審査を採用した場合、ロシア特許庁からの最初のコミュニケーションは2~3月で行われる。
 特許付与または拒絶の最終決定(および出願を取下げたとみなす決定)は、出願に関するそれぞれの決定の送付日から7月以内にロシア特許庁に審判請求することにより争うことができる(連邦民法第4法典第1387条第3項)。
 ロシアの法律では、実体審査の請求、オフィスアクションに対する応答の提出、またはロシア特許庁の決定に対する審判の提出のための期間を、期間徒過時から1年以内に再び延長するオプションがある(連邦民法第4法典第1389条第1項、2項)。
(連邦民法第4法典第1374条、第1384条~第1387条、第1389条)

関連記事:
「ロシアにおける特許制度の運用実態」(2015.11.24)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/10074/
「ロシアにおける特許制度」(2017.07.04)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/statistics/13867/

[権利設定前の争いに関する手続]

7. 拒絶査定に対する手続

 審査官の決定に対する不服審判は、決定の日から7月以内にロシア特許庁に提出できる。不服審判は、審判部のメンバーおよびロシア特許庁の対応する審査部の審査官の双方から選ばれた3~5名の審査官/審判官で構成される審判体により審理される。ヒアリングには、出願人および審判請求された決定を出した審査官の双方が参加する。

 審理の結果、以下のような決定がされる。
拒絶査定に対して不服がある場合:

  • 請求を認容し、既存の請求項に対し特許の決定を下す。
  • 請求を不成立とし、ロシア特許庁の決定を維持する。
  • 請求を認容し、補正された請求項に対し特許の決定を下す。

特許査定に対して不服がある場合:

  • 請求を認容し、付与決定を取り消し、出願を追加審査に付す。
  • 請求を不成立とし、ロシア特許庁の決定を維持する。
  • 請求を一部認容し、補正された請求項に対し特許の決定を下す。

取り下げ決定に対して不服がある場合:

  • 請求を認容し、出願を回復させる。
  • 請求を不成立とし、ロシア特許庁の決定を維持する。

 決定は、ヒアリングにおいて審判部によって言い渡され、その後、ロシア特許庁の書面による決定が2月以内に作成されて出願人に送付される。
(連邦民法第4法典第1387条、第1389条)

8. 権利設定前の異議申立

 法律には、特許出願に対する異議申立に関する規定はない。しかし、出願公開後、何人もファイルを閲覧し、出願の特許性に関して意見をロシア特許庁に提出することができる。意見書を提出するための手数料はかからない。これらの意見は、審査官が審査手続において考慮する。意見の提出をした者は、出願を審査する際の手続には参加しない。
(連邦民法第4法典第1386条第5項)

9. 上記7.の判断に対する不服申立

 審決は、3月以内に知的財産権裁判所(IPR裁判所)で争うことができる。その結果、知的財産権裁判所は決定を支持するか、破棄することができる。破棄する場合、知的財産権裁判所は通常、ロシア特許庁に各請求を再度審理するよう命ずる。
(連邦憲法(ロシア連邦の仲裁裁判所について)第43条第4項、ロシア連邦仲裁手続法第198条)
 なお、上記「仲裁裁判所」(арбитражный суд)および上記「ロシア連邦仲裁手続法」(арбитражный процессуальный кодекс российской федерации)は、英語では、それぞれ「Commercial Court」および「Commercial Procedure Code」と表記される。

[権利設定後の争いに関する手続]

10. 権利設定後の異議申立

 ロシアには、付与後の異議申立制度はない。特許付与後、特許を無効とすることができる。

関連記事:
「ロシアにおける特許制度」(2017.07.04)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/statistics/13867/

11. 設定された特許権に対して、権利の無効を申し立てる制度

 連邦民法第4法典第1398条によれば、発明に対する特許は、以下の場合に、その有効期間中いつでも、全部または一部を無効とすることができる。
(a) 特許された主題が特許性の条件を満たさないとき。
(b) 付与された特許請求の範囲が、当初の明細書および特許請求の範囲に出願日時点で存在しなかった特徴を含んでいる場合。
(c) 特許が、同一の優先日を有する同一の発明に対する複数の出願に対して付与された場合。
(d) 発明者または特許権者の表示を誤ったまま特許が付与された場合。

 (a)、(b)、(c)を理由とする無効の提起は、ロシア特許庁に提出する。
 (d)の無効の提起は、知的財産権裁判所に提出する。

 当事者(特許権者、異議申立人)および特許付与決定を行った審査官もヒアリングに参加する。
無効の提起を検討した結果、以下の決定を下すことがでる。

  • 無効の提起を不成立とし、特許を全て有効なまま残す。
  • 無効の提起を認容し、特許を全て無効とする。
  • 無効訴訟を一部認容し、特許を一部無効とする。特許が一部無効となった場合、新たな特許が付与される。  このような無効関連の審理期間の目安は、4~6月である。
     無効に関するロシア特許庁の決定は、知的財産権裁判所に出訴することができる。その結果、知的財産権裁判所は決定を支持するか、破棄することができる。破棄する場合、知的財産権裁判所は通常、ロシア特許庁に各請求を再度審理するよう命ずる。
    (連邦民法第4法典第1398条)

関連記事:
「ロシアにおける権利無効手続の統計データ」(2018.02.15)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/statistics/14554/

12. 権利設定後の権利範囲の修正

 無効の提起の審理中(上記11.参照)、特許権者は、それによって定義された範囲を拡張することなく、請求項を訂正する権利を有する。訂正された請求項が認容されると確認された場合、提起された特許の代わりに、上記請求項を有する新たな特許が付与されたものとする。
(ロシア特許庁による紛争の検討および解決のための規則、パラグラフ40)。

関連記事:
「ロシアにおける特許のクレームの変更」(2014.06.27)
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13. その他の制度

 ロシアで技術的解決策に対して得ることができるもう一つのタイプの法的保護は、実用新案特許(UM)である。このような特許の有効期間は10年であり、延長の可能性はない。実用新案として保護されるのは、デバイス/装置のみである(空間的に分散したシステム(例:構造的に一体でない装置)は、実用新案として保護されるデバイス/装置として識別されてはならないことに留意されたい)。すべての実用新案特許出願のクレームは、1つの実用新案にのみ関係するものでなければならない(すなわち、代替語句のない1つの独立請求項のみが認められる)。一般的に、実用新案特許出願と特許は、基本的には発明に関する要件と同様の要件に従い、その詳細はすでに述べたとおりである。両者の根本的な違いは、実用新案の特許性基準には産業上の利用可能性と新規性だけが含まれることであり、すなわち、進歩性がない実用新案特許もあり得る。

 ロシアの現行法は以下のようなオプションを提供しており、これらは柔軟に利用することができる。

  • 未公開の発明の出願を実用新案出願に変更することができる(例:発明の進歩性に疑問がある場合)。
  • ロシア特許庁が発明に対する特許の無効審判を検討している間、所定の基準を満たせば、その特許を実用新案特許に変更するよう請求することができる。

 ロシアはユーラシア特許条約(EAPC)およびユーラシア特許条約の工業意匠の保護に関する議定書に加盟しており、ユーラシア特許庁(EAPO)が発行するユーラシア発明特許およびユーラシア意匠特許は、国内(RU)の発明特許および意匠特許と同様にロシアで有効である。
(連邦民法第4法典第1351条、第1363条、第1376条、第1379条)

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香港における特許制度のまとめ-手続編

1. 出願に必要な書類

 標準特許(O):特許条例の第37L条および特許規則の第31M~31S条は、標準特許(O)の適用のために提出される文書の要件を提供する。

標準特許(R):標準特許(R)を取得するための再登録システムには、「記録請求」を提出する段階1と「登録および付与請求」を提出する段階2の2つの段階がある。段階1の文書要件は、特許条例の第15~16条および特許規則の第8条に規定されており、段階2の申請に必要な文書は、特許条例の第23および特許規則の第19条に規定されている。

短期特許:短期特許の適用に関する文書要件は、特許条例の第113条および特許規則の第58~64条に記載されている。短期特許の特筆すべき点は、国際調査機関または指定された3つの特許庁のうちの1つが発行した発明に関する調査報告書を提出して、出願をサポートする必要があることである(特許条例第113条)。

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2. 記載が認められるクレーム形式

 特許条例は、特定の許容可能なクレームの形式を指定しておらず、特許可能な発明、特許されない発明を規定している。

(1) 認められる発明
 特許条例の第9A条(1)は、発明が新規であり、進歩性を伴い、産業上の利用可能性がある場合、その発明は特許を受けることができると定めている。

(2) 認められない発明
 特許条例の第9A条(2)~(6)は、以下は発明とみなされないと定めている。
・発見、科学理論または数学的方法
・美的創造
・精神的行為を実行する、ゲームをプレイする、またはビジネスを行うためのスキーム、規則、方法、またはコンピュータ・プログラム
・情報の提示
・人または動物の医学的治療方法および診断的方法
・公序良俗に反する発明
・植物または動物の品種、または植物または動物の生産のための生物学的なプロセス

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3. 出願の言語

 特許条例の第104条では、特許の申請は公用語(中国語または英語)のいずれかで提出する必要があると規定しているが、特許条例には、出願人が指定された特許出願と同じ言語で標準特許(R)出願を提出することを要求する規定はない。

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4. グレースピリオド

 特定の状況下では、発明の開示は不利益とはならない開示として扱われ、考慮されない。特許条例の第11A条、第37B条、および第109条は、それぞれ標準特許(R)、標準特許(O)、および短期特許の不利益とはならない開示の条件を次にように定めている。
・開示は、出願のみなし出願日または出願日の6月前までに行われるものであり、
・開示は、発明の出願人または所有者に関する明らかな悪意によるものであるか、または、
・発明の出願人または所有者が当面の間、所定の展示会または会議(すなわち、香港に適用される、1928年11月22日パリで署名された国際展示会条約の条件に該当する公式または公式に認められた国際展示会)で発明を展示した場合。

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5. 審査

(1) 一般の審査
 3種類の特許出願について、方式審査はいずれの場合でも必須であるが、実体審査の要件は、特許の種類によって異なる。

・標準特許(O)
 方式審査の詳細は、特許条例第37P条に記載されている。標準特許(O)には特許が適用される発明の特許性について実体審査も義務付けられており、登録官は出願が特許条例第37U条に定められた要件に準拠しているか否かを審査する。標準特許(O)の実体審査の詳細は、特許条例第37S条~第37Y条、および特許規則第31ZC条~第31ZP条に記載されている。

・標準特許(R)
 標準特許(R)を取得するための再登録制度は2段階(「記録請求」と「登録および付与請求」)であるため、合計2回の審査があり、「記録請求」は特許条例第18~19条および特許規則第8条に、「登録および付与請求」は特許条例第25~26条および特許規則第19条に記載がある。一方、標準特許(R)は、指定特許庁(中国特許庁、英国特許庁、英国を指定した欧州特許の場合の欧州特許庁)による対応する特許の付与に依存しているため、実体審査は行われない。

・短期特許
 特許条例第115条、第117条および特許規則第68条に短期特許の方式審査の詳細が記載されている。短期特許の付与には実体審査は必要ないが、特許権者または第三者は、付与後に実体審査の実施を要求することができる。特許権者が短期特許に基づき、執行措置を開始する場合、実体審査が前提条件とされる(特許条例第127A条~第127C条、特許規則第81A条~第81O条)。

(2) 早期審査(優先審査)
 早期審査(優先審査)の規定はない。

(3) 出願の維持
 特許条例の第33条に基づき、出願人は、指定特許出願が記録請求の公開から5年後に付与に進んでいない場合、係属中の標準特許出願(R)に対して年間維持費を支払う必要がある。年間維持費の支払い期日は、指定特許出願日と同月日である。
 標準特許(O)および短期特許は、登録前の維持費用は存在しない。

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「香港知的財産局の特許審査体制」(2018.08.09)
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「香港における微生物寄託に係る実務」(2018.04.10)
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6. 出願から登録までのフローチャート

(1) 出願から登録までの特許出願フローチャート
・標準特許(O)

・標準特許(R)

・短期特許

(2) フローチャートに関する簡単な説明
・標準特許(O)
 出願書を提出した後、登録官は出願書を調べて、出願書の記載要件および支払い要件に準拠しているかどうかを確認する。問題がなければ、出願日が与えられる。その後、登録官は、特許条例の第37L条に従って方式要件を検討する。出願が方式要件に準拠していることを確認した場合、出願を公開し、香港知的財産ジャーナルに公告を掲載する。
 出願人は、出願日または優先権主張の最も早い日から3年以内に実体審査を申請する必要があり、実体審査請求がなければ出願は取り下げられたと見なされる。
 登録官は、実体審査請求と所定の手数料を受け取った後、実体審査を実施し、出願が審査要件に準拠していない場合、その見解を出願人に通知し、出願人は、意見書を提出し、補正を要求することができる。登録官は、審査結果に応じて標準特許(O)を付与して公告するか、拒絶する。
 詳細については、特許条例の第37L~37Y条、および特許規則の第31M~31ZP条を参照のこと。

・標準特許(R)
 標準特許(R)を出願するための出願プロセスは、(1)指定された特許出願の記録請求の提出と(2)登録および付与の請求の2つの段階に分けられる。
<段階1(記録請求)>
 出願人は、指定特許庁で指定された特許出願が公開されてから6月以内に記録請求を提出する必要がある。標準特許(O)と同様に、登録官は、出願人によって提出された書類を審査し、出願日を付与し、その後、方式要件について審査する。欠陥がないか、欠陥が修正された場合、記録請求は公開される。
<段階2(登録および付与請求)>
 出願人は、記録請求の公開または指定特許庁による特許の付与後6月以内に、登録および付与請求を提出する必要がある。請求が提出されると、提出日と方式要件の審査が行われる。問題がなければ、登録官は指定された特許を登録し、標準特許(R)として特許を付与し、香港知的財産ジャーナルに公告する。
 詳細については、特許条例第15~27条、および特許規則第8~24条を参照のこと。

・短期特許
 標準特許と同様に、短期特許も出願時に出願日および方式要件の審査が行われる。登録官は、問題がないか、適正に補正された場合、短期特許を付与し、香港知的財産ジャーナルに公告する。
 短期特許は、要求がなければ、実体審査は行われない。
 詳細については、特許条例第112A~118条、および特許規則第58~68条を参照のこと。

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7. 付与前後の特許の有効性に異議を申し立てる手順

 特許条例第49条は、何人も、付与された香港特許の有効性について、本発明の公表または実施が公序良俗または道徳に反することを根拠として、異議を申し立てることができ、登録官は、この特定の理由で、付与された特許を取り消す権限あることを規定している。
 特許条例第91条は、裁判所が、何人かの申請に基づき、付与された特許を取り消すことができる理由を規定している(特許条例第91条(1)(a)~(f)を参照のこと)。

 上記の根拠は、3種類の特許に適用されるが、以下に述べるように、特許の種類ごとに付与の前後に異議を申し立てる方法を規定する条項がある。

・標準特許(O)
 特許条例第37R条は、標準特許(O)出願の公開時に、発明の特許性に異議を申し立てるために第三者の所見を登録官に提出することができると規定している。付与された標準特許(O)を無効にする具体的な理由については、特許条例の第91条を参照していただきたい。

・標準特許(R)
 標準特許(R)に異議を申し立てるための付与前の規定はない。標準特許(R)の付与が指定特許庁の指定特許に基づいていることを考慮し、指定特許庁での所定の異議申立または取消手続の後に指定特許が取り消された場合、標準特許(R)の所有者は取消命令またはその他の所定の文書の検証済みコピーを登録官に提出する義務がある。このような状況では、標準特許(R)は取り消され、効力がなかったものとして扱われる(特許条例第44条)。

・短期特許
 短期特許は、付与されるまで公開されず、付与前に異議を申し立てる条項はない。特許条例第126A条は、短期特許出願が特許付与、公開となった後、特許性に関して第三者は所見を登録官に提出できると規定している。
 さらに、特許権者または合理的な理由または正当な事業利益を有する当事者が、特許の有効性を判断するための付与後の実体審査を申請するための規定がある(特許条例第127A~127C条、および特許規則第81A~81G条まで)。標準特許(O)と同様に、登録官が短期特許とその補正がすべての審査要件に準拠していないと判断した場合、登録官は特許を取り消さなければならない(特許条例第127G条)。登録官は、短期特許を取り消す暫定決定を発行し、暫定取消通知を発行する(特許規則第81H条)。特許権者は、暫定取消通知の日から2月以内に所定の手数料とともに取消に関する仮決定を検討するよう登録官に請求することができる(特許規則第81I条)。登録官が、それでもなお審査要件に準拠していないと判断した場合は、特許所有者に応答を要求する所見を発行する(特許規則第81J~81K条)。
 登録官が必要であると判断した場合(特許規則第81L~81M条)、さらに数回の所見を通知することができる。特許が審査要件を満たせなかったと登録官が判断した場合、短期特許を取り消す最終決定を下し通知する(特許規則第81N条)。
 特許所有者は、短期特許を取り消すという登録官の最終決定に対して第一審裁判所に控訴することができる(特許条例第130条)。

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8. 権利設定後の権利範囲の修正

・標準特許(O)
 権利所有者は、付与後に特許の明細書を修正するように登録官または裁判所に申請することができる(特許条例第46条、および特許規則第38A条)。

・標準特許(R)
 権利所有者は、異議申立または取消手続の後に指定特許庁で対応する指定特許の仕様に対する同じ修正が行われたことに基づいて、特許の修正を裁判所に申請するものとする。(特許条例第43条、46条、および特許規則第35条)。

・短期特許
 権利所有者は、特許の実体審査の請求を提出するとき、実体審査中に庁指令に応答するとき、または実体審査証明書の発行後いつでも、特許の明細書の修正を登録官または裁判所に申請できるものとする(特許条例第46条、第127B条、第127D条、および特許規則第81P条)。

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9. その他の制度

特になし。

シンガポールにおける特許出願制度

シンガポールの特許制度は先願主義を採用している。また他の多くの国と同様、特許出願における優先権主張を認めている。パリ条約締約国または世界貿易機関(WTO)加盟国において先に出願されると、当該出願を後のシンガポール出願において優先権主張することができる。ただし当該シンガポール出願は、先行出願の出願日から12か月以内に出願されなければならない。

1.出願要件

出願に際しては、以下の情報を提出することが必要である。

1-1.特許明細書

・明細書、請求の範囲、要約および図面を含む、特許出願に関する英語で記載された明細

・明細書には、実施例と図面への参照を伴う、請求された発明を実施する少なくとも一つ

の方法が記載されなければならない

・発明の保護範囲を定める請求項は明細書によりサポートされなければならない

・図面は、明細書中または請求項中で言及されなければならない

・要約は、特許出願公開において記載される発明の要約である

出願日を確保するためには、特許出願の時点において請求項を提出することは要求されない。これは、一部の国において利用可能な仮出願の概念と同様のものである。しかしながら、特許出願を完了するためには、下記に示す所定期間内に請求項を提出しなければならず、これを怠ると、出願放棄となる。

(a)優先権主張されていない場合、当該出願の出願日から12か月;または

(b)優先権主張されている場合、以下のいずれか遅い方:

・主張された優先日から12か月

・出願日から2か月

1-2.優先権情報の詳細

優先権主張の基礎となる先行特許出願に関する以下の情報

(a)出願国

(b)出願日

(c)出願番号

1-3.出願人の詳細

(a)個人(自然人)である各出願人については以下の情報

・氏名

・住所

・居住する国

・国籍

(b)企業体(法人)である各出願人については以下の情報

・名称

・登記住所

・設立州(米国企業にのみ適用)

・設立国

1-4.発明者の詳細

各発明者についての以下の情報

・氏名

・住所

・永住権を有する国

・国籍

・発明者が発明の創造時のいずれかの時点でシンガポールに居住していたか否か

1-5.権利の由来

出願人が、各発明者から当該発明に対する権利をどのように得たかについての詳細

・雇用により

・譲渡により

・その他

1-6.その他

ブダペスト条約に基づく生物材料の寄託および国際展示会における先行開示が行われたか否かに関する情報の詳細

特許出願時に支払う超過請求項費用はなく、超過請求項費用は登録費用の支払い時点において25以上の請求項についてのみ納付することとなる。

2.出願日通知書および方式審査報告書の発行

2-1.出願日通知書

シンガポール知的財産局(Intellectual Property Office of Singapore : IPOS)が、下記に挙げる出願日付与に関する要件が満たされたと判断した場合、IPOSは、出願人に対して、出願日通知書を発行する。

(i)特許を求めていることが出願書類で示されていること

(ii)出願書類で特許出願人が特定されていること

(iii)明細書、優先権を主張する場合には優先権情報および優先権証明書が含まれていること

要件が満たされていないとIPOSが判断した場合、不備通知書が発行され、出願人は当該不備を回復するために2か月の期間が与えられ、これを怠ると当該出願は放棄されたものと見なされる。

2-2.方式審査報告書

方式審査において、IPOSは以下を判断する:

(i)優先権主張が、当該シンガポール出願の出願日前12か月以内である、先行する関連出願の出願日を特定しているか否か

(ii)図面または明細書の一部が出願から欠落しているか否か および

(iii)出願がすべての方式要件を満たしているか否か

すべての方式要件を満たしている場合、IPOSは方式審査通過報告書を発行する。

いずれかの方式要件が満たされないと、IPOSは、方式審査不備報告書を発行し、出願人は3か月間の応答期間を有し、これを怠ると当該出願は拒絶される。

3.出願公開

出願日が付与されると、優先権主張日または優先権主張がない場合は当該出願の出願日から18か月後に、特許公報において出願公開される。

4.調査および審査手続き

シンガポールにおいて、特許を取得するには4つの異なるルート(オプション)があり、それぞれ以下の通りである。

・オプション1:調査請求後の実体審査請求

・オプション2:調査および実体審査の同時請求

・オプション3:対応出願*1、対応国際出願または関連国内段階移行出願*2の最終調査

結果に基づく実体審査

・オプション4:対応出願、対応国際出願または関連国内段階移行出願の最終調査およ

び審査結果に基づく補充審査

なお、オプション4の補充審査は、2017年10月30日付けで改正された特許法により、2020年1月1日以降の出願では、利用できなくなる(シンガポール特許法第29条(11A)、およびシンガポール特許規則43(4))。

*1 「対応出願」とは、米国、カナダ(英語での出願)、欧州特許庁(英語での出願)、英国、オーストラリア、ニュージーランド、日本または韓国における所定の特許庁に出願されたものを指す。進歩性について未審査のニュージーランド出願に依拠することは推奨されない。さらにシンガポール出願は当該外国出願と優先権関係を有し、当該外国出願について優先権を主張するか、当該外国出願が当該シンガポール出願について優先権を主張するか、両出願が別の出願について共通の優先権を主張しなければならない。

*2 シンガポール国内段階移行出願に関する「関連国内段階移行出願」とは、所定の特許庁のいずれかにおいて出願された国内段階移行出願を指し、シンガポール国内段階移行出願のPCT出願から派生するものである。

オプション1について、調査請求は、当該出願の優先日または出願日(優先日がない場合)から13か月以内に提出されなければならない。その後、実体審査請求は、同じ優先日または出願日(優先日がない場合)から36か月以内に提出されなければならない。

オプション2について、調査および実体審査請求を、優先日または出願日(優先日がない場合)から36か月以内に同時に提出されなければならない。

オプション3について、対応出願、対応国際出願または関連の国内段階移行出願のいずれかの最終調査結果に基づく実体審査請求は、優先日または出願日(優先日がない場合)から36か月以内に提出されなければならない。本請求に必要な書類には以下が含まれる。

・国際調査報告書(International Search Report:ISR)または所定特許庁の1つに

おいて出願された特許出願に関する最終調査報告書の写しおよび、

その証明付の英語訳(必要な場合)、およびISRまたは最終調査報告書で引用された

先行技術文献それぞれの写し

・これらにおいて引用された非英語文献のそれぞれに対応する特許ファミリーに対する

参照リスト

オプション4について、対応出願、対応国際出願または関連国内段階移行出願のいずれかの最終調査および審査結果に基づく補充審査の請求は、優先日または出願日(優先日がない場合)から54か月以内に提出されなければならない。本請求に必要な書類には以下が含まれる。

(i)対応する外国の特許付与証の謄本または、その結果において登録可能と言及された請求項を含む最終調査および審査結果、ならびにその証明付き英語訳(必要な場合)および

(ii)シンガポール出願の各請求項が、対応出願の登録可能請求項とどのように関連*3しているかを示す表

*3 以下の場合、請求項は、他の請求項に関連するものと見なされる

(i)2つの請求項が同一である または

(ii)後の出願の請求項における各限定が、先の出願における限定と同一である、または表現のみが異なり、内容が同一である

実体審査に際して、新規性、進歩性、産業上の利用可能性、および、または単一性に関して拒絶理由を有する場合、審査官は見解書(Written Opinion)を発行し、出願人に対して5か月の応答期間(延長不可)を与える。見解書に対する応答は、審査官の見解に対する書面応答、明細書の補正またはその両方の形態を取ることができる。

補充審査の場合において、請求項のサポート、追加事項、および、または二重特許等に関する拒絶理由を有する場合、各拒絶理由を詳述する見解書が発行される。見解書に対する応答は、見解書の発行から3か月以内に提出されなければならない。見解書に対する応答は、審査官の見解に対する書面応答、明細書の補正またはその両方の形態を取ることができる。なお補充審査において審査官は、新規性、進歩性および産業上の利用可能性について検討を行わない。

5.審査の終結:特許付与適格または拒絶意思

5-1.特許付与適格通知(Notice of Eligibility to Proceed to Grant)

実体審査また補充審査が完了すると、審査官は、審査報告書または補充審査報告書を、適格通知または拒絶意思通知とともに発行する。

審査報告書が肯定的な結果である場合、IPOSは、特許付与適格通知書を発行する。その後、出願人は、該通知の発行から2か月以内に登録費用を支払うことが要求される。

5-2.拒絶意思通知(Notice of Intention to Refuse)

審査報告書が否定的な結果である場合、IPOSは、当該出願の拒絶意思通知書を発行する。その後出願人は、当該通知の発行日から2か月以内に審査レビューを請求する、もしくは、さらなる措置を講じないことにより出願の拒絶を受け入れるオプションを有する。

6.審査レビュー(再審査)

出願人は、拒絶意思通知の日から2か月以内に審査レビューを請求することができる。出願人はこの請求を行う際に、意見書と(必要に応じて)補正書を提出しなければならない。

上記と同様に、審査レビュー報告書が肯定的な結果である場合、IPOSは、特許付与適格通知書を発行し、出願人は、当該通知の発行から2か月以内に登録費用を支払うことが要求される。

拒絶意思通知において提起された拒絶事項が解消されないため、審査レビュー報告書が否定的な結果である場合、IPOSは拒絶通知を発行し、これは通知の日から2か月後に効力を生じる。この2か月間、当該出願は依然として係属中であり、出願人は分割出願を行う機会を有する。拒絶通知の発行は、当該シンガポール出願の審査手続きの終了を意味する。

7.付与証明書

特許が付与されると、特許の権利期間は年金費用の納付を条件として、出願日から20年間である。

特許を維持するためには、出願日から4年度目の終了から始まり特許が失効するまでの間、出願人は毎年維持年金を納付する必要がある。維持年金は、出願日相当日の前3か月以内に納付することができる。

出願日から45か月以降に特許が付与された場合、すべての年金は、特許付与の日から3か月以内に支払うことができる。

以下のフローチャートに、シンガポールの特許審査手続きの概要を示す。

01SG02_1

特許審査手続きフローチャート

シンガポールに国内移行した国際出願

国際出願におけるシンガポール国内段階への移行期限は、最先の優先権主張日から30か月、または優先権主張されていない場合は国際出願日から30か月である。

国際出願が英語以外の言語で出願・公開された場合、当該国際出願の英語訳を優先日から30か月以内に提出しなければならない。また、優先日から32か月までに翻訳文の確認証明書を提出する必要がある。

シンガポール国内段階に移行した国際出願に関する調査および審査手続は、優先権を主張したパリルートでの出願および優先権を主張しない出願と同一である。

シンガポールにおける特許出願制度

【詳細】

シンガポールの特許制度は先願主義を採用している。また他の多くの国と同様、特許出願における優先権主張を認めている。パリ条約締約国または世界貿易機関(WTO)加盟国において先に出願されると、当該出願を後のシンガポール出願において優先権主張することができる。ただし当該シンガポール出願は、先行出願の出願日から12ヶ月以内に出願されなければならない。

 

1.出願要件

出願に際しては、以下の情報を提出することが必要である。

 1-1.特許明細書

・明細書、請求の範囲、要約および図面を含む、特許出願に関する英語で記載された明細書

・明細書には、実施例と図面への参照を伴う、請求された発明を実施する少なくとも一つの方法が記載されなければならない

・発明の保護範囲を定める請求項は明細書によりサポートされなければならない

・図面は、明細書中または請求項中で言及されなければならない

・要約は、特許出願公開において記載される発明の要約である

出願日を確保するためには、特許出願の時点において請求項を提出することは要求されない。これは、一部の国において利用可能な仮出願の概念と同様のものである。しかしながら、特許出願を完了するためには、下記に示す所定期間内に請求項を提出しなければならず、これを怠ると、出願放棄となる。

(a)優先権主張されていない場合、当該出願の出願日から12ヶ月;または

(b)優先権主張されている場合、以下のいずれか遅い方:

・主張された優先日から12ヶ月

・出願日から2ヶ月

 1-2.優先権情報の詳細

優先権主張の基礎となる先行特許出願に関する以下の情報

(a)出願国

(b)出願日

(c)出願番号

 1-3.出願人の詳細

(a)個人(自然人)である各出願人については以下の情報

・氏名

・住所

・居住する国

・国籍

(b)企業体(法人)である各出願人については以下の情報

・名称

・登記住所

・設立州(米国企業にのみ適用)

・設立国

 1-4.発明者の詳細

各発明者についての以下の情報

・氏名

・住所

・永住権を有する国

・国籍

・発明者が発明の創造時のいずれかの時点でシンガポールに居住していたか否か

 1-5.権利の由来

出願人が、各発明者から当該発明に対する権利をどのように得たかについての詳細

・雇用により

・譲渡により

・その他

 1-6.その他

ブダペスト条約に基づく生物材料の寄託および国際展示会における先行開示が行われたか否かに関する情報の詳細

  特許出願時に支払う超過請求項費用はなく、超過請求項費用は登録費用の支払い時点において25以上の請求項についてのみ納付することとなる。

 

2.出願日通知書および方式審査報告書の発行

2-1.出願日通知書

シンガポール知的財産局(Intellectual Property Office of Singapore : IPOS)が、下記に挙げる出願日付与に関する要件が満たされたと判断した場合、IPOSは、出願人に対して、出願日通知書を発行する。

  (i)特許を求めていることが出願書類で示されていること

(ii)出願書類で特許出願人が特定されていること

(iii)明細書、優先権を主張する場合には優先権情報および優先権証明書がふくまれていること

  要件が満たされていないとIPOSが判断した場合、不備通知書が発行され、出願人は当該不備を回復するために2ヶ月の期間が与えられ、これを怠ると当該出願は放棄されたものと見なされる。

 2-2.方式審査報告書

方式審査において、IPOSは以下を判断する:

  (i)優先権主張が、当該シンガポール出願の出願日前12ヶ月以内である、先行する関連出願の出願日を特定しているか否か

(ii)図面または明細書の一部が出願から欠落しているか否か および

(iii)出願がすべての方式要件を満たしているか否か

  すべての方式要件を満たしている場合、IPOSは方式審査通過報告書を発行する。

いずれかの方式要件が満たされないと、IPOSは、方式審査不備報告書を発行し、出願人は3ヶ月間の応答期間を有し、これを怠ると当該出願は拒絶される。

 

3.出願公開

出願日が付与されると、優先権主張日または優先権主張がない場合は当該出願の出願日から18ヵ月後に、特許公報において出願公開される。

 

4.調査および審査手続き

シンガポールにおいて、特許を取得するには4つの異なるルート(オプション)があり、それぞれ以下の通りである。

・オプション1:調査請求後の実体審査請求

・オプション2:調査および実体審査の同時請求

・オプション3:対応出願*1、対応国際出願または関連国内段階移行出願*2の最終調査結果に基づく実体審査

・オプション4:対応出願、対応国際出願または関連国内段階移行出願の最終調査および審査結果に基づく補充審査

 *1 「対応出願」とは、米国、カナダ(英語での出願)、欧州特許庁(英語での出願)、英国、オーストラリア、ニュージーランド、日本または韓国における所定の特許庁に出願されたものを指す。進歩性について未審査のニュージーランド出願に依拠することは推奨されない。さらにシンガポール出願は当該外国出願と優先権関係を有し、当該外国出願について優先権を主張するか、当該外国出願が当該シンガポール出願について優先権を主張するか、両出願が別の出願について共通の優先権を主張しなければならない。

 *2 シンガポール国内段階移行出願に関する「関連国内段階移行出願」とは、所定の特許庁のいずれかにおいて出願された国内段階移行出願を指し、シンガポール国内段階移行出願のPCT出願から派生するものである。

  オプション1について、調査請求は、当該出願の優先日または出願日(優先日がない場合)から13ヶ月以内に提出されなければならない。その後、実体審査請求は、同じ優先日または出願日(優先日がない場合)から36ヶ月以内に提出されなければならない。

  オプション2について、調査および実体審査請求を、優先日または出願日(優先日がない場合)から36ヶ月以内に同時に提出されなければならない。

  オプション3について、対応出願、対応国際出願または関連の国内段階移行出願のいずれかの最終調査結果に基づく実体審査請求は、優先日または出願日(優先日がない場合)から36ヶ月以内に提出されなければならない。本請求に必要な書類には以下が含まれる。

 ・国際調査報告書(International Search Report :ISR)または所定特許庁の1つにおいて出願された特許出願に関する最終調査報告書の写しおよび、その証明付の英語訳(必要な場合)、およびISRまたは最終調査報告書で引用された先行技術文献それぞれの写し

・これらにおいて引用された非英語文献のそれぞれに対応する特許ファミリーに対する参照リスト

 

オプション4について、対応出願、対応国際出願または関連国内段階移行出願のいずれかの最終調査および審査結果に基づく補充審査の請求は、優先日または出願日(優先日がない場合)から54ヶ月以内に提出されなければならない。本請求に必要な書類には以下が含まれる。

  (i)対応する外国の特許付与証の謄本または、その結果において登録可能と言及された請求項を含む最終調査および審査結果、ならびにその証明付き英語訳(必要な場合) および

(ii)シンガポール出願の各請求項が、対応出願の登録可能請求項とどのように関連*3しているかを示す表

 *3 以下の場合、請求項は、他の請求項に関連するものと見なされる

(i)2つの請求項が同一である または

(ii)後の出願の請求項における各限定が、先の出願における限定と同一である、または表現のみが異なり、内容が同一である

  実体審査に際して、新規性、進歩性、産業上の利用可能性、および、または単一性に関して拒絶理由を有する場合、審査官は見解書を発行し、出願人に対して5ヶ月の応答期間(延長不可)を与える。見解書に対する応答は、審査官の見解に対する書面応答、明細書の補正またはその両方の形態を取ることができる。

 補充審査の場合において、請求項のサポート、追加事項、および、または二重特許等に関する拒絶理由を有する場合、各拒絶理由を詳述する見解書が発行される。見解書に対する応答は、見解書の発行から3ヶ月以内に提出されなければならない。見解書に対する応答は、審査官の見解に対する書面応答、明細書の補正またはその両方の形態を取ることができる。なお補充審査において審査官は、新規性、進歩性および産業上の利用可能性について検討を行わない。

 

5.審査の終結:特許付与適格または拒絶意思

5-1.特許付与適格通知

実体審査また補充審査が完了すると、審査官は、審査報告書または補充審査報告書を、適格通知または拒絶意思通知とともに発行する。

  審査報告書が肯定的な結果である場合、IPOSは、特許付与適格通知書を発行する。その後、出願人は、該通知の発行から2ヶ月以内に登録費用を支払うことが要求される。

 5-2.拒絶意思通知

審査報告書が否定的な結果である場合、IPOSは、当該出願の拒絶意思通知書を発行する。その後出願人は、当該通知の発行日から2ヶ月以内に審査レビューを請求する、もしくは、さらなる措置を講じないことにより出願の拒絶を受け入れるオプションを有する。

 

6.審査レビュー(再審査)

出願人は、拒絶意思通知の日から2ヶ月以内に審査レビューを請求することができる。出願人はこの請求を行う際に、意見書と(必要に応じて)補正書を提出しなければならない。

  上記と同様に、審査レビュー報告書が肯定的な結果である場合、IPOSは、特許付与適格通知書を発行し、出願人は、当該通知の発行から2ヶ月以内に登録費用を支払うことが要求される。

  拒絶意思通知において提起された拒絶事項が解消されないため、審査レビュー報告書が否定的な結果である場合、IPOSは拒絶通知を発行し、これは通知の日から2ヶ月後に効力を生じる。この2ヶ月間、当該出願は依然として係属中であり、出願人は分割出願を行う機会を有する。拒絶通知の発行は、当該シンガポール出願の審査手続きの終了を意味する。

 

7.付与証明書

特許が付与されると、特許の権利期間は年金費用の納付を条件として、出願日から20年間である。

  特許を維持するためには、出願日から4年度目の終了から始まり特許が失効するまでの間、出願人は毎年維持年金を納付する必要がある。維持年金は、出願日相当日の前3ヶ月以内に納付することができる。

  出願日から45ヶ月以降に特許が付与された場合、すべての年金は、特許付与の日から3ヶ月以内に支払うことができる。

  以下のフローチャートに、シンガポールの特許審査手続きの概要を示す。

特許審査手続きフローチャート

特許審査手続きフローチャート

 

シンガポールに国内移行した国際出願

国際出願におけるシンガポール国内段階への移行期限は、最先の優先権主張日から30ヶ月、または優先権主張されていない場合は国際出願日から30ヶ月である。

国際出願が英語以外の言語で出願・公開された場合、当該国際出願の英語訳を優先日から30ヶ月以内に提出しなければならない。また、優先日から32ヶ月までに翻訳文の確認証明書を提出する必要がある。

  シンガポール国内段階に移行した国際出願に関する調査および審査手続きは、優先権を主張したパリルートでの出願および優先権を主張しない出願と同一である。