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シンガポールにおける特許、意匠年金制度の概要

1.特許権
 シンガポールにおける特許権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際出願日)から20年である。年金は出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際出願日)を起算日として5年次に発生するが、出願が特許査定を受けた場合のみ納付が求められる。したがって、出願から4年以上経過した案件であっても、審査中には年金は発生しない。出願から特許査定まで4年以上を要した場合は、特許登録手続の際に5年次から査定を受けた年までの年金を納付する必要がある。これを累積年金(*)という。その後の年金納付期限日は、出願応当日である。
 特許権の存続期間の延長制度として、特許が認可になるまでにシンガポール知的財産庁(IPOS)側に不合理な遅延があった場合、特許権者の申請により存続期間の延長を認める制度がある。
 また、特許出願に係る発明が市場売買にあたって承認を要する医薬品であり、当該承認を得るまでに不合理な遅延があった場合には、権利期間の延長申請を行うことが可能である。
(特許法第36条、第36A条、第85条、特許規則51、51A)

 シンガポール特許法第29条(1)(d)に規定される他国特許庁の出願の審査結果に基づくシンガポール特許出願(補充審査、外国ルート)の審査手続オプションについても存続期間の延長を認める制度があるが、本オプションによる出願は2020年1月1日以降の出願には適用されない。
(特許法第29条、特許規則43)

 納付期限日までに年金が納付されなかった場合、年金納付期限日から6か月以内であれば年金の追納が可能である。その場合、所定の年金金額に加えて追徴金を同時に納付しなければならない。追納期間を超えて年金納付がされなかった場合、権利は失効するが、納付期限日から18か月以内であれば回復の申請を行うことができる。回復の申請の際には、年金の未納付が特許権者の意図しないものであることを示す必要がある。
(特許法第36条、第39条、特許規則51、53)

 また、追納期間経過までに年金を納めない場合、特許権は失効するが、権利を放棄したい旨を記した書面をシンガポール知的財産庁に提出することにより、積極的に放棄を行うことも可能である。
(特許法第40条、特許規則54)

(*) 累積年金とは、年金納付義務が特許査定前から存在し、かつ特許査定が下されてから納付が開始される場合において、登録の手続の際に納付すべき年金のことを指す。指定された年次から査定された年次までをカバーする年金をまとめて納付し、それ以降は年払いに移行する。なお、査定された時期と年金納付日の関係によっては、指定された年次から査定された年次の次の年次の分までを納付することになる場合もある。

2.意匠権
 意匠権の権利期間は出願日から15年である。シンガポールの意匠は出願日が登録日とみなされるため、登録日も出願日と同日として取り扱われる。まず、意匠が登録になると出願日(登録日)を起算日として5年の権利期間が与えられる、その後、6年次と11年次に年金の納付を行うことで、計15年の権利期間を得ることができる。年金納付期限日は出願応当日(登録応答日)である。
(意匠法第21条、意匠規則35)

 追納制度は特許と同様である。追納期間を超えて年金納付がされなかった場合、権利は失効するが、納付期限日から12か月以内であれば回復の申請を行うことができる。
(意匠法第21条、意匠規則35C)

 また、追納期間経過までに年金を納めない場合、意匠権は失効するが、権利を放棄したい旨を記した書面をシンガポール知的財産庁に提出することにより、積極的に放棄を行うことも可能である。
(意匠法第26条、意匠規則39)

3.年金の納付者
 年金の納付は、国籍は居住地によらず、だれでも可能であるが、シンガポール居住者ではない場合、シンガポール知的財産庁からの通信を受け取れるシンガポール国内の住所の提供が必要である。また、支払いにはシンガポール知的財産庁に登録されたアカウントが必要である。
 年金を誤納付した場合、返金の申請を行うことができる。

マダガスカルにおける知的財産保護の現状

【詳細】

 マダガスカルにおける知的財産権の取扱いについては、主に以下の法律に規定されている。

(1)産業財産保護に関する1989年7月31日付の法律第89-019号 (Ordinance No.89-019 Establishing Arrangements for the Protection of Industrial Property in Madagascar、以下、「産業財産権法」という)。この法律は、特許、商標、意匠、商号の保護、および不正競争について規定するものである。

(2)文学的および芸術的財産権に関する1995年9月18日付の法律第94-036号(Law No. 94-036 on Literary and Artistic Property、以下、「著作権法」という)。この法律は著作権を規定するものである。

 

 また、マダガスカルは、以下に挙げる知的財産権に関する国際条約に加盟している。

 (a)特許協力条約(1978年1月24日)

 (b)工業所有権の保護に関するパリ条約(1963年12月21日)

 (c)世界知的所有権機関(WIPO)(1989年12月22日)

 (d)標章の国際登録に関するマドリッド協定議定書(2008年4月28日)

 (e)世界貿易機関(WTO)-知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)(1995年1月1日)

 

1.特許

 マダガスカルへの外国からの出願についてはパリルートおよびPCTルートによるマダガスカルへの国内移行が可能である。過去に出願された特許出願(原出願)に係る改良発明の特許出願を認める追加特許制度を備えている。また、発明者証に関する規定も設けられている。

 産業財産権法には、特許を受けることができない発明が規定されている。公序良俗に反する発明の他、ソフトウェア、医薬品、動物、化粧品、食品の発明は特許を受けることができない。

 さらに、出願時の絶対的新規性(出願日以前に国内外で公衆の知るところとなった技術に該当しないことを新規性の要件とし、国内および外国で公知、公用となった場合に新規性がないとすること)が求められる。ただし、出願日または優先権主張日の6ヶ月前以内に、国際博覧会等への展示を通じて発明が公表された場合に、新規性喪失の例外適用を受けることができる旨の規定も設けられている。

 マダガスカルでは、特許の存続期間は出願日から15年間である。この期間は、特許権者が申請することにより、さらに5年間延長することができる。追加特許は、原出願の登録特許(原特許)とともに失効する。特許年金については、出願日から2年目以降毎年支払うものとされている。

 マダガスカルにおける2014年の特許出願件数は24件であり、そのうち4件がマダガスカル人(内国人)による出願、20件が外国人による出願である。

 

2.意匠

マダガスカルでは、線もしくは色彩からなる構成、または線もしくは色彩との組み合わせの有無に関わらず、立体的意匠の外観形状も、意匠登録の対象になり得る。構成または形状は、工業製品または手工芸品に特別の外観を与えるものでなければならない。

 新規性については、明確かつ認識可能な形状であって、または独自な視覚的効果をもたらす、1つまたはそれ以上の装飾的特徴により、他の類似する意匠とは異なる意匠にのみ、意匠保護が与えられる。意匠は、先行意匠と比較して実質的に重要ではない特徴だけが相違しているという理由だけでは新規性要件は満たされない、または出願意匠とは異なる物品に適用されるというだけでも新規性要件は満たされない。意匠の新規な要素が、機能的・技術的効果を生み出すために必須な形状である場合、当該意匠は意匠保護を受けることができない。

 出願日の6ヶ月前以内にマダガスカルにおいて販売または他の方法によって意匠を公開した場合、新規性は喪失されないものとする。また、意匠出願日または意匠の優先権主張日の6ヶ月前以内にマダガスカルまたはパリ条約同盟国における公認の博覧会で意匠を開示した場合も、創作者等がかかる博覧会に参加したことを証明する公認証明書の作成を条件として、新規性は喪失されない。

 一意匠一出願が原則であり、意匠出願に対する実体審査が行われる。意匠登録は、出願日から5年間有効であり、所定の手数料を支払うことによりさらに2回にわたって5年間の更新が可能である(最長15年)。

 マダガスカルにおける2014年の意匠出願件数は207件である。

 

3.商標

 商標にはラベル、色彩、デザイン、図、スローガンが含まれると産業財産権法に規定されている。商標が登録されるためには、他社の商品またはサービスと識別されなければならず、使用により獲得される識別力も考慮される。

サービスマークおよび連合商標の登録に関する規定はあるが、防護標章および連続(シリーズ)商標に関する規定はない。国際商標登録もマダガスカルを指定することが出来る。存続期間は出願から10年間で、不使用取消の除斥期間は登録から3年である。

 商標出願は、登録可能性と先願の両面から審査される。先願については、登録局は同一または類似一の先願商標がある場合にのみ拒絶する。出願が先願商標権を理由に拒絶された場合、その拒絶判断が最終判断であり、登録局に対して不服を申立てることができない。登録局の拒絶理由が不当と考えられる場合、商標出願人は、控訴裁判所に決定の不服について訴訟を提起することができる。

 第三者が同一または類似の商標を既に登録している場合、商標登録を取り消すためには、取消訴訟を提起することができる。

 なお、マダガスカルの商標制度において、商標出願に対する異議申立の規定がない。

 

 商標権者が侵害訴訟を提起する権利は、登録が認められた商品またはサービスだけに留まらず、商標の希釈化に対しても認められる。産業財産権法は、許諾を受けていない商標の使用が「正当な事由を欠き」、「商標権者の利益を害するおそれがある」状況について定めている。

また、商号および不正競争についても規定しており、「工業、商業、手工芸、農業に関して誠実な慣行に反する如何なる行為」も違法と定めている。

 2014年の国内商標出願は約1,100件であり、そのうち約800件はマダガスカル人、300件は外国人によるものであった。また、同年の国際商標登録の出願においてマダガスカルが指定された件数は約900件である。

 

4.著作権

 著作権法により保護される著作権は文学的および芸術的作品だけに留まらず、たとえば音楽作品、映画フィルム、三次元創作物、ソフトウェア、データベース、フォークロア(伝統的文化表現)にも適用される。

 著作件法は、著作権を譲渡した著作者に対しても著作人格権を与え、彼らが著作者の表示を求めること、そしてその作品の同一性を侵害された場合に異議を唱えることを認めている。

 マダガスカルにおける著作権の存続期間は、通常、創作者の死亡日から起算して70年間である。