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台湾における特許の早期権利化の方法

1.発明特許早期審査(AEP)制度
 台湾では、2010年1月1日から「発明特許早期審査の運用方案(AEP)」を正式に施行しているが、2014年1月1日からグリーンエネルギー技術に関する出願についても、早期審査申請事由(事由4)に追加された。その後、2022年1月1日に事由4「グリーンエネルギー技術」が「グリーンテクノロジー関連発明」に修正された。
 AEP制度を利用できる要件として、まず実体審査請求を行い、台湾知的財産局が発行した実体審査段階に入ることを通知する書簡が届いた後に早期審査を申請することができるが、第1回審査意見通知書が発行される前に提出しなければならない。また、早期審査申請事由としては、以下に示す(ⅰ)事由1、(ⅱ)事由2、(ⅲ)事由3、(ⅳ)事由4のいずれかを満たす必要がある。

 早期審査申請事由
(ⅰ)事由1 対応する外国出願が、外国特許庁の実体審査を経て、登録査定されたもの

必要書類 外国特許庁 審査結果までの処理期間
1. 申請書
2. 外国特許庁が登録査定公告したクレーム(中国語訳を含む)、または外国特許庁の登録査定通知(*1)の写しおよび公告が予定されているクレーム(中国語訳を含む)。
3. 外国特許庁の審査過程で出された審査意見通知書およびサーチレポート。中国語、英語以外の場合は、中国語の要点説明書を提出しなければならない。
4. 上記2.のクレームの中国語訳と台湾出願で提出したクレームとの差異の説明。差異のない場合は、上記1.の申請書における「差異なし」の項目に印を付けること。
5. 上記3.で、対応出願が、新規性または進歩性の欠如を指摘され非特許文献が引用された場合は、その写し(特許文献の場合は、提出不要)。
6. 手数料:無料
限定なし 6か月
ただし、実際の審査期間は、出願の属する技術領域により異なる。

*1:米国特許庁の「Notice of Allowance and Fees Due(PTOL-85)」、日本国特許庁の「特許査定」、欧州特許庁の「Decision to Grant a European Patent」等が該当する。

注1. 台湾で優先権を主張している基礎出願で、同一のパテントファミリーに属するものを「対応する外国出願」とすることができる。但し、台湾において優先権を主張していない対応出願を除外するものではなく、出願のクレームに記載されている発明が対応出願の明細書または図面に開示されているかどうかによって判断することを原則とする。

注2. 必要書類1~3は、提出必須。但し、サーチレポートが発行されていない場合は、提出しなくてよい。4~5は該当しない場合は不要。

注3. 出願人が早期審査のために有利と考える場合は、以下を提出することができる。
・ 外国特許庁に提出した答弁書
・ 引用文献により、対応出願が新規性または進歩性の欠如を指摘された場合、出願人は台湾出願が特許性を有する理由を説明することができる。

注4. 台湾出願において、出願人に対してクレームの減縮を要求する審査意見通知が出され、出願人が既に減縮したときは、出願人は、その補正クレームより広い範囲で登録査定された外国出願に基づいて早期審査を申請することはできない。

(ⅱ) 事由2 対応する外国出願が、米国、日本、欧州特許庁の審査意見通知書およびサーチレポートの発給を受けているが、審査結果は出ていないもの

必要書類 外国特許庁 審査結果までの処理期間
1. 申請書
2. 米国、日本、欧州特許庁の審査意見通知書で依拠したクレーム(中国語訳を含む)。
3. 米国、日本、欧州特許庁が発行した審査意見通知書(*2)およびサーチレポート(*3)の写し。英語以外のものは、中国語の要点説明書を提出しなければならない。
4. 上記2.のクレームの中国語訳と台湾出願で提出したクレームとの差異の説明。差異のない場合は上記1.の申請書における「差異なし」の項目に印を付けること。
5. 上記3.の審査意見通知書およびサーチレポートにおいて、引用文献により対応出願が新規性または進歩性欠如を指摘されている場合は、台湾出願が特許性を有する理由を説明しなければならない。
6. 上記5.の引用文献に非特許文献が含まれている場合は、その写し(特許文献の場合は提出不要)。
7. 手数料:無料
米国、日本、欧州特許庁 6か月(クレームに差異がない場合)

9か月(クレームに差異がある場合)

ただし、実際の審査期間は、出願の属する技術領域により異なる。

*2:米国特許庁の「Non-final rejection」、日本国特許庁の「拒絶理由通知書」、欧州特許庁の「Communication pursuant to Article96(2)EPC」または「Intention to Grant」または「Communication about Intention to Grant a European Patent」等が該当する。
*3:米国特許庁、 日本国特許庁または欧州特許庁を指定するPCT出願で国際調査機関(ISA)が作成した国際調査報告(ISR)または欧州特許庁が作成する欧州調査報告(European Search Report)

注1. 必要書類1~3は、提出必須。4~6は、該当しない場合は不要。

注2. 出願人が早期審査のために有利と考える場合は、以下を提出することができる。
・ 外国特許庁に提出した答弁書
・ 第2次またはそれ以降の審査意見等

(ⅲ) 事由3 ビジネスの実施上、必要とするもの

必要書類 審査結果までの処理期間
1. 申請書
2. 申請者のビジネス実施証明書(例:すでに交渉された実施許諾契約、販売カタログ等)
3. 手数料:NT$4,000
6か月
ただし実際の審査期間は、出願の属する技術領域により異なる。


(ⅳ) 事由4 グリーンテクノロジー関連発明に関するもの

必要書類 審査結果までの処理期間
1. 申請書
2. クレーム(特許請求の範囲)に記載された発明が、台湾のグリーンテクノロジー関連カテゴリーに該当することの説明
3. 手数料:NT$4,000
6か月
ただし、実際の審査期間は、出願の属する技術領域により異なる。

注1. グリーンテクノロジー関連発明の範囲は以下を含む。
ⅰ. 省エネルギー技術、新エネルギー技術、新エネルギー自動車等に関する技術分野
ⅱ. 二酸化炭素削減および省資源に関する発明
 具体的には、例えば、以下の技術分野: 1. 太陽エネルギー、2. 風力エネルギー、3. バイオエネルギー、4. 水力発電、5. 地熱エネルギー、6. 海洋エネルギー、7. 水素エネルギーおよび燃料電池、8. 二酸化炭素貯蔵、9. 廃棄物エネルギー、10. LED照明、11. グリーンおよび環境に優しい自動車の技術分野。

2.台日特許審査ハイウェイ(PPH MOTTAINAI)制度
 2012年5月から、台湾と日本との間で特許審査ハイウェイの試行プログラムが実施され、2014年5月1日に3年間の継続および新スキーム(PPH MOTTAINAI)が導入された。また、2017年5月1日より、更に3年間の継続合意がなされた後、2020年5月1日より、台湾と日本との間では「台日特許審査ハイウェイ(PPH MOTTAINAI)」制度が試行プログラムから永続型プログラムへと移行された。
 PPHの場合も、AEPの場合と同様に、まず実体審査請求を行い、台湾知的財産局が発行した実体審査段階に入ることを通知する書簡が届いた後に申請することができる。また、PPH申請は、第1回審査意見通知書が発行される前に提出しなければならない。
 PPH MOTTAINAI制度を利用できる要件として、日本国特許庁(以下、「JPO」という。)が審査を経て日本の優先権基礎出願の少なくとも1項以上の請求項を特許可能と認めれば、出願人はそれに基づき台湾の対応出願について、早期審査を申請できる。但し、JPOの特許査定を取得した出願人が、台湾でPPHを申請する場合、台湾での特許請求範囲は、JPOが特許査定した特許請求範囲と完全に同一、または減縮するよう補正しなければならない。

必要書類
1. 申請書
2. JPO発行の日本優先権基礎出願の各オフィスアクション(以下、「OA」という。)、特許査定された特許請求の範囲およびその翻訳(但し、日本の特許請求の範囲がJPO AIPN (Advanced Industrial Property Network)から取得することができれば、提出不要)
3. 台湾出願と日本の優先権基礎出願との特許請求の範囲の比較表
4. JPOでの審査時に引用された非特許文献
5. 手数料:無料

 2022年の統計によると、発明出願全体の平均特許査定率は77.91%であるが、PPHを利用した件の特許査定率は93.01%に達する。

3.AEP/PPH申請の効果
 2022年、一般の発明特許出願に係る第1回OA発行までの平均日数および審査終結までの平均日数は、それぞれ8.8か月および14.3か月である。
 しかし、AEPまたはPPHを利用した場合の平均日数は、下記の通りに短縮される。

AEP PPH (日本出願人)
事由1 事由2 事由3 事由4
第1回OA発行までの平均期間 48.9日 92.3日 73.5日 57.9日 42.3日
審査終結までの平均期間 155.1日 258.7日 207.9日 219.4日 118.3日

 もし、台湾発明特許出願に対応する日本出願が既に特許査定を取得していた場合、台湾でPPHを申請することが好ましい。一方、対応する日本出願が、OAの発給を受けているが審査結果は出ていないもの、ビジネスの実施上、必要とするもの、あるいはグリーンテクノロジーに関するものであれば、台湾でAEPを申請することができる。

インドにおける特許早期権利化(早期審査請求)

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インド特許庁の特許審査体制

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韓国特許庁の審査体制

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トルコにおける四法の審査運用の実態および審査基準・審査マニュアル

 「中東諸国における特許・実用新案・意匠・商標の審査運用の実態および審査基準・審査マニュアルに関する調査研究 報告書」(平成29年3月、日本国際知的財産保護協会)第2部B

 

(目次)

第2部 調査研究結果

 B トルコ P.33

  1 概要及び基礎情報 P.33

  2 特許 P.43

  3 実用新案 P.60

  4 意匠 P.68

  5 商標 P.77

 

 N 総括表 P.509

エジプトにおける知的財産権関連制度の運用実態

【詳細】

 アフリカ諸国における知的財産権制度運用実態及び域外主要国による知財活動に関する調査研究報告書(平成26年2月、日本国際知的財産保護協会)4-(2)

 

(目次)

4 各調査対象国の知的財産権関連制度の運用実態

 (2) エジプト P.116

 

(添付資料5) エジプト特許庁の審査基準の概要

ブラジルにおける知的財産庁(INPI)の審査処理状況