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トルコにおける商標異議申立制度

1. 異議申立に至るまでの国内商標手続
 トルコにおいて、商標制度は、2020年7月28日に改正された知的財産法(法律第6769号、以下「法」という。)および2017年4月24日に施行された法の適用に関する規則(以下「規則」という。)に規定されている。

 トルコ特許庁(以下「庁」という。)に出願された商標は、形式的審査の後に絶対的拒絶理由の観点から審査され、絶対的拒絶理由の審査を通過した商標は、商標公報で公告される(法第5条、第16条)。
 なお、トルコにおける国内商標出願手続の詳細については、関連記事「トルコ商標制度概要」を参照されたい。

2. 国内出願の異議申立手続について
 公告された出願に対し、利害関係人は、公告された日から2か月以内に異議を申し立てることができ(法第18条(1))、その期間の延長は認められない。

 異議申立書は、異議申立の理由として、絶対的拒絶理由または相対的拒絶理由を挙げて、庁に提出することができる(法第18条(1))。

 法第5条に記載されている絶対的拒絶理由としては、商標とすることができない標識(法第4条に規定あり)、識別性を欠く標識、性質や品質あるいは原産地について公衆をあざむく標識、公序良俗に反する標識などが挙げられる。

 法第6条に記載されている相対的拒絶理由としては、出願商標が、先の商標と同一または類似し、かつ、対象商品・役務が同一または類似する場合、先の商標と同一または類似し対象商品・役務の類否にかかわらず先の商標の評判を不当に利用または害する場合、対象商品・役務と同一または類似しかつパリ条約第6条(2)に該当する周知商標と同一または類似する場合、他人の人名や商号あるいは著作物などの他の知的所有権から構成される商標である場合、先行出願の不更新に伴う存続期間満了日から2年以内に出願されている場合、悪意でなされた商標である場合などが挙げられる。

 異議申立が上記期間内に提出されない場合、異議申立はなかったものとみなされる。また、異議申立の審査のためには、異議申立期間内に異議申立手数料を納付し、その納付に関する情報を庁に提出する必要がある(法第18条(2))。

 庁は、被異議申立人(出願人)に、異議申立に関する意見を提出するための期間として、1か月の期間を与える。出願人は、相対的拒絶理由の対象である登録商標が出願日(優先日)から少なくとも5年間、登録されている場合、当該登録商標を真正に使用していること、または不使用に正当な理由があることを証明する証拠の提出を異議申立人(利害関係人)に求めることができる。
庁は、必要に応じて、追加の情報、書類および理由に関する説明を提出させるために、当事者にさらに1か月の期間を与えることができる。
この期間内に要求された追加の情報、書類、説明および見解が提出されない場合、異議申立は、存在する情報および書類により審査される(法第19条(1)、規則第28条(4))。

 庁から不利な決定を受けた当事者は、決定が通知されてから2か月以内に、書面で理由を付して、審判請求することができる。審判請求を審理する再審査評価委員会(以下「委員会」という。)が、庁の最終決定機関となる(法第20条、第21条)。委員会から不利な決定を受けた当事者は、決定の通知日から2か月以内に、アンカラの民事知的財産裁判所に訴訟を起こすことができる(法律第5000号 第15/c条)。

3. 国際登録出願に係わる異議申立について
 トルコを指定国として選択した国際登録出願は、トルコに直接行われた国内出願と同一の効果を有するものとされ、同じ異議申立理由が適用される(法第14条(2))。国際登録出願に異議申立がなされた場合、従前は異議申立の結果のみが通知されていたが、マドリッド議定書に基づく規則第18規則の2の改正により、2022年3月から、庁はWIPO国際事務局に対し、異議申立に対する意見を提出する機会とその期限を通知することとなった。当該期限は、WIPOが庁の通知を代理人または商標出願人に転送した日の翌日から1か月以内である(規則第28条(4))。異議申立に対する意見は、出願人が委任状を与えたトルコの有資格者によって庁に提出されなければならない(法第160条(3))。

【留意事項】
 異議申立人は利害関係人に限られるが、法第17条(1)では、第三者による意見書の提出も規定されている。商標出願の公告後、何人も、商標出願が、同一または類似の商品もしくは役務に関して登録されていること、またはその他所定の理由で登録できないことを理由とともに記載した書面を、商標が登録されるまでの間、庁に提出することができる。ただし、利害関係のない第三者は当事者になれず、庁の登録決定に異論がある場合でも不服を申し立てることはできない。

ベトナムにおける商標の指定商品・役務の審査に関する制度・運用調査

 「ベトナムにおける商標の指定商品・役務の審査に関する制度・運用調査」(2020年9月、日本貿易振興機構(JETRO)バンコク事務所知的財産部)

(目次)
第1章 はじめに p.1

第2章 ベトナムにおける商標の指定商品・役務の審査 p.3
パート1.指定商品・役務の明確性に関する審査 p.3
(ベトナムでは、商標登録のための商品・役務の区分に関する特別なガイドラインはないが、指定商品・役務について知的財産法(第105条(3))や通知(01/2007/TT-BKHCN, point 37.4.e amended and supplemented by Point 7.1 of Circular 18/2011/TT-BKHCN)にニース協定に基づく分類に従うと規定されている。しかし、ベトナムの審査官の間ではニース協定の原則の適用に不一致が存在している。実例を挙げて、商品・役務表示の審査の実態を紹介している。また、補正の時期、方法、料金などについても説明している。)

パート2.相対的拒絶理由に係る指定商品・役務の類否の審査について p.24
(ベトナムでは、商品・役務の類似に関連する相対的拒絶理由については知的財産法に規定がある。しかしながら、商品等の類否の審査または評価を明確に定めた法令等での規定等は存在しておらず、Circular No.01/2007/TT-BKHCNの規定のみが商品等の類否審査のガイドである。詳細なガイドラインがないことにより、同じ状況で審査官により判断が異なっている実態を、実例を挙げて紹介している。)

パート3.マドリッドプロトコルを通じた出願について p.44
(マドリッドプロトコルによるベトナムを指定国とする国際登録出願の手続(出願から登録まで)概要を紹介している。また、マドリッドプロトコルによる出願と国内出願に係る商品・役務の審査の審査傾向の実態を紹介している。)

パート4.その他 p.53
(部分拒絶の対応、使用証明書提出有無、不使用取消審判の対応、出願、登録、更新の料金、更新時の指定商品・役務の減縮可否、登録証に記載される情報について紹介している。)

トルコにおける商標異議申立制度

【詳細】

 産業財産法第5条で商標登録の絶対的拒絶理由が、同第6条で商標登録の相対的拒絶理由が規定されている。

 

 商標登録の絶対的拒絶理由は下記のとおりである。

(1)産業財産法第4条により商標とならない標章

(2)識別性がない標章

(3)種類、特徴、品質、意図された目的、価値若しくは産地を示すために、または商品もしくは役務の生産時期その他の特徴を示すために取引で使用される要素または特徴のみにより、または専らかかる要素もしくは特徴により構成される商標

(4)同一または類似の商品および役務に関して、先に登録された商標または先に出願された商標と同一のまたは区別できない程度に類似する商標

(5)取引実務において全ての当事者が広く使用している表記もしくは名称のみにより、または専らかかる表記もしくは名称により構成されている商標、または、特定のグループの職人、商人または専門家を識別するために使用されている商標

(6)商品の形状、商品の性質に由来する実質的な価値をその商品に与える形状、または技術的結果を得るために必要な形状からなる標識

(7)商品および役務の質や産地について公衆を欺く可能性のある商標

(8)パリ条約第6条の3により拒絶される標章

(9)パリ条約第6条の3には該当しない場合でも、歴史的および文化的価値に基づいて一般に知られたバッジ、エンブレムまたは盾および標識が組み込まれた商標

(10)宗教的シンボルを含む標章

(11)公の秩序または道徳に反する標章

(12)登録された地理的表示から成り立つまたは登録された地理的表示を含む標章

 

 また、商標登録の相対的拒絶理由は下記のとおりである。

(1)同一または類似の商品または役務に関する同一または類似の先行商標が存在するために、先行商標と関連することを含め公衆に混同を生じさせる可能性が存在する場合

(2)商標所有者の代理人が、所有者の同意または正当な理由なく、自己の名義で登録出願をした場合

(3)未登録の商標その他の商標に関する権利が、出願日または優先日の前に取得されている場合

(4)商標が、同一または類似の商品および役務に関して、パリ条約の第6条(2)に該当する周知の商標と同一または類似である場合

(5)商品および役務が同一または類似していない場合でも、登録商標または先に出願された商標が公衆からの評判を有していて、かかる評判のため、出願された商標が、正当な理由なしに不当な利益を得るか、先行商標の評判を毀損しまたはその特徴を害する場合

(6)商標に名称、会社名、写真、著作物その他の知的財産が含まれている場合

(7)出願商標が、同一または類似の商品および役務につき登録された団体商標または保証商標であり、出願商標が、団体または保証商標の不更新に伴う存続期間満了から3年以内に出願された場合

(8)出願された商標が、同一または類似の商品および役務に関して、先行商標と同一または類似しており、出願された商標が、先行商標の不更新に伴う存続期間満了から2年以内に出願されている場合

(9)出願された商標が不正の目的で出願された場合

 

 異議申立期間は、商標出願の公告から2月の間である。

 

 異議申立は、書面で理由を記載し、TÜRKPATENTに提出する必要がある。異議申立が規定されている期間内に提出されない場合、異議申立はなかったものとみなされる。また、異議申立の審査のためには、異議申立期間内に料金が支払われ、その支払いに関する情報をTÜRKPATENTに提出する必要がある。

 

 TÜRKPATENTは、被異議申立人に、異議申立に関する意見を提出するための期間として1月期間を与える。TÜRKPATENTは必要に応じて、追加の情報、書類および理由に関する説明を行うために、当事者にさらに1月の期間を与えることもできる。この期間内に要求された追加の情報、書類、説明および見解を提出しない場合、異議申立は存在する情報および書類により審査される。

 

 TÜRKPATENTから不利な決定を受けた当事者は、決定が通知されてから2月以内に、書面で理由を付して、再審査部に不服申立てをすることができる。この再審査部がTÜRKPATENTの最終決定機関となる。再審査部から不利な決定を受けた当事者は、決定の通知日から2月以内に管轄裁判所に訴訟を起こすことができる。

 

 トルコを対象国として選択してなされた国際登録出願に基づく出願も、トルコに直接行われた国内出願と同じ異議申立理由が適用される。国際登録出願に異議申立がされた場合、その異議申立についての結果のみがWIPO国際事務局へ通知される。トルコの国内出願と大きく異なる点は、国際登録出願人に対して、異議申立の審査中に、異議申立がなされた場合の通知が行われず、異議申立が認められたか否かが通知されるにとどまることである。このため、異議申立に対して意見を提出する機会を失わないために、出願人が出願状況を追跡することが重要である。異議申立に対する意見を提出しない場合、決定に対する不服申立手続が使用できるのみとなる。

 

【留意事項】

 産業財産法では、第三者による意見提出も規定されている。商標出願の公告後、何人も、商標出願が同一、または類似の商品もしくは役務に関して登録されていること、またはその他所定の理由で登録できないことを理由とともに記載した書面を、商標が登録されるまでの間、TÜRKPATENTに提出することができる。

トルコにおける商標異議申立制度

【詳細】

商標法第35条により、異議申立書は商標登録の絶対的拒絶理由、相対的拒絶理由または悪意を根拠として提出することができる。絶対的拒絶理由とは、商標が記述的であること、顕著性を欠くこと、公的な標章に抵触すること等である。最も重要かつ通常の異議申立の根拠は、下記のような相対的拒絶理由である。

 

(1)同一性(同一商標かつ同一指定商品または役務である場合。)

(2)出所混同のおそれ(同一商標かつ類似指定商品または役務であること、もしくは類似商標かつ同一または類似指定商品または役務である場合。)

(3)代理人等の不当出願(商標権者の代理人または代表者の名義で、当該商標権者の同意なく出願されている場合。)

(4)未登録商標または取引上使用されている標識の先使用(未登録商標が、被異議申立商標出願の出願日前に使用されている場合。)

(5)知名度を有する商標(指定商品または役務が非類似であっても、登録商標またはより早い出願日を有する商標が知名度を有する場合であって、被異議申立出願の同一または類似の商標が、登録商標もしくはより早い出願日を有する商標を不当に利用し、害することになる場合。)

(6)他の知的財産権(被異議申立出願の商標が、第三者の人名、写真、著作権、その他の知的財産権を侵害する場合。)

(7)団体標章または証明標章(団体標章または証明標章と同一または類似の商標で、当該団体標章または証明標章の権利期間満了後3年以内の場合。)

(8)未更新の登録商標(未更新の登録商標と同一または類似の商標で、かつ同一または類似の指定商品または役務であり、当該未更新の登録商標の権利期間満了後2年以内の場合。)

 

異議申立は、書面で提出しなければならず、全ての異議理由の陳述が含まれていなければならない。特許庁は、施行規則に定められた期間内に、追加の事実、証拠および書類の提出を要求することができる。要求された追加の事実、証拠および書類が、施行規則に定められた期間内に提出されなかった場合、異議申立はなされなかったものとみなされる。

 

特許庁より被異議申立人に対して異議通知が送達され、被異議申立人は、当該異議通知から1ヵ月以内に答弁書を提出することができる。

 

異議決定は、特許庁内部の業務量に拠るが、通常4ヵ月から8ヵ月で送達されている。異議決定により、異議申立が全部または一部成立し、被異議申立出願が全部または一部拒絶された場合、被異議申立人は、異議決定より2ヵ月以内に再審査評価委員会に不服申立書を提出することができる。同様に、異議申立が全部または一部拒絶された場合、異議申立人は、異議決定より2ヵ月以内に再審査評価委員会に不服申立書を提出することができる。不服申立に対しては、他の当事者は答弁書を提出することができる。

 

不服申立に関する再審査評価委員会の決定に対しては、当該決定より2ヵ月以内に管轄裁判所に対して提訴することができる。

 

トルコを指定国とする国際登録出願についても、上記の直接出願と同様の理由により異議申立を提起することが可能である。国際登録出願の拒絶理由が異議申立である場合は、当該拒絶がWIPO国際事務局へ通知される。直接出願と大きく異なる点は、国際登録出願人に対して、異議申立の審査中に公的な異議通知が送達されないことである。

 

2013年5月24日より、オンラインによる異議申立が可能となっている。ただし、トルコ語が唯一認められている使用言語であり、直接外国からのオンラインファイリングは認められていない。

 

2015年1月より、オンラインによる異議申立とペーパーによる異議申立の公費に差額が設けられている。オンラインによる異議申立の公費が低く設定されているため、最近ではオンラインによる異議申立の割合が増加傾向にある。

 

【留意事項】

商標法は、異議申立制度とは別に、「第三者による所見」制度を規定している。「第三者による所見」制度に基づき、第三者は誰でも、商標登録の絶対的拒絶理由により登録要件を満たしていない旨の所見を特許庁に提出することができる。この所見は、公費の支払いが不要となっており、商標出願の公告後登録までの間ならばいつでも提出可能である。ただし、この制度は、商標登録の相対的拒絶理由には適用されない。