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韓国におけるパリ条約ルートおよびPCTルートの特許出願の相違点

1.パリ条約ルートによる特許出願
 パリ条約ルートによる特許出願とは、パリ条約の同盟国の国民または韓国の国民がパリ条約の同盟国に特許出願をした後、同一の発明をパリ条約による優先権を主張して韓国に出願した特許出願のことをいう(特許法第54条第1項)。

2.PCTルートによる特許出願
 PCTルートによる特許出願とは、特許協力条約によって国際出願日が認められた国際出願として特許を受けるために大韓民国を指定国に指定した国際出願(その国際出願日に出願された特許出願とみなされる国際特許出願)のことをいう(特許法第199条)。

3.両特許出願ルートの相違点
(1) 優先権主張について
 パリ条約ルートによる特許出願は、その定義上、基礎出願の優先権主張を伴う(特許法第54条)。これに対して、PCTルートによる特許出願は、パリ条約に基づく優先権主張も可能であるが、1つの出願願書を特許協力条約に従って提出することにより、条約加盟国であるすべての国に同時に出願したことと同じ効果を得ることを目的としたものであるから、優先権主張を伴わない場合がある。

(2) 韓国特許出願における期限の違い
 パリ条約ルートによる特許出願の場合、優先権主張の基礎となる出願の最初の出願日から1年以内に特許出願をしなければ、優先権を主張することができない(特許法第54条第2項)。なお、韓国語ではない言語で特許出願した場合は、優先権主張の基礎となる出願の最初の出願日から1年2か月以内に韓国語翻訳文を提出しなければならない(特許法第42条の3第2項、第64条)。

 PCTルートによる特許出願の場合、国内段階への移行手続を優先日(優先日は特許協力条約第2条(xi)に規定されており、国際出願が優先権主張を伴う場合には同優先権の基礎となる出願の日、国際出願が2以上の優先権主張を伴う場合にはそれらの優先権の主張の基礎となる出願のうち最先のものの日、国際出願が優先権主張を伴わない場合には国際出願日である)から2年7か月以内に行わなければならない。ここで、国内段階に移行する際の韓国語翻訳文は優先日から2年7か月(韓国内書面提出期間)以内に提出しなければならなかったが、2015年1月1日以降は、国内書面提出期間満了日前1か月からその満了日までに韓国語翻訳文の提出期間の延長を申請することにより、国内書面提出期間の満了日から1か月となる日まで韓国語翻訳文の提出期限を延ばすことが可能となった。したがって、翻訳文の補完期限は最大32か月となる(特許法第201条第1項)。

 以上のとおり、PCTルートによる特許出願の場合、出願人としては、パリ条約ルートによる特許出願よりも長い韓国語翻訳文の提出期限の利益を享有することができる。例えば、韓国での事業メリットや経営状況、韓国の経済状況、韓国での登録可能性等を十分考慮した上で韓国語翻訳文の提出(国内段階への移行)の要否を決定することができる。

(3) 出願日について
 パリ条約ルートによる特許出願の場合、優先権主張を伴う出願の出願日は基礎出願の出願日に遡及しない。したがって、審査請求期限や特許権の存続期間等は、現実の出願日から起算される。ただし、特許法第29条(新規性、進歩性、拡大先願)および特許法第36条(先願)の判断時点は、基礎出願の出願日に遡及(*)する(特許法第54条第1項、特許・実用新案審査基準 第5部第1章8(3)、特許・実用新案審査基準 第6部第3章7.4(2))。
(*) 韓国の特許・実用新案審査基準では、「遡及」という用語が用いられている。

 PCTルートによる特許出願の場合、出願は、国際出願の出願日(国際出願日)に出願されたものとみなされる。したがって、審査請求期限や特許権の存続期間等は国際出願日から起算される。なお、優先権主張を伴う出願の場合の特許法第29条(新規性、進歩性、拡大先願)および特許法第36条(先願)の判断時点は、基礎出願の出願日に遡及する(特許法第199条、特許・実用新案審査基準 第5部第1章8(2))。

(4) 国際調査報告および国際予備審査報告を受けた補正について
 PCTルートの場合、出願人は国際出願について、国際調査報告を受け取った後に特許協力条約第19条に基づいて請求の範囲を補正したり、または国際予備審査報告が作成される前に特許協力条約第34条に基づいて明細書、請求の範囲および図面について補正したりすることができる。ここで、出願人は国内段階に移行した後、基準日(基準日は国内書面提出期間の満了日と同一であるが、その期間内に出願人が審査の請求をしたときにはそのときをいう)までに特許協力条約第19条および第34条に基づく補正書の翻訳文(外国語で出願した場合)または補正書の写し(韓国語で出願した場合)を、韓国特許庁に提出しなければならない(特許法第204条第1項、第205条第1項)。また、補正書の翻訳文または写しが提出された場合は、請求の範囲、明細書または図面が補正されたものとみなされる(特許法第204条第2項、第205条第2項)。なお、補正書の翻訳文または写しを提出しなかった場合は、原則として補正されたものとみなされない(特許法第204条第4項、第205条第3項)。
 したがって、出願人は国際調査報告および国際予備審査報告の特許性についての見解を受けて、登録可能性を高めるために補正書の翻訳文または写しを韓国での審査前にあらかじめ提出することができる。

 これに対して、パリ条約ルートによる特許出願の場合、出願人は国際調査報告や国際予備審査報告を受けることができない。出願人は、基礎出願の審査結果または韓国での審査結果に基づいて対応するしかない。パリ条約ルートによる特許出願は、PCTルートによる特許出願に比べて非効率的な面がある。

(5) 自発補正期間の違い
 パリ条約ルートによる特許出願の場合、出願から特許決定の謄本を送達する前までは、拒絶理由通知を受けた場合を除き、いつでも自発的に明細書(**)または図面を補正することができる(特許法第47条第1項)。
(**) 明細書には、発明の詳細な説明および特許請求の範囲が含まれる。

 これに対して、PCTルートによる特許出願の場合、基準日(***)が経過するまでは、特許協力条約第19条および第34条に基づく補正書の提出のみが可能であり、この意味において自発補正が可能な期間が限られている(特許法第208条)。
(***)基準日:(基準日は国内書面提出期間の満了日と同一であるが、その期間内に出願人が審査の請求をしたときにはそのときをいう)(特許法第201条第5項)