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ベトナムにおけるパリ条約ルートおよびPCTルートの特許出願の差異

【詳細】

(1)パリ条約ルート

 ベトナムは1949年3月8日にパリ条約に加盟しており、特許または実用新案登録出願についての12ヶ月の優先権は、知的財産法の実施を定めた政令第122/2010/ND-CP号により改正された政令第103/2006/ND-CP号第10.1条(c)にも具体的に規定されている。

 

 ベトナムにおいて、パリ条約に基づく優先権を主張して特許出願を行う場合、出願人は、優先権を証明するために、優先権証明書を提出しなければならない。さらに、発明者から出願人への優先権の譲渡証も必要である。譲渡証については公証人による認証は必要ないが、各頁に略式署名がなされていなければならない。優先権証明書の原本または認証謄本および優先権譲渡証のベトナム国家知的財産庁への提出に関しては、出願日から1ヶ月の猶予期間がある。

 

(2)PCTルート

 ベトナムはPCT加盟国であり(1993年3月10日発効)、ベトナム知的財産法により、PCT出願のベトナム国内への移行手続を行うのに、31ヶ月の期間が与えられている。PCT出願のベトナム国内移行手続においては、優先権書類または譲渡証のいずれも提出する必要がない。

 

(3)ベトナムにおけるパリ条約ルートとPCTルート

 ベトナムはパリ条約の加盟国であり、PCTの加盟国でもあるため、パリ条約ルートおよびPCTルートでの出願が可能である。

 

 パリ条約に基づき提出された出願について、ベトナム国家知的財産庁は通常、最初の出願がなされた出願人の自国特許庁が発行した実体審査の結果を参照し、保護を認めるか否かを検討し、決定する。当該発明につき他の主要な特許庁、すなわち米国、日本、または欧州特許庁にも国内出願が提出されている場合、発明の保護を認めるか拒絶するかに関する当該特許庁の見解も考慮される。

 

 PCT出願の場合、ベトナム特許庁の検討および決定は、国際調査および国際予備審査の結果に加え、当該PCT出願の国内移行手続が行われた米国、EU、日本等の主要特許庁の見解も考慮される。特に、日本国特許庁は2014年7月1日からPCT国際出願の国際調査、国際予備審査の管轄国をベトナムに拡大している。これにより、ベトナムに出願されたPCT国際出願について、日本特許庁での審査結果が提供されることが可能となり、審査の確実性も増すものと期待される。

 

 審査請求期限については、パリ条約ルートの場合、出願日または優先権を主張する場合は優先日から42ヶ月以内に審査請求する必要がある。一方、PCT国内移行出願の場合には、国際出願日または優先日から42ヶ月以内に審査請求する必要があり、審査請求の起算日がそれぞれ異なる。PCT国内移行出願の場合は、移行してから審査請求期限までの期間が短いため、出願と同時に審査請求をすることが推奨される。