ベトナムにおける商標異議申立(第三者意見)
【詳細】
ベトナムでは知的財産法第112条に基づき、商標出願が公開された日から登録査定の日までならいつでも、いかなる第三者も当該商標出願に対して異議を申し立てることができる。
第112条 保護証書付与に関する第三者意見
出願が公報に掲載された日から権利付与に関する決定の日(登録査定日)までは、いかなる第三者も、当該出願に関してベトナム知的財産庁(National Office of Intellectual Property of Vietnam : NOIP)に意見を提示する権利を有する。当該意見は、書面にて提示し、かつ、資料を添付しなければならず、または使用する証拠の出所を明示しなければならない。
○商標出願に対して異議申立できる者
国内外の個人および組織を含む「いかなる第三者」も、NOIPに異議を申し立てることができる。
○異議申立理由
異議申立は以下の事由のいずれかに基づき行われるものとする。
(a)出願人が登録を受ける権利を有しておらず、かかる権利を譲渡されてもいない
(b)出願された商標が保護要件を満たしていない
(c)出願人が悪意で出願した
○異議申立の対象となる商標出願
NOIPで係属中のすべての商標出願が異議申立の対象となる。係属中の出願とは、登録査定がまだ下されていない出願のことをいう。
○ 異議申立期限
異議申立は、商標出願が公報に掲載された日から、登録査定の日までの間いつでも行うことができる。
○ 異議申立事由を裏付ける証拠
異議申立事由を裏付ける証拠書類の一切をNOIPに提出することができる。
○異議申立手続の流れ
第三者による意見書は、商標出願の審査において情報源(参考情報)として見なされる。
NOIPは、第三者から異議申立を受領した日から1ヶ月以内に出願人に当該意見を通知し、出願人に対して1ヶ月以内の応答期間を与える。NOIPは、出願人から回答書を受領した後、必要と考える場合は、出願人からの回答を第三者に通知し、かかる第三者に対して、意見書(第2回意見書)を提出するための1ヶ月以内の応答期間を与える。NOIPは、両当事者が提出した証拠と主張、ならびに出願書類に含まれるデータに基づき、第三者と出願人の意見を精査する。
NOIPが第三者からの異議申立について根拠がないと判断する場合、かかる意見を出願人に通知する必要はない。ただし、当該第三者には異議申立の検討を拒絶すること、およびその理由を明確に通知しなければならない。
第三者からの意見が、登録を受ける権利に関する場合であって、当該意見に根拠があるか否かをNOIPが確認することができない場合、NOIPは、当該第三者に対して、裁判所に訴訟を提起して当該問題を解決するよう通知する。かかる通知から1ヶ月以内に、当該第三者が訴訟を提起した旨をNOIPに通知しない場合、当該第三者の意見は取り下げられたものと見なされる。当該第三者から訴訟を提起した旨の通知を受けた場合、NOIPは、裁判所による判決が下されるまで、当該出願にかかる手続きを一時停止する。裁判所が判決を下した後、当該判決に沿って当該出願に係る手続きが進められる。
NOIPが必要と判断し、両当事者からも要請があった場合には、第三者と出願人の両者による直接協議の場をNOIP立ち会いのもと開催し、その結果をもってNOIPが判断を下す。出願人が第三者の意見に回答するための期間は、NOIPが関連手続きを取るための所定期間には含まれない。
【留意事項】
商標登録証の発行後も、第三者は、先行する権利が存在する、登録所有者には登録出願の権限がなかった、もしくは登録は悪意で行われた等の理由に基づきNOIPに商標登録無効を申し立てることができる(無効審判)。
マレーシアにおける商標出願の拒絶理由通知に対する応答
【詳細】
1976年商標法(「商標法」)および1997年商標規則(「商標規則」)に基づく要件に従い、商標出願がなされ、方式審査が完了すると、マレーシア知的財産局(Intellectual Property Corporation of Malaysia: MyIPO)の商標調査・審査部(Trademarks Search and Examination Section)の審査官が当該商標出願の実体審査を開始する。実体審査には、次のものが含まれるが、それらに限定されるものではない。
(i)指定商品・役務の記述に関する審査(必要な場合)
(ii)抵触する先願・先登録の有無を確認する調査
(iii)商標の本来的な識別力に関する審査(英語辞書、電話帳、地図帳および科学技術用語辞典などの参照文書で参照する場合もある)
(iv)商標の欺瞞性その他法定の不登録事由に関する審査、たとえば周知商標、地理的名称、または王室もしくは皇室の紋章、軍の階級章、頂飾、紋(章)、記章または国旗等を示す標章、標語または文言などの一定の禁止事項により構成されるかどうかの審査
(v)登録に制限または条件を課す必要性についての検討、たとえば、標章の一定の文言または図形に対する権利不要求、余白に関する条件、使用態様に関する条件などの確認
上記の根拠に基づき出願の実体審査を終えると、審査官は当該出願を拒絶するか否か、審査官の提示する条件、補正、変更または限定に同意すれば登録を認める旨を通知することができる。
審査官には、商標法に基づく裁量が与えられており、その職権により商標を拒絶することができるが、出願人に意見を述べる機会を与えることなく自己の職権を出願人に不利な形で行使しないよう求められている(マレーシア商標法第76条)。
○拒絶理由通知に対する対応
(1)審査官が商標出願を拒絶するか、何らかの条件、補正、変更または限定(「一定条件」)に同意すれば登録を認める用意がある場合、審査官は出願人に対し書面でその拒絶理由を通知し、出願人は拒絶理由通知書の日付から2ヶ月以内で、回答書を提出する機会を与えられる。出願人が所定の期間内または審査官が認めた延長期間内に応答しない場合、当該出願を放棄したものとみなす。
(2)回答書には、審査官から通知された拒絶理由を解消するための提案、条件、補正、変更または限定などを含めることができる。さらに、当該標章が十分な本来的識別力を有していない場合や、抵触する引用商標との善意の同時使用がなされていた場合には、使用により識別力を有するに至っていることを証明するための法定宣誓書による使用証拠など、審査官から通知された拒絶理由を解消するための証拠または文書を回答書に含めることができる。
(3)審査官は、出願人の回答書を考慮した後、当該出願の登録を認めるか、拒絶理由が解消されていないと決定することができる。
(4)審査官は、拒絶理由が解消されていないと決定する場合、出願人に対し拒絶査定書を送達し、出願人は当該拒絶査定の通知の日付から2ヶ月以内に所定の料金を添えて面接を申請することができる。面接の申請を行わない場合、出願人は出願を放棄したものとみなされる。出願人が面接の申請を行った場合、審査官は、出願人が面接のために審査官と面接すべき日時を定めた通知を送達する。出願人は面接において、回答書に記載したものと同様の主張または追加の主張、提案または証拠の提出を行うことができる。
(5)面接後に審査官が下す決定は、書面で出願人に送達される。出願人は、この決定に不服がある場合、審査官に対し決定の日付から2ヶ月以内に、決定の根拠および決定に用いた資料を書面で示すよう求めなければならない。不服申立においては、この規則に基づく書面が出願人に交付された日を審査官による決定の日付とみなす。
(6)出願人は、審査官の上記通知に対する応答期間として、商標法または商標規則に規定される応答期限の延長について申請することができる。
(7)審査官の決定に不服がある場合には、マレーシア高等裁判所に不服申立を提起することができる。裁判所は、必要な場合は出願人と審査官の審理を行い、出願の登録を認めるべきか否か、さらに場合に応じてどのような条件、補正または限定を付して認可すべきかを決定する。審査官が決定を下すために用いた資料に基づき審理が行われ、裁判所が許可した場合を除き、審査官は新たな拒絶理由を追加することは認められない。裁判所が認めた新たな拒絶理由が追加された場合、出願人は所定の方法により出願を取り下げることができる。その際には、出願に関する費用は一切かからない。
(8)裁判所が不服申立を認めた場合には、商標法の規定に従い審査官は出願を登録しなければならず、その期限も判決日から3ヶ月以内または裁判所が認めるまでと定めてられている(マレーシア商標法第29条の(2))。
【留意事項】
審査官は、出願の登録を認めたことが誤りであったと認める場合には、その職権により、登録前のいかなる段階においても当該出願に対する登録査定を取り消すことができる。このような場合、出願人には、新たな拒絶理由に対してヒアリングおよび不服申立の機会が与えられる。