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インドネシアにおける冒認商標出願の実態調査

 「ASEAN主要国における冒認商標出願の実態調査」(2020年3月、日本貿易振興機構(JETRO)バンコク事務所知的財産部)

(目次)
第2章 各国の冒認出願に対する制度
VI. インドネシア P.45
(所管庁の概要、商標出願手続(フローチャートあり)について関連する法律に基づいて紹介している。審査段階では冒認出願に関する審査は行っていないが、商標法では悪意による出願は拒絶する等の規定はある。また、無効審判制度は存在しないが、冒認出願により登録された商標を取消すには商務裁判所に訴訟を起こすことができる。)

第3章 各国における冒認出願事例
VI. インドネシア P.136
(日本企業と関係する5件の商務裁判所の判例と、拒絶された審査例の概要を紹介している。)

第4章 各国における冒認出願を防止するための事前的手段
VI. インドネシア P.154
(具体的な対策(適時の商標出願・登録、冒認出願の監視)について紹介している。)

第5章 各国における冒認出願に対する事後的手段
VI. インドネシア P.169
(法的手段(商務裁判所への訴えの概要、統計)、実務上の留意点(証拠収集の方法、譲渡交渉)について紹介している。)

シンガポールにおける冒認商標出願の実態調査

 「ASEAN主要国における冒認商標出願の実態調査」(2020年3月、日本貿易振興機構(JETRO)バンコク事務所知的財産部)

(目次)
第2章 各国の冒認出願に対する制度
V. シンガポール P.37
(所管庁の概要、商標出願手続および異議申立手続(フローチャートあり)、無効請求手続について関連する法律に基づいて紹介している。シンガポールにおいて、冒認出願について商標法に規定があるが、明確に立証されない限り審査段階では拒絶されない。異議申立または無効請求で判断されることが一般的である。)

第3章 各国における冒認出願事例
V. シンガポール P.122
(日本企業と関係する5件の異議申立での知的財産権庁の決定の概要を紹介している。)

第4章 各国における冒認出願を防止するための事前的手段
V. シンガポール P.152
(具体的な対策(自己の商標について数多くのカテゴリーおよびその下位のカテゴリーへの早期の出願、冒認出願の監視)について紹介している。)

第5章 各国における冒認出願に対する事後的手段
V. シンガポール P.167
(法的手段(異議申立または無効の請求)、実務上の留意点(委任状の実務上の必要性、費用の相場、証拠収集の方法等)について紹介している。)

インドネシアにおける商標の識別性に関する調査

 「ASEAN主要国における商標の識別性に関する調査」(2020年3月、日本貿易振興機構(JETRO)バンコク事務所知的財産部)

(目次)
第2章 各国の商標審査制度
Ⅵ.インドネシア p.57
(所管庁の概要、出願から登録までの審査手続について説明(フローチャートあり)、商標の識別性に関する関連法規、商標の識別性に関するガイドライン、制度・運用に関する留意点(他国であれば拒絶される可能性がある商標のインドネシアで登録された例の紹介)、識別性に係る審査判断に対する反論手段、ディスクレーム制度(制度の採択なし)、商標権の効力が及ばない範囲について紹介している。)

第3章 事例紹介及び考察
Ⅵ.インドネシア p.118
(3件の商務裁判所の判決概要とメニューやサービス形態を商標登録した事例を紹介している。)

インドネシアにおける商標権の権利行使と模倣意匠への対応

1.インドネシアにおける商標権に基づく権利行使の検討
 インドネシアは先願主義を採用しており、商標権侵害で侵害者に対して措置を講じるには、商標を登録し商標権を得ておかなければならない。商標が先に登録され、その保護範囲が広範であるほど、商標権者は、自らの権利を行使し知的財産を保護するための有利な立場を得ることが出来る。
 しかしながら、商標権侵害において侵害者に対して法的措置を講じる前に、商標権者は以下のような事項を事前に理解しておく必要がある。

1-1.刑事手続
 親告罪である知的財産権侵害事件は、インドネシア知的財産権総局(Director General of Intellectual Property:DGIP)の捜査局または警察により着手される。当局が侵害に対する手続を進める前に、権利者は正式な告発状を提出しなければならない。
 告発状を受理すると、DGIP捜査局の捜査官は、知的財産権侵害に関する捜査の実施に関して警察と同様の権限が与えられる。通常、捜査はレイド(摘発)へとつながるが、滞貨案件と捜査官不足のため、実際にレイドが実施されるまでには数か月かかることもある。

1-2.民事手続
 登録商標の商標権者またはライセンシー(適切なライセンス契約の登録を条件として)は、損害賠償請求または登録商標の不正使用に関する行為を止めさせるために、商標権侵害者を相手取り、商務裁判所に訴訟を提起することができる。
 訴訟審理中のさらなる損失を防ぐため、商標権者(原告)は、侵害者(被告)に対して商標権者の被侵害商標を使用した製品またはサービスの生産、流通および取引を停止することを命じるよう、裁判所に差止請求することができる。
商務裁判所は、裁判所の判決が最終的なものとなり、法的拘束力を有した後、商品を処分するよう命じることができる。また、商務裁判所の判決に対しては最高裁判所に上告することができる。

1-3.水際措置・税関登録(Customs recordation)
 2018年6月から施行されている知的財産権侵害品の輸出入管理等に関する財務省規則(No.40/PMK.04/2018)により、インドネシアの事業者である商標権者は、税関総局(Directorate General of Customs and Excise)に知的財産権の登録申請を行うことができる。申請が認められた場合、税関職員は知的財産権を税関登録システムに登録する。模倣品の疑いのある商品が輸出入されようとしている場合、知的財産権者は税関に保証金として銀行または保険会社の保証書を提出する必要がある。当該保証金は、予防措置および差止命令の執行中に発生した運用コストをカバーすることを目的としている。
 税関職員は、商務裁判所の発効した令状を受理すると、輸入者、輸出者または商品の所有者に対して書面で通知を行い、令状の受理日をもって商品の通関を差し止めなければならない。知的財産権者は、商務裁判所長から許可が得られれば、疑義侵害物品を調査することができる。
 差止期間は10営業日で、商務裁判所から追加の令状が発行されることにより、さらに10営業日延長することができる。この期間内に、知的財産権者は自らの権利を維持するために必要とされる法的手続を行っていることを税関職員に通知しなければならず、通知がなければ税関職員は商品の差止を終了する。
 しかしながら、この規則にもかかわらず、実際にこの手続を進めることは非常に難しい。商品に関する十分な情報と裏付け証拠がない場合が多く、商品が模倣品であるか否かを判断することは難しい。

2.権利侵害された場合の準備
 侵害者に対して措置を講じる前に、知的財産権者は、自らの権利に関して瑕疵が無いことを確認し、侵害者が反訴を提起してくることも想定しておく必要がある。こうした対応には、知的財産権の有効性確認、市場における知的財産権の使用状況調査、知的財産権権利者の確認、証拠の保全等が含まれる。
 インドネシアでは知的財産権者は侵害者を訴追するよりも侵害者と和解することを選択することが多く、和解では通常、模倣品の破壊、誓約および侵害者による公的謝罪を行うことが含まれる。
 権利侵害された場合の対応の第一歩として、侵害者および被侵害商標の使用に関する可能な限り多くの情報を集める調査を行うことが重要である。この調査結果を基に侵害者に対する戦略構築を行う必要がある。調査は、DGIPの捜査官を通じて実施することが可能ではあるが、調査結果を速やかに入手し、秘密を保持する観点から調査会社等を使用することが推奨される。
 侵害製品が食品または医薬品に関するものである場合、インドネシア食品医薬品監督庁(Badan Pengawas Obat dan Makanan(DRUG AND FOOD CONTROL AGENCY OF THE REPUBLIC OF INDONESIA):BPOM)における調査も実施されなければならない。電化製品の場合、当該製品がインドネシア国家標準(Indonesian National Standard:SNI)を取得しているか否かの調査を行うことを推奨する。
 警告状は、調査により得られた情報に基づき作成する。ただし、警告状はインドネシア語で記載しなければならない。警告状送付の後、追加書面の提出や相手側との交渉等が行われる。

3.侵害を主張した場合のリスク
 商標権者が商標登録に基づく商標権を主張したが、当該商標をインドネシアにおいて3年間継続して使用していない場合、相手方から不使用による登録抹消が請求されると当該商標は抹消され得る。したがって、相手方による権利濫用の抗弁等を回避するためには、商標に関する有効性の確認および使用状況を確認することは重要である。
 知的財産権者が疑義侵害商品の通関を一時的に差し止める令状を商務裁判所に請求したが、当該商品が侵害していないことが判明した場合、当該商品の所有者は、知的財産権者に対して逆告訴し、商品の留置に対する損害賠償請求を求めることができる。

4.「商標を使用している」の定義と証拠
 登録商標は、登録後または当該商標を最後に使用した後継続して3年間使用されていない場合、不使用による登録抹消の対象となる(インドネシア商標法第74条)。商標が抹消されることを防ぐためには当該商標が使用されていなければならないが、その際、商標権者は、「商標の使用」の定義を念頭に置かなければならない。
(参考)インドネシア商標法第74条
(1) 登録商標の抹消は、当該商標が商品および/またはサービスの取引に登録日または最後に使用した後3年継続して使用されていないという理由で、利害関係のある第三者によって商務裁判所に訴訟を提起することができる。
(2) (1)項に記載の登録商標が使用されない理由が、次の場合には適用されない。
a. 輸入の禁止
b. 当該商標を使用した商品の流通の許可に関する禁止または当局からの暫定的な決定
c. 政令で定められたその他の同様の禁止
(3) (1)項に記載の登録商標の抹消は、商標登録簿に記録され、公告される。

 インドネシア商標法第74条によると、登録商標は、その商標の使用が登録商標と合致していない場合、抹消の対象となる。ここで言う「合致」とは、製品上における商標の実際の表示と商標登録証における商標の表示が、言葉、文字および色の表現など全て同一でなければならないことを意味する。
 例えば、商標が平易なブロック文字で登録されているが、製品上で様式化、すなわちデザイン化された文字などで表現されている場合、登録商標は「使用された」と見なされないことを意味する。また、商標が登録証において白と黒で表示されているが、製品上では赤色で表現されている場合も「使用」とは見なされない。
 商標の使用証拠には、商標が付され登録後3年間継続して使用された証拠として日付が付された出版物、広告物、請求書、カタログ、製品やサービスの包装などが含まれる。
 また、各ライセンス契約が適切にDGIPに登録されていれば、ライセンシーによる登録商標の使用が当該商標の適切な使用であると見なされる。

5.盗用(模倣)意匠出願に対する対策
 インドネシア工業意匠法第26条によると、利害関係人は、意匠公開日から3か月以内に公開された意匠出願に対して異議を申し立てることができる。

(参考)インドネシア工業意匠法第26条
(1) 第25条(1)に規定する公開開始日以降、何人も実体的な事由の異議をDGIPに対して書面でかつ本法に規定する手数料の支払って申し立てることができる。
(2) (1)の規定における異議は、公開開始日から3か月以内に申し立てることができる。
(3) (2)に規定する異議は、DGIPから出願人に通知される。
(4) (2)に規定する異議に対して、出願人はDGIPからの通知送付の日から3か月以内に答弁することができる。
(5) (1)に規定する異議申立があったときは、審査官による実体審査が行われる。
(6) DGIPは異議および答弁を当該出願の登録または拒絶の審査における参考資料として提供する。
(7) DGIPは(1)に規定する異議を認めるか否かの決定を(2)に規定する公開の終了日から6か月以内に下す。
(8) (7)に規定するDGIPの決定は、出願人または代理人に対して当該決定の日から30日以内に書面で通知される。

 異議申立の通知を受領した後、当該意匠出願人は、当該通知がDGIPにより送付された日から3か月以内に答弁を提出することができる。
 その後、審査官は、異議申立および答弁の双方を考慮し、当該意匠出願の実態審査を行い6か月以内に決定を下す。登録を拒絶された出願人は、拒絶通知の日から3か月以内に商務裁判所に訴訟を提起することができる。
 意匠権者は、インドネシア工業意匠法第37条により、自身の登録意匠の取消を申請することもできる。ただし、意匠登録原簿に登録されているライセンシーが、登録の取消請求に添付すべき承認書を提供しない場合、取消を行うことができない。したがって、すでにライセンス登録されている場合、第三者にライセンスされた意匠登録の権利取下げを行うことは難しい。

(参考)インドネシア工業意匠法第37条
(1) 登録された意匠は、意匠権者の書面による請求に基づいて、DGIPにより取り消すことができる。
(2) (1)に規定する意匠権の取消は、意匠一般登録簿に記録された実施権者が、当該登録取消の請求に添付される書面において承認を与えない場合は、認められない。
(3) 意匠権の取消の決定はDGIPにより次の者に書面で通知される。
(a) 意匠権者
(b) 意匠登録簿の記録に従い、ライセンスを得ている実施権者
(c) 取消請求をした者。この場合は、取消の決定の日以降に意匠権がもはや有効でないことを記載する。
(4) (1)に規定される意匠の取消の決定は、意匠登録簿に記録され、意匠公報により公告される。
 盗用(模倣)意匠出願が既に登録されている場合、インドネシア工業意匠法第38条は、利害関係人が工業意匠権の登録取り消しを求める訴訟を商務裁判所に提起することを認めている。訴訟により意匠登録が取り消された場合でも、ライセンシーはライセンス契約の満了までライセンスを実施する権利がある。ライセンシーは、権利が取り消された登録意匠の所有者に支払われるべきであったロイヤルティの支払いを継続する義務を負わなくなるが、取消理由となった他の意匠権がある場合はライセンスの残りの期間のロイヤルティ支払いを当該他の意匠権の権利者に行う必要がある。
(参考)インドネシア工業意匠法第38条
(1) 意匠登録の取消訴訟は、利害関係人によって第2条(2)または第4条に規定する理由を伴い商務裁判所に提起することができる。
(2) (1)の規定における意匠登録の取消に関する商務裁判所の判決は、判決の日から14日以内にDGIPに送付される。

 意匠権者は、異議申立の機会を逸しないように、模倣および類似の意匠を監視するために民間のウォッチサービス企業を活用する方法もある。企業が多くの登録意匠を有する場合、主要な意匠分類についてのみ監視することも費用削減のために考慮する必要がある。
 潜在的な侵害者に対して、意匠をコピー使用すると侵害として見なされ得るということを警告するために、すべての製品上に「登録意匠」という語を記載することが推奨される。

インドネシアにおける失効した特許権の回復手続

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インドネシアにおける商標出願への拒絶理由通知に対する応答

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インドネシアにおける司法対策実務

 「インドネシアの模倣品対策に関する調査」(2016年8月、日本貿易振興機構(JETRO)ジャカルタ事務所)

 

(目次)

4 司法対策実務

 4.1 手続フロー P.29

 4.2 実務上の留意点 P.29

 4.3 商務裁判所における知的財産訴訟の件数 P.30

 4.4 主要判例 P.32

インドネシアにおける権利登録

 「インドネシアの模倣品対策に関する調査」(2016年8月、日本貿易振興機構(JETRO)ジャカルタ事務所)

 

(目次)

5 権利登録

 5.1 権利別出願・登録件数 P.40

 5.2 2015年国別上位10カ国の出願件数 P.42

 5.3 出願フロー・費用・期間・言語 P.45

 5.4 「特許年⾦」に関する留意点 P.54

 5.5 特許法及び商標法改正案 P.55

インドネシアにおける模倣対策および概論

 「インドネシアの模倣品対策に関する調査」(2016年8月、日本貿易振興機構(JETRO)ジャカルタ事務所)

 

2 模倣対策・概論

 2.1 知的財産権侵害関連機関と権限の整理 P.15

 2.2 各機関の取締実績 P.16

 2.3 直近3年間程度での規定の改正・通知等の要点 P.17

 2.4 ⺠事訴訟手続と刑事訴訟手続の比較 P.21

インドネシアにおける商標異議申立制度

インドネシアにおいて、商標出願に対する異議申立は、新しい「商標及び地理的表示法」第20/2016号(以下、「新商標法」)第14条、第15条、第16条および第17条に規定されている。以下に述べる異議申立手続は、2016年11月25日から実施されている。

異議申立は、商標出願の公告期間中に提起することができる。新商標法第13条に従い、商標出願は全ての方式要件を満たした時点で、出願日を付与される。法定の公告期間は、遅くとも出願日の15日後から始まる2ヵ月間である。

商標出願が認可されると、インドネシア知的財産総局(Directorate General of Intellectual Property Rights;以下、「DGIP」)は商標公報およびDGIPのウェブサイトにおいて出願を公告する。公告は、2ヵ月間にわたり実施される。

新商標法第16条(1)項に従い、上記の公告期間中に、何人も、DGIPに書面による異議申立を提起することができる。異議申立の際には、オフィシャルフィーを支払わなければならない。

異議申立の際に要求されるオフィシャルフィーは、法務人権省 (Ministry of Justice and Human Rights Affairs)内で適用される非課税収益の種類および料金に関する2016年政令第45号に定められており、金額は商標出願1件につき100万ルピアである。

1.異議申立の理由

異議申立の理由は、新商標法に下記のように規定されている。

a.新商標法第20条:

商標が下記のいずれかに該当する場合、その商標は登録できず、拒絶される。

(a)国家のイデオロギー、法規、道徳規範、宗教、倫理または公序良俗に反するもの。

(b)登録対象の商品または役務に類するもの、これを説明するもの、またはその単なる言及にすぎないもの。

(c)登録対象の商品または役務の出所、品質、型式、サイズ、種類もしくは使用目的について、または類似の商品または役務に関して保護されている植物品種の名称について、公衆を誤認させるおそれのある要素を含んでいるもの。

(d)生み出された商品または役務の品質、恩恵または効能と一致しない情報を含んでいるもの。

(e)識別性を有する特徴がないもの。

(f)一般名称または公有財産の象徴となっているもの。

b.新商標法第21条:

(1)商標の要部または全体が下記のいずれかと類似する場合、その商標は拒絶される。

(a)同じ種類の商品または役務に関して既に登録または出願されている、他者により所有される商標と類似する場合。

(b)同じ種類の商品または役務に関して他者により所有される周知商標と類似する場合。

(c)特定の条件を満たすことを前提として、同じ種類ではない商品または役務に関して他者により所有される周知商標と類似する場合。

(d)既知の地理的表示と類似する場合。

(2)商標が下記のいずれかに該当する場合、その商標は拒絶される。

(a)有名人の名前、略称、写真または他者が所有する法人の名称に相当する、またはこれと類似するもの。ただし、正当な権利者の書面による同意がある場合を除く。

(b)国家または国内もしくは国際機関の名称、略称、旗、紋章、シンボルまたは象徴を模倣する、またはこれと類似するもの。ただし、管轄当局の書面による同意がある場合を除く。

(c)国家または政府機関により使用される公的な標識、印章または証印を模倣する、またはこれと類似するもの。ただし、管轄当局の書面による同意がある場合を除く。

(3)出願人が悪意をもって提出した商標出願は、拒絶される。

(4)上記(1)の(a)から(c)に言及された商標出願の拒絶に関連する追加の規定が、政令により定められている。

2.異議申立の内容

 

新商標法第16条(2)項に従い、異議申立は、十分な理由と共に、出願商標が新商標法に基づき登録されるべきではない、または拒絶されるべきであることを証明する証拠を提出することができる。

異議申立は、異議理由を示す異議申立書に異議理由を裏付ける証拠を添付して提出される。異議申立を提出する際に必要な証拠の量に関する規定は存在しない。異議申立時に提出されなかった追加の証拠がある場合、異議申立人は、異議申立日から2週間以内であれば追加証拠を提出することができる。

3.異議申立の手続期間

新商標法第16条(3)項に従い、異議申立が提出されると、DGIPは異議申立を受領した日から遅くとも14日以内に、異議申立書の写しを出願人に送付する。

出願人は、DGIPから送付された異議申立書の写しの送達日から2ヵ月以内に、異議申立に対する答弁書を提出することができる(新商標法第17条(2)項)。

新商標法に定められた異議申立手続は、3つの段階からなる。第1段階は異議申立人による異議申立書の提出であり、第2段階は出願人による答弁書の提出であり、最後の段階はDGIPにより下される異議決定である。さらに、異議申立人および出願人は、異議申立書または答弁書について説明するために、DGIPにヒアリングを要求することができる。ヒアリングはDGIPにおいて行われる。

DGIPは、答弁書の提出期限から1ヵ月以内に、当該出願の実体審査において、異議申立書および答弁書を審査資料として検討する(新商標法第23条(2)項および(4)項)。

DGIPは、公告期間の満了日もしくは答弁書提出期限から150営業日以内に当該出願の実体審査を完了する。

審査官が実体審査の結果、商標出願を認可できないと判断した場合、DGIPは出願人に対し、当該出願は登録できない、または拒絶される旨を書面で通知する。その場合、出願人は、当該通知の送達日から30日以内に応答する機会を与えられる(新商標法第24条(3)項)。

審査官が実体審査の結果、商標出願を認可できると判断した場合、当該出願は商標登録簿に登録される(新商標法第24条(5)項)。

DGIPは、実体審査の結果について、異議申立人にも書面で通知する。

4.異議申立の取下げ

異議申立人は、審査官が出願の実体審査結果を決定する前であれば、DGIPに対して、異議申立の取下げ書を提出することができる。異議申立を取り下げる一般的な理由としては、異議申立人と出願人との間で、商標譲渡契約、共存合意契約などを締結した場合が挙げられる。

5.審査官の拒絶査定に対する不服

審査官の拒絶査定に対して不服がある場合、出願人は、商標審判委員会に審判請求を提起することができ、その写しは、オフィシャルフィーの支払いをもってDGIPに送付される(新商標法第28条(2)項)。

審判請求書は、出願の拒絶査定の送達日から3ヵ月以内に提出しなければならない(新商標法第29条(1)項)。

なお、異議申立以外に、関連当事者は商務裁判所に取消訴訟を提起することができる。(商標法76条)