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ベトナム進出に際しての知的財産権保護の留意点

【詳細】

 ベトナムでは、模倣品取引業者等の知的財産権侵害者に対して、以下の措置を講じることができる。

 

(1)市場調査

 ベトナムに参入する前に知的財産権者は、市場調査を行って、自らの商標と同一または類似する商標の有無を把握し、潜在的侵害の可能性を確認すべきである。市場調査は、侵害の規模を認識し、主要な販売業者や取引業者を絞りこむための、ごく初歩の対策である。

 明らかな侵害者や模倣品取引業者が存在する場合、知的財産権者は、以下の措置を実行できる。

(i)管轄当局に苦情を申し立てて、摘発措置や侵害の中止を求める

(ii)侵害者に警告状を送付する(管轄当局に権利行使を求める前に、侵害の和解を行う必要はない。しかし、知的財産法は、知的財産権者が紛争を友好的に和解することを奨励している。交渉が失敗したときでも、知的財産権者は、管轄当局に苦情を申し立てて、自らが紛争を和解するために力を尽くしたことを説明できる。)

(iii)損害賠償請求を求めて裁判所に申し立てる

 

(2)管轄当局による摘発

 侵害の規模が大きい場合、知的財産権者は、入手した証拠を添えて、管轄当局に対して、摘発措置の実施を求めることができる。

 

 摘発措置は、通常、市場管理局(Market Management Bureau : MMB)および経済警察(Economic Police : EP)が行う。侵害の深刻さと危険性に応じて、管轄当局は、刑事手続を実施するか、行政制裁(警告または罰金)を実施する。処罰には、侵害手段や設備の押収、営業ライセンスの停止、強制的是正対策(侵害物品からの侵害要素の除去、侵害物品の破壊または商業目的以外の頒布、是正通知の公告など)が含まれる。

 

(3)告知・警告活動

(i)教育的書面の送付

 侵害品を過去に取引したことがあるターゲット(被疑侵害者)や、侵害の証拠を入手できないターゲットに対しては、教育的書面を送付する。

 教育的書面では、模倣品や侵害品の取引を繰り返すか開始した場合の法的な帰結について、ターゲットに通知する。

(ii)告知活動

 消費者に対して告知活動を行い、模倣品または侵害品を取引することの違法性と、模倣品または侵害品(特に医薬品または食品)の使用の有害性や危険性について、消費者の意識向上を図る。

(iii)警告書の送付

 侵害品を現在取引しているターゲットに対しては、警告書を送付する。警告書では、侵害品の取引中止を要求し、また、今後も知的財産権を侵害しないことの文書での約束を要求する。署名した誓約書が得られるまで定期的に督促を行う。(経験上、電話による頻繁な督促が、遵守率を上げるポイント。)

 

(4)税関との協力

(i)税関登録

 ベトナム全土の40ヵ所の港湾や国境(15の国際港湾、6つの国際空港、19ヵ所の国境ゲート)において、税関登録が可能である。税関は、登録された商標を付した輸入品または輸出品を監視し、模倣品が入っていると疑われる出荷物を押収する。

 

(ii)税関職員のトレーニング

 税関が模倣品を識別する能力は、申請書に記載される情報のレベルと、知的財産権者から税関に提供されるトレーニングに依存する。ベトナム税関は、1年間に複数回、税関職員に対するトレーニングを実施する。トレーニングでは、知的財産権者が、本物と偽物を見分ける方法を税関に教える。

 

(iii)税関による差止手続とその後

 税関は、模倣が疑われる物品についてその場での差止手続を行うことができる。また、知的財産権者から提出された情報に基づく差止手続を行うことができる。

 

 模倣が疑われる物品の差止を書面で税関から通知されたときは、知的財産権者には、差し止められた物品の状態を確認するために3営業日の時間が与えられる。確認の結果、模倣と判断される場合は、知的財産権者は、物品の価値の20%、あるいはその物品の価値が決定されなかった場合には約1,000米国ドルのいずれかに相当する返金可能な供託金を支払う必要がある。

 

 その物品が知的財産権を侵害すると確認されたときは、物品は押収され、税関は輸入業者に対して決定を下す。通常税関から科される処罰は、その物品の破壊および罰金である。

 

 一般的に、知的財産権者がベトナム国内で事業を行う際には、権利行使戦略が重要になる。実際、知的財産権者がこの権利行使戦略を重視しない場合は、模倣品等の侵害によって、莫大な利益と収入を失うことになる。ベトナム法は常に知的財産権者が自らの権利を積極的に保護することを奨励している。知的財産権者が証拠を提供すれば、管轄当局による措置が期待できる。