タイにおける商品・役務の類否判断について(後編)
(中編から続く)
4. 役務の類似性または非類似性
4-1. 役務の類似・非類似の判断方法
前編および中編で述べたとおり、DIPは、各区分においてクロスチェックの対象となる関連区分のリストをウェブサイトで提供している*1。下表は、役務の各区分に関連する役務区分をDIPのウェブサイトから抜粋したものである。出願前調査の指定区分以外の区分とのクロスチェックに活用されたい。なお、このリストで指定されている以外の区分についてもクロスチェックが行われる例もあることに留意されたい。
区分 | 35 | 36 | 37 | 38 | 39 |
関連区分 | 36 | 35 | 40 | 41,42 | – |
区分 | 40 | 41 | 42 | 43 | 44 | 45 |
関連区分 | 37 | 38 | 38 | – | – | – |
*1 DIPのウェブサイトを閲覧する方法を稿末【クロスチェックリストの閲覧方法】に示した。
役務の類似・非類似の判断については、前記「前編2-2.3)(C) 商品・役務の関連性・非関連性の検討」における5つの評価点に加え、その他の関連する要素も考慮する。主な考慮点としては、役務の性質並びに特質、事業分野および需要者グループが挙げられる。
(A) 役務が関連しているとみなされた例
① 商標審決番号366/2561(2018)
出願商標:
区分36:土地・建物の鑑定評価・管理
引用商標:, COURTARD, および
区分43:ホテル・レストランにおけるサービスの提供
出願商標の指定役務は、ホテル、リゾート、キャンプを含む広範な不動産の開発および管理であると説明している。従って、両当事者の役務は区分が異なるにも拘わらず、同じ種類の不動産に関連する同じ性質のものである。従って混同の可能性がある。
注目点:役務が提供される事業分野の関連性を考慮する。
② 商標審決番号634/2559(2016)
出願商標:
区分35:メディアに関する包括的な広告制作
引用商標:
区分38:有線テレビ放送、区分41:ラジオ・テレビ番組の企画、娯楽目的のファッションショーの企画、コンサートの企画
引用商標:
区分41:テレビおよびラジオの番組制作
出願商標の役務が「総合的な広報媒体の制作」であるのに対し、引用商標の役務は「有線テレビ放送、ラジオおよびテレビ番組の制作、企画、娯楽目的のファッションショーの企画、コンサートの企画」であり、両商標の役務は異なる区分ではあるが関連性がある、とされた。
注目点:本審決において、役務間の関連性/非関連性を判断するために、どのような考慮事項を用いるかについて明示していない。しかし、著者は、両商標の役務が、同じ事業分野、すなわちエンターテインメント産業とメディア産業で提供されていることから、両商標の役務は、関連性があると判断されたと理解している。
③ 商標審決番号628/2563(2022)
出願商標:
区分41:不動産・不動産に関連する時事・トレンド・経済分野のオンライン・ニュースレターの提供、不動産・不動産に関連する時事・トレンド・経済分野の電子メールによるオンライン電子ニュースレターの配信等
引用商標:
区分35:インターネット上の動画再生前後の広告、モバイルメッセンジャーを通じた広告、インターネットを通じた広告、オンライン上の広告スペースのレンタル、広告資料の作成および更新、商業情報代理店、経営管理に関する助言サービス、経営管理コンサルタントなど
両商標の役務は、異なる区分ではあるが、同じ性質、すなわち、すべて情報の提供および配布であり、両商標間には混同の可能性がある、とされた。
注目点:上記②の審決(634/2559(2016))とは異なり、本件では、両商標の役務が全く異なる分野(出願商標が不動産分野であるのに対し、引用商標は広告および経営管理分野)であるにも拘わらず、両商標の役務の性質に注目し、両商標が本質的に情報の提供と配布である点で関連している、と判断した。
(B) 役務が関連していないとみなされた例
① 商標審決番号148/2559(2016)
出願商標:
区分35:ビタミン剤等の栄養補助食品に関する小売・卸売業経営、ミネラルエキス等の小売・卸売業経営
引用商標:
区分44:医療研究センターサービス
両商標の役務は異なる区分であり、同じ性質のものではないと説明している。
注目点:両商標の役務の関連性/非関連性の判断に考慮点は明示されていない。著者は、異なる事業分野、異なる需要者グループに対して提供される役務であることが考慮されたと理解している。特に、出願商標は一般消費者を対象とした商業分野であり、引用商標は医療関係者を対象とした医療研究産業分野であると解される。
② 商標審決番号1341/2559(2016)
出願商標:
区分43:食品・飲料の小売サービス、カクテルラウンジ、コーヒーショップ、食品・飲料のケータリング等
引用商標:
区分35:ホテルの経営管理、ホテルに関する宣伝・販売促進サービス等
区分36:不動産管理、不動産の賃貸等
両商標の役務は異なる区分であり、同じ性質のものではないと説明している。
注目点:両商標の役務の関連性/非関連性の判断に考慮点は明示されていない。著者は、両商標の役務は異なる事業分野で提供される役務であることが考慮されたと理解している。特に、出願商標は飲食業において提供され、引用商標は不動産業および一時宿泊業において提供されている点が考慮されたと考えられる。
③ 商標審決番号805/2563(2020)
出願商標:
区分42:補聴器に関する科学研究サービス、補聴器に関する技術研究サービス等
引用商標:
区分42:農業科学研究サービス、農業に関するコンピュータプログラム作成サービス、農業に関する科学研究サービス等
両商標の役務は異なる区分であり、同じ性質のものではないと説明している。
注目点:両商標の役務の関連性/非関連性の判断に、考慮点は明示されていない。著者は、両商標の役務は異なる事業分野および異なる需要者グループに提供される役務であることが考慮された、と理解している。特に、出願商標は、聴覚障碍者を対象とする補聴器に特定された科学分野であり、引用商標は、農業従事者を対象とする農業に特定された科学分野である点が考慮された、と考えられる。
上記の審決例に基づけば、タイでは、例えば、対象としている需要者の範囲や需要者グループが一致しているか、事業分野のカテゴリーが一致しているかなど、日本と同様の要素が考慮されている。ただし、対象役務や対象事業分野が同一の法律で規制されている点を考慮する日本とは異なり、これらのアプローチは、タイでは採用されていない。
また、上記の審決例から、EUIPOの商標審査基準(https://guidelines.euipo.europa.eu/1803468/1786759/trade-mark-guidelines/3-1-1-similarity-factors)における役務の非類似性・類似性を検討する際の基準(役務の性質、役務の目的、関連する公衆や需要者)をEUと共有していると思われる。
4-2. 小売役務
前記「(中編)3-2 ニース分類の活用」で述べたように、指定役務は明確に記載しなければならず、広範であってはならない。現行の実務に基づけば、「小売」という役務表記は広範すぎて受け入れられないと考えられる。例えば、「バッグの小売店サービス」、「宝飾品の小売サービス」のように、出願人はどの商品を提供するのかを明確に特定しなければならない。
とはいえ、DIPは現在、「小売役務」よりもさらに広範な役務記載、すなわち、役務の名称「他人の利益のために、輸送を除く様々な商品を集め、消費者がそれらの商品を便利に見て購入できるようにすること」を認めている。このことは、商標審決番号2484/2562(2019)においても採用されている。
小売役務と商品との関連性を評価する際のアプローチを説明するため、商標審決番号2484/2562(2019)および商標審決番号1013/2564(2021)を示す。
① 商標審決番号 2484/2562(2019)
出願商標:
区分35:他人のために、様々な商品を集めること、消費者が便利に商品を見たり購入したりできるようにすること、食品の販売管理、商品の輸出入管理、他の事業者のための購買サービスなど
[重要:本出願は「小売」というサービス自体を対象とするものではない。]
引用商標:
区分30:チューインガム
引用商標:
区分30:ゼリー
理由:出願商標の役務は、商品と同じ性質を有さないビジネスの一種であるとした。したがって、混同の可能性は生じないとした。
本審決は、出願商標の役務から保護される事業の範囲が引用商標に使用する商品と重複するか否かを検討することなく、単に事業が商品と同一性質のものではないと判断しているように思われる。
しかし、その2年後、審判部は、対象商標の具体的な商品と役務との関連性をより詳細に検討した審決を下したので以下に紹介する。
② 商標審決番号1013/2564(2021)
出願商標:
区分35:顧客が便利に商品を見たり購入したりできるように、他人の利益のために様々な商品を集めること、化粧品の小売・卸売、トイレタリー製品の小売・卸売、歯科用品の小売・卸売、飲料などのオンライン小売
引用商標:
区分29:牛肉缶詰、魚缶詰、果物缶詰、野菜缶詰、魚介類缶詰など
理由:両商標の商品と役務とは異なる区分である。さらに、出願商標の役務は、他人の利益のために、顧客が便利にそれらの商品を見たり購入したりできるように、様々な商品をまとめることであり、引用商標の商品と同じ性質のものではない特定の商品の小売や卸売を行うことである。その結果、混同のおそれはない、とした。
注目点:上記2つの審決例から得られるポイントは以下の通りである:
・「小売」という役務よりも、「他人の利益のために、消費者が便利に商品を見たり購入したりできるようにするために、様々な商品を集めること」という役務の方が広範であるため、これらの審決から、提供される商品が表示されていない「小売役務」や「卸売役務」、「販売役務」などは(DIPによって認められる場合)、商品と同じ性質のものではないと結論づけることができると思われる。換言すれば、「小売」という広範な役務を指定する先行登録商標は、区分 1から区分 34までのいずれかに属する商品を指定する後行商標出願の登録を妨げるものであってはならない。このことは、区分35の「消費者の便宜のために種々の商品を一緒にすること」、「販売管理」および「商品のオンライン販売サービス」は、区分25の「シャツ」および「ズボン」と同一性質のものではないとする新審査基準でも確認されている(新審査基準90頁参照)。詳細は「5.商品・役務間の類似性または非類似性」で後述する。
・「小売役務“retail services”」、「卸売役務“wholesale services”」、「販売役務“sale services”」に使用する提供商品が具体的に表示されている場合は、当該商標の商品とは性質が異なる商品を提供する他の商標とは無関係とみなされる。
例えば、「バッグの小売店舗サービス」と「化粧品の小売店舗サービス」のように、提供する商品が異なる小売サービス間の関連性を検討した前例はない。しかし、「3.商品の類似性・非類似性」に記載したようなアプローチにより、販売する特定の商品間の関連性を検討すべきであると考える。特に、商品が同じ性質のものでない場合、または同じ需要者グループを対象としていない場合は、関連性がなく、混同の可能性は生じない。同様に、関連性のない商品を提供する小売サービスも、需要者に混同を生じさせるものではないと考えられる。例えば、「化粧品産業で使用する化学薬剤の小売サービス」と「無菌包装で使用する過酸化水素水溶液の小売サービス」は、商標審決番号246/2563(2020)に基づくと、特定商品の使用目的により関連性が認められない、と考えられる。
4-3. 不使用取消
法第63条によれば、3年間使用されていない商標登録は、不使用を理由に取消される可能性がある。しかし、実際には、不使用取消は、不使用の立証責任を申立人が負うため、非常に困難である。審判部は、商標権者が使用を証明する証拠を全く提出せず、反駁しない場合であっても、不使用の証明が不十分であるという理由で申立を却下するケースもある。不使用の場合であっても、商標権者は、不使用が特別な事情によるものであり、商標を放棄する意図によるものではないことを証明することにより、防御することができる。例えば、商標権者が特定の商品または役務に関して商標を使用している場合、商標権者に商標を放棄する意思がないと解釈することができる。法律は、特定の商品および役務に対する部分的取消の可能性も明示していない。
4-4. 役務を指定する際の考慮事項
審査官は、指定役務記載の可否を判断する際に、中編「3-4. 商品を指定する際の留意点」で説明した基準を同様に適用する。また、出願人は、意図する役務を項目ごとに明確に指定しなければならない。しかし、区分1~34では認められない広範な商品が、役務の説明では含まれることがある。例えば、「区分5:食品サプリメント」および「区分25:衣料品」という商品は認められないが、「食品サプリメントに関する小売サービス」および「衣料品の小売サービス」というサービスの指定は、区分35で認められる。したがって、出願人は、サービスの範囲を不必要に限定しないよう、前記「タイで商標登録出願された商品・サービス一覧」に掲載されている最新の商品・役務許容リストを常に入手する必要がある。
5. 商品・役務間の類似性または非類似性
DIPは、各区分においてクロスチェックの対象となる関連区分のリストをウェブサイトで提供している。下表は、区分1から34までの商品に対する区分35から45までの役務との関連区分と、役務に対する商品との関連区分とのリストをDIPのウェブサイトから抜粋したものである。なお、このリストで指定されている以外の区分についてもクロスチェックが行われる例もあることに留意されたい。
区分 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
関連区分 | 35 | 35 | 35,42,44 | 35 | 35,42,44 |
区分 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
関連区分 | 35 | 35,37 | 35 | 35,37,38,41,42 | 35,44 |
区分 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
関連区分 | 35,37 | 35,37,39 | 35 | 35,37 | 35 |
区分 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 |
関連区分 | 35,37,41 | 35 | 35 | 35,37,42 | 35,37,43 |
区分 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
関連区分 | 35 | 35 | 35 | 35 | 35,40,45 |
区分 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
関連区分 | 35,40 | 35 | 35,41 | 35,42,43 | 35,42,43 |
区分 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 |
関連区分 | 35,42,43 | 35,42,43 | 35,42,43 | 35 | – |
区分 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40 |
関連区分 | – | – | 9 | 12 | – |
区分 | 41 | 42 | 43 | 44 | 45 |
関連区分 | 9 | 9 | – | – | – |
クロスチェックとは別に、審査官は、「前編2-2.3)(C)商品・役務の関連性・非関連性の検討」に記載されたアプローチに沿って、特定の商品・役務の関連性を検討する。
上記のアプローチに加え、新審査基準では、広範な役務の記載は、狭義の商品の記載と同じ性質を有するとはみなされないことが具体的に規定されている(新審査基準90頁参照)。その例は以下の通り:
・区分35の「消費者の便宜のために各種の商品を集めること」、「販売管理」、「商品のオンライン販売サービス」は、区分25の「ワイシャツ」、「ズボン」と性質が異なる。
・区分43の「飲食店サービス」は、区分30の「茶、コーヒー、ココア」、区分32の「飲料、水(飲料)」、区分33の「酒類、蒸留アルコール飲料」と性質が異なる。
・区分44の「美容サービス」は、区分3の「皮膚栄養クリーム」と性質が異なる。
商品と役務の関連性を判断する際のアプローチを示す商標審決例を以下に示す。
(A) 商品と役務とが関連しているとみなされた例
① 商標審決番号1617/2560(2017)
出願商標:
区分19:非金属建材、建築用硬質非金属パイプ、建築用非金属材料シート、建築用非金属板、建築用非金属ポータブル構造部品
引用商標:
区分43:倉庫の建設、工場の建設、店舗の建設、家屋の建設、倉庫の建設、工場の建設、店舗の建設、家屋の建設、建設に関するコンサルタント業など
理由:引用商標の役務は建設サービスに関するものであるため、両者の商品/役務は同じ性質のものであるとした。
注目点:建築材料である出願商標の商品が引用商標の建築サービスの提供に使用できることから、両商標の商品と役務とは同じ性質であると考えることができる。
② 商標審決番号106/2559(2016)
出願商標:
区分42:個人用電子機器に関するオンライン問題の処理、個人用電子機器の技術サポート
引用商標:
区分9:オーディオテープレコーダー、スピーカ、コンピュータ等
理由:両商標は異なる区分に属するが、両商標の商品とサービスは同じ性質であり、混同の可能性がある、とした。
注目点:両商標の商品および役務が、電子機器という同じ分野に関するものであることから、両商標の商品および役務が同じ性質のものであると考えることができる。
(B) 商品と役務が無関係とみなされた例
① 商標審決番号921/2564(2021)
出願商標:
区分11:空気濾過媒体、空気濾過装置、空気濾過装置用フィルター、音響媒体
引用商標:
区分37:車両注油、車両保守、車両整備、車両修理、車両洗浄
理由:両商標の商品と役務は異なる区分であり、それぞれの使用目的は特定されている。その結果、両商標の商品と役務は同じ性質のものではなく、混同の可能性は生じない。
注目点:両商標の商品・役務の具体的な使用目的または提供目的が重複しているかどうかを検討する。
② 商標審決番号371/2562(2019)
出願商標:
区分44:美容施術に関する助言サービス、美容コンサルタント、美容施術等
引用商標:
区分3:皮膚栄養クリーム
理由:両商標は化粧品に関連するが、異なる需要者グループを対象としており、異なる取引経路を通じて提供されている。その結果、出願商標の商品と引用商標の役務は同じ性質のものではない、とした。
注目点:区分とは別に、商品の関連要素、すなわち、需要者の対象グループと取引経路も考慮した結論となっている。本審決例と新審査基準に基づき、商品と役務の類似性・非類似性を判断する際、例えば、商品と役務の意図された目的が合致しているか、商品と役務が対象とする需要者が一致しているかなど、タイと日本は、その判断方法を共有している。
さらに、タイは、欧州の商標審査基準に規定されている要因の一部、すなわち、商品・役務の性質や意図する目的を考慮している。
6. まとめ
DIPおよび裁判所は、商品および役務の類似性を判断するために、商標の国際分類(区分)のみならず、例えば、商品および役務の性質、商品の使用または役務の提供の目的、生産段階における関連性、対象需要者、取引経路、商品または役務の価格等の様々な要素を考慮している。
【クロスチェックリストの閲覧方法】
(1) DIPのウェブサイト https://search.ipthailand.go.th/ に接続する。
(2) クリック
(3) クリック
(4) 何も入力せず、ここをクリック
(5) 区分 ニース分類 Class Heading 関連区分(商品・役務)
46はDIP独自分類で証明商標を、47は団体商標を示し、全区分に関連する。
韓国における小売役務の保護の現状
韓国では、2007年以降「特定商品に対する小売業」をニース国際分類第35類の役務に指定して商標登録を受けることができるようになっており、2012年以降は「百貨店業、スーパーマーケット業、大型割引店業」などの総合卸売業および総合小売業も役務として指定可能となっている。まずは、韓国における「小売業(Retail Services)」に関する商標法での保護を沿革的に見た後、現状を説明することとする。
2007年改正商標法施行規則の内容
旧商標法(全部改正 1990.1.13、1990.9.1施行、法律第4210号)第2条では、「サービスマーク」を「役務を営む者」が使用する標章として規定しており、卸売業および小売業を商標法上登録可能な役務としていなかったため、慣行的に「販売代行業、百貨店管理業、スーパーマーケット管理業」などで出願しなければならなかった。
これに関して、特許法院1999.5.27宣言98허(ホ)6612判決では、小売業者が指定役務を「生活必需品販売店管理業」としてサービスマーク登録を受けた後、自分が所有する生活必需品販売店に看板を掲げて直接運営した事案において、「生活必需品販売店管理業とは他人が所有または経営する生活必需品販売店の店舗の数が多いか少ないかに関わらず、役務に含まれないと解釈することが相当である。」と判示して不使用を理由としてサービスマーク登録の取消を認めた。
上記判決により、卸売業または小売業でありながら販売代行業、販売斡旋業または販売店管理業を指定役務として出願して登録を受けた場合、当該役務に対するサービスマーク的使用ではないとしてその登録が取り消される問題が生じた。これに対して、2007年1月1日に施行された改正商標法施行規則では、上記の問題点を解消して国際的な傾向に合わせるようにニース国際分類第9版の採用に合わせて、商標法施行規則別表2の第35類に卸売業と小売業を追加し、卸売業および小売業が商標法上第35類の役務として登録を受けることができるようになった。
2012年改正商標法施行規則の内容
2007年改正商標法施行規則によると、卸売業および小売業を出願するためには「特定商品に対する卸売業および小売業」または「同種の商品群に分類可能な商品集団に対する卸売業および小売業」のように役務の対象を具体的に記載しなければならず、総合卸売業および総合小売業は認められなかった。
しかし、2012年改正商標法施行規則では、ニース国際分類第10版の商品分類および取引実情を反映して、「百貨店業、スーパーマーケット業、大型割引店業」などの総合卸売業および総合小売業を役務として認め、総合卸売業および総合小売業も商標として登録を受けることができるようになった。
2016年全部改正商標法による保護態様
また、2016年9月1日に施行された全部改正商標法は、商標の定義規定を「商標とは自己の商品(地理的表示が使用される商品の場合を除いて、役務または役務の提供に関連したものを含む。以下同じ。)と他人の商品を識別するために使用される標章をいう(第2条第1項第1号)」と改正して、商標とサービスマークの区別を廃止し、多様な形態の商品および役務を商標と一元化して保護できるようにしている。
2016年改正商標法施行規則では、従来包括名称と分類されていた「百貨店業、スーパーマーケット業、大型割引店業」などの総合卸売業および総合小売業を類似群コードS2090から見て狭義の類似群コードに分類して、「特定商品に対する小売業」と「総合卸売業および総合小売業」の区分を明確にした。
小売業に対する保護の現状
現在は、韓国商標法に基づき、ニース国際分類第11版の商品分類基準により第35類の具体的な小売業を指定して商標として出願することができる。出願時に、指定役務を「小売業」と指定した場合には、役務の名称が不明確であるという拒絶理由が通知されるため、指定役務を「特定商品に対する小売業」、「同種の商品群に分類可能な商品集団に対する小売業」または「告示された包括商品名称に対する小売業」などと指定して出願しなければならない。
同種の商品群に分類可能な商品集団の範囲は、該当商品または商品集団の取引実態、需要者の範囲、供給取引先などを総合的に考慮して判断し、告示された商品の名称を基準に出願することが一般的である(例:家具小売業、靴小売業、文房具小売業など)。総合卸売業および総合小売業に対して出願する場合、「百貨店業、スーパーマーケット業、大型割引店業、コンビニエンスストア業、インターネット総合ショッピングモール業、電気通信による通信販売仲介業」の告示された名称を指定して出願することができる。
小売業に対して商標登録を受けた後は、商標としての独占的使用権、他人に対する使用禁止権および登録排除効を有する。特に、使用禁止権および登録排除効に関して、他人の商標および商品または役務と類似判断が問題となることがあるが、審査基準では役務間の類似判断において、総合卸売業および総合小売業である「百貨店業、大型割引店業、スーパーマーケット業、コンビニエンスストア業、インターネット総合ショッピングモール業、電気通信による通信販売仲介業」は互いに類似した役務と推定し、これら「総合卸売業および総合小売業」と「個別商品に対する小売業」は非類似と推定される(例えば、「百貨店業」と「化粧品小売業」は非類似と推定される)。
また、「小売業」と小売業の対象となる「商品」の類似は、商品と役務との間の同種性を基準に判断される。ここで、同種性とは「当該商品がなければ当該役務が存在できないほど極めて密接な関係がある場合」をいうが、特許法院2011.5.19宣告2011ホ1616判決では「ゴルフグローブ、ゴルフボール」と「スポーツ用具小売業」を類似と判断しており、特許法院2011.12.14宣告2011ホ8655判決では「人参ジュース、乳酸菌飲料、ヨーグルト、酵母」と「健康機能食品小売業」を類似と判断した。
したがって、一般的に「小売業」とその対象となる「商品」は、出所混同の恐れがあるとみて類似と判断されており、「小売業」に対する商標出願を行う場合は、小売業の対象となる商品に対する先行商標も調査する必要がある。
また、小売業は商品の流通過程で用役を提供するサービスに該当するため、販売の対象となる商品に商標を付する場合には、「小売業」とその対象となる「商品」の両方を出願することを検討する必要がある。
韓国における小売役務の保護の現状
韓国では、2007年以降「特定商品に対する小売業」をニース国際分類第35類の役務に指定して商標登録を受けることができるようになっており、2012年以降は「百貨店業、スーパーマーケット業、大型割引店業」などの総合卸売業および総合小売業も役務として指定可能となっている。まずは、韓国における「小売業(Retail Services)」に関する商標法での保護を沿革的に見た後、現状を説明することとする。
2007年改正商標法施行規則の内容
旧商標法第2条では、「サービスマーク」を「役務を営む者」が使用する標章として規定しており、卸売業および小売業を商標法上登録可能な役務としていなかったため、慣行的に「販売代行業、百貨店管理業、スーパーマーケット管理業」などで出願しなければならなかった。
これに関して、特許法院1999.5.27宣告98허6612判決では、小売業者が指定役務を「生活必需品販売店管理業」としてサービスマーク登録を受けた後、自分が所有する生活必需品販売店に看板を掲げて直接運営した事案において、「生活必需品販売店管理業とは他人が所有または経営する生活必需品販売店をその他人に代わって管理する役務を提供し、その対価をもらって自分の収入とすることを業とすることをいい、自分の生活必需品販売店を所有する者が自ら自分の販売店を運営することは、その生活必需品販売店の店舗の数が多いか少ないかに関わらず、役務に含まれないと解釈することが相当である。」と判示して不使用を理由としてサービスマーク登録の取消を認めた。
上記判決により、卸売業または小売業でありながら販売代行業、販売斡旋業または販売店管理業を指定役務として出願して登録を受けた場合、当該役務に対するサービスマーク的使用ではないとしてその登録が取り消される問題が生じた。これに対して、2007年1月1日に施行された改正商標法施行規則では、上記の問題点を解消して国際的な傾向に合わせるようにニース国際分類第9版の採用に合わせて、商標法施行規則別表2の第35類に卸売業と小売業を追加し、卸売業および小売業が商標法上第35類の役務として登録を受けることができるようになった。
2012年改正商標法施行規則の内容
2007年改正商標法施行規則によると、卸売業および小売業を出願するためには「特定商品に対する卸売業および小売業」または「同種の商品群に分類可能な商品集団に対する卸売業および小売業」のように役務の対象を具体的に記載しなければならず、総合卸売業および総合小売業は認められなかった。
しかし、2012年改正商標法施行規則では、ニース国際分類第10版の商品分類および取引実情を反映して、「百貨店業、スーパーマーケット業、大型割引店業」などの総合卸売業および総合小売業を役務として認め、総合卸売業および総合小売業も商標として登録を受けることができるようになった。
2016年全面改正商標法による保護態様
また、2016年9月1日に施行された全面改正商標法は、商標の定義規定を「商標とは自己の商品(地理的表示が使用される商品の場合を除いて、役務または役務の提供に関連した物を含む。以下同じ。)と他人の商品を識別するために使用される標章をいう(第2条第1項第1号)」と改正して、商標とサービスマークの区別を廃止し、多様な形態の商品および役務を商標と一元化して保護できるようにしている。
2016年改正商標法施行規則では、従来包括名称と分類されていた「百貨店業、スーパーマーケット業、大型割引店業」などの総合卸売業および総合小売業を類似群コードS2090から見て狭義の類似群コードに分類して、「特定商品に対する小売業」と「総合卸売業および総合小売業」の区分を明確にした。
小売業に対する保護の現状
現在は、韓国商標法に基づき、ニース国際分類第11版の商品分類基準により第35類の具体的な小売業を指定して商標として出願することができる。出願時に、指定役務を「小売業」と指定した場合には、役務の名称が不明確であるという拒絶理由が通知されるため、指定役務を「特定商品に対する小売業」、「同種の商品群に分類可能な商品集団に対する小売業」または「告示された包括商品名称に対する小売業」などと指定して出願しなければならない。
同種の商品群に分類可能な商品集団の範囲は、該当商品または商品集団の取引実態、需要者の範囲、供給取引先などを総合的に考慮して判断し、告示された商品の名称を基準に出願することが一般的である(例:家具小売業、靴小売業、文房具小売業など)。総合卸売業および総合小売業に対して出願する場合、「百貨店業、スーパーマーケット業、大型割引店業、コンビニエンスストア業、インターネット総合ショッピングモール業、電気通信による通信販売仲介業」の告示された名称を指定して出願することができる。
小売業に対して商標登録を受けた後は、商標としての独占的使用権、他人に対する使用禁止権および登録排除効を有する。特に、使用禁止権および登録排除効に関して、他人の商標および商品または役務と類似判断が問題となることがあるが、審査基準では役務間の類似判断において、総合卸売業および総合小売業である「百貨店業、大型割引店業、スーパーマーケット業、コンビニエンスストア業、インターネット総合ショッピングモール業、電気通信による通信販売仲介業」は互いに類似した役務と推定し、これら「総合卸売業および総合小売業」と「個別商品に対する小売業」は非類似と推定される(例えば、「百貨店業」と「化粧品小売業」は非類似と推定される。)。
また、「小売業」と小売業の対象となる「商品」の類否は、商品と役務との間の同種性を基準に判断される。ここで、同種性とは「当該商品がなければ当該役務が存在できないほど極めて密接な関係がある場合」をいうが、特許法院2011.5.19宣告2011허1616判決では「ゴルフグローブ、ゴルフボール」と「スポーツ用具小売業」を類似と判断しており、特許法院2011.12.14宣告2011허8655判決では「人参ジュース、乳酸菌飲料、ヨーグルト、酵母」と「健康機能食品小売業」を類似と判断した。
したがって、一般的に「小売業」とその対象となる「商品」は、出所混同のおそれがあるとみて類似と判断されており、「小売業」に対する商標出願を行う場合は、小売業の対象となる商品に対する先行商標も調査する必要がある。
また、小売業は商品の流通過程で用役を提供するサービスに該当するため、販売の対象となる商品に商標を付す場合には、「小売業」とその対象となる「商品」の両方を出願することを検討する必要がある。