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韓国における特許・実用新案・商標・意匠の審決取消訴訟制度概要

 特許法院における審決取消訴訟手続は、訴状提出、訴状審査、訴状副本等送達、弁論準備手続(回付の場合)、弁論、および判決の手順で進められる。

特許法院での審決取消訴訟のフロー

1.訴状提出
(1) 特許審判院の審決に不服の場合、審決または決定の謄本の送達を受けた日から30日以内(別途付加期間あり)に特許法院(高等法院級に該当する)に提訴することができる(特許法第186条/実用新案法第33条/商標法第162条/デザイン保護法第166条)。

(2) 査定系の場合、特許庁長官を被告とする(特許法第187条/実用新案法第33条/商標法第163条/デザイン保護法第167条)。

(3) 原告は、訴状において以下の事項を具体的に記載しなければならない(審決取消訴訟の訴訟手続きガイドII.1.)。
・特許審判院における審判手続きの経緯
・審決の要旨(審判段階における当事者の主張及びそれに関する特許審判院の判断)
・審決理由のうち認める部分と認めない部分
・審決を取り消さなければならない事由に関する全ての主張
・関連事件(同一の特許権などに関する審判、訴訟が継続中の事件、以下同様)の表示
・証拠申請の計画などを初め、訴訟進行の全般に関する意見

2.訴状審査
(1) 訴訟の必須記載事項に欠缺(不備)がある場合は、裁判長は補正命令を行う(民事訴訟法第254条第1項)。欠缺を補正しなければ、訴えは却下される(民事訴訟法第254条第2項)。

(2) 裁判長は原告が訴状に引用した書証の謄本等を添付しない場合、これを提出するように命じることができる(民事訴訟法第254条第4項)。

3.訴状副本等送達
(1) 法院は訴状の副本を被告に送達しなければならない。しかし、副本を送達できない場合には、住所補正等を命じることができ、補正をしなければ訴えは却下される(民事訴訟法第255条第1項、第2項)。

(2) 被告は公示送達の場合を除き、訴状の副本の送達受領日から30日以内に答弁書を提出しなければならない(民事訴訟法第256条第1項)。

(3) 答弁書には以下の事項を記載しなければならない(審決取消訴訟の訴訟手続きガイドII.2.)。
・原告の請求趣旨に対する答弁
・原告の主張のうち認める部分と認めない部分
・原告の主張のうち、認めない部分に対する具体的な反論
・その他審決の結論を維持する上で必要な事由に関する主張
・関連事件の表示
・原告が提出した書証に対する認否
・証拠申請の計画などを初め、訴訟進行の全般に関する意見

(4) 法院組織法第62条の2に基づき、外国語による弁論を申請する当事者は外国語による弁論申請書を提出する。現在、国際事件で許容される外国語は英語である(審決取消訴訟の訴訟手続きガイドII.3.)。

4.弁論準備手続及び弁論
(1) 裁判長は当事者の攻撃防御方法の要旨を把握するのが難しいと認定する時には、当事者に争点と証拠の整理結果を要約した準備書面を提出するよう命じることができる(民事訴訟法第278条)。
 外国語で書かれた書証は翻訳文を添付しなければならない。特に、外国語の先行技術文献については、抜粋翻訳文ではなく、全文翻訳文を添付し、機械翻訳(自動翻訳)のものを提出してはならない。立証趣旨と関連のある部分はアンダーラインなどの方法で強調して表記する(審決取消訴訟の訴訟手続きガイドVI.3.)。
 関連する事件は、原則として併行審理とする。すなわち、同じ当事者間の同じ特許権などに関する侵害訴訟と審決取消訴訟が同じ裁判部で係属されており、その必要性が認められる場合、原則として両事件を併行して審理する(審決取消訴訟の訴訟手続ガイドIV.3.)。
 裁判長は、当事者の意見を聞き、両当事者とビデオ・音声の送受信により同時に通話ができる方法により、手続きの進行に関する事項を協議することができる(審決取消訴訟の訴訟手続ガイドIII.3.)。

(2) 裁判長は、当事者間の書面攻防が完了されれば、直ちに弁論期日を指定する事件、手
続きに関する協議又は弁論準備期日の指定が必要な事件などに分類する。主張及び証拠の整理若しくは技術説明会の開催が必要な場合、弁論準備期日を設け、当事者を出席させることができる。裁判長は受託裁判官を指定し、上記の手続きを担当させることができる(審決取消訴訟の訴訟手続きガイドIII.1.、III.4.)。
 一般的に、特許と実用新案事件は弁論準備手続を踏み、商標と意匠は弁論準備手続なしで弁論に進む。

(3) 弁論準備手続を終えた場合は、最初の弁論期日を経た後に弁論を終結することを原則としている(民事訴訟法第287条)。

(4) 当事者の争点整理等は上記のとおり書面で行うが、裁判は口頭弁論を重視する。両当事者は裁判官の前で、事件の争点につき口頭で説明・主張する。特許の場合は、しばしば、当事者が証人申請を行い、技術内容を正確に把握するために技術者(専門家証人)を参加させることもある(民事訴訟法第164条の2、審決取消訴訟の訴訟手続きガイドV.3.)。

(5) 当事者が外国人の事件、主な証拠調査が外国語で行われる必要がある事件、その他、これに准する国際的関連性がある事件について、当事者が同意し、裁判を著しく遅延させない場合、法院は当事者が法廷で、外国語で弁論することを許可することができる(審決取消訴訟の訴訟手続きガイドIII.1.)。

5.判決
(1) 判決は弁論が終結された日から2週以内に宣告される。しかし、特別な事情がある場合には4週以内に出される(民事訴訟法第207条第1項)。

(2) 判決は当事者が出席しなくても宣告することができる(民事訴訟法第207条2項)。