タイにおける指定商品、役務に関わる留意事項
【詳細】
タイ商標法(B.E. 2534)第9条は以下のように規定している。
タイ商標法第9条
商標の登録出願は、一つの分類もしくは複数の異なる分類に属する特定の商品について行うことができるが、保護を求める個々の商品の種類が明確に特定されていなければならない。
第9条は商品および役務の指定に厳密に関係している。この規定ゆえに、広範な指定商品および役務の記載は認容されないと解されている。
○適用されるニース分類(国際分類)の版
タイ知的財産局(Department of Intellectual Property : DIP)商標局は、2013年3月1日付で発効したニース分類第10版を一般的な指針として利用しているが、この分類に厳密に従っているわけではない。分類の見出しになっている商品および役務のみを指定することは認められない。たとえば、商標分類25の見出しである「被服、履物、帽子」という指定商品はいずれも認められない。他におもちゃ、袋、化粧品、化学品、アルコール飲料等も商標分類の見出しであるが、いずれも範囲が広すぎると見なされ認められない。
○分類ハンドブック
全ての分類に関して、指定商品および指定役務の審査は、2013年3月1日付で採択されたDIP商標局の「分類ハンドブック」を基準としている。このハンドブックは合計1209ページから成っている。2013年3月1日以降、ハンドブックの更新は行われていない。
残念なことに、このハンドブックはタイ語でのみ発行されている上、DIP内部では予告無しに変更されることがある。さらに、ハンドブックに記載されている品目であっても、登録官(日本における審査官に相当。)によって拒絶されることがある。たとえば、金属製建材という品目は「分類ハンドブック」に記載されているが、現在は認められないことになっている。つまり、専ら登録官の裁量に基づき、分類ハンドブックは随時変更されうるのである。
多くの登録官は、指定された商品および役務について過度に詳細な説明を認めない。「分類ハンドブック」に示されているような簡略な記述を好む傾向がある。
登録官の中には、広範な指定商品を複数の指定商品に置き換えて指定することを認めない人がいる、という点も考慮しておくべきである。一つの指定商品は必ず別の一つの指定商品によって置き換えられなければならない。登録官から特段の指示がない限り、指定商品および指定役務のリストに掲げられる品目の数は、出願書類提出時点でリストに入っていた指定商品の数を超えてはならない。指定商品および指定役務の追加をする際には事前に登録官の許可を得ることが望ましい。
○指定商品および指定役務の庁費用(オフィシャルフィー)への影響
庁費用計算のためには、指定商品および指定役務の数を明確に示されなければならない。
出願時、登録時、更新時の段階で、庁費用は指定商品および指定役務の数に応じて課金される。
出願時における現行の庁費用は、リストにある指定商品および指定役務の数に応じて500バーツである。登録時における現行の庁費用は、リストにある指定商品および指定役務の数に応じて300バーツである。更新時における現行の手数料は、商品および役務のリストにある品目ごとに1000バーツである。
出願もしくは登録に含まれる指定商品および指定役務の数は庁費用の合計額に影響することがあるため、指定商品および指定役務の数を把握しておくことは重要である。
○まとめ
明瞭かつ具体的な指定商品および指定役務の記載が要求される。出願人は出願前に、タイの商標代理人に対し、指定商品および指定役務を十分に検討させることが推奨される。