韓国における特許・実用新案出願制度概要
特許の出願手続フローチャート図
(*) 海外からの出願は、特許法第15条第1項の「交通が不便な地域」に相当するため、2回の延長が可能である。しかし、韓国国内からの出願は「交通が不便な地域」に相当する場合と相当しない場合があり、相当しない場合は1回しか認められない(特許法第15条第1項、実用新案は実用新案法第3条で準用、審判便覧第13編第2章第3節)。
特許の出願から登録までの手続は、上記フローチャートに示したように、主に、(1) 出願、(2) 方式審査、(3) 出願公開、(4) 実体審査、(5) 登録の手順で進められる。実用新案についても、現在は審査制度が採用されており、特許と同様のフローとなる。
(1)出願
・韓国語での出願を原則とするが、外国語(英語のみ)での出願も可能である(特許法第42条の3、実用新案法第8条の3、特許法施行規則第21条の2、実用新案法施行規則第3条の2)。
・明細書に論文や研究ノート等、完成された「アイデア説明資料(発明の説明)」を記載して出願し、または、請求範囲を記載せず出願しても出願日認定される。ただし、認定期間内(最先の優先日から1年2か月以内)に正式明細書形式(発明の説明+請求範囲)に補正が必要である(特許法第42条の2、実用新案法第8条の2)。
・PCT出願による国内段階移行は、優先権主張日または国際出願日から2年7か月以内(1か月延長可能であるが、事前に書面提出が必要)に、韓国語による翻訳文を提出しなければならない(特許法第201条、実用新案法第35条)。
・自身の発明を出願前に公開した場合、公開後、12か月以内に出願すれば、新規性および進歩性について、新規性の喪失の例外の適用を受けることができる(特許法第30条、実用新案は実用新案法第11条により準用)。
・自発補正は、特許決定の謄本送達前または拒絶理由通知(韓国語「의견제출통지(意見提出通知)」)前まではいつでも可能である(特許法第47条、実用新案は実用新案法第11条により準用)。
・特許と実用新案の二重出願はできないが、出願変更は可能である(特許法第53条、実用新案法第10条)。
・分離出願とは既存の分割出願制度とは異なる新しい制度であり、特許拒絶決定不服審判請求で棄却される場合に、審判請求の対象となる特許拒絶決定での拒絶決定されない請求項のみを分離して出願できる制度である。
この分離出願は審決の謄本の送達を受けた日から30日(付加期間を定めた場合にも、その期間をいう。)以内に行うことができる。
また、分離出願は新たな分離出願、分割出願または実用新案法第10条による変更出願の基礎とはならない(特許法第52条の2)。
(2)方式審査
出願書類等が不備である場合、補正指示が発付される。これに応じなければ、出願が不受理となる(特許法施行規則第11条、実用新案は実用新案法施行規則第17条により準用)。
(3)出願公開
・特許出願日(優先日、PCT出願日)から1年6か月が経過すれば、出願が公開される(特許法第64条、実用新案は実用新案法第15条により準用)。
・申請により早期出願公開が可能である(特許法施行規則第44条、実用新案は実用新案法施行規則第17条により準用)。
(4)審査請求および実体審査
審査請求は、出願と同時または出願日(PCT出願日)から3年以内(2017年3月1日以後の出願から)に、何人も請求することができる(特許法第59条、実用新案法第12条)。
・審査で拒絶理由がない場合
審査で拒絶理由がない場合、特許査定(韓国語「특허결정(特許決定)」)となる。特許査定書を受けてから3か月以内に3年次分の登録料を納付すれば、特許証が発行される(特許法第66条および第79条、実用新案は実用新案法第15条により準用)。
・審査で拒絶理由がある場合
審査で拒絶理由がある場合、拒絶理由通知書(韓国語「의견제출통지서(意見提出通知書)」)を発付する。これに対し、意見書・補正書を提出すれば、再度審査し、拒絶理由が解消されれば、特許査定となる(特許法第63条、実用新案法第14条)。
意見書提出後、拒絶理由が解消されない場合
意見書および補正書を受けて再度審査したが、通知された拒絶理由をすべて解消できていない場合、拒絶査定(韓国語「거절결정(拒絶決定)」)がなされる(特許法第62条、実用新案法第13条)。他方、提出された補正書により通知された拒絶理由は全て解消されているが、補正により新規事項や記載不備が追加された場合は、最後の拒絶理由通知書が発付される(特許法第47条第1項ただし書第2号、実用新案は実用新案法第11条により準用)。また、補正とは別に新しく拒絶理由が発見された場合に、再度新たに拒絶理由通知書が発付されることもある(特許法第47条第1項ただし書第1号、実用新案は実用新案法第11条により準用)。
(5)登録
・登録査定されると、3か月以内に分割出願が可能である。ただし、登録料を納付して権利の設定登録がなされた後には分割出願を行うことはできない(特許法第52条第1項第3号、実用新案は実用新案法第11条により準用)。したがって、分割出願の必要性の有無を確認した後、登録料を納付するのが望ましい。
・登録時に3年分の登録料を一括納付しなければならず(特許法第79条、実用新案法第16条)、その後、年金を納付し続ければ、特許出願日から20年間特許権(実用新案の場合は10年間)が存続する(特許法第88条、実用新案法第22条)。
・他の法令に定める許可や登録等のために特許が実施できない期間があるときは、5年を限度に当該特許権の存続期間を延長することができる(特許法第89条)。
・2011年改正(2012年3月15日施行)により、審査期間の遅延分を補填する延長制度が設けられ、特許出願日から4年、または審査請求日から3年のうちの遅い日からさらに遅延して特許権の設定登録が行われた場合、出願人の請求により、その遅延した期間だけ存続期間を延長することができる(特許法第92条の2から第92条の5、実用新案法第22条の2から第22条の5)。
(6)拒絶査定を受けた場合の対応
(a)再審査請求
・2009年7月1日施行の改正特許法で、再審査制度が導入された。従前は、拒絶査定を受けた場合、審査官による再度の審査を受けるためには、必ず拒絶査定不服審判請求し補正を行うような審査前置制度があったが、改正以降の出願は、拒絶査定不服審判を請求せずに、拒絶査定謄本の送達日から3か月以内(30日以内の期間について2回延長可能)に、明細書または図面を補正する補正書と再審査を請求する旨を記載した書類を提出すれば再審査を受けることができる。ここで拒絶理由がすべて解消されれば、特許査定となる(特許法第67条の2、実用新案は実用新案法第15条により準用)。
(b)拒絶査定不服審判
・拒絶査定後には、再審査請求または拒絶査定不服審判のいずれか一方を、拒絶査定送付日から3か月以内(30日以内の期間について2回延長可能)に請求することができる(特許法第132条の17、実用新案は実用新案法第15条により準用)。
・再審査請求後、拒絶査定されたときにも、再拒絶査定書送付日から3か月以内(30日ずつ2回延長可能)に拒絶査定不服審判を請求することができる(特許法第132条の17、実用新案は実用新案法第33条により準用)。拒絶査定不服審判請求可能期間中に分割出願もできる(特許法第52条、実用新案は実用新案法第11条により準用、特許・実用新案審査基準第5部第3章8(1)③)。
・拒絶査定不服審判請求の際は、明細書および図面等の補正をすることができない(規定がない)。そのため、再審査請求後の再拒絶査定に対しては、拒絶理由を解消できる可能性が低い請求項を含む出願においては、原出願では審判請求をせず、補正の機会を有する分割出願のみで権利化を求めることが実務上多い。
・拒絶査定不服審判が請求されれば、審理を行い、審査局に差戻しまたは拒絶査定を維持すると審決する。審決に不服があれば、特許法院に審決取消訴訟をすることになり、その次は大法院に上告することができる(特許法第170条および第176条、第186条)。
・拒絶査定不服審判が棄却された場合、棄却から30日以内に、審判請求の対象となる特許拒絶決定で拒絶されていない請求項のみを新しい特許出願として分離出願できる(特許法第52条の2)
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「韓国における特許審判制度の大変化」(2022.01.06)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/21339/