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フィリピンにおける特許、実用新案、および意匠の年金/更新制度の概要

1.特許権
 フィリピンにおける特許権の権利期間は、出願日(PCTに基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である(知的財産法第54条)。年金は、PCT出願の場合は国際公開日、フィリピンへの直接出願あるいはパリ条約による優先権を主張した出願の場合はフィリピン国内での公開日を起算日として5年次から発生し、特許出願が登録されたかどうかに関わらず、出願の係属中であれば納付を行う必要がある(知的財産法 第55条、2022年特許・実用新案・意匠に関する改正施行規則(以下、施行規則という)1100、1101)。

 請求項の数が5を超える場合は超過料金を納付する必要がある(施行規則1100および審査マニュアル1.6.1)。年金はフィリピン国内に在住する者のみが支払うことができる(知的財産法第33条)。

 納付期限日までに年金の納付が行われなかった場合、フィリピン知的財産庁よりその旨が電子公報に公告され、出願人、権利者もしくはフィリピン国内に在住する代理人に通知される。当該公告日から6か月以内であれば、年金の追納が可能である。追納期間中に、所定の年金費用、追徴金および公告費用、加えて該当する場合はクレーム超過費用を同時に支払う必要がある(施行規則1102)。

 上記の通り、追納期間経過までに年金を納めない場合、出願または特許権は失効し、回復されない(施行規則1100、1102、知的財産法第55.2条)。特許権を権利放棄したい場合は、所定の宣誓書をフィリピン知的財産庁に提出することにより、放棄手続を行うことも可能である(知的財産法第56.1条、施行規則1206)。また、取下宣言書を提出し出願を取下げることもできるが、任意に取下げられた出願は、回復されず、権利放棄したとみなされる(施行規則930)。

参考:年金納付Form https://drive.google.com/file/d/14W5sbeT2jKFisa0zzBRd274lw5o3Pmtj/view

2.実用新案権
 実用新案権の権利期間は出願日から7年であり、更新することはできない(知的財産法第109.3条、規則1415)。また、特許権のような年金納付は不要であるが、出願時に公告手数料の納付が必要となる(知的財産法第109条、規則1404,1407,1411)。

 実用新案の権利を放棄したい場合は、所定の宣誓書をフィリピン知的財産庁に提出することにより放棄手続が可能である(知的財産法第108条に基づく第56.1条)。また、取下宣言書を提出し出願を取下げることもできるが、任意に取下げられた出願は、回復されず権利放棄したものとみなされる(規則1414)。

3.意匠権
 意匠権の権利期間は出願日から15年である。まず、意匠権が登録になると出願日を起算日として5年の権利期間が与えられる。その後、6年次前と11年次前に更新手数料の納付を行うことで、合計で最長15年の権利期間を得ることができる。更新手数料は登録期間満了前12月以内に納付しなければならない(知的財産法第118条、規則1518、1519)。更新手数料はフィリピンに在住する者のみが支払うことができる(知的財産法第33条)。

 納付期限までに更新手数料の納付が行われなかった場合、納付期限日から6か月以内であれば追納が可能である(知的財産法第118条、規則1519)。追納期間中は、所定の更新手数料と追徴金を同時に支払う必要がある。特許と同様、更新手数料の未納により失効した意匠権の回復制度は存在しないため、注意が必要である。

 上記の通り、追納期間経過までに更新手数料を納付しない場合、意匠権は失効する。権利を放棄したい旨を記した宣誓書をフィリピン知的財産庁に提出することにより、放棄手続を行うことも可能である(知的財産法第119条に基づく第56条)。取下宣言書の提出により、任意に取下げられた出願については、権利の回復を行うことはできない(規則1515、1517)。

参考:更新手数料納付Form https://drive.google.com/file/d/1tdZy_-N4KAPFPONFpdtZ63fLJ3-0y4dJ/view

4.その他
 フィリピン知的財産庁側に過失がなく支払われた全ての料金および超過料金は、返金されない。ただし、フィリピン知的財産庁側に過失がある場合は、納付日から30日以内に、返金を請求することができる。納付を行った日から30日を経過した後や、返金請求の理由が妥当ではない場合は返金されないため、注意が必要である(図1の赤線で囲んであるフィリピン知的財産庁(IPOPHL)サイトの「Online Payment FAQs」(https://www.ipophil.gov.ph/help-and-support/online-payment-faqs/)の「How do I request for reversal of payment, credit card refund or Error or Mistake in Payment?」の項目を参照)。なお、フィリピン知的財産庁(IPOPHL)のHPは、アンチウィルスソフトによっては閲覧不可と表示される場合がある。

図1 IPOPHL 「Online Payment FAQs」画面

フィリピンにおける特許年金制度の概要

  1. 特許権

 

フィリピンにおける特許権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である。年金発生の起算日は、PCT出願の場合は国際公開日、フィリピンへの直接出願あるいはパリ条約による優先権を主張した出願の場合はフィリピン国内での公開日である。年金はこれらの公開日を起算日として5年次から発生し、特許出願が登録されたかどうかに関わらず、出願の係属中であれば納付を行う必要がある。各年の年金納付起算日は、国際公開日あるいはフィリピン国内での公開日である。

 

年金の金額は請求項数により変動する。年金はフィリピン国内に在住する者のみが支払うことができる。

 

意図しない特許権に対して年金を誤って納付してしまった場合や、所定の納付金額を超えて納付を行った場合、年金は返金されない。ただし、フィリピン特許庁側に過失がある場合は、年金納付を行った日から30日以内であれば、返金を請求することができる。納付を行った日から30日を経過した後や、返金請求の理由が妥当ではない場合、納付された年金は返金されない。

 

納付期限日までに年金の納付が行われなかった場合、フィリピン特許庁よりその旨が公開され、出願人、権利者もしくはフィリピン国内に在住する代理人に通知される。当該公開日から6ヶ月以内であれば、年金の追納が可能である。追納期間中は、所定の年金費用に加えて、追徴金と公告費用を同時に支払う必要がある。

 

 

上記の通り、追納期間経過までに年金を納めない場合、特許権は失効するが、権利を放棄したい旨を記した宣誓書をフィリピン特許庁に提出することにより、積極的に放棄を行うことも可能である。権利放棄の宣誓書の提出によって出願を取下げもしくは権利を放棄した場合も、その後、権利の回復を行うことはできない。

 

  1. 実用新案権

 

実用新案権の権利期間は出願日から7年である。フィリピンの実用新案権を維持するにあたっては、年金の納付は必要ない。

 

実用新案の権利を放棄したい場合は、権利を放棄したい旨を記した宣誓書をフィリピン特許庁に提出することで、出願の取下げもしくは権利の放棄が可能である。権利放棄の宣誓書の提出によって出願を取下げもしくは権利を放棄した場合も、その後、権利の回復を行うことはできない。

 

  1. 意匠権

 

意匠権の権利期間は出願日から15年である。まず、意匠権が登録になると出願日を起算日として5年の権利期間が与えられる。その後、6年次と11年次に年金の納付を行うことで、計15年の権利期間を得ることができる。年金納付の起算日は出願日であり、年金は意匠出願が登録されたかどうかに関わらず、係属中であれば納付を行わなければならない。

 

年金はデザイン数によって変動する。年金はフィリピンに在住する者のみが支払うことができる。

 

意図しない意匠権に対して年金を誤って納付してしまった場合や、所定の納付金額を超えて納付を行った場合、年金は返金されない。ただし、フィリピン特許庁側に過失がある場合は、年金納付を行った日から30日以内であれば、返金を請求することができる。納付を行った日から30日を経過した後や、返金請求の理由が妥当ではない場合、納付された年金は返金されない。

 

納付期限までに年金の納付が行われなかった場合、納付期限日から6ヶ月以内であれば追納が可能である。追納期間中は、所定の年金費用と追徴金を同時に支払う必要がある。特許と同様、年金の未納が原因で失効した意匠権の回復制度は存在しないため、注意が必要である。

 

上記の通り、追納期間経過までに年金を納付しない場合、意匠権は失効するが、権利を放棄したい旨を記した宣誓書をフィリピン特許庁に提出することにより、積極的に放棄を行うことも可能である。権利放棄の宣誓書の提出によって出願の取下げもしくは権利を放棄した場合も、その後、権利の回復を行うことはできない。

マレーシアにおける特許年金制度の概要

  1. 特許権

 

 マレーシアにおける特許権の権利期間は、特許出願が行われた日によって次のように異なっている。出願日が2001年8月1日を含み同日以降の場合、権利期間は出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である。出願日が2001年8月1日より前の場合は、権利期間は出願日から20年もしくは登録日から15年のどちらか長い方となる。年金は特許の登録後、登録日を起算日として2年次から発生する。年金納付期限日の起算日は登録日である。権利期間の延長制度は存在しない。

 

 年金の納付はマレーシア国内の法曹資格を有する者であれば可能であるが、出願代理人以外の者が納付する場合、委任状等の書面の提出と手数料の納付が必要となる。

 

 意図しない特許権に対して誤って年金を納付してしまった場合や、所定の納付金額を超えて納付した場合、年金は返金されない。

 

 納付期限日までに年金納付が行われなかった場合、納付期限日から6ヶ月以内であれば年金の追納が可能である。その場合、所定の年金金額に加えて追徴金を同時に納付しなければならない。

 

 追納期間を超えて年金納付がされなかった場合や追徴金の納付漏れがあった場合、権利は失効する。年金の未納により権利が失効した場合は、公報にその旨が掲載されるが、公報掲載日から2年以内であれば権利回復の請求を行うことが可能である。権利を回復するには、期限内に年金を納付することができなかった理由等を記した所定の書面を提出し、未納分の年金と追徴金に加えて回復費用を納付する必要がある。

 

  1. 実用新案権

 

 実用新案権の権利期間は、出願日から20年である。年金は実用新案の登録後、登録日を起算日として3年次から発生する。年金納付期限日の起算日は登録日である。権利期間の延長制度は存在しない。

 

 実用新案権については、納付年次によって年金納付とは別に更新手続が必要となる点に留意しなければならない。実用新案が登録になると、まず出願日から起算して10年の権利期間が与えられる。その後、11年次と16年次にそれぞれ5年分の権利期間の更新手続を行うことで、計20年の権利期間を得ることができる。更新手続には、当該実用新案が商業的に実施されていることを示す証明もしくは実施されていない場合はその理由を記した文書をマレーシア特許庁に提出し、更新手数料を納付しなければならない。年金納付期限日は登録応当日である一方、更新手続きの期限日は出願応当日である点に注意が必要である。

 

 年金の納付はマレーシア国内の法曹資格を有する者であれば可能であるが、出願代理人以外の者が納付する場合、委任状等の書面の提出と手数料の納付が必要となる。

 

 意図しない実用新案権に対して年金を誤って納付してしまった場合や、所定の納付金額を超えて納付を行った場合、年金は返金されない。

 

 特許権と同様に、追納制度、回復制度がある。

 

  1. 意匠権

 

 意匠権の権利期間は出願日もしくは優先権を主張している場合は優先権主張日から25年である。年金は意匠出願が登録査定を受けたかどうかに関わらず、その出願中に係属中であれば発生する。意匠が登録になると、最初に5年間の権利期間が与えられ、その後6年次、11年次、16年次、21年次に5年分の権利期間の延長として年金納付を行うことで、計25年の権利期間を得ることができる。年金納付期限日の起算日は出願日もしくは優先権を主張している場合は優先権主張日である。権利期間の延長制度は存在しない。

 

 年金の金額はデザイン数によって変動する。年金の納付はマレーシア国内の法曹資格を有する者であれば可能であるが、出願代理人以外の者が納付する場合、委任状等の書面の提出と手数料の納付が必要となる。

 

 意図しない意匠権に対して年金を誤って納付してしまった場合や、所定の納付金額を超えて納付を行った場合、年金は返金されない。

 

 納付期限日までに年金納付が行われなかった場合、納付期限日から6ヶ月以内であれば年金の追納が可能である。その場合、所定の年金金額に加えて追徴金を同時に納付しなければならない。追徴金は納付期限日から時間が経過するにしたがって増額する。

 

 追納期間を超えて年金納付がされなかった場合や追徴金の納付漏れがあった場合、権利は失効する。年金の未納により権利が失効した場合は、公報にその旨が掲載されるが、公報掲載日から1年以内であれば権利回復の請求を行うことが可能である。権利を回復するには、年金の未納が当該意匠権者の意図ではない旨を記した所定の書面を提出し、未納分の金額に加えて回復費用を納付する必要がある。

ブラジルにおける特許年金制度の概要

  1. 特許権

ブラジルにおける特許権の権利期間は、原則として、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である。ただし、法律上、登録後最低10年間の権利期間は保障されているため、出願から登録までに10年以上かかった場合には、出願日から20年を超えて権利が存続されることがある。特定条件を満たす特許権に対して存続期間の延長を認める制度はない。年金は出願日を起算日として、3年次から発生する。年金は一年ごとに納付され、特許登録前、出願が係属中にも納付しなければならない。各年の年金納付期限日は出願応当日である。

年金はブラジル国内に住所または居所を有する者が納付することができる。

意図しない特許権や特許出願に対して年金を誤って納付してしまった場合、庁内で納付金を正しい納付先に変更することは認められていない。したがって、期限内に改めて正しい年金納付手続をする必要がある。年金納付金額に不足があった場合は、不足分のみを追加で納付し手続を補完することができる。

納付期限内に年金の納付が行われなかった場合、期限日から9ヶ月以内であれば追納が可能である。最初の3ヶ月間に限り追徴金が発生しないため、通常納付時の金額の年金を追納すれば権利を維持することができる。年金納付期限日から4ヶ月目からは追徴金が発生し、所定の年金に加えて追徴金も同時に納付しなければならない。追納期間を超えて年金納付がされなかった場合や追徴金の支払いがなされなかった場合、特許権については失効し、特許出願については出願が取下げられたものとみなされる。ただし、ブラジル特許庁から発行される失効通知から3ヶ月以内であれば特許権の回復、特許出願の再開が可能である。回復手続の際には、所定の年金と追徴金に加えて回復費用も支払う必要がある。

上記の通り、追納期間を超えて年金納付がされなかった場合に特許権は失効するが、権利を放棄したい旨を記した書面をブラジル特許庁に提出することにより、積極的に放棄を行うことも可能である。

  1. 実用新案権

実用新案権の権利期間は、原則として、出願日(PCT条約に基づく実用新案登録出願の場合は国際実用新案登録出願日)から15年である。ただし、法律上、登録後最低7年間の権利期間は保障されているため、出願から登録までに8年以上かかった場合には、出願日から15年を超えて権利が存続されることがある。特定条件を満たす登録実用新案権に対して存続期間の延長を認める制度はない。年金は出願日を起算日として3年次から発生する。年金は一年ごとに納付され、各年の年金納付期限日は出願応当日である。

年金はブラジル国内に在住する者のみが納付することができる。年金の追納や、権利の回復については特許権の場合と同様である。

  1. 意匠権

意匠権の権利期間は出願日から25年であり、年金は出願日を起算日として発生する。年金が各年納付される特許権や実用新案権と異なり、意匠権の年金は5年ごとに納付を行う。意匠登録前、出願の係属中であれば年金を納付しなければならない。各納付年次の年金納付期限日は出願応当日である。

意匠権については、納付年次によって年金納付とは別に更新手続が必要となる点に留意するべきである。前述の通り意匠権の年金は5年ごとに納付されるため、納付年次は6年次、11年次、16年次、21年次である。このうち、6年次のみ、年金の納付を行うことで権利維持が可能であり、更新手続を別途行う必要はない。11年次以降に権利の維持を希望する場合は、年金納付に加えて更新手続も行わなければならない。6年次年金は、その次の5年分の保護期間をカバーし、その後も1回の納付につき5年分の更新が可能となるため、最大3回まで更新手続および年金納付を行うことにより、計25年の権利期間を得ることができる。

年金はブラジル国内に在住する者のみが納付することができる。年金の追納や、権利の回復については特許権の場合と同様である。

オーストラリアにおける特許出願から特許査定までの期間の現状と実態に関する調査

ブラジルにおける特許出願から特許査定までの期間の現状と実態に関する調査