中国における商標制度のまとめ―手続編
1.出願に必要な書類
商標登録出願人は、定められた商品分類表に基づき商標を使用する商品区分および商品名を明記し、登録出願しなければならない(商標法第22条)。
商標登録出願人は、一つの出願において、多数の区分について同一の商標を登録出願することができる(同第22条)。
〔出願必要書類〕(商標法実施条例第13条、第14条)
① 願書
・記載情報:a.出願人名義(中英)、住所(中英)。
b.商標見本およびその説明
c.指定商品・役務
d.その他必須な内容
② 身元証明書類
・日本法人の場合、会社登記簿謄本(3か月以内のものでなくても良い)の写し。
・日本自然人の場合、パスポートトップページの写しまたは運転免許証の写し。
③ 委任状
2.登録できる商標/登録できない商標
(1) 登録できる商標の種類(商標法第8条)
文字、図形、立体、音、色彩のみ、その他(上記の組み合わせ)
(2) 登録できない商標の種類(商標法第8条の反対解釈)
ホログラム、動き、トレードドレス、匂い、味、触感
(*中国には、標準文字制度はない。)
(3) 通常の商標以外の制度(商標法第3条、第13条)
団体標章、証明標章、その他(商品商標、役務商標、馳名商標、著名商標)
関連記事:「中国における保護される商標の類型」(2021.05.27)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/19984/
関連記事:「中国における歌手名等からなる商標」(2014.12.16)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/7434/
関連記事:「中国改正商標法及び実施条例の主な改正点」(2016.01.12)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/10201/
関連記事:「中国における証明商標制度」(2014.05.16)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/6044/
関連記事:「中国における模倣対策マニュアル」(2021.09.21)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/20866/
※「第8章その他の主要トピック」の第2節に「商号の問題」(p.302)について解説されている。
関連記事:「中国における商号と商標との関係」(2023年04月06号)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/license/34139/
<参考情報>
自然人、法人またはその他の組織の商品を他人の商品と区別することができる文字、図形、アルファベット、数字、立体的形状、色彩の組合せ及び音声等、並びにこれらの要素の組合せを含む標章は、すべて商標として登録出願することができる(中国商標法第8条)。
3.出願の言語
出願手続は中国語を使用しなければならない(商標法実施条例第6条)。
商標が外国文字である、または外国文字を含む場合には、その意味を説明しなければならない(商標法実施条例第13条第7項)。
商標法実施条例第13条第7項に基づき、商標中の外国文字は、実質的には、翻訳しなければならない。
関連記事:「中国における商標出願制度概要」(2020.04.16)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/18449/
4.グレースピリオド(出願時の特例)
中国政府が主催または承認した国際展示会に出展した商品に最初に使用された商標であって、かつ当該商品が出展された日から6か月以内であるときは、当該商標の出願人は、優先権を享受することができる(商標法第26条)。
5.審査
(1) 実体審査:あり(商標法第28条)
<参考情報>
商標局は、商標登録出願について、商標登録出願書類の受領日から9か月以内に審査を完了し、本法の関連規定に適合する場合は、予備認可(初步审定)の公告をしなければならない(商標法第28条)。
関連記事:「中国における商標出願制度概要」(2020.04.16)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/18449/
(2) 早期審査
なし
<参考情報>
「商標登録出願に関する早期審査弁法(試行)」が2022年1月14日に施行されたが、対象となる商標は、国家または省レベルの重要なプロジェクトに関する商標、「知的財産権強国建設要綱」の実施を促進するための確かな必要性がある商標などで(商標登録出願に関する早期審査弁法(試行)第2条)、通常の商標出願に適用されるいわゆる「早期審査」ではない。
関連記事:「中国における商標登録出願の流れと審査期間および期間短縮への動き」(2022.02.24)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/22613/
(3) 商標の類否判断の概要
商標の類似とは、文字、図形、アルファベット、数字、立体標章、色彩の組合せと音など、商標の構成要素に係る称呼、外観、観念や配列の順序などにおいて、一定の差異が存在するものの、全体として差異が軽微であることをいう。文字商標の類似については、「外観、称呼、観念」の三つの要素を考慮しなければならず、図形商標については、主として構図、外観及び着色を考慮しなければならない。結合商標については、全体的な表示形式だけでなく、顕著な部分についても考慮しなければならない(商標審査審理指南 下編 商標審査及び審理編 第五章 商標の同一又は類似の審査及び審理 2.解釈)。
類似商品とは、機能、用途、生産部門、販売ルート、消費対象などがほぼ同一又は密接に関連する商品をいう。
類似役務とは、役務の目的、内容、方式、対象などがほぼ同一又は密接に関連する役務をいう。
関連記事:「中国における商標の色彩の判断」(2021.05.27)
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関連記事:「(中国)文字商標の類否判断について」(2012.08.21)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/1082/
関連記事:「(中国)における文字商標の類否判断について(商標「ba&sh」の出願について、文字商標「BARSH」が引用され拒絶された事例)」(2012.08.27)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/1455/
6.出願から登録までのフローチャート
(1) 出願から登録までの商標出願のフローチャート
(2) フローチャートに関する簡単な説明
(A) 拒絶通知
出願が登録要件を満たさない、または一部の指定商品について登録要件を満たさない場合には、これを拒絶または部分的に拒絶し、その旨を出願人に通知し理由を説明する(商標法第28条・第29条、商標法実施条例第21条)。部分拒絶の場合、不服審判を請求しない限り、登録要件を満たす部分のみが公告される。
関連記事:「中国における商標出願制度概要」(2020.04.16)
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関連記事:「中国における模倣対策マニュアル」(2021.09.21)
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※「第2章 中国での権利取得」の第2節に「商標権の取得」(p.70)について解説されている。
[権利設定前の争いに関する手続]
7.拒絶査定等に対する不服審判請求
商標局による拒絶査定通知(拒絶通知または部分拒絶通知)、登録不許可決定書、登録商標無効宣告決定、不使用取消決定に不服がある場合は、商標評審委員会に対して不服審判を請求することができる(商標法第34条、第35条、第44条、第54条)。
関連記事:「中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要(その1:拒絶査定不服審判)」(2017.08.17)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/13998/
8.権利設定前の異議申立
公告された出願商標について、先行権利者または利害関係人が、馳名商標(商標法第13条第2項及び第3項)、無権限の代理人による商標登録等(第15条)、地理的表示商標の誤認(第16条第1項)、他人の先登録商標等(第30条)、先後願(第31条)若しくは商標代理機構の義務(第19条第3項)の規定に違反したと考える場合、または、何人かが、悪意の商標出願(商標法第4条)、絶対的拒絶理由(第10条、第11条、第12条)及び商標代理機構の義務(第19条第4項)の規定に違反したと考える場合は、公告の日から3か月以内に商標局に異議を申し立てることができる(商標法第33条)。公告期間の満了後、異議申立がなければ、登録の承認を受け、商標登録証を発行し公示する。
異議申立の審決について、申立人に不服があるときは、商標評審委員会に当該登録商標の無効宣告を請求することができる(商標法第35条、第44条、第45条)。
9.上記7.の判断に対する不服申立
当事者が商標評審委員会の決定に不服であるときは、通知を受領した日から30日以内に人民法院に提訴することができる(商標法第34条)。
関連記事:「中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要(その1:拒絶査定不服審判)」(2017.08.17)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/13998/
関連記事:「中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要(その2:登録不許可不服審判)」(2017.08.22)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/14000/
[権利設定後の争いに関する手続]
10.権利設定後の異議申立
なし
11.設定された商標権に対して、権利の無効を申し立てる制度
商標法第44、45条に基づいて商標評審委員会に無効審判を請求できる。無効審判手続は、主に(1) 請求人による審判請求、(2) 方式審査、(3) 被請求人の答弁、(4) 答弁に対する弁駁、(5) 審判合議体による審理、(6) 審決という審判の手順で進められる。請求人は、商標評審委員会が下した審決に不服がある場合、人民法院に行政訴訟を提起することができる。
関連記事:「中国における登録商標無効審判制度(中国語「請求宣告注冊商標無効制度」)の概要」(2017.08.17)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/13995/
関連記事:「中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要(その3:登録商標無効宣告不服審判)」(2017.08.22)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/14002/
関連記事:「中国における商標事件の管轄および法適用の問題に関する解釈の公布」(2016.02.16)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/10377/
12.商標の不使用取消制度
登録商標が使用許可された商品の通用名となり、または正当な理由なく継続して3年間使用しなかったときは、いかなる法人または個人も、商標局に当該登録商標の取消を請求することができる(商標法第49条2項)。
関連記事:「中国における「商標の使用」の定義とその証拠」(2022.11.29)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/27197/
中国における特許制度のまとめ-手続編
1.出願に必要な書類
特許出願するときは、願書、説明書(明細書)およびその概要(要約書)、権利要求書(特許請求の範囲)等の文書を提出する(専利法第26条)。
優先権を主張して特許出願した場合は、最初の出願日(優先日)から16か月以内に、優先権主張の基礎とされた特許出願書類の副本を提出しなければならない(専利法第30条)。
関連記事:「中国における特許出願制度概要」(2020.03.17)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/18370/
2.記載が認められるクレーム形式
(1) 認められるクレーム形式
製品、方法、特定の方法による製品、装置、システム、プログラムの記録された記憶媒体
備考:2017年4月1日から、中国特許審査指南の改訂版の運用が開始され、媒体クレームが認められるようになった。コンピュータプログラムそれ自体のプログラムクレームは依然として認められていない。
(2) 認められないクレーム形式
プログラム、データ、信号
関連記事:「中国におけるコンピュータプログラムに関わる特許出願」(2022.01.18)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/21762/
3.出願の言語
すべての書類は中国語で提出する必要があり、中国語でない場合は不受理となる(実施細則第3条、第39条)。外国語出願制度はない。
関連記事:「中国における特許出願制度概要」(2020.03.17)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/18370/
4.グレースピリオド
出願日(優先権を享有する場合には、優先日を指す。)前6か月以内に以下のいずれかに該当する場合、新規性を喪失しない(専利法第24条、審査指南第1部分第1章6.3)。
(1) 国が緊急事態又は非常事態の情況下で、公共の利益のために初めて公開された場合 (2) 中国政府が主催する又は認める国際展示会で初めて展示された場合
(3) 規定の学術会議、あるいは技術会議上で初めて発表された場合
(4) 他者が出願人の同意を得ずに、その内容を漏洩した場合
関連記事:「中国における特許出願における新規性喪失の例外について」(2022.11.10)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/27060/
5.審査
(1) 実体審査
実体審査:あり
審査請求制度:あり
審査請求期間:出願日(優先日)から3年以内
請求人:審査請求を行うことができるのは出願人のみである。
関連記事:「日本と中国における特許審査請求期限の比較」(2015.06.19)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/9360/
(2) 早期審査(優先審査)
早期審査:あり
次に掲げる事由のうちいずれかに該当する専利出願又は専利復審事件は、優先審査を請求することができる。
(一) 省エネルギー・環境保護、次世代情報技術、バイオ、ハイエンド設備製造、新型エネルギー、新材料、新型エネルギー自動車、スマート製造などの国の重点発展産業に関係する場合。
(二) 各省級および設区市級人民政府が重点的に奨励している産業に関係する場合。
(三) インターネット、ビッグデータ、クラウドコンピューティングなどの分野に関わり、かつ技術又は製品の更新速度が速い場合。
(四) 専利出願人または復審の請求人が、実施の準備を完了している、またはすでに実施している、若しくは他人がその発明創造を実施中であることを証明する証拠を有している場合。
(五) 同じ主題について、初めて中国で専利を出願し、その他の国または地域に対しても出願する場合で、中国が最初の出願である場合。
(六) 国の利益または公共の利益にとって重要な意義があり、優先審査の必要があるその他の場合。
利用可能なPPH:通常型、MOTTAINAI、PCT-PPH
関連記事:「中国における早期審査のための「特許審査ハイウェイ(PPH)」活用」(2022.11.22)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/27133/
関連記事:「中国における特許出願の早期権利化(早期公開/早期審査/優先審査/PPH)」(2021.05.20)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/19894/
(3) 出願を維持するための料金:不要
6.出願から登録までのフローチャート
(1) 出願から登録までの特許出願のフローチャート
(2) フローチャートに関する簡単な説明
(A) 実体審査を請求する時および実体審査に入る旨の通知を受領した日より3か月以内に、特許出願を自発的に補正することができる。書類の補正は、元の明細書および特許請求の範囲に記載した範囲を超えてはならない(専利法第33条、実施細則第51条)。
(B) 1回目の拒絶理由通知には、4か月以内に応答しなければならない。2回目の拒絶理由通知には2か月以内に応答しなければならない(専利法第37条、審査指南第2部分第8章4.10.3、専利審査指南第2部分第8章4.11.3.2)。これらの期間は、手数料を支払うことで、1か月単位で2か月まで1回のみ延長することができる(審査指南第5部分第7章4.2)。書類の補正は、元の明細書および特許請求の範囲に記載した範囲を超えてはならない(専利法第33条、実施細則第51条)。
(C) 特許査定の通知の日から2か月以内に、登録手続を行わなければならない。期限内に登録手続をしなかった場合は、権利を放棄したものとみなされる(実施細則第54条)。登録手続を行う際には、特許登録料、公告印刷料および特許付与年の年金を納付しなければならない(実施細則第97条)。
(D) 発明専利権の期限は20年とし、実用新案専利権の期限は10年、意匠専利権の期限は15年とし、いずれも出願日から起算する。
発明専利の出願日から起算して満4年、かつ実体審査請求日から起算して満3年後に発明専利が付与された場合、国務院専利行政部門が専利権者の請求に応じて、発明専利の権利付与プロセスにおける不合理的な遅延について専利権の期間の補償を与える。ただし、出願人に起因する不合理的な遅延は除外する。
新薬の発売承認審査にかかった時間を補償するために、中国で発売許可を得られた新薬に関連する発明専利について、国務院専利行政部門は専利権者の請求に応じて専利権の存続期間の補償を与える。補償の期間は5年を超えず、新薬発売承認後の専利権の合計存続期間は14年を超えないものとする(専利法第42条)。
関連記事:「中国における特許出願制度概要」(2020.03.17)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/18370/
関連記事:「日本と中国の特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較」(2019.10.08)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17778/
関連記事:「(中国)応答期間の延長」(2012.08.21)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/1069/
[権利設定前の争いに関する手続]
7.拒絶査定不服審判請求
審査部の決定に不服の場合は、国務院専利行政部門に対して、審判請求をすることができる(専利法第41条)。
関連記事:「中国における特許・実用新案・意匠(中国語「専利」)の拒絶査定不服審判制度概要(中国語「専利復審請求制度」)」(2021.05.20)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/19891/
8.権利設定前の異議申立
なし
関連記事:「中国知財法と日本知財法の相違点」(2022.11.22)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/27137/
9.上記7.の判断に対する不服申立
国務院専利行政部門による判断の結果に不服がある場合は、中級人民法院に相当する北京知識産権法院に訴えることができる。
さらに、北京知識産権法院の判決に不服がある場合には、北京市高級人民法院に上訴できる。
関連記事:「中国における知的財産裁判所(知識産権法院)」(2016.03.11)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/10385/
関連記事:「中国における知的財産法院の最新動向」(2016.05.26)https://www.globalipdb.inpit.go.jp/trend/11218/
関連記事:「中国における最新の審判・裁判に関する情報の比較分析」(2015.03.20)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/8117/
関連記事:「(中国)特許庁審判部と審決取消訴訟との関係について」(2013.08.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/precedent/3353/
[権利設定後の争いに関する手続]
10.権利設定後の異議申立
なし
関連記事:「中国知財法と日本知財法の相違点」(2022.11.22)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/27137/
11.設定された特許権に対して、権利の無効を申し立てる制度
専利権(特許権・実用新案権・意匠権)の無効を請求する者は、何人も、国務院専利行政部門に対して、無効宣告請求書を提出することにより無効宣告を請求することができる(専利法第45~47条)。
請求できる期間:いつでも可能
無効理由:専利法2、5、9、19.1、22、23、25、26.3、26.4、27.2、33、および専利法実施細則20.2、43.1
関連記事:「中国における特許・実用新案・意匠(中国語「専利」)の無効審判制度概要(中国語「専利無効宣告請求制度」)」(2021.05.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/19905/
関連記事:「中国における無効審判請求の概要」(2014.09.26)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/statistics/6551/
12.権利設定後の権利範囲の修正
無効審判において、特許権者は、特許請求の範囲を訂正することができる。
ただし、訂正の目的は、請求項の削除、技術方案の削除、請求項の更なる限定および明らかな誤記の訂正に限られる(「専利審査指南」2017.04.01施行)。明細書・図面の訂正はできない(実施細則第69条)。
日本の訂正審判に相当する制度は存在しない。
関連記事:「中国における補正および訂正に関連する制度およびその利用実態」(2018.01.11)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/statistics/14405/
関連記事:「中国における権利化後の補正(訂正)の制限」(2017.12.26)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/14385/
関連記事:「中国における特許権取得後の訂正」(2014.06.03)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/6167/
13.その他の制度
実用新案と意匠について、権利の有効性に関する評価報告書制度がある(実施細則第56条)。
韓国における特許制度のまとめ-手続編
1.出願に必要な書類
(1) 特許出願をする場合には、特許出願書、明細書、必要な図面及び要約書等を提出しなければならない(特許法第42条第1項及び第2項)。
(2) 個別委任状と包括委任状のうち、どちらか一つを提出しなければならない。
関連記事:「韓国における特許・実用新案出願制度概要」(2022.11.01)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/26894/
2.記載が認められるクレーム形式
(1) 認められるクレーム形式
・多項制を採択しており、独立項と従属項を区分し記載する。
・プログラムの場合、“プログラムを記録した記録媒体”、“記録媒体に保存されたコンピュータプログラム(アプリケーション)”の形式が認められる。
(2) 認められないクレーム形式
・請求項の従属項の記載方法に関して、2以上の項を引用した請求項は、その請求項の引用された項が、更に2以上の項を引用する方式(マルチ-マルチクレーム)で記載することができない(特許法第42条第8項及び特許法施行令第5条第6項)。
・コンピュータプログラム言語自体、コンピュータプログラム自体、単純な情報が提示されたデータ、信号等は認められない。
関連記事:「韓国における特許出願の請求項の記載方式」(2013.03.01)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/2406/
関連記事:「韓国におけるコンピュータソフトウエア関連発明等の特許保護の現状および出願実務について」(2019.01.10)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16383/
3.出願の言語
特許出願に関する書類は原則として韓国語で記載しなければならない(特許法施行規則第11条)が、明細書及び図面(図面中の説明部分に限る。)については、英語で記載して提出することができる(特許法第42条の3第1項)。
ただし、英語で特許出願をした場合には、出願日(最優先日)から1年2か月になる日まで明細書及び図面(図面中の説明部分に限る。)の韓国語翻訳文を提出しなければならない(特許法第42条の3第2項)。
関連記事:「韓国における特許・実用新案出願制度概要」(2022.11.01)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/26894/
4.グレースピリオド
特許を受けることができる権利を有する者の発明が、特許を受けることができる権利を有する者によって公知等がされている場合、または特許を受けることができる権利を有する者の意思に反して公知等がされた場合には、その日から12か月以内に特許出願をすれば特許出願された発明に対して新規性及び進歩性を適用する際に、その発明は公知等がされていないものとみなす(特許法第30条)。
関連記事:「韓国の特許・実用新案出願における新規性喪失の例外規定」(2017.07.13)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/13896/
5.審査
(1) 実体審査
特許出願は、審査請求があるときに限り審査する。審査請求は、誰でもすることができ、審査請求期間は出願日から3年(2017年2月28日以前に特許出願された場合には5年)である(特許法第59条)。
(2) 早期審査(優先審査)
特許出願が出願公開後、第三者の特許出願された発明の無断実施が認められた場合、または以下の事由に該当する出願について優先審査を申請することができる(特許法第61条)。
1)防衛産業分野の特許出願
2)緑色技術(温室ガス減縮技術、エネルギー利用効率化技術、清浄生産技術、清浄エネルギー技術、資源循環および親環境技術(関連融合技術を含む)等、社会・経済活動の全過程にわたり、エネルギーと資源を節約して効率的に使用し、温室ガス及び汚染物質の排出を最小化する技術を言う)と直接関連した特許出願
2の2)人工知能またはモノのインターネット(IoT)等、第4次産業革命と関連した技術を活用した特許出願
3)輸出促進に直接関連する特許出願
4)国家または地方自治団体の職務に関する特許出願
5)ベンチャー企業の認定を受けた企業の特許出願
5の2)技術革新型中小企業として選定された企業の特許出願
5の3)職務発明補償優秀企業として選定された企業の特許出願
5の4)知識財産経営認証を受けた中小企業の特許出願
6)「科学技術基本法」による国家研究開発事業の結果物に関する特許出願
7)条約による優先権主張の基礎となる特許出願
7の2)特許庁が「特許協力条約」に基づく国際調査機関として国際調査を遂行した国際特許出願
8)特許出願人が特許出願された発明を実施しているか、実施準備中である特許出願
9)電子取引と直接関連した特許出願
10)特許庁長が外国の特許庁長と優先審査することに合意した特許出願
11)優先審査の申請をしようとする者が特許出願された発明に関して調査・分類専門機関のうち、特許庁長が定めて告示した専門機関に先行技術の調査を依頼した場合であって、その調査結果を特許庁長に通知するよう、該専門機関に要請した特許出願
12)65歳以上の者、または健康に重大な異常がある者がした特許出願
※IP5 PPH、グローバルPPH、PCT-PPH等が利用可能である。
(3) 出願を維持するための料金:不要
関連記事:「韓国における審査官の職権再審査制度」(2018.10.02)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15921/
関連記事:「韓国特許庁の審査体制」(2018.07.03)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/statistics/15378/
関連記事:「韓国における特許・実用新案の審査請求の留意点」(2022.11.29)
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6.出願から登録までのフローチャート
(1) 出願から登録までの特許出願のフローチャート
(*) 海外からの出願は、特許法第15条第1項の「交通が不便な地域」に相当するため、2回の延長が可能である。しかし、韓国国内からの出願は「交通が不便な地域」に相当する場合と相当しない場合があり、相当しない場合は1回しか認められない(特許法第15条第1項、実用新案は実用新案法第3条で準用、審判便覧第13編第2章第3節)。
(2)フローチャートに関する簡単な説明
i) 特許決定(査定)の謄本を送達するまで明細書または図面を自発補正することができるが、意見提出通知書(拒絶理由通知)が送達された場合には、意見書の提出期間にのみ補正をすることができる(特許法第47条第1項)。
ii) 意見提出通知書(拒絶理由通知)に対する意見書提出期限は、通知書の発送日から2か月であるが、4か月までの期間延長を申請することができる。期間延長は1か月単位で4回まで、または、必要であれば4か月を超過しない範囲で2か月以上を一括して申請することができる。さらにまた、やむを得ない事由の発生で4か月を超過して指定期間の延長を受けようとする場合には、その事由を記載した疎明書を添付して延長申請をする必要がある(特許法施行規則第16条、特許・実用新案審査事務取扱規定第23条)。
iii) 拒絶決定(査定)謄本の送達を受けた後、補正書を提出し再審査を請求すること(特許法第67条の2)、補正をせずに拒絶決定(査定)不服審判を請求することができる(特許法第132条の17)。再審査を請求した後、再拒絶決定(査定)を受けた場合には、再審査を請求することができず、補正なく拒絶決定(査定)不服審判を請求することができる。
iv) 拒絶決定(査定)謄本の送達を受けた日から3か月以内に再審査請求または拒絶決定(査定)不服審判を請求することができ、上記期間は30日ずつ2回の期間延長を申請することができる(特許法第15条第1項、同第186条第5項、特許法施行規則第16条第4項、同第16条第5項)。
v) 拒絶決定(査定)不服審判の棄却審決の後、審決の謄本の送達を受けてから30日以内に、拒絶されていない請求項のみを分離して出願(分離出願)することができる(特許法第52条の2)。
vi) 特許決定(査定)の謄本を受け取ったら、謄本を受けた日から3か月以内に最初の3年分の特許料を納付しなければならない(特許法第79条、特許料等の徴収規則第8条)。特許料納付期間が経過した後、6か月以内に追納することができるが、追納期間内にも納付しなければ特許出願は放棄したものとみなす(特許法第81条第3項)。
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[権利設定前の争いに関する手続]
7.拒絶決定(査定)に対する不服
特許出願の拒絶決定(査定)に不服がある場合に、決定謄本の送達を受けてから3か月以内に特許審判院に拒絶決定(査定)不服審判を請求することができる(特許法第132条の17)。
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8.異議申立制度
権利設定前の異議申立制度はない。しかし、特許出願が公開された後であれば、その特許出願に関して誰でも拒絶理由に該当し特許されることができないという旨の情報を証拠とともに特許庁長に提供することができる(特許法第63条の2)。
9.上記7の審決に対する不服
特許審判院の審決に対して不服がある場合には、特許法院に訴え(審決取消訴訟)を提起することができる(特許法第186条第1項)。
また、特許法院の判決に不服がある場合には、判決が法令に違反したことを理由に大法院へ上告することができる(特許法第186条第8項)。
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[権利設定後の争いに関する手続]
10.権利設定後の異議申立
誰でも、特許権の設定登録日から登録公告日後6か月になる日まで、その特許が特許取消事由に該当する場合、特許審判院に特許取消申請をすることができる(特許法第132条の2第1項)。
特許取消申請の事由は、産業上の利用可能性、国内外の頒布された刊行物等による新規性、進歩性及び先願主義の違反等がある(特許法第132条の2第1項各号)。
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11.設定された特許権に対して、権利の無効を申し立てる制度(無効審判)
利害関係人または審査官は、設定登録された特許権が無効事由に該当する場合、特許審判院に無効審判を請求することができる(特許法第133条第1項)。
無効事由:特許法第25条、第29条、第32条、第36条第1項から第3項、第42条第3項第1号または第4項、第33条第1項、第44条、第47条第2項前段、第52条第1項、第53条第1項、条約違反
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12.権利設定後の権利範囲の訂正審判
特許権者は、請求の範囲を減縮する場合、誤って記載された事項を訂正する場合、または明確に記載されていない事項を明確にする場合に、明細書または図面について特許審判院に訂正審判を請求することができる(特許法第136条第1項)。
特許取消申請、特許無効審判または訂正の無効審判が特許審判院に係属中である場合には、訂正審判を請求することができないが(特許法第136条第2項)、このときは訂正請求制度を利用して、補正が可能である(特許法第132条の3、第133条の2、第137条第3項及び第4項)。
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13.その他の制度
・特許決定(査定)の謄本の送達を受けた日から3か月以内の期間内(特許料納付前)に分割出願が可能である(特許法第52条第1項第3号)。
・特許拒絶決定(査定)不服審判の審判請求が棄却された場合、審決の謄本の送達を受けた日から30日以内に、その特許出願の一部を新たな特許出願とする分離出願制度がある(特許法第52条の2)。
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インドネシアにおける権利登録
「インドネシアの模倣品対策に関する調査」(2016年8月、日本貿易振興機構(JETRO)ジャカルタ事務所)
(目次)
5 権利登録
5.1 権利別出願・登録件数 P.40
5.2 2015年国別上位10カ国の出願件数 P.42
5.3 出願フロー・費用・期間・言語 P.45
5.4 「特許年⾦」に関する留意点 P.54
5.5 特許法及び商標法改正案 P.55