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中国における「商標の使用」の定義とその証拠

1.「商標の使用」の定義
 「商標の使用」について、中華人民共和国商標法(以下、「商標法」という)第48条は、以下のように定義している。

この法律で商標の使用とは、商品、商品の包装若しくは容器及び商品取引書類上に商標を用いること、又は広告宣伝、展示及びその他の商業活動中に商標を用いることにより、商品の出所を識別するための行為をいう。

2.「商標の使用」立証のための証拠
 中国商標局は、2019年11月26日に「商標使用証拠の提供に関する関係説明(*2)」を公布している。

一、商標が指定商品に使用される具体的な表現形式は下記のことが含まれる。
1. 貼り付け、刻印し、焼き印し、或いは編む等の方法を採用し、商品、商品包装、容器、ラベル等に商標を付着し、または商品の標札、商品説明書、パンフレット、価格表等に商標を使用すること;
2. 商品取引書類に商標を使用すること。例えば、商品販売契約書、インボイス、手形、領収書、商品輸出入検査検疫証明書、通関書類等に商標を使用すること;
3. ラジオ、テレビ等の媒体に商標を使用し、又は出版物に商標を掲載すること;広告看板、郵便広告又はその他の広告方法で商標または商標が付けられる商品を宣伝すること。
4. 展示会、博覧会において商標を使用すること;例えば、展示会、博覧会において商標が印刷されている印刷物及びその他の資料を提供すること。
5. その他法律の規定に合致する商標の使用形態。

二、商標が指定役務に使用される具体的な表現形式は下記のことが含まれる。
1. 役務場所で商標を使用すること。たとえば、サービスの説明書、サービスの看板、店の装飾、スタッフの服装、ポスター、メニュー、価格表、賞品、事務用品、便箋及び指定役務に関する用品に商標を使用すること。
2. 役務と関連する文書に商標を使用すること;例えば、請求書、送金文書、サービス提供契約書、サービス保守証明書等に商標を使用すること。
3. ラジオ、テレビ等の媒体に商標を使用し、又は出版物に商標を掲載すること;広告看板、郵便広告又はその他の広告方法で商標または商標が付けられる商品を宣伝すること。
4. 展示会、博覧会において商標を使用すること;例えば、展示会、博覧会において商標が印刷されている印刷物及びその他の資料を提供すること。
5. その他法律の規定に合致する商標の使用形態。

三、次の場合は、商標法における商標の使用とはみなされない。
1. 商標登録情報の公表または商標登録者の登録商標の排他的権利に関する声明。
2. 公共の商業分野で使用されていないもの。
3. 贈答品としてのみ使用されたもの。
4. 実際の使用を伴わない譲渡またはライセンス供与。
5. 商標登録を維持するための象徴的な使用のみのもの。

四、以下の証拠を提出するのみでは、商標法における商標の使用とはみなされない。
1. 商品売買契約または役務の提供に関する同意または契約。
2. 書面による証言。
3. 物的証拠、視聴覚資料、ウェブサイト情報の改ざんの有無を特定することが困難である場合。
4. 実物とレプリカ。
(以下略)

 この説明は、直接的に「商標の使用証拠」を規定してはいないが、「一、商標の使用形態」、または「二、役務に関する使用形態」が、使用証拠として利用できる可能性を示していると理解される。また、この説明は、使用とはみなされないものも規定している。
 加えて、裁判所の実務において商標の使用を認定する際には、以下の要件を総合的に踏まえた判断がなされるため、注意が必要である。
(1) 事業活動において公に使用されていること。
 商標は日常生活の様々な場面で使用されているが、取引を目的とした使用のみが商標法でいう「使用」に該当する。商標権者が非公開の統計表や諸表などの文書に商標を使用する行為、または商標権者がその商標専用権についてなんらかの声明を行う行為、すなわち商標登録情報を公開するなどは、取引を目的とした使用ではないため、商標法でいう「使用」にはあたらない。
(2) 商品の出所を識別する目的での使用。
 例えば、外国の委託者が中国の受託者に委託して、製造した全商品を輸出して、中国以外の地域で販売するケースでは、中国の関連する公衆が、委託者の商標に触れることは不可能である。このように商標の本質的な機能である商品の出所識別機能を体現できないケースは、商標法第48条に規定する商標の使用行為には該当しない。関連する商標を表示した商品が市場で販売された証拠または当該商標が公開宣伝された証拠がなければ、委託生産の過程で発生した証拠は、商標法でいう「使用」を証明する証拠としては不十分である。

(*2) 「提供商标使用证据的相关说明」http://sbj.cnipa.gov.cn/sbj/sbsq/sqzn/201808/t20180813_607.html

3.「商標の使用」を示す証拠を保存する意義と目的
3-1.3年間の不使用を理由として不使用取消を申立てられることを防止する

 「不使用取消」について、商標法第49条2項は、以下のように規定している。

登録商標が使用許可された商品の通用名となり、又は正当な理由なく継続して3年間使用しなかったときは、如何なる単位又は個人も、商標局に当該登録商標の取消を請求することができる。商標局は、請求を受領した日から9ヶ月以内に決定を行わなければならない。特別な事情があり、延長することが必要な場合、国務院工商行政管理部門の許可を得て、3ヶ月間延長することができる。

 したがって、他人が上記の規定に基づき、商標局に対して商標の取消を求めた場合、権利者は必ず当該期間において当該商標を使用したことを証明しなければならない。使用の証拠と記録を保存していない場合、登録商標の取消というリスクに直面する可能性が高い。

3-2.馳名商標認定のための重要証拠
 「馳名商標」について、商標法第13条は、以下のように規定している。

 関連する公衆に熟知されている商標について、所有者がその権利を侵害されたと判断したときは、この法律の規定により馳名商標の保護を請求することができる。
 同一又は類似の商品について登録出願した商標が、中国で登録されていない他人の馳名商標を複製、模倣又は翻訳したものであって、容易に混同を生じさせるときは、その登録をせず、かつその使用を禁止する。
 非同一又は非類似の商品について登録出願した商標が、中国で登録されている他人の馳名商標を複製、模倣又は翻訳したものであって、公衆を誤認させ、当該馳名商標登録者の利益に損害を与え得るときは、その登録をせず、かつその使用を禁止する。

 また、商標法第14条1項は以下のように規定している。

 馳名商標は、当事者の請求により、商標に係る案件の処理において認定が必要な事実として認定を行わなければならない。馳名商標の認定には、以下の要素を考慮しなければならない。
(一)関連する公衆の当該商標に対する認知度。
(二)当該商標の持続的な使用期間。
(三)当該商標のあらゆる宣伝業務の持続期間、程度及び地理的範囲。
(四)当該商標の馳名商標としての保護記録。
(五)当該商標が馳名であることのその他の要因。

 馳名商標は、商標異議申立、取消請求、権利侵害訴訟において、一般の登録商標より手厚く保護されている。例えば、指定商品・役務区分をまたいで保護されるうえ、商標の無効宣告を請求する申立てをする場合に、冒認登録した者の悪意を証明することができれば、5年間の期間制限を受けることがない等の措置を受けられる(商標法第45条1項)。

 既に登録された商標が、この法律の第十三条第二項及び第三項、第十五条、第十六条第一項、第三十条、第三十一条、第三十二条の規定に違反した場合、商標の登録日から5年以内に、先行権利者又は利害関係者は、商標評審委員会に当該登録商標の無効宣告を請求することができる。悪意のある登録であるときは、馳名商標所有者は、5年間の期間制限を受けない。

 また、馳名商標の認定を受けている事実は商標の使用を示す証拠としてみなされるケースが多い。

3-3.商標権侵害訴訟における損害賠償請求の重要な証拠
 「損害賠償額」について、商標法第63条1項は、以下のように規定している。

 商標専用権侵害の損害賠償額は、権利者が侵害により受けた実際の損失により確定する。実際の損失を確定することが困難な場合には、侵害者が侵害により得た利益により確定することができる。権利者の損失または侵害者が得た利益を確定することが困難な場合には、その商標の使用許諾料の倍数を参照して合理的に確定する。悪質な商標専用権侵害行為で情状が重大な場合、上述の方法により確定した金額の1倍以上5倍以下で賠償金額を確定することができる。賠償金額には、権利者が侵害行為を抑止するために支払った合理的な支出を含まなければならない。

 また、商標法第64条1項、2項は以下のように規定している。

 登録商標専用権者が賠償を請求し、権利侵害と訴えられた者により登録商標専用権者が登録商標を使用していないとの抗弁がなされたときは、人民法院は、登録商標専用権者に、これまで3年以内にその登録商標を実際に使用している証拠を提供するよう求めることができる。
 登録商標専用権者は、これまで3年以内に、当該登録商標を実際に使用していることを証明できないとき、又は侵害行為によりその他の損失を受けたことを証明できないときは、権利侵害として訴えられた者は、損害賠償の責任を負わない。

 以上からわかるように、商標権侵害の証拠の中で、商標の使用を示す証拠は損害賠償請求の際に重要であり、損害賠償額が裁判所から支持されるか否かを握る鍵であるといえる。

関連記事:
「中国における保護される商標の類型」(2021.05.27)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/19984/

中国における「商標の使用」の定義とその証拠

【詳細】

1.「商標の使用」の定義

商標の使用とは、商品、商品の包装もしくは容器および商品取引書類上に商標を用いること、または、広告宣伝、展示およびその他の商業活動中に商標を用いることにより、商品の出所を識別するための行為を指す(中国商標法第48条)。

 

2.「商標の使用」立証のための証拠

裁判所および商標評審委員会(日本における審判部に相当。)の実務において、以下の証拠は商標を使用した証拠とみなすことができる。

(1)商標が付された商品そのもの、商品のパッケージ、容器、ラベル、説明書および価格表など

(2)商標が付された商品の取引文書。例えば、販売契約書、領収書、商品輸出入検疫証明書、通関書など

(3)ラジオ、テレビ、出版物、展覧会、広告パネル、ダイレクトメールまたはその他の広告手段により、商標を継続して宣伝したことを示すコマーシャルや写真など

(4)役務商標については当該商標を使用したサービスの紹介ハンドブック、提供場所の看板、店舗の内装、スタッフの服装、宣伝文句、メニュー、価格表、クーポン、事務用品、レターセットおよびその他指定のサービスに関する用品

 

また、裁判所の実務では、商標使用許諾契約、協議書、または商品の販売契約以外に商標の使用を証明できる証拠がない場合、証拠不十分とみなされる場合が多いことに注意する必要がある。

 

以上、商標の使用を示す証拠の具体的な例を挙げたが、裁判所の実務において商標の使用を認定する際には、以下の要件を総合的に踏まえた判断がなされるため、注意が必要である。

(1)事業活動において公に使用されていること。商標は日常生活の様々な場面で使用されているが、取引を目的とした使用のみが商標法でいう「使用」に該当する。商標権者が非公開の統計表や諸表などの文書に商標を使用する行為、または商標権者がその商標専用権についてなんらかの声明を行う行為、すなわち商標登録情報を公開するなどは、取引を目的とした使用ではないため、商標法でいう「使用」にはあたらない。

(2)商品の出所を識別する目的での使用。例えば、委託生産(OEM)の場合、外国の委託者が中国で受託者に委託して、製造した全商品を輸出して、中国以外の地域で販売するケースでは、中国の関連する公衆が、委託者の商標に触れることは不可能である。このように商標の本質的な機能である商品の出所識別機能を体現できないケースは、商標法第48条に規定する商標の使用行為には該当しない。関連する商標を表示した商品が市場で販売された証拠または当該商標が公開宣伝された証拠がなければ、委託生産の過程で発生した証拠は、商標法でいう「使用」を証明する証拠としては不十分である。

 

3.「商標の使用」を示す証拠を保存する意義と目的

(1)3年間の不使用を理由として不使用取消を申立てられることを防止する

商標法第49条2項は「登録商標が使用許可された商品の通用名となり、または正当な理由なく継続して3年間使用しなかったときは、いかなる法人または個人も、商標局に当該登録商標の取消を請求することができる。商標局は、請求を受領した日から9か月以内に決定を行わなければならない。特別な事情があり、延長することが必要な場合、国務院工商行政管理部門の許可を得て、3か月間延長することができる」と規定している。

したがって、他人が上記の規定に基づき、商標局に対して商標の取消を求めた場合、権利者は必ず当該期間において当該商標を使用したことを証明しなければならない。使用の証拠と記録を保存していない場合、登録商標の取消というリスクに直面する可能性が高い。

(2)馳名商標認定のための重要証拠

商標法第14条は「馳名商標は、当事者の請求により、商標に係る案件の処理において認定が必要な事実として認定を行わなければならない。馳名商標の認定には、以下の要素を考慮しなければならない。

(一)関連する公衆の当該商標に対する認知度

(二)当該商標の継続的な使用期間

(三)当該商標のあらゆる宣伝業務の使用期間、程度および地理的範囲

(四)当該商標の馳名商標としての保護記録

(五)当該商標が馳名であることのその他の要因」

と規定している。

馳名商標は商標異議申立、取消請求、権利侵害訴訟において、一般の登録商標より手厚く保護されている。例えば、指定商品・役務区分をまたいで保護されるうえ、商標の無効宣告を請求する申立をする場合に、冒認登録した者の悪意を証明することができれば、5年間の期間制限を受けることがない等の措置を受けられる。また、馳名商標の認定を受けている事実は商標の使用を示す証拠としてみなされるケースが多い。

(3)商標権侵害訴訟における損害賠償請求の重要な証拠

商標法第63条は「商標権侵害の損害賠償額は、権利者が侵害により受けた実際の損失により確定する。実際の損失を確定することが困難なときは、侵害者が侵害により得た利益により確定することができる。権利者の損失または侵害者が得た利益を確定することが困難なときは、当該商標の使用許諾料の倍数を参照して合理的に確定する。悪意により商標権を侵害し、情状が重大なときは、上述の方法により確定した金額の1倍以上3倍以下で賠償額を確定することができる。賠償額は、権利者が侵害行為を抑止するために支払った合理的な支出を含まなければならない」と規定している。

 

また、商標法第64条は「登録商標権者が損害賠償を請求し、権利侵害と訴えられた者により登録商標権者が登録商標を使用していないとの抗弁がなされたときは、人民法院(日本における裁判所に相当)は、登録商標権者に、これまで3年以内にその登録商標を実際に使用している証拠を提供するよう求めることができる。登録商標権者は、これまで3年以内に、当該登録商標を実際に使用していることを証明できない場合、または侵害行為によりその他の損失を受けたことを証明できない場合は、権利侵害として訴えられた者は、損害賠償の責を負わない」と規定している。

 

以上からわかるように、商標権侵害の証拠の中で、商標の使用を示す証拠は損害賠償請求の際に重要であり、損害賠償額が裁判所から支持されるか否かを握る鍵であるといえる。