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オーストラリアにおける指定商品または指定役務に関わる留意事項

【詳細】

 オーストラリア知的所有権保護局(IP Australia; IPA)商標部門は、「商品およびサービスの国際分類」の第10版を採用している。第10版では、商品および役務が45の分類に分けられ、各分類が異なるカテゴリーの関連商品または役務に対応している。このシステムは、ニースで開催された外交会議において合意されたものである。あらゆる商標出願にとって指定商品または指定役務の記載は、その出願および最終的な登録の範囲を決定づけるため、明確かつ正確に記載することが重要である。また、抵触する商標の厳密な調査を容易にするために、指定商品または指定役務を正確に分類することも大切である。

 

 1995年オーストラリア商標法(連邦法)(本法)第19条は、次のように規定している。

(1)商標は、次のものに関し、本法にしたがって登録することができる。

 (i)商品、または

 (ii)役務、または

 (iii)商品および役務の両方

(2)商標は、2以上の類の商品またはサービスについてすることができる。

(3)商標規則において、本法の適用上、商品および役務が分類されるべき類を定めることができる。

 

 1995年オーストラリア商標規則(連邦法)(商標規則)の附則1には、「商品およびサービスの国際分類」の第10版の分類およびクラスヘディング(類見出し)が掲載されている。

 商品または役務が該当する分類は、通常の審査ではニース協定に基づく「商品および役務の国際分類」を基準として採用しているが、本法の第32条は、係争となっている商品または役務がどの分類に属するかの判断は、登録官に決定権限を与えている。

 

審査基準

 商品および役務の審査基準は、IPA商標部門実務・手続便覧において解説されている。さらにIPA商標部門は、商標分類検索データベースも運用しており、商品名や役務名を基に該当する分類を検索することができる。

(http://xeno.ipaustralia.gov.au/tmgns/facelets/tmgoods.xhtml)

 

 出願の指定商品または指定役務の審査は、指定商品または指定役務の記載がオーストラリアの実務基準を満たしているかどうか確認するために行われる。指定商品または指定役務の記載の補正、または該当する分類の変更に関する補正指令が出された場合、出願人は審査官の指令書から15か月以内に、自己の出願が認可される状態にしなければならない。

 

 間違って分類された商品または役務は、補正するか、または追加料金の納付をもって該当する新たな分類に属する商品または役務として指定することができる。

 出願が受理された後は、商品または役務の範囲を拡大する補正はできない。

 

 複数の分類に属すると判断される多機能の商品の場合、当該商品が正しい一つの分類に指定されていれば、敢えて複数の分類に指定されていなくてもよい。ただし、出願時に指定する分類以外の分類での保護を求める場合には、その分類に属する商品機能を含む多機能商品である事が判る商品記載(例:携帯端末機能付きの腕時計)とする必要がある。

 

 IPA商標部門は、基本的にはクラスヘディング(類見出し)を認めているが、クラスヘディング(類見出し)の表現では含まれると判断されない可能性のある商品は、具体的な個別商品記載として指定商品に指定する事が推奨される。なぜなら、クラスヘディング(類見出し)は1つの分類におけるすべての商品または役務を含んでいるとは限らないとした判例が存在するためである(NEC Coproration (2002) ATMO 32)。該当分類に含まれると想定できる全ての商品や役務を指定する為に、「すべての商品」、「すべての役務」を使用する事、または具体的商品記載以外に想定される全ての商品や役務を指定する為に「他のすべての商品または役務」という表現を使用することは許されていない。不明瞭な広義の表現の場合は、審査官により指定商品または役務の範囲を限定するよう補正指令が出される。

 

 審査上引例として挙げた先行商標との抵触関係に関し、先行商標と同一の商品や同一の役務がある場合は、その該当する商品や役務を削除することで、先行商標との抵触関係を解消できる。また、先行商標と類似する商品や役務が含まれる場合も、IPA商標部門は、当該後願から抵触関係にある商品を削除することで、先行商標との抵触関係が解消されたと認める。

 

手数料に対する指定商品または役務の影響

 出願、登録および更新に関する手数料は、分類ごとに要求されるが、分類内の指定商品または役務の数には影響されない。

 

【留意事項】

 あらゆる商標出願にとって、指定商品または指定役務を明確かつ正確に記載することが重要である。出願書を提出する前に、指定商品または指定役務の記載が認可されるかどうか確認するために、オーストラリア代理人にチェックしてもらうことが推奨される。

香港における英語あるいは中国語(公用語)以外の言語を含む商標出願

【詳細】

 香港において、商標は、単語、表示、意匠、文字、符号、数字、図形要素、色彩、音、匂い、形状、およびこれらの組合せから構成することができる。単語や文字については、ローマ字であるか漢字であるかを問わない。

 

○出願時に提出する情報

 出願された商標がローマ字でも漢字でもない単語、文字または字体を含む場合、出願人は当該単語、文字または字体の言語を願書において述べなければならない。また、その単語、文字または字体の翻訳または翻字を提出しなければならない(香港商標規則第120条(4))。

 

○先天的識別性に関する評価

 香港知的財産局商標登録所は、出願人により提供された商標の翻訳および音訳を考慮に入れ、当該商標の登録可能性を検討する。日本語の単語については、商標局は、その単語の辞書上の意味を和英辞典等で調べることもできる。

 

 商標を構成する外国語の単語または字体が単なるコードの羅列または判読できない単語または字体で構成されており、一般的な需要者が当該商標について、出所を示す標章として見なさない可能性がある場合、当該商標は識別性を欠くとして、商標条例第11条(1)(b)に基づき拒絶される。例えば、香港の平均的な需要者は、日本語の「よりよい製品およびよりよいサービス」という表記を理解できないかも知れないが、当該商標は識別的でなく出所を示す記章とはなり得ないため、需要者は、日本語の字体の文字列全体を商標として見なすとは考えらない。

 

 英語や中国語以外の言語による記述的または識別性のない商標については、当該商標が一応の証拠に基づいて登録可能であるか否かは、香港において当該商品または役務の関連する需要者が当該商標の意味を理解するか否かに依拠する。

 

 例えば、英語の「paint(ペイント、塗る)」を意味するオランダ単語「Verf」は、香港における当該商品の平均的な需要者がその意味を理解するとは考えられないため、「paint」の対象となる商品に関して登録可能である。一方、日本語で「最高」を意味する「ICHIBAN」という単語は、香港における平均的な需要者がこの賞賛的な意味を理解するので、対象となるあらゆる商品または役務に関して登録不可である。

 

 外国単語がその関連する商品または役務の記述である英単語または漢字と似ていれば似ているほど、その外国語での記述的意味が需要者によってより理解される。例えば、カメラを意味し、「camera」という英単語に非常に近い、ドイツ語の単語「Kamera」は、「写真器具」に関して登録不可である。

 

 商標が外国語の単語または字体と、識別性のない英単語または中国語(漢字)と併記している場合、需要者は、外国語の単語または字体が英単語または中国語(漢字)の翻訳であり、同じ意味を有すると認識する可能性がある。したがって、商標全体としては、当該商品または役務を記述しており、識別性のないものとして需要者に認識され、登録不可とされるだろう。

 

 対象となる商品または役務が特定グループの需要者のためのものである場合、その識別性は、当該商品または役務のターゲットとなる需要者の視点で判断される。

 

○先行商標との類似性

 香港では、商標の類似性は、外観、称呼および観念上の類似性を比較し、その識別的かつ主要な構成要素を考慮した上で、標章が創出する全体印象によって判断される(Guccio Gucci SpA v Gucci事件(第[2009] 5 HKLRD 28号)。したがって、異なる言語で表現された純粋な単語標章は、商標の全体印象が異なると考えられる可能性が高いため、同じ意味を有するにもかかわらず、類似するとは見なされない可能性が高い。

 

 標章間の類似性の程度を判断するためには、それらの標章の外観上、称呼上および概念上の類似性の程度を決定しなければならない。