台湾における第三者が所有する同一又は類似商標を発見した場合の対応
「台湾模倣対策マニュアル(台湾における商標保護の戦略)」(2018年3月、日本台湾交流協会)第五章
(目次)
第五章 第三者が所有する同一又は類似商標を発見した場合の対応 P.114
第一節 指定商品・役務の削除又は分割 P.114
第二節 取消審判 P.118
第三節 他社商標に対する異議申し立て P.122
第四節 無効審判 P.124
第五節 権利者との交渉(同意書の発行、商標の譲渡) P.128
第六節 第三者に先取り登録された商標の対応 P.131
添付資料5 「商標並存同意書」書式 P.208
中国における未登録知的財産(商標・発明)の保護
【詳細】
1.未登録商標の保護
中国の未登録商標の保護に関する主な法律は「商標法」と「不正競争防止法」である。
「商標法」第15条の規定によれば、代理人や代表者は授権なしかつ自分の名義で授権者の商標を登録してはならない。
「商標法」第32条の規定によれば、未登録かつ一定の影響力を持つ商標について第三者が先取り登録してはならない。
「商標法」第44条第1項の規定によれば、詐欺または不当な手段により登録された商標について、商標局は自主的に取り消すことができ、また商標評価委員会は申請により当該登録商標を取り消すことができる。
さらに、2014年5月1日より施行された商標法第三次改正の際に、先使用によって商標登録に対抗する制度が導入された。「商標法」第59条第3項の規定により、商標登録人が商標を出願する前から、自己が既に同一または類似する商品に商標登録人の商標と同一または類似する商標を使用しており、かつ一定の影響力を有する場合、先に使用している範囲内で引き続き自己の商標を使用することができる。
ただし、商標登録人はその商標に対して、商標登録人の商標との混同を防止するための標識を付けることを要求する権利を有する。当該条項に規定された未登録商標が以下の要件を充足しなければ保護を受けることはできない。
- 商標登録人が商標を出願する以前から使用していること
- 一定の影響力を有すること
- 先に使用している範囲内で使用すること
これらの条件が満たされれば、先使用商標は登録商標に対抗することができる。
「不正競争防止法」第5条第2項は、事業者は著名商標特有の名称、包装、装飾を侵害してはならないと規定している。当該条項の「著名商標特有の名称、包装、装飾」は、一般的な認識では未登録商標を意味する。したがって、当該規定を援用すれば、未登録商標を保護できると考えられる。
- 未登録商標の保護に関する法律
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- 「商標法」(2014年5月1日改正)
- 「反不正当競争法」(1993年12月1日施行)
2.未登録発明の保護
未登録発明は技術秘密として保護することができる。この場合、企業が技術秘密を特定する必要がある。さらに重要なこととして、技術秘密を保護するためには、企業において秘密保持制度を設ける必要がある。一般的には以下のパターンが使用されている。
- 労働契約に秘密保持条項を設ける
- 発明者と秘密保持契約を締結する
- 職務発明の場合は、社内の職務発明規程を制定し、技術秘密の漏洩を防止する条項を設ける
秘密保持条項を設ける際に、秘密保持義務を負わせる対象を在職の従業員に限定するのではなく、退職者も取り入れるべきである。このように規定することによって、企業を離職した者も守秘義務を負うこととなり、リスクを軽減することができる。
- 未登録発明の保護に関する法律
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- 「不正競争防止法」(1993年12月1日施行)
- 「商業秘密侵害行為の禁止に関する若干規定」(1998年12月3日改正)
- 「最高人民法院による不当競争の民事事件の審理における法律適用の若干問題についての解釈」(2007年2月1日施行)
- 「専利法(日本における特許法、意匠法、実用新案法に相当。)」(2008年12月27日改正)
- 「刑法」(2011年5月1日改正)