ベトナムにおける並行輸入
【詳細】
(1)ベトナムにおける並行輸入の合法性
ベトナムでは、並行輸入は禁止も制限もされていない。一般に、ベトナム政府の方針は、ベトナムの消費者のために、様々な入手源から可能な限り安い価格で商品を入手する機会を創り出すというものであり、ある特定の分野、たとえば医薬分野においては、並行輸入が推奨すらされている。
知的財産法において、並行輸入を認める条文(ベトナム知的財産法第125条(2)(b))では、知的財産権所有者は、他人が「商標所有者またはその実施権者以外の者が外国市場で流通させた製品を除き、市場(外国市場を含む)に合法的に持ち込まれた製品の流通、輸入、利用を行うこと」を妨げる権利を有しないと明確に規定している。
ベトナムでは並行輸入が合法であり、知的財産権所有者またはその実施権者がその輸入を許可していないという理由だけでは、並行輸入された製品に対して取りうる対策はない。
さらに、並行輸入品は他の輸入製品同様に取り扱われ、並行輸入品のみに適用される要件は存在しない。輸入製品の法的要件、すなわち製品のラベル表示、適合宣言書、製品検査、製品品質仕様宣言書、自由販売証明書などの要件は、あらゆる種類の輸入品に適用される。
(2)並行輸入に関する管轄当局
並行輸入品は、規制の対象ではない。よって、並行輸入品は、輸入製品一般を扱う関連当局の管轄下におかれる。次に示すいくつかの機関が、輸入品に対する管轄権を有している。
○ベトナム財務省税関総署
ベトナム財務省税関総署は、ベトナムにおける輸出入を管轄する。よって、並行輸入品は国境地点において間接的に税関の管理下におかれる。税関手続において税関は、輸入書類が完全であるか、輸入品が知的財産権を侵害していないかを確認する。
○その他関連当局
・ベトナム保健省食品局は、輸入された食物および食品(原材料、酪農製品、機能性食品など)を管轄する。
・ベトナム保健省医薬品管理局は、輸入された薬剤、医薬品および化粧品を管轄する。
・ベトナム商工省化学品管理局は、輸入された工業化学品、可燃性物質などを管轄する。
・ベトナム科学技術省標準・計量・品質局は、輸入品の品質に関する検査を管轄する。
○市場における執行当局
市場における執行当局の一覧には、上記の機関のほとんどが含まれる。保健省、商工省または科学技術省の他局、または公安省が管轄権を有する場合もある。
たとえば、商工省の執行当局である市場管理局(Market Management Bureau : MMB)は、原産地表示のない商品の売買に対し8000万ドン(約4000米ドル)までの行政制裁措置を発行する権限を有する。
(3)並行輸入に対する対抗策
ベトナムでは並行輸入が合法であるので、少なくとも並行輸入を根拠として規制当局に通報することはできないが、輸入に関する規制の違反や売買行為における他の規制の違反を通報することは可能である。市場に出回る商品に関し、実際にほとんどの措置がMMBにより行われている。特に、2008年から2012年までの間、酪農品製造業者の並行輸入品のアウトレット販売を取り締まるため、MMBは様々な都市で行政上の強制捜査を何度も実施した。これらの措置のほとんどは、ラベル表示に関する規制の違反を根拠としていた。上記以外の根拠として、事業許可の範囲を越えた売買行為、適切なインボイスを伴わない売買行為などがある。
様々な規制の違反を根拠とした並行輸入品の売買に関する行政当局に対する訴えは、一般に、知的財産権所有者についての情報とその製品および流通システムについての背景情報(製品の特徴を示す写真を同封)や、相手方当事者の身元情報と違反の内容(対象製品の写真を同封)を提出して行われる。