フィリピンにおける特許出願の係属期間に関する統計
フィリピン知的財産庁(IPOPHL)は、1998年から2017年の第3四半期までの特許に関する知的財産統計を発表した。この統計には、特許出願、特許付与、特許出願人の上位を占める者、特許の上位を占める国に関連するデータが含まれている。以下の表1は、過去10年間9ヶ月(2007年から2017年9月)にIPOPHLに提出された特許出願件数を示している。
表1 過去10年間(2007年から2017年9月)における特許出願件数*
*出典-IPOPHL Business Intelligence report(2017年10月13日付)
上の表1で、国外居住者による出願とは、フィリピンに居住していない出願人がIPOPHLに提出した出願を指しており、国内居住者による出願とは、フィリピンに居住している出願人がIPOPHLに提出した出願を指している。また、直接出願とは、パリ条約を通じて提出された国内出願のことであり、PCT出願とは、特許協力条約を通じて提出された出願のことである。
2007年から2016年の過去10年間について言えば、IPOPHLに提出された出願の平均件数は年に3,200件程度である。表1を見ると、国外居住者の出願人が多数の特許出願を行っている。たとえば2016年の場合、特許出願件数は3,098件である。総数3,098件のうち2,844件(およそ92%)は国外居住者の出願人によるものであり、国内居住者の出願人による特許出願件数は254件(およそ8%)である。
2016年にIPOPHLに提出された特許出願の上位を占める出願人の国籍は、アメリカ合衆国、日本、フィリピンである。以下の表2は、2016年の特許出願件数の上位10位までに位置する国を示したものである。
表2 2016年の特許出願の上位を占める出願人の国籍
以下の表3は、2016年の特許出願について出願人となっている企業のうち上位10社までを示したものである。
表3 2016年の特許出願の出願人となっている企業上位10社
2007年から2017年の過去10年間にIPOPHLに提出された特許出願の平均件数は毎年およそ3,200件であるが、過去10年間にIPOPHLが付与した特許の平均件数はおよそ1,670件である。以下の表4は、過去10年間(2007年から2017年)に付与された特許の総件数を示したものである。
表4 特許付与件数(2007年から2017年9月)*
*出典-IPOPHL Business Intelligence report(2017年10月13日付)
2007年から2017年の過去10年間にIPOPHLに提出された出願の平均件数と、同過去10年間にIPOPHLが付与した特許の平均件数に基づいて言えば、IPOPHLの特許付与率はおよそ52%である。
フィリピンにおける特許出願の係属期間はおよそ3年から5年である。しかし、出願または審査請求から特許付与までの期間に関する過去のデータはIPOPHLから提供されていない。また、審査請求の件数、IPOPHLによる特許の決定、拒絶不服審判請求から審決までに要する期間、および出願から最初の拒絶理由通知の発行までに要する期間についても、IPOPHLから提供されていない。
我々(FEDERIS & ASSOCIATES LAW OFFICE)の経験によれば、出願日または国内段階移行日から出願の実体審査を対象とした最初の拒絶理由通知発行までの期間は2年から3年である。
フィリピンの現在の慣行の下では、フィリピン国内出願に対応する外国出願が有利な処分を受けていると、この国内出願の審査を円滑に進めるのに役立つ。それゆえ、国内出願に対応する外国出願が認可通知または特許付与されている場合、その外国出願に関する書類の提出が特許審査の迅速化に役立つ。
さらに、IPOPHLは現在日本国特許庁(JPO)、米国特許商標庁(USPTO)、韓国特許庁(KIPO)および欧州特許庁(EPO)との特許審査ハイウェイ(PPH)プログラムを実施している。また、IPOPHLはASEAN特許審査協力(ASPEC)プログラムにも参加している。これにより、ASPECプログラムに参加しているASEAN加盟国(AMS)の知的財産当局は、調査および審査を実施するにあたって、ASPECプログラムに参加している別のAMSの知的財産当局が実施した調査および審査の結果を参照資料として利用することができる。
フィリピンにとって、ASPECプログラムに参加している他のAMSとは、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、シンガポール、タイ、およびベトナムである。フィリピンの特許出願についてPPHまたはASPECプログラムに基づく申請が提出された場合、当該出願の実体審査を対象とした最初の拒絶理由通知は、平均して申請から6か月から8か月で発行される。
表5および表6は、PPHまたはASPECプログラムに基づきIPOPHLに提出された申請書の数を年別にまとめたものである。なお、EPOとIPOPHLとのPPHプログラムに関しては、試行プログラムの開始が2017年7月1日であったため、表5には示されていない。
表5 IPOPHLに提出されたPPH申請書の数(年別)
*2017年10月現在
表6 IPOPHLに提出されたASPEC申請書の数(年別)
*2016年10月現在
PPHまたはASPECプログラムの適用が申請された事案に関して、IPOPHLは審査期間を実質的に短縮すべく努めている。PPHまたはASPEC申請書が受理可能であるとIPOPHLが判断した場合、その出願は迅速審査の対象として特別な地位を獲得する。それゆえ、フィリピン国内出願に対応する外国出願が認可通知または特許付与されている場合、フィリピンにおいてPPHまたはASPECプログラムの適用を求める申請書を提出することが推奨される。
台湾における特許出願の係属状況に関する統計
2007年から2016年の過去10年間において、台湾に提出された発明特許、実用新案および意匠の出願は、平均して年間8万件ほどである。下記の表1に示されているように、出願件数が多い2011年から2013年の期間にかけて、2012年の85,074件が最多であった。この期間は、台湾専利法が2011年に全面的に改正され、2013年1月1日に施行された時期と重なる。
表1 2007年から2016年の台湾における出願件数
以下、台湾における発明特許に係る出願(以下「特許出願」という。)の係属状況について説明する。
特許出願の場合、上記表1に示されているように2007年から2016年の平均年間出願件数は約48,000件である。特許出願の平均係属期間は、2007年には24.9か月であったが、台湾知的財産局(TIPO)の予算と人材不足のために、2012年には46.1か月という最長期間を記録した。実際に審査官の採用を増やすなど、いくつかの措置を実行するため、TIPOによる未処理件数削減プロジェクトが2010年に開始された。
2012年3月には、先行技術調査を行う際に審査官を支援する特許調査センターが設立された。さらにTIPOは、2010年に早期審査プログラム(AEP)、2011年には特許審査ハイウェイ(PPH)プログラムによる迅速審査手続を開始した。
2007年の時点で90,824件だった係属中の未処理件数は徐々に増え、2011年には160,479件にまで膨らんでいたが、TIPOの努力が実を結び、未処理件数は2012年の153,039件、2013年の129,318件、2014年の100,580件、2015年の72,892件、および2016年の61,287件へと徐々に減少した。未処理件数の減少に伴い、2010年から2013年に40か月を上回っていた特許出願の平均係属期間は、2014年には33.4か月、2015年には26.0か月、2016年には19.8か月と、着実に改善している。
以下に示す表2は、2007年から2016年の特許出願の初審査段階での平均係属期間を示している。また、以下に示す表3は、2007年から2016年の特許出願の再審査段階での平均係属期間を示している。
表2 特許出願の初審査段階での平均係属期間
*処理には、認可、拒絶査定、およびその他の決定が含まれる。
表3 特許出願の再審査段階での平均係属期間
*処理には、認可、拒絶査定、その他の決定が含まれる。
台湾において特許出願は、その出願日または最先優先日から18か月後に公開される。実体審査請求は、出願日から3年以内に提出できる。以下に示す表4は、2007年から2016年に提出された特許出願の実体審査請求に関するものである。
表4 実体審査請求の件数と比率
上記表4に示す実体審査請求の件数は、新規出願、分割出願および変更出願の実体審査請求の件数を表し、台湾専利法第38条第1項および第2項の規定に従う実体審査請求の件数を指す。また、上記表4に示す実体審査請求の比率は、台湾専利法第34条および第108条の規定に従う分割出願および変更出願の場合はその出願日から30日以内に提出された実体審査請求の件数を、それ以外の新規出願の場合は出願日から3年以内に各年に提出された実体審査請求の件数を、各年の特許出願件数で割った比率である。なお、各年の特許出願件数は、その年に提出された新規出願の件数のほか、同年に行われた分割出願および変更出願の件数を含む。
一般的に、台湾における特許出願の処理期間は、その発明の技術分野によって異なるが、概ね18か月から36か月である。TIPOは、発明の技術分野に応じた特許出願の標準的な処理期間を以下の表5のように定めている。
表5 発明の技術分野毎の特許出願の標準的な処理期間
TIPOが特許出願を審査する場合、通常は2年から3年を要する。ただし、出願人が自己の特許出願について早期審査プログラム(AEP)または特許審査ハイウェイ(PPH)プログラムの適用を申請した場合、審査結果が出るのはAEPの場合で6か月から9か月、PPHの場合で約4か月以内である。2016年にAEPが申請された特許出願の事由毎の統計を表6に示す。また、2016年にPPHが申請された特許出願についての統計を表7に示す。
表6 2016年にAEPが申請された特許出願の平均係属期間
*事由1-対応外国特許出願が外国特許庁による実体審査の結果、特許査定を受けた特許出願
**事由2-対応外国特許出願が米国特許商標庁(USPTO)、日本特許庁(JPO)または欧州特許庁(EPO)に係属中であるが、オフィスアクションおよび調査報告が発行された特許出願
***事由3-商業活動のために必要な特許出願
****事由4-グリーンエネルギー技術に係る特許出願
表7 2016年にPPHが申請された特許出願の平均係属期間
台湾における現在のPPH協定には、TIPO-USPTO、TIPO-JPO、TIPO-SPTO(スペイン特許商標庁)、TIPO-KIPO(韓国特許庁)およびTIPO-PPO(ポーランド特許庁)が含まれているが、ほとんどのPPH申請はTIPO-USPTOまたはTIPO-JPOに基づいて提出されている。
以下の表8から分かるように、台湾における特許出願の特許査定率は、2012年の55.7%から2016年には73.3%に上がっている。
表8 特許出願の審査結果毎の比率
*「その他」には取下げおよび放棄が含まれる。
タイにおける意匠出願の係属期間に関する統計
表1は過去10年間のタイにおける意匠出願件数の推移を示す。
表1: タイにおける意匠出願件数の推移(出典:タイ特許庁データベース)
表2は過去10年間のタイにおける意匠登録件数の推移を示す。
表2: タイにおける意匠登録件数の推移(出典:タイ特許庁データベース)
なお、タイにおける意匠出願は、出願公開後に意匠審査官が新規性調査を行う。最初の拒絶理由通知までに要する期間は出願公開からおよそ1-2年である。また、意匠登録までに要する期間は出願公開からおよそ2-3年である。タイ国特許庁の決定もしくは拒絶を不服とした審判請求の提出から審決までに要する期間はおよそ2年間である。
台湾における意匠出願に関する統計
2007‐2016年の過去10年間において、台湾に提出された意匠出願は平均して年間7,000‐8,000件ほどであり、2013年の8,969件が最も多かった。また、2013年1月1日以降、台湾の意匠権により保護される対象には、部分意匠、CGおよびGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)なども含まれるようになった。また、同一出願人による類似意匠の保護に関する連合意匠制度に代わり、関連意匠(派生意匠)制度が導入された。
以下の表1は、2007‐2016年の台湾における意匠出願の統計データを示している。
備考:拒絶査定は、初審審査の後および再審査の後に出される。特許とは、特許出願が許可され、指摘された年に料金の納付をもって公告され、特許証が発行された特許を指す(2004年7月1日以降、公告日は特許発行日と同じである)。
表1: 2007年から2016年までの台湾における意匠出願の統計
台湾では、意匠出願は方式要件が満たされれば自動的に審査が行われ、登録査定を受領後、所定の料金の支払いをもって意匠権が付与される。意匠出願の審査が行われたが、登録要件が満たされていない場合、審査官は台湾専利法の規定に従い、拒絶査定が出る前に意見書を提出する機会を出願人に与えなければならない。すなわち審査官は拒絶査定の前に拒絶理由通知を発行する。外国出願人が拒絶理由通知を受領した場合、3か月以内に応答書を提出することができ、請求すれば更に3か月の延長が可能である。初審審査段階で拒絶査定を受領した場合、2か月以内に再審査を請求できる。再審査の理由書は4か月以内に補充することができ、必要であれば更に2か月の延長が可能である。実際、下記の表2から分かるように、過去数年間の台湾における意匠出願の登録査定率は高い。
出典:台湾知的財産局(TIPO)
備考:「その他」には、取下げおよび放棄が含まれる。
表2: 2012年から2016年までの年毎の台湾における意匠出願の審査結果
台湾知的財産局(TIPO)による意匠出願の標準処理期間に従い、査定が下されるのは初審査段階で12か月以内、さらに再審査段階で10か月以内である。オフィスアクションが発行されるまでの平均期間は、初審査段階で10か月以内、再審査段階で6か月以内である。
ただし、実際の係属期間は、かかる標準処理期間よりかなり短い。以下の表3は、ここ数年間における意匠出願の係属期間を示している。
出典:台湾知的財産局(TIPO)
備考:処理には、許可、拒絶その他の決定が含まれる。
表3: 2012年から2016年までの年毎の台湾における意匠出願の平均審査係属期間
注意すべき点として、台湾特許制度には発明、実用新案および意匠が含まれているため、意匠出願は専利法に定められた特許保護の対象となる。現行の台湾専利法に従い、意匠出願に関しても明細書および図面の双方の提出が義務づけられており、意匠権の存続期間は出願日から12年である。クリエイティブ産業を促進し、意匠出願を奨励するため、台湾知的財産局(TIPO)は意匠出願については明細書提出要件を削除し、意匠権の存続期間を15年にまで拡大することを提案している。意匠権の範囲は実際には図面によって決定され、明細書における記載は必要な場合の参考にすぎず、現在の意匠権の存続期間は主要なIP諸国と比べて短い。それゆえ台湾における意匠権に関する上記の変更は、数年のうちに行政院により承認され、立法院により可決される可能性が高い。
シンガポールにおける特許出願の係属状況に関する統計データ
表1は過去10年における特許出願件数の統計データ(国内出願およびPCT経由国内段階出願を含む)を示す。
表1 2006年から2016年までの年別の特許出願件数(出典:シンガポール知的財産局ウェブサイト)
表2は過去10年における特許付与件数の統計データ(国内出願およびPCT経由国内段階出願を含む)を示す。
表2 2006年から2016年までの年別の特許付与件数(出典:シンガポール知的財産局ウェブサイト)
シンガポール知的財産局は、特許出願の処理期間に関する統計データを公表していない。ただし、以下の必達目標を定めている。
・出願から12ヶ月以内に登録証を発行する。
・調査および審査または審査請求から12か月以内に最初のオフィスアクションを発行する。
表3は、日本の出願人により提出された特許出願の件数を示す。
表3 2006年から2016年までの年別の日本の出願人による特許出願件数(出典:シンガポール知的財産局ウェブサイト)
表4は、国際特許分類毎の特許付与率(%)を示す。
備考:1つの特許出願に複数の分類が割り振られている場合もある。
表4 2006年から2016年までの年別の国際特許分類毎の特許付与率(出典:シンガポール知的財産局ウェブサイト)
シンガポールにおける意匠出願の係属状況に関する統計データ
表1は過去10年におけるシンガポール知的財産局(IPOS)に提出された意匠出願件数の統計データを示す。
表1 2006年から2016年までの年別の意匠出願件数(出典:シンガポール知的財産局ウェブサイト)
表2は過去10年におけるIPOSにより登録された意匠登録件数の統計データを示す。
表2 2006年から2016年までの年別の意匠登録件数(出典:シンガポール知的財産局ウェブサイト)
表3はハーグ協定に基づくシンガポールを指定する国際出願を通した工業意匠の国際登録を示す。
表3 2006年から2016年までのシンガポールを指定する国際出願を通した工業意匠の国際登録件数(出典:シンガポール知的財産局ウェブサイト)
シンガポール知的財産局は、意匠出願の処理期間に関する統計データを公表していない。ただし、出願日から4カ月以内に登録証を発行することを必達目標として定めている。
表4は日本の出願人により提出された意匠出願の件数を示す。
表4 2006年から2016年までの年別の日本の出願人による意匠出願件数(出典:シンガポール知的財産局ウェブサイト)