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日本と中国における意匠の新規性喪失の例外に関する比較

1.日本における意匠出願の新規性喪失の例外
 日本においては、新規性を喪失した意匠の救済措置として、新規性喪失の例外規定が定められている。新規性喪失の例外規定の適用要件は以下のとおりである。

(1) 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の意に反して公開されたこと(意匠法第4条第1項)または
(2) 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の行為に基づいて公開されたこと(意匠法第4条第2項)

 上記いずれの場合についても、以下の要件を満たす必要がある。

(a) 意匠登録を受ける権利を有する者が意匠登録出願をしていること
(b) 意匠が最初に公開された日から1年(平成30年6月9日以降の出願に適用)以内に意匠登録出願をしていること。ただし、平成29年12月8日までに公開された意匠については、平成30年6月9日以降に出願しても、改正意匠法第4条の規定は適用されないので注意が必要。
 なお、意匠法第4条第2項に記載される自己の行為に基づく新規性喪失については、さらに以下の手続が必要となる。
(c) 出願時に、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする旨を記載した書面を提出、あるいは願書にその旨を記載すること(意匠法第4条第3項)。
(d) 出願の日から30日以内に、公開された意匠が新規性喪失の例外規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する「証明書」を証明書提出書とともに提出すること(意匠法第4条第3項)。

 「証明書」には、意匠が公開された事実(公開日、公開場所、公開者、公開された意匠の内容等)とともに、その事実を客観的に証明するための署名等を記載することが必要である。上記要件を満たした場合、その意匠登録出願に限り、その公開意匠は公知の意匠ではないとみなされる(意匠審査基準 新規性喪失の例外)。

条文等根拠:意匠法第4条、意匠審査基準 第Ⅲ部 第3章 新規性喪失の例外(【ソース】参照)

日本意匠法 第4条 意匠の新規性の喪失の例外
1 意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至った意匠は、その該当するに至った日から一年以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同項及び同条第二項の規定の適用については、同条第一項第一号又は第二号に該当するに至らなかったものとみなす。
2 意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至った意匠(発明、実用新案、意匠又は商標に関する公報に掲載されたことにより同項第一号又は第二号に該当するに至ったものを除く。)も、その該当するに至った日から一年以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同項及び同条第二項の規定の適用については、前項と同様とする。
3 前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至った意匠が前項の規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する書面(次項において「証明書」という。)を意匠登録出願の日から三十日以内に特許庁長官に提出しなければならない。
4 証明書を提出する者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内に証明書を提出することができないときは、同項の規定にかかわらず、その理由がなくなった日から十四日(在外者にあっては、二月)以内でその期間の経過後六月以内にその証明書を特許庁長官に提出することができる。

2.中国における意匠出願の新規性喪失の例外
 2021年6月1日施行の専利法第4次改正により、意匠出願の新規性喪失の例外が規定されている専利法第24条が改正され、第1項第1号が追加されて旧第1~3号が改正後の専利法第24条第1項第2~4号となった。なお、現時点で、専利法実施細則、専利審査指南は、専利法改正に対応した改正はなされていない。

 出願日前に意匠出願の内容が公開された出願人に対する救済措置として、(1) 国家において緊急事態、または非常事態が発生した時の、公共の利益のための初めての公開、(2) 中国政府が主催する、または認める国際展示会での初めての展示、(3) 規定の学術会議、あるいは技術会議上での初めての発表、(4) 出願者の同意を得ない他者によるその内容の漏洩、の四つの場合に限って、6か月の新規性喪失の例外期間が設けられている。

 この新規性喪失の例外期間を利用するには、(2)と(3)の場合には、出願の時に宣誓し、かつ出願日から2か月以内に証明書類を提出しなければならない(専利法実施細則第30条第3項、専利審査指南第1部分第1章6.3.1、6.3.2)。また、(4)の場合には、他人が出願人の許可を得ずに当該内容を漏らしたことを出願人が出願日以前に知っているならば、出願時に宣誓し、かつ出願日から2か月以内に証明資料を提出しなければならず、出願人が出願日以降に知った場合には、当該事情を知った後の2か月以内に新規性喪失の例外期間を要求する声明書を提出し、証明資料を添付しなければならない(専利審査指南第1部分第1章6.3.3)。なお、国務院専利行政部門(中国国家知識産権局)は必要に応じて、指定期限内での証明書類の提出を出願人に要求することができる(専利法実施細則第30条第4項)。

 条文等根拠:専利法第24条、専利法実施細則30条、専利審査指南第1部分第1章6.3.1、専利審査指南第1部分第1章6.3.2、専利審査指南第1部分第1章6.3.3

※専利法:日本における特許法、意匠法、実用新案法に相当する。
※実施細則:日本における施行規則に相当する。
※審査指南:日本における審査基準に相当する。

中国専利法 第24条
専利を出願する発明創造について、出願日前6ヶ月以内に以下の状況のいずれかがあった場合、その新規性を喪失しないものとする。
(一)国家において緊急事態又は非常事態が発生し、公共の利益のために初めて公開した場合。
(二)中国政府が主催する又は認める国際展示会で初めて展示された場合。
(三)規定の学術会議、又は技術会議上で初めて発表された場合。
(四)他者が出願人の同意を得ずに、その内容を漏洩した場合。

中国専利法実施細則 第30条
 専利法第二十四条第(一)号に言う中国政府が承認した国際博覧会とは、国際博覧会条約に定められた、博覧会国際事務局に登録したあるいはそれに認められた国際博覧会を指す。

 専利法第二十四条第(二)号に言う学術会議または技術会議とは、国務院の関係主管部門または全国的な学術団体が組織開催する学術会議または技術会議を指す。

 専利を出願する発明創造に専利法第二十四条第(一)号または第(二)号に挙げた事情がある場合、出願人は専利出願の提出時に声明し、かつ出願日より起算して2ヶ月以内に、国際博覧会または学術会議、技術会議の主催者が発行した、関係発明創造が既に展示されまたは発表された事実、並びに展示または発表の期日を証明する書類を提出しなければならない。

 専利を出願する発明創造に専利法第二十四条第(三)号に挙げた事情がある場合、国務院専利行政部門は必要に応じて、指定期限内での証明書類の提出を出願人に要求することが出来る。

 出願人が本条第3項の規定に基づいて声明と証明書類を提出せず、あるいは本条第4項の規定に基づいて指定期限内に証明書類を提出しなかった場合、その出願は専利法第二十四条の規定を適用しない。

専利審査指南第1部分第1章6.3.1 中国政府が主催し又は承認した国際展覧会における初めての展示

 中国政府が主催する国際展覧会は、国務院・各部委員会が主催するもの、又は国務院が許可し、その他の機構或いは地方政府が開催する国際展覧会を含む。中国政府が承認する国際展覧会とは、国際展覧会条約に規定されたもので、国際展覧局で登録又は認可された国際展覧会を指す。国際展覧会というのは、出展される展示品は主催国の製品のほか、外国からの製品も展示されなければならない。

 専利出願に係わる発明創造は、出願日以前の6ヶ月以内に、中国政府が主催し又は承認した国際展覧会で初めて展示されており、出願人は新規性を喪失しない猶予期間を要求する場合、出願時に願書で声明し、かつ出願日より2ヶ月以内に証明資料を提出しなければならない。

 国際展覧会の証明資料は展覧会の主催機構が発行するものでなければならない。証明資料に、展覧会の出展日、場所、展覧会の名称及び当該発明創造が展示された出展日時、形式と内容を記載して、公印を捺印しなければならない。

専利審査指南第1部分第1章6.3.2 認可された学術会議又は技術会議で初めて発表

 認可された学術会議又は技術会議とは、国務院の関連主管部門又は全国的な学術団体組織が開催する学術会議又は技術会議を指し、省以下、又は国務院の各部委員会若しくは全国的な学術団体から委任を受けて、或いはその名義により召集して開催する学術会議又は技術会議を含まない。後者で言う会議での公開は、新規性の喪失につながるが、これらの会議そのものに守秘の約束がある場合は除く。

 専利出願する発明創造が出願日以前の6ヶ月以内に認可された学術会議又は技術会議で初めて発表されており、出願人は新規性を喪失しない猶予期間を要求する場合、出願時に願書で声明し、かつ出願日より2ヶ月以内に証明資料を提出しなければならない。

 学術会議及び技術会議の証明資料は国務院の関連主管部門又は会議を組織する全国的な学術団体が発行するものでなければならない。証明資料には会議の開催日、場所、会議の名称及び当該発明創造の発表日、形式と内容を明記し、公印を捺印しなければならない。

専利審査指南第1部分第1章6.3.3 他人が出願人の許可を得ずに当該内容を漏らした場合

 他人は出願人の許可を得ずに、当該内容を漏らしたことにより公開されたこと

は、他人が明示又は黙認された守秘の約束を守らずに発明創造の内容を公開すること、他人が威嚇、詐欺又はスパイ活動などの手段により発明者、或いは出願人から発明創造の内容を得ることによって発明創造を公開することを含む。

 専利を出願する発明創造について、出願日以前の6ヶ月以内に、他人が出願人の許可を得ずに当該内容を漏らしたことを、出願人が出願日以前に知っているならば、専利出願時に願書で声明し、出願日より2ヶ月以内に証明資料を提出しなければならない。出願人が出願日以降に知っている場合は、当該事情を知った後の2ヶ月以内に新規性を喪失しない猶予期間を要求する声明を提出し、証明資料を添付しなければならない。審査官は必要であると判断した際に、指定された期限以内に証明資料を提出するよう、出願人に要求して良いとする。

 出願人が提出する他人による出願内容の漏洩に関する証明資料には、漏洩日、漏洩方法、漏洩内容を記載し、証明人が署名又は捺印しなければならない。

 出願人は新規性を喪失しない猶予期間を要求しているが、規定事項に合致しない場合、審査官は、新規性を喪失しない猶予期間を求めていないとみなす通知書を発行しなければならない。

日本と中国における意匠の新規性喪失の例外に関する比較

日本 中国
新規性喪失の例外の有無
意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因する公知行為の限定の有無
(1) 国家において緊急事態又は非常事態が発生し、公共の利益のために初めて公開した場合
(2)中国政府が主催するまたは認める国際展示会での初めての展示
(3)規定の学術会議、あるいは技術会議における初めての発表
例外期間 公開日から1年 公開日から6か月

日本とインドにおける意匠の新規性喪失の例外に関する比較

<日本における意匠出願の新規性喪失の例外>

 

 日本においては、新規性を喪失した意匠の救済措置として、新規性喪失の例外規定が定められている。新規性喪失の例外規定の適用要件は以下のとおりである。

1 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の意に反して公開されたこと(第4条第1項)または

2 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の行為に基づいて公開されたこと(第4条第2項)

 上記いずれの場合についても、以下の要件を満たす必要がある*)

(1)権利者の行為に起因して公開された意匠の公開日から1年以内に意匠登録出願すること

(2)意匠登録出願時に意匠の新規性喪失の例外規定の適用を受けようとする旨を記載した

書面を提出すること(願書に【特記事項】の欄を加え、当該規定を受けようとする出願である旨を明記することで代用可能。)

(3)意匠登録出願の日から30日以内に、意匠の新規性喪失の例外規定の適用の要件を満たすことを証明する書面(証明書)を提出すること

*)意匠の新規性喪失の例外規定についてのQ&A集(https://www.jpo.go.jp/system/design/shutugan/tetuzuki/ishou-reigai-tetsuduki/document/index/ishou-reigai-qa.pdf

 「証明書」には、意匠が公開された事実(公開日、公開場所、公開者、公開意匠の内容等)とともに、その事実を証明する者の署名、捺印等を記載することが必要である。なお、第三者によらず、出願人自身が署名・捺印したものであっても一定の証明力があるものとして許容される**)

**)「意匠審査基準の改訂」、p115脚注(https://www.jpo.go.jp/news/shinchaku/event/seminer/text/document/isho_text_h29/shiryou_02.pdf

条文等根拠:意匠法第4条

 

日本意匠法 第4条(意匠の新規性の喪失の例外)

1 意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至った意匠は、その該当するに至った日から一年以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同項及び同条第二項の規定の適用については、同条第一項第一号又は第二号に該当するに至らなかったものとみなす。

2 意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至った意匠(発明、実用新案、意匠又は商標に関する公報に掲載されたことにより同項第一号又は第二号に該当するに至ったものを除く。)も、その該当するに至った日から一年以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同項及び同条第二項の規定の適用については、前項と同様とする。

3 前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至った意匠が前項の規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する書面(次項において「証明書」という。)を意匠登録出願の日から三十日以内に特許庁長官に提出しなければならない。

4 証明書を提出する者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内に証明書を提出することができないときは、同項の規定にかかわらず、その理由がなくなった日から十四日(在外者にあっては、二月)以内でその期間の経過後六月以内にその証明書を特許庁長官に提出することができる。

 

 

<インドにおける意匠出願の新規性喪失の例外>

 

 インドにおける意匠の新規性喪失の例外規定については、以下の規定がある。中央政府に承認された博覧会での開示や意匠権者の意に反する開示について、新規性喪失の例外が認められている。博覧会での開示に関しては、開示日から6月以内に意匠出願する必要がある。インド意匠法第6条では、ある分類で既に登録された先行意匠登録と同一分類中であれば、(先登録意匠の物品とは)別の物品に関しても、一定条件のもと、意匠登録を取得できる特有の例外規定も存在する。

 

条文等根拠:意匠法第21条、第16条、第6条

 

注)インド意匠法原文(英語)ではdesign rightの代わりにcopyrightという用語が使用されているが、「登録された区分における物品に意匠を適用する排他的権利」と定義されている。

 

インド意匠法 第21条(博覧会に係る規定)

官報の告示により中央政府によって本条が適用される産業その他の博覧会における博覧会開催期間中若しくはその後の意匠若しくは意匠適用物品の展示又は意匠表示の公開,又は何人かによる他の場所における博覧会開催期間中若しくはその後の意匠若しくは物品の展示又は意匠表示の公開であって,意匠所有者の黙認若しくは同意を得ないものは,当該意匠が登録されることを妨げるものではなく,又は,その登録を無効にするものではない。

ただし,次に掲げる事項を前提とする。

(a) 当該意匠若しくは物品を展示し,又は意匠表示を公開する展示者が,長官に対し所定の様式で事前通知をすること,及び

(b) 登録出願が,意匠若しくは物品の最初の展示日又は意匠表示の最初の公開日から6月以内にされること

 

インド意匠法 第16条(開示の意匠権への影響)

意匠所有者による他人への意匠の開示であっても,当該他人が当該意匠を使用又は公開すれば誠意に反するような状況での開示,及び意匠所有者以外の者による誠意に反する意匠の開示,及び登録を意図する新規性又は創作性のある織物意匠を帯びる物品に対する最初のかつ非公開の受注については,当該意匠の登録が当該開示又は受注の後で得られるときは,当該意匠権を無効にする程の意匠の公開とはみなさない。

 

インド意匠法 第6条 第3項(特定物品に関する登録)

(3) 意匠が,1物品区分に含まれた物品に関して既に登録されている場合は,当該物品区分に含まれた1又は2以上の他の物品に関する意匠所有者の登録出願は,次に掲げる理由で拒絶されることはなく,またその登録が無効にされることもない。

 (a) 当該意匠がそのように先に登録された事実のみによって,当該意匠が新規性若しくは創作性を有する意匠でないとする理由,又は

 (b) 当該意匠がそのように先に登録された物品に適用されている事実のみによって,当該意匠がインド若しくは何れかの外国において先に公開されているとする理由

ただし,そのように後にする登録は,当該意匠権期間が先の登録から発生する意匠権期間を超えないことを条件とする。

 

 

日本とインドにおける意匠の新規性喪失の例外に関する比較

 

日本

インド

新規性喪失の例外の有無

例外期間

公開日から1年

公開日から6月

公知行為の限定

公知行為とは見做されない公開

1.出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の意に反して公開されたこと

2.出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の行為に基づいて公開されたこと

1.創作者・意匠権者の意に反する、第三者による公開、および登録を意図する織物意匠を帯びる物品に対する最初のかつ非公開の受注について、意匠の登録が当該開示又は受注の後で得られるとき

2.中央政府による博覧会での公開

証明する書面(証明書)

公開の事実等を記載した証明書を提出する必要がある

博覧会での公開については長官に対する事前通知が必要である

 

 

日本と中国における意匠の新規性喪失の例外に関する比較

日本における意匠出願の新規性喪失の例外

日本においては、新規性を喪失した意匠の救済措置として、新規性喪失の例外規定が定められている。新規性喪失の例外規定の適用要件は以下のとおりである。

1 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の意に反して公開されたこと(第4条第1項)または

2 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の行為に基づいて公開されたこと(第4条第2項)

上記いずれの場合についても、以下の要件を満たす必要がある。

(1) 意匠登録を受ける権利を有する者が意匠登録出願をしていること

(2) 意匠が最初に公開された日から1年(平成30年6月9日以降の出願に適用)以内に意匠登録出願をしていること。ただし、平成29年12月8日までに公開された意匠については、平成30年6月9日以降に出願しても、改正意匠法第4条の規定は適用されないので注意が必要。

なお第4条第2項に記載される自己の行為に基づく新規性喪失については、さらに以下の手続が必要となる。

(3) 出願時に、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする旨を記載した書面を提出、あるいは願書にその旨を記載すること(第4条第3項)。

(4) 出願の日から30日以内に、公開された意匠が新規性喪失の例外規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する「証明書」を証明書提出書とともに提出すること(第4条第3項)。

「証明書」には、意匠が公開された事実(公開日、公開場所、公開された意匠の内容等)とともに、その事実を客観的に証明するための署名等を記載することが必要である。上記要件を満たした場合、その意匠登録出願に限り、その公開意匠は公知の意匠ではないとみなされる。

条文等根拠:意匠法第4条

 

日本意匠法 第4条 意匠の新規性の喪失の例外

1 意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至った意匠は、その該当するに至った日から一年以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同項及び同条第二項の規定の適用については、同条第一項第一号又は第二号に該当するに至らなかったものとみなす。

 

2 意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至った意匠(発明、実用新案、意匠又は商標に関する公報に掲載されたことにより同項第一号又は第二号に該当するに至ったものを除く。)も、その該当するに至った日から一年以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同項及び同条第二項の規定の適用については、前項と同様とする。

 

3 前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至った意匠が前項の規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する書面(次項において「証明書」という。)を意匠登録出願の日から三十日以内に特許庁長官に提出しなければならない。

 

4 証明書を提出する者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内に証明書を提出することができないときは、同項の規定にかかわらず、その理由がなくなった日から十四日(在外者にあっては、二月)以内でその期間の経過後六月以内にその証明書を特許庁長官に提出することができる。

 

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中国における意匠出願の新規性喪失の例外

出願日前に意匠出願の内容が公開された出願人に対する救済措置として、(1)中国政府が主催するまたは認める国際展示会での初めての展示、(2)規定の学術会議、あるいは技術会議上での初めての発表、(3)出願者の同意を得ない他者によるその内容の漏洩、の三つの場合、6か月間の新規性喪失の例外期間が設けられている。

 

この規性喪失の例外期間を利用するには、(1)と(2)の場合には、出願の時に宣誓し、かつ出願日から2か月以内に証明書類を提出しなければならない。また(3)の場合には、他人が出願人の許可を得ずに当該内容を漏らしたことを出願人が出願日以前に知っているならば、出願時に宣誓し、かつ出願日から2か月以内に証明資料を提出しなければならず、出願人が出願日以降に知った場合には、当該事情を知った後の2か月以内に新規性喪失の例外期間を要求する声明書を提出し、証明資料を添付しなければならない。なお、国務院専利行政部門(中国特許庁に相当)は必要に応じて、指定期限内での証明書類の提出を出願人に要求することができる。

 

条文等根拠:専利法第24条、専利法実施細則30条、専利審査指南第1部分第1章6.3.1、専利審査指南第1部分第1章6.3.2、専利審査指南第1部分第1章6.3.3

 

※専利法:日本における特許法、意匠法、実用新案法に相当。以下「専利法」。

※実施細則:日本における施行規則に相当。以下「実施細則」。

※審査指南:日本における審査基準に相当。以下「専利指南」。

 

中国専利法 第24条

専利を出願する発明創造について、出願日前6ヶ月以内に以下の状況のいずれかがあった場合、その新規性を喪失しないものとする。

(一) 中国政府が主催するまたは認める国際展示会で初めて展示された場合。

(二) 規定の学術会議、あるいは技術会議上で初めて発表された場合。

(三) 他者が出願者の同意を得ずに、その内容を漏洩した場合。

 

中国専利法実施細則 第30条

専利法第二十四条第(一)号に言う中国政府が承認した国際博覧会とは、国際博覧会条約に定められた、博覧会国際事務局に登録したあるいはそれに認められた国際博覧会を指す。

専利法第二十四条第(二)号に言う学術会議または技術会議とは、国務院の関係主管部門または全国的な学術団体が組織開催する学術会議または技術会議を指す。

専利を出願する発明創造に専利法第二十四条第(一)号または第(二)号に挙げた事情がある場合、出願人は専利出願の提出時に声明し、かつ出願日より起算して2ヶ月以内に、国際博覧会または学術会議、技術会議の主催者が発行した、関係発明創造が既に展示されまたは発表された事実、並びに展示または発表の期日を証明する書類を提出しなければならない。

専利を出願する発明創造に専利法第二十四条第(三)号に挙げた事情がある場合、国務院専利行政部門は必要に応じて、指定期限内での証明書類の提出を出願人に要求することが出来る。

出願人が本条第3項の規定に基づいて声明と証明書類を提出せず、あるいは本条第4項の規定に基づいて指定期限内に証明書類を提出しなかった場合、その出願は専利法第二十四条の規定を適用しない。

 

専利審査指南第1部分第1章6.3.1 中国政府が主催し又は承認した国際展覧会における初めての展示

中国政府が主催する国際展覧会は、国務院・各部委員会が主催するもの、又は国務院が許可し、その他の機構或いは地方政府が開催する国際展覧会を含む。中国政府が承認する国際展覧会とは、国際展覧会条約に規定されたもので、国際展覧局で登録又は認可された国際展覧会を指す。国際展覧会というのは、出展される展示品は主催国の製品のほか、外国からの製品も展示されなければならない。

専利出願に係わる発明創造は、出願日以前の6ヶ月以内に、中国政府が主催し又は承認した国際展覧会で初めて展示されており、出願人は新規性を喪失しない猶予期間を要求する場合、出願時に願書で声明し、かつ出願日より2ヶ月以内に証明資料を提出しなければならない。

国際展覧会の証明資料は展覧会の主催機構が発行するものでなければならない。証明資料に、展覧会の出展日、場所、展覧会の名称及び当該発明創造が展示された出展日時、形式と内容を記載して、公印を捺印しなければならない。

 

専利審査指南第1部分第1章6.3.2 認可された学術会議又は技術会議で初めて発表

認可された学術会議又は技術会議とは、国務院の関連主管部門又は全国的な学術団体組織が開催する学術会議又は技術会議を指し、省以下、又は国務院の各部委員会若しくは全国的な学術団体から委任を受けて、或いはその名義により召集して開催する学術会議又は技術会議を含まない。後者で言う会議での公開は、新規性の喪失につながるが、これらの会議そのものに守秘の約束がある場合は除く。

専利出願する発明創造が出願日以前の6ヶ月以内に認可された学術会議又は技術会議で初めて発表されており、出願人は新規性を喪失しない猶予期間を要求する場合、出願時に願書で声明し、かつ出願日より2ヶ月以内に証明資料を提出しなければならない。

学術会議及び技術会議の証明資料は国務院の関連主管部門又は会議を組織する全国的な学術団体が発行するものでなければならない。証明資料には会議の開催日、場所、会議の名称及び当該発明創造の発表日、形式と内容を明記し、公印を捺印しなければならない。

 

専利審査指南第1部分第1章6.3.2 他人が出願人の許可を得ずに当該内容を漏らした場合

他人は出願人の許可を得ずに、当該内容を漏らしたことにより公開されたこと

は、他人が明示又は黙認された守秘の約束を守らずに発明創造の内容を公開すること、他人が威嚇、詐欺又はスパイ活動などの手段により発明者、或いは出願人から発明創造の内容を得ることによって発明創造を公開することを含む。

専利を出願する発明創造について、出願日以前の6ヶ月以内に、他人が出願人の許可を得ずに当該内容を漏らしたことを、出願人が出願日以前に知っているならば、専利出願時に願書で声明し、出願日より2ヶ月以内に証明資料を提出しなければならない。出願人が出願日以降に知っている場合は、当該事情を知った後の2ヶ月以内に新規性を喪失しない猶予期間を要求する声明を提出し、証明資料を添付しなければならない。審査官は必要であると判断した際に、指定された期限以内に証明資料を提出するよう、出願人に要求して良いとする。

出願人が提出する他人による出願内容の漏洩に関する証明資料には、漏洩日、漏洩方法、漏洩内容を記載し、証明人が署名又は捺印しなければならない。

出願人は新規性を喪失しない猶予期間を要求しているが、規定事項に合致しない場合、審査官は、新規性を喪失しない猶予期間を求めていないとみなす通知書を発行しなければならない。

 

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日本と中国における意匠の新規性喪失の例外に関する比較

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日本とベトナムにおける意匠の新規性喪失の例外に関する比較

日本における意匠出願の新規性喪失の例外

 日本においては、新規性を喪失した意匠の救済措置として、新規性喪失の例外規定が定められている。新規性喪失の例外規定の適用要件は以下の通りである。

1 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の意に反して公開されたこと(第4条第1項)または

2 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の行為に基づいて公開されたこと(第4条第2項)

上記いずれの場合についても、以下の要件を満たす必要がある。

(1)意匠登録を受ける権利を有する者が意匠登録出願をしていること

(2)意匠が最初に公開された日から6ヶ月以内に意匠登録出願をしていること

なお第4条第2項に記載される自己の行為に基づく新規性喪失については、さらに以下の手続が必要となる。

(3)出願時に、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする旨を記載した書面を提出、あるいは願書にその旨を記載すること(第4条第3項)。

(4)出願の日から30日以内に、公開された意匠が新規性喪失の例外規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する「証明書」を証明書提出書とともに提出すること(第4条第3項)。

 

「証明書」には、意匠が公開された事実(公開日、公開場所、公開された意匠の内容等)とともに、その事実を客観的に証明するための署名等を記載することが必要である。上記要件を満たした場合、その意匠登録出願に限り、その公開意匠は公知の意匠ではないとみなされる。

条文等根拠:意匠法第4条

 

日本意匠法 第4条 意匠の新規性の喪失の例外

1 意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して第三条第一項第一号または第二号に該当するに至った意匠は、その該当するに至った日から六月以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同条第一項および第二項の規定の適用については、同条第一項第一号または第二号に該当するに至らなかつたものとみなす。

 

2 意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して第三条第一項第一号または第二号に該当するに至った意匠(発明、実用新案、意匠または商標に関する公報に掲載されたことにより同条第一項第一号または第二号に該当するに至ったものを除く。)も、その該当するに至った日から六月以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同条第一項および第二項の規定の適用については、前項と同様とする。

 

3 前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第三条第一項第一号または第二号に該当するに至った意匠が前項の規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する書面を意匠登録出願の日から三十日以内に特許庁長官に提出しなければならない。

 

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ベトナムにおける意匠出願の新規性喪失の例外

 ベトナムでは、新規性喪失の例外規定として以下の規定が存在する。ただし、ベトナムにおける新規性喪失の例外規定は非常に限定的であり、日本のような活用は難しい。意匠の公開日から6ヶ月以内に出願する期間要件は同じであるが、当該例外規定の要件として、学術的発表形態またはベトナム国内博覧会または公式もしくは公認の国際博覧会での展示行為に限定されている。

なお、ベトナム意匠規則4条2d)では、方式審査項目が規定されており、その中で、意匠が展示されていたことの証明書類、学術的発表書類、または意匠が出願人の意図に反して公開されたことの証明書類、を確認することが規定されている。

条文等根拠:知的財産法第65条(4)、知的財産法第86条、意匠規則4条2d)

 

ベトナム知的財産法 第65条 意匠の新規性

(4)意匠が以下の状況で公開されたときは、新規性を欠くとはみなさない。ただし、意匠出願が公開または展示の日から6ヶ月以内に行われることを条件とする。

 (a)意匠が第86 条に規定する登録を受ける権利を有する者の許可なしに他人により公開された。

 (b)意匠が第86 条に規定する登録を受ける権利を有する者により学術的発表の形態で公開された。

 (c)意匠が第86 条に規定する登録を受ける権利を有する者により、ベトナム国内博覧会または公式もしくは公認の国際博覧会において展示された。

 

ベトナム知的財産法 第86条 発明、意匠および回路配置の登録を受ける権利の規定

(1)次の組織および個人は、発明、意匠、回路配置の登録を受ける権利を有する。

 (a)その者自身の努力および費用により発明、意匠、回路配置を創作した創作者、または

 (b)当事者による別段の合意がない限り、かつ、当該合意が(2)に反さない限り、資金および物的施設を創作者に対し職務割当または雇用の形態で投資した組織または個人

(2)政府は、国家予算からの資金ならびに物的および技術的施設を使用することによって創作された発明、工業意匠、回路配置の登録を受ける権利を規定する。

(3)複数の組織または個人が発明、工業意匠、回路配置の創作において共同して創作しまたは投資した場合は、それら組織または個人はすべて登録を受ける権利を有し、当該権利はそれらの者の合意によってのみ行使されるものとする。

(4)本条に規定する登録を受ける権利を有する者は、登録出願が行われている時であっても、契約書の形態により他の組織または個人に対し当該権利を譲渡することができ、また法律に従って相続することができる。

 

日本とベトナムにおける意匠の新規性喪失の例外に関する比較

 

日本

ベトナム

新規性喪失の例外の有無

公知行為の限定の有無

国内博覧会または公式もしくは公認の国際博覧会

 

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新興国等知財情報データバンク 調査対象国、地域における意匠の新規性喪失の例外については、下記のとおりである。

 

意匠の新規性喪失の例外に関する各国比較

新規性例外の有無

例外期間

例外期間の起算日

公知行為の限定の有無

JP

6ヶ月

公開日

BR

180日間

公開日

CN

6ヶ月

公開日

HK

6ヶ月

公開日

ID

6ヶ月

公開日

IN

6ヶ月

公開日

KR

6ヶ月

公開日

MY

6ヶ月

公開日

PH

6ヶ月

公開日

RU

12ヶ月

公開日

SG

6ヶ月

公開日

TH

12ヶ月

公開日

TW

6ヶ月

公開日

VN

6ヶ月

公開日

日本とインドにおける意匠の新規性喪失の例外に関する比較

日本における意匠出願の新規性喪失の例外

日本においては、新規性を喪失した意匠の救済措置として、新規性喪失の例外規定が定められている。新規性喪失の例外規定の適用要件は以下の通りである。

1 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の意に反して公開されたこと(第4条第1項)または

2 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の行為に基づいて公開されたこと(第4条第2項)

 

上記いずれの場合についても、以下の要件を満たす必要がある。

(1)意匠登録を受ける権利を有する者が意匠登録出願をしていること

(2)意匠が最初に公開された日から6ヶ月以内に意匠登録出願をしていること

 

なお第4条第2項に記載される自己の行為に基づく新規性喪失については、さらに以下の手続が必要となる。

(3)出願時に、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする旨を記載した書面を提出、あるいは願書にその旨を記載すること(第4条第3項)。

(4)出願の日から30日以内に、公開された意匠が新規性喪失の例外規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する「証明書」を証明書提出書とともに提出すること(第4条第3項)。

 

「証明書」には、意匠が公開された事実(公開日、公開場所、公開された意匠の内容等)とともに、その事実を客観的に証明するための署名等を記載することが必要である。上記要件を満たした場合、その意匠登録出願に限り、その公開意匠は公知の意匠ではないとみなされる。

条文等根拠:意匠法第4条

 

日本意匠法 第4条 意匠の新規性の喪失の例外

1 意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して第三条第一項第一号または第二号に該当するに至った意匠は、その該当するに至った日から六月以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同条第一項および第二項の規定の適用については、同条第一項第一号または第二号に該当するに至らなかつたものとみなす。

2 意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して第三条第一項第一号または第二号に該当するに至った意匠(発明、実用新案、意匠または商標に関する公報に掲載されたことにより同条第一項第一号または第二号に該当するに至ったものを除く。)も、その該当するに至った日から六月以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同条第一項および第二項の規定の適用については、前項と同様とする。

3 前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第三条第一項第一号または第二号に該当するに至った意匠が前項の規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する書面を意匠登録出願の日から三十日以内に特許庁長官に提出しなければならない。

 

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インドにおける意匠出願の新規性喪失の例外

インドにおける意匠の新規性喪失の例外規定については、以下の規定がある。中央政府に承認された展示会での開示や意匠権者の意に反する開示について、新規性喪失の例外が認められている。展示会での開示に関しては、開示日から6ヶ月以内に意匠出願する必要がある。インド意匠法第6条では、ある分類で既に登録された先行意匠登録と同一分類中であれば、(先登録意匠の物品とは)別の物品に関しても、一定条件のもと、意匠登録を取得できる特殊な例外規定が存在する。

条文等根拠:意匠法第21条、第16条、第6条

 

インド意匠法 第21条 展示会に係る規定

中央政府によって承認された、本条が適用される産業その他の展示会における展示会開催期間中、もしくはその後の意匠もしくは意匠適用物品の展示または意匠表示の公開、または何人かによる他の場所における展示会開催期間中、もしくはその後の意匠もしくは物品の展示または意匠表示の公開であって、意匠所有者の黙認もしくは同意を得ないものは、当該意匠が登録されることを妨げるものではなく、または、その登録を無効にするものではない。 ただし、次に掲げる事項を前提とする。

(a)当該意匠もしくは物品を展示し、または意匠表示を公開する展示者が、長官に対し所定の様式で事前通知をすること、および

(b)登録出願が、意匠もしくは物品の最初の展示日または意匠表示の最初の公開日から 6月以内にされること

 

インド意匠法 第16条 開示の意匠権への影響

意匠権者による他人への意匠の開示であっても、当該他人が当該意匠を使用または公開すれば(意匠権者の)誠意に反するような状況での開示、および

意匠権者以外の者による(意匠権者の)誠意に反する意匠の開示、および

意匠登録を目的とした、新規性または創作性のある織物意匠を包含した物品に関して、最初かつ非公開の依頼を受理する場合、

当該開示または受理後に、当該意匠登録を取得しても、当該意匠権を無効にする程の意匠の公開とはみなさない。

 

インド意匠法 第6条 特定物品に関する登録

(3)ある意匠が、ある1つの分類に指定された物品に関して既に登録されている場合、当該分類に含まれた、1または2以上の他の物品に関して当該意匠権者が出願しても、次に掲げる理由で拒絶されることはなく、またその登録が無効にされることもない。

(a)当該意匠がそのように先に登録された事実のみによって、当該意匠が新規性もしくは創作性を有する意匠でないとする理由、または (b) 当該意匠がそのように先に登録された物品に適用されている事実のみによって、当該意匠がインドもしくは何れかの外国において先に公開されているとする理由。

ただし、上記のような、後の登録の意匠権保護期間は、先の登録から発生する意匠権保護期間を超えないことを条件とする。

 

日本とインドにおける意匠の新規性喪失の例外に関する比較

  日本 インド
新規性喪失の例外の有無
公知行為の限定の有無 中央政府による展示会

 

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新興国等知財情報データバンク 調査対象国、地域における意匠の新規性喪失の例外については、下記のとおりである。

意匠の新規性喪失の例外に関する各国比較

新規性例外の有無 例外期間 例外期間の起算日 公知行為の限定の有無
JP 6ヶ月 公開日
BR 180日間 公開日
CN 6ヶ月 公開日
HK 6ヶ月 公開日
ID 6ヶ月 公開日
IN 6ヶ月 公開日
KR 6ヶ月 公開日
MY 6ヶ月 公開日
PH 6ヶ月 公開日
RU 12ヶ月 公開日
SG 6ヶ月 公開日
TH 12ヶ月 公開日
TW 6ヶ月 公開日
VN 6ヶ月 公開日

日本と中国における意匠の新規性喪失の例外に関する比較

日本における意匠出願の新規性喪失の例外

日本においては、新規性を喪失した意匠の救済措置として、新規性喪失の例外規定が定められている。新規性喪失の例外規定の適用要件は以下の通りである。

1 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の意に反して公開されたこと(第4条第1項)または

2 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の行為に基づいて公開されたこと(第4条第2項)

 

上記いずれの場合についても、以下の要件を満たす必要がある。

(1)意匠登録を受ける権利を有する者が意匠登録出願をしていること

(2)意匠が最初に公開された日から6ヶ月以内に意匠登録出願をしていること

 

なお第4条第2項に記載される自己の行為に基づく新規性喪失については、さらに以下の手続が必要となる。

(3)出願時に、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする旨を記載した書面を提出、あるいは願書にその旨を記載すること(第4条第3項)。

(4)出願の日から30日以内に、公開された意匠が新規性喪失の例外規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する「証明書」を証明書提出書とともに提出すること(第4条第3項)。

 

「証明書」には、意匠が公開された事実(公開日、公開場所、公開された意匠の内容等)とともに、その事実を客観的に証明するための署名等を記載することが必要である。上記要件を満たした場合、その意匠登録出願に限り、その公開意匠は公知の意匠ではないとみなされる。

条文等根拠:意匠法第4条

 

日本意匠法 第4条 意匠の新規性の喪失の例外

1 意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して第三条第一項第一号または第二号に該当するに至った意匠は、その該当するに至った日から六月以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同条第一項および第二項の規定の適用については、同条第一項第一号または第二号に該当するに至らなかつたものとみなす。

2 意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して第三条第一項第一号または第二号に該当するに至った意匠(発明、実用新案、意匠または商標に関する公報に掲載されたことにより同条第一項第一号または第二号に該当するに至ったものを除く。)も、その該当するに至った日から六月以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同条第一項および第二項の規定の適用については、前項と同様とする。

3 前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第三条第一項第一号または第二号に該当するに至った意匠が前項の規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する書面を意匠登録出願の日から三十日以内に特許庁長官に提出しなければならない。

 

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中国における意匠出願の新規性喪失の例外

出願日前に意匠出願の内容が公開された出願人に対する救済措置として、(1)中国政府が主催するまたは認める国際展示会での初めての展示、(2)規定の学術会議、あるいは技術会議上での初めての発表、(3)出願者の同意を得ない他者によるその内容の漏洩、の三つの場合、6ヶ月間の新規性喪失の例外期間が設けられている。

この規性喪失の例外期間を利用するには、(1)と(2)の場合には、出願の時に宣誓し、かつ出願日から2ヶ月以内に証明書類を提出しなければならない。また(3)の場合には、他人が出願人の許可を得ずに当該内容を漏らしたことを出願人が出願日以前に知っているならば、出願時に宣誓し、かつ出願日から2ヶ月以内に証明資料を提出しなければならず、出願人が出願日以降に知った場合には、当該事情を知った後の2ヶ月以内に新規性喪失の例外期間を要求する声明書を提出し、証明資料を添付しなければならない。なお、国務院専利行政部門(中国特許庁に相当)は必要に応じて、指定期限内での証明書類の提出を出願人に要求することができる。

条文等根拠:専利法第24条、専利法実施細則30条、専利審査指南1.1.6.3.1、専利審査指南1.1.6.3.2、専利審査指南1.1.6.3.3

 

※専利法:日本における特許法、意匠法、実用新案法に相当。以下「専利法」。

※実施細則:日本における施行規則に相当。以下「実施細則」。

※審査指南:日本における審査基準に相当。以下「専利指南」。

 

中国専利法 第24条

専利を出願する発明創造について、出願日前6ヶ月以内に以下の状況のいずれかがあった場合、その新規性を喪失しないものとする。

(一)中国政府が主催するまたは認める国際展示会で初めて展示された場合。

(二)規定の学術会議、あるいは技術会議上で初めて発表された場合。

(三)他者が出願者の同意を得ずに、その内容を漏洩した場合。

 

中国専利法実施細則 第30条

専利法第二十四条第(一)号に言う中国政府が承認した国際博覧会とは、国際博覧会条約に定められた、博覧会国際事務局に登録したあるいはそれに認められた国際博覧会を指す。

専利法第二十四条第(二)号に言う学術会議または技術会議とは、国務院の関係主管部門または全国的な学術団体が組織開催する学術会議または技術会議を指す。

専利を出願する発明創造に専利法第二十四条第(一)号または第(二)号に挙げた事情がある場合、出願人は専利出願の提出時に声明し、かつ出願日より起算して2ヶ月以内に、国際博覧会または学術会議、技術会議の主催者が発行した、関係発明創造が既に展示されまたは発表された事実、並びに展示または発表の期日を証明する書類を提出しなければならない。

専利を出願する発明創造に専利法第二十四条第(三)号に挙げた事情がある場合、国務院専利行政部門は必要に応じて、指定期限内での証明書類の提出を出願人に要求することが出来る。

出願人が本条第3項の規定に基づいて声明と証明書類を提出せず、あるいは本条第4項の規定に基づいて指定期限内に証明書類を提出しなかった場合、その出願は専利法第二十四条の規定を適用しない。

 

中国専利法審査指南 1.1.6.3.1

中国政府が主催する国際展覧会は、国務院・各部委員会が主催するもの、または国務院が許可し、その他の機構あるいは地方政府が開催する国際展覧会を含む。中国政府が承認する国際展覧会とは、国際展覧会条約に規定されたもので、国際展覧局で登録または認可された国際展覧会を指す。国際展覧会というのは、出展される展示品は主催国の製品のほか、外国からの製品も展示されなければならない。

意匠出願に係わる創作は、出願日以前の6ヶ月以内に、中国政府が主催しまたは承認した国際展覧会で初めて展示されており、出願人は新規性を喪失しない猶予期間を要求する場合、出願時に願書で声明し、かつ出願日より2ヶ月以内に証明資料を提出しなければならない。

国際展覧会の証明資料は展覧会の主催機構が発行するものでなければならない。証明資料に、展覧会の出展日、場所、展覧会の名称および当該発明創造が展示された出展日時、形式と内容を記載して、公印を捺印しなければならない。

 

中国専利法審査指南 1.1.6.3.2

認可された学術会議または技術会議とは、国務院の関連主管部門または全国的な学術団体組織が開催する学術会議または技術会議を指し、省以下、または国務院の各部委員会若しくは全国的な学術団体から委任を受けて、あるいはその名義により召集して開催する学術会議または技術会議を含まない。後者で言う会議での公開は、新規性の喪失につながるが、これらの会議そのものに守秘の約束がある場合は除く。

意匠出願する創作が出願日以前の6ヶ月以内に認可された学術会議または技術会議で初めて発表されており、出願人は新規性を喪失しない猶予期間を要求する場合、出願時に願書で声明し、かつ出願日より2ヶ月以内に証明資料を提出しなければならない。

学術会議および技術会議の証明資料は国務院の関連主管部門または会議を組織する全国的な学術団体が発行するものでなければならない。証明資料には会議の開催日、場所、会議の名称および当該発明創造の発表日、形式と内容を明記し、公印を捺印しなければならない。

 

専利法審査指南 1.1.6.3.3

他人は出願人の許可を得ずに、当該内容を漏らしたことにより公開されたことは、他人が明示または黙認された守秘の約束を守らずに発明創造の内容を公開すること、他人が威嚇、詐欺またはスパイ活動などの手段により発明者、あるいは出願人から創作の内容を得ることによって創作を公開することを含む。

意匠を出願する創作について、出願日以前の6ヶ月以内に、他人が出願人の許可を得ずに当該内容を漏らしたことを、出願人が出願日以前に知っているならば、意匠出願時に願書で声明し、出願日より2ヶ月以内に証明資料を提出しなければならない。出願人が出願日以降に知っている場合は、当該事情を知った後の2ヶ月以内に新規性を喪失しない猶予期間を要求する声明を提出し、証明資料を添付しなければならない。審査官は必要であると判断した際に、指定された期限以内に証明資料を提出するよう、出願人に要求して良いとする。

出願人が提出する他人による出願内容の漏洩に関する証明資料には、漏洩日、漏洩方法、漏洩内容を記載し、証明人が署名または捺印しなければならない。

出願人は新規性を喪失しない猶予期間を要求しているが、規定事項に合致しない場合、審査官は、新規性を喪失しない猶予期間を求めていないとみなす通知書を発行しなければならない。

日本と中国における意匠の新規性喪失の例外に関する比較

  日本 中国
新規性喪失の例外の有無
公知行為の限定の有無

(1)中国政府が主催するまたは認める国際展示会での初めての展示(2)規定の学術会議、あるいは技術会議上での初めての発表

 

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新興国等知財情報データバンク 調査対象国、地域における意匠の新規性喪失の例外については、下記のとおりである。

 

意匠の新規性喪失の例外に関する各国比較

6.新規性喪失