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タイにおける商標コンセント制度に関する留意点(前編)

1.はじめに
 タイではコンセント(併存登録同意)制度が導入されている。タイのコンセント制度に用いられる同意書は2種類ある。同意書は、各当事者による新規出願前に、アサイン/アサインバックが行われるタイ商標法第51-1条の「特別な事情」に該当する場合には、受理される。以下に同意書が受理された事例を紹介する。

2.コンセント制度について
(1) コンセント制度の根拠となる法令、審査基準等の場所
 タイのコンセント制度に用いられる同意書は2種類ある。
 第1の同意書は、タイ商標法に規定されていない通常用いられている同意書であり、中央知的財産・国際貿易裁判所(以下、「IP&IT裁判所」という。)、特別控訴裁判所(Court of Appeal for Specialized Cases)および最高裁判所の一部の事件を除いて受理されていない。なお、第1の同意書に関する審査基準等は存在しない。
 第2の同意書は、タイ商標法第51-1条に規定されているアサインバックに関するものである。

[1]第1の同意書
 裁判所の民事訴訟において第1の同意書が受理された事例を以下に示す。

事例1:出願番号:516186/登録番号:KOR338053,出願番号:516187/登録番号:KOR337659
 2003年、出願人は国際分類第18類および第25類の商品について商標「MARNI」を出願した。登録官は、同じ分類に対する登録商標「MANI」と誤認混同するほどに類似するとしてこれを拒絶した。出願人は、商標委員会に対し、外観、称呼および商品の相違を主張し、同意書を提出して、タイ商標法第27条に基づく併存を認めることを求める審判を請求した。商標委員会は、綴り、称呼、商品が類似することから誤認混同するおそれが高いと指摘し、請求を却下した。商標委員会はまた、登録商標の所有者からの同意書は、後願商標の登録を得るためには信頼できず、その同意は誤認混同のおそれを低減するものではなく、依然として公衆が商標権所有者と商品の出所に関して誤認するおそれがあると述べた。

 2006年、出願人は審決を不服としてIP&IT裁判所に控訴した。IP&IT裁判所判決No.101/2006において、IP&IT裁判所は、両商標が外観、称呼および商品に関して相互に関連していることを認め、被告(知的財産局)に有利な判決を下し、提出されたタイおよびその他の国における商標の使用証明は、タイにおける指定商品に対する商標の一般的認識を証明するために採用しなかった。そのため、タイ商標法第27条の「特殊事情」に基づく、商標の併存は認められなかった。

 その後、最高裁判決No.1149/2009において、最高裁判所は、出願人の商標「MARNI」が1988年以来他の複数の国で使用されており、本件の数年前にタイに導入され、出願人の商標は登録商標「MANI」と区別されていたことを認め、商標委員会の審決とIP&IT裁判所の判決を破棄した。最高裁判所はさらに、登録商標の所有者からの同意書は商標間の類似性を排除することはできず、かつ、登録商標の所有者が同じ業界に属するにもかかわらず、後願商標の使用および登録を認めた。この場合、出願人が善意で商標「MARNI」を使用していたことが認められている。商標「MARNI」は登録商標「MANI」の登録の15年後に出願されたが、タイでの出願時に登録商標が使用されていたわけではなった。以上から、タイ商標法第27条に基づく商標の併存が認められた。

 商標「MARNI」は、国際分類第18類と第25類の両方で登録に成功しており、現在も有効である。

事例2:出願番号: 739934/登録番号:171129929
 2009年、出願人は国際分類5類の「殺虫剤」の商標「ALTACOR」を出願し、2010年、登録官は、同じ類の「農業目的の抗真菌剤および殺菌剤」の登録商標ANTRACOLと混同を生じるほどに類似するとして当該出願を拒絶した。出願人は、外観、称呼および商品が非類似である旨を主張し、タイ商標法第27条に基づき、商標の併存を認めるよう商標委員会に審判を請求した。

 2012年、商標委員会は、称呼と商品が相互に関連しており、長期にわたり販売し、消費者に広く知られたことを証明するには証拠が不十分であること、また、タイの消費者の間で登録商標「ANTRACOL」が広く知られていることを理由に、出願商標「ALTACOR」を拒絶した。

 出願人は、審決を不服として、IP&IT裁判所に訴訟を提起した。IP&IT裁判所判決No.116/2013において、IP&IT裁判所は、農業局(Department of Agriculture)が発行した有害物質の登録を示す文書や同意書を含む、タイにおける商標の使用証明を精査し、商標委員会の審決を覆した。IP&IT裁判所は、「同意書が登録官および商標委員会の審査・審理を拘束しないとしても、IP&IT裁判所は、他の異なる種類の証拠とともに考慮に入れることができる」と述べた。

 最高裁判決No.5330/2015では、IP&IT裁判所判決を支持し、商標権所有者と商品の出所に関して混同を引き起こすほど両商標は類似していないと判断した。さらに、登録商標の所有者は、原告が商標「ALTACOR」を使用し登録することを認め、原告の商標登録に対して異議を申立てたり、取消したり、訴訟を起こさないことに同意する同意書を作成した。同意書により、登録商標の所有者が、出願商標と引用された登録商標との間に混同を生じるほどの類似性を認めず、また、これらの商標が併存し得ることを認めていたと推認される。最高裁判所はIP&IT裁判所判決を支持し、後願出願人の商標登録を認めた。

 商標「ALTACOR」は登録され、現在も存続している。その後、タイ語の商標「ALTACOR」も出願されており、登録商標「ANTRACOL」と類似しないと判断され、2016年に登録された。新規出願時には、商標「ANTRACOL」に対する最高裁判決No.5330/2015の写しおよび説明書が登録官に提出された。

[2]第2の同意書
 第2の同意書は、タイ商標法第51-1条に規定されているアサインバックに関するものである。

 タイ商標法第51-1条の「特別な事情」を立証するために、アサイン/アサインバック方式が適用された後に、新規出願時に同条に規定される「書面による同意」が確認された事例はない。したがって、このアプローチがすべての事案で成功するとは限らない。

(2) コンセントの対象
 同意書は、登録官に対して、両当事者の商標間の類似を解消するためにも、商標委員会に対して、拒絶査定不服審判を請求するためにも重要ではない。同意書は両当事者間の合意にすぎないからである。さらに、外観、称呼そして商品の類似、また、公衆の誤認混同を回避するものではない。

 しかしながら、同意書は、各当事者による新規出願前に、アサイン/アサインバックが行われるタイ商標法第51-1条の「特別な事情」に該当する場合には、受理される。

 タイでは、同意書が受理される状況(事情)は非常に限られており、タイ商標法第27条に規定されている。

 商標審査マニュアル(第2章第2部 3. 商標の同一性または類似性の検討3.2))によれば、登録官は、タイ商標法第27条に基づいて登録を認めるに当たり、次の事項を考慮する。
1) 登録商標の所有者と後願出願人の双方がその商標を誠実に使用しているか否か
(1)両者ともほぼ同一の期間内に商標を使用する、また、後願出願人が登録商標の所有者より前に商標を使用する
(2) 他人の標章を模倣する意思がない。このとき、創造した語句、創造した図、文字のフォントなど、標章の外観から同一かどうか検討することができる。
(3) 自身の標章と同一または類似する標章を使用する者がいることを知らない。
2) 商標の併存が認められる特殊事情
(1)商標が更新されていないが、継続的に使用されている
(2)出願人は、タイ国内で広く製品の配布、普及、宣伝を行っており、他人から異議を申立てられたことがない。
(3)商務省発表の区分変更後の商品と、当事者の商標が使用される商品が偶然に類似している。
(4)タイ商標法第51-1条第2段落の譲渡人、譲受人または相続人からの同意書
(5)併存を認める最高裁判決
3) 登録官は、出願人が提出した事実および事情を次の証拠書類とともに検討する。
(1)出願人の沿革、例えば設立、標章の使用開始年、標章の外観(2)会社、出願人または他人による使用証拠
(3)使用を示す証拠(区分/指定商品/指定役務)が登録願書した通りかどう
か。(4)使用している標章の外観が登録申請した通りかどうか。
(5)領収書(月/年 販売額の合計)
(6)納品書/Tax Invoice/発注書(月/年 販売額の合計)
(7)販売による収益/価格を示す証拠(月/年 販売額の合計) (8)広告費に係る領収書(月/年 販売額の合計)
(9)販売による収益を示す、会社の貸借対照表/監査報告書/利益余剰金 (年 金額)
(10)様々な媒体の広告資料(例えば、パンフレット/小冊子/定期刊行誌/ 書籍/広報資料/その他(年/月) 標章の外観が登録申請した通りかどうか。
(11)他国の登録証写し
(12)工場設立許可証写し(年を明記)
(13)商品サンプル
(14)裁判所判決文写し
(15)その他の証拠
(D) 登録官が証拠不十分と考える場合、登録官は後願出願人に対して登録商標を引用して、同一または類似の判断を行う。
(E) 登録官が証拠十分と考える場合、後願出願人の商標の登録を認める。なお、登録官は、商標の使用の方法および範囲に関する条件および制限、その他の条件および制限を考慮する場合もある。
(F) タイ商標法第27条による特殊事情下で両当事者の商標の併存が認められる場合、登録官はその旨の理由を記載した書面による通知を出願人及び登録商標の所有者に送付する。

 なお、出願人または登録商標の所有者は、タイ商標法第27条第1段落に基づく登録官の併存を認める旨の命令に対し、当該命令の書面による通知を受領してから60日以内に商標委員会に審判を請求することができる(同法第2段落)。

コンセント制度における審査、コンセントの提出時期、コンセントの書式、コンセント制度登録後の要件、アサインバックについては「タイにおけるに商標コンセント制度に関する留意点(後編)」をご覧ください。

タイにおける商標コンセント制度に関する留意点(後編)

 タイにおけるコンセント制度および同意書が認められた事例については、「タイにおける商標コンセント制度に関する留意点(前編)」をご覧ください。

3.コンセント制度における審査について
(1) 提出されたコンセントを審査官が無条件で認容し、併存登録が認められる場合、その根拠となる法令、審査基準等の場所
 特に法令・商標審査マニュアル等で定められていない。

(2) 提出されたコンセントを審査官が審査する場合または参酌する場合、併存登録が認められる要件と、その根拠となる法令、審査基準等の場所
 特に法令・商標審査マニュアル等で定められていない。

(3) (2)における留意点
 出願時、または、商標の類似を理由とする拒絶に対する不服審判の請求時、出願人が同意書を提出した場合、登録官および商標委員会は、タイ商標第27条に基づく2つの商標の併存登録を求める同意書を受理することは強制されない。

 同意書が提出された場合でも、登録官は、出願商標に対して先行登録商標を引用して、オフィスアクションを発行する。

 また、商標委員会は、視覚的・聴覚的態様および/または商品に関して類似する場合、商品の出所または商標権所有者に関して公衆に誤認混同を引き起こす可能性があるとの理由から、登録官の拒絶査定を維持する。商標委員会は、商標委員会規則第11条*1に従い、提出された証拠書類(同意書を含む)が、出願人が製品を広く流通させていること、商標が公衆の間で広く認識されるように宣伝されていること、商標がタイにおいて長期間使用されていることを証明するには不十分であると判断する。したがって、同意書を含むこのような証拠書類は、タイ商標法第27条に基づいて商標の併存を要求する上で効果的ではない。

*1:商標委員会規則第11条には「第10条に基づく提出書類又は証拠が外国語である場合、請求人は、翻訳者による翻訳証明付きで、全部又は特定の重要部分についてタイ語訳を提供しなければならない」旨が記載されている。なお、実務では、請求人がタイ語翻訳を提供しない場合、証拠を考慮するか否かは商標委員会の裁量により判断されるといわれている。

 IP&IT裁判所、専門事件控訴裁判所および最高裁判所は、登録官および商標委員会よりも、非類似の主張に対して寛容である。3つの裁判所はいずれも通常、商標登録についてより広範な見解をとっている。裁判所は、継続的に長期間に渡る商標の使用を証明する証拠および同意書とともに、法的主張に基づいて判断を下す。このような証拠は、タイ商標法第27条に基づき、双方の商標が併存できるという裁判所の判断をもたらす場合がある。

 同意書を受理するか否かは、裁判所の裁量である。登録商標と後願商標の両方が同一であるが、商品が異なる流通経路を通じて入手可能である場合、裁判所は、タイにおける一定期間の商標の使用を証明する同意書および証拠書類により、商標の併存を認める。重複する商品があるが、両商標が同一でない場合、裁判所は、出願人がタイにおいて長期間にわたり商標が広く使用されていることを示す同意書および文書による使用証明書を提出し、その結果、公衆が後願出願人の商標が付された商品と登録商標が付された商品を区別することができる場合にも、併存を認める。

4.コンセントの提出時期
(1) コンセントの提出時期
 商標所有者は、審査段階において登録官に出願時に、審判請求日から60日以内に商標委員会に、法廷審問期日前の7日間の間にIP&IT裁判所に、タイおよび外国においてその商標が使用されていることを示す証拠とともに同意書を提出することが推奨される。

(2) 提出時期について留意点
 コンセントの提出時期は以下のとおりである。

No. 同意書提出の段階 同意書の提出時期
1 出願段階 同意書は、登録官の実体審査の資料として、出願時に出願書類とともに提出されるべきである(商標審査マニュアル第2章第2部3.3、 タイ商標法51-1条)。
2 審判段階 同意書は、不服申立てから60日以内に、他の裏付け資料とともに商標委員会に提出しなければならない(商標委員会規則第10条)。
3 訴訟段階 同意書は、訴状提出時に記載された裏付け証拠として、法廷審問日の7日前までにIP&IT裁判所に提出しなければならない(民事訴訟法第88条)。

5.コンセントの書式
 コンセントの書式の規定はないが、同意書に記載しなければならない事項は、以下のとおりである。
・登録商標の所有者が、同意を要求する後願出願人の商標の使用/登録に同意する商品およびサービス
・引用された商標権者の署名および同意の説明
・同意書は原本または認証謄本でなければならないこと
・登録商標の所有者がタイにおいて指定商品等における商標の使用および登録を認める旨の陳述書

6.コンセントによる併存登録後の要件について
(1) コンセントにより併存登録された商標と引用商標について、それぞれを譲渡する場合の譲渡の制限の有無
 いずれの商標に関しても、譲渡の制限はない。

(2) 併存登録された商標の更新時にコンセントも更新(新たにコンセントを提出すること)の必要有無
 裁判所で同意書が受理され、商標が登録され、その後10年ごとに更新する場合、登録商標の更新時に新しい同意書を新たに提出する必要はない。

(3) 併存登録後、引用商標権者によるコンセントを取下げの可否(可能である場合、登録された商標への影響や取下げの時期の期限の有無;その根拠となる法令、審査基準等の場所)
 同意書は、登録を認める裁判所の判決をもたらすための証拠書類の一部にすぎないため、商標が登録されている場合、引用商標権者は、両者の相互の私的合意に基づく併存登録後、同意を取下げることは可能である。ただし、後の出願人の商標が有効に存続している必要がある。先願登録商標の商標権者が後の出願人の登録を取消すことを希望する場合、商標委員会および/または裁判所に取消しを請求することができる。
 
7.アサインバックについて
7-1タイにおけるアサインバック運用の可否
 2016年に改正商標法が施行される以前の商標法第14条および第50条に基づいて、同一所有者の連合商標の登録が義務付けられており、登録された連合商標すべてを譲渡または継承されなければならなかった。
 2016年改正法により、連合商標制度が廃止(商標法第14条と第50条廃止)され、登録商標の所有者が一部の商品について商標を他人に譲渡することを可能にするタイ商標法第51-1条に従って、商品全体または商品の一部について商標を譲渡することができるようになった。

 タイ商標法第51-1条は、商標の譲渡人および譲受人が、アサイン/アサインバックされた商標に類似する他の商標を出願した後に、損害を防止するために譲渡人および譲受人を保護することを目的としている。

 タイ商標法第51-1条に基づく登録官の登録査定による受益者は、先のアサイン/アサインバックされた商標に類似する商標の新規出願の前に、譲渡人、譲受人または相続人としての関係を有していなければならない。

 根本的な問題は、タイ商標法第51-1条に基づく特別な状況を確立するために、アサイン/アサインバックの方式を使用する必要があることであり、これにより同意書が受入れられるようになる。タイの実務慣行では、譲渡人、譲受人または相続人からの同意書は、このような特定の状況下でのみ受入れられ、それ以外では受入れられない。

 商標審査マニュアル 第2章第2部3.3によれば、タイ商標法第51-1条に基づく同一または類似する商標登録の検討は以下のとおりである。

(A) 登録官は検討の結果、出願人の商標が譲渡、譲受または相続された他人の出願商標または登録商標と、第13条または第20条に基づいて同一または類似すると判断する。
(B) 出願人がタイ商標法第48条または第49条に基づいて、(1)譲渡人、(2)譲受人または(3)相続人であるか否か。
(C) アサイン/アサインバックの日付が、新規出願日より前または同日である。
(D) 出願人が以下の詳細が示されている商標登録の同意書を有していなければならない。
・出願商標の譲渡人、譲受人または相続人であることに関する詳細。
・譲渡日または相続日に関する詳細。
・同意書は原本を使用する。複数の出願に提出する場合、最初の出願に原本を提出し、他の出願は写しを提出して原本はどの出願にあるか明記する。
(E) 登録官は特別な事情があるとして同一または類似する商標を登録することができる。

第51-1条に関する登録官の審査指針
(A-1) 出願人が、譲渡人、譲受人または相続人の出願中または登録商標に類似する標章を提出する際に、同意書を新たな出願書類とともに提出しない場合、登録官は、商標法第13条または第20条に基づいて登録済または出願中の標章を引用する。
(A-2) 商標法第13条または第20条に基づいて商標が拒絶された場合、出願人は次の権利を有する。
・商標委員会に異議を申立てる。この場合、出願人は登録官に対して第51-1条の権利を行使することはできない。
・上訴期間前または拒絶受領後60日以内に、第51-1条に基づく権利を主張する同意書を登録官に提出すること。登録官は、出願人及び登録商標の所有者に通知及び理由を交付することにより、第13条または第20条に基づく異議を取消し、第27条に基づく共存を認める。

(B-1) 出願人が登録願書(書式Kor.01) と共に同意書を提出せず、登録官は検討の結果、その者の譲渡、譲受、または相続した商標と第13条または第20条に基づいて同一または類似すると判断した場合、登録官は通常通り第13条または第20条命令を発出する。
(B-2) 出願人が同意書を提出せず、登録官が第13条または第20条命令を発出したとき、出願人には以下2つの権利がある。
・登録官命令に対して審判請求する。審判請求の権利を行使した場合、出願人はさらに審査段階で第51-1条の権利を行使することはできない。
・第51-1条の権利を行使する。出願人は審判請求期限までに全ての譲渡人、譲受人または相続人からの商標登録同意書を提出しなければならない。この場合、登録官は第13条または第20条命令を取消し、他の問題が無い場合には第27条に基づき登録を認め、出願人および先行商標の所有者に対し理由を付して通知書で命令を伝える。

(C-1) 登録官が検討の結果、その者の譲渡、譲受、または相続した商標と第13条または第20条に基づき同一または類似すると判断し、出願人が登録同意書を提出した場合、登録官は商標登録できる特別な事情があるとみなし、商標を登録することができる。
 このとき、譲渡された区分について検討する必要はなく、登録官は第13条または第20条に基づき同一または類似すると判断すれば十分である。
(C-2) 登録官は出願人に対し、陳述書(書式Kor.20)を用いて譲渡、譲受または相続について説明し、登録出願の譲渡人、譲受人または相続人であることに関する詳細を示した書類を添付するよう命令を発出することができる。

 審判で認容審決を得る可能性は低いため、類否について登録官により拒絶された場合や費用および時間のかかる裁判手続を理由に、後願出願人は、先願商標の所有者に出願を一時的に譲渡することにより、商標を譲渡し、それをアサインバックすることを検討することができる。後願出願人の出願商標が登録された後、その商標を元の所有者に戻すことができる。

 しかしながら、このようにすることで、誤認混同するほどに類似する商標は将来の出願がより複雑になると予想される。各当事者の新規出願は、拒絶を回避するために相手方からの同意書の提出を必要とする。

 したがって、タイ商標法第51-1条を利用すると、当事者間の継続的で長期的な関係が必要になる。

7-2.その他
 タイには、上記7-1.以外の理由によるアサインバック制度はない。したがって、アサインバックは、タイ商標法第51-1条に従う必要がある。