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ベトナムにおける分割特許出願

1.特許出願の分割の時期的制限
 法律に基づき、出願人は、特許出願についての拒絶通知または保護証書の付与の決定(日本での拒絶査定、特許査定に相当)の前であれば、いつでも出願を分割することができる(ベトナム知的財産法(以下、「知的財産法」という)第115条)。
 したがって、実務においては、出願人は、次の期限内に親出願から1つ以上の分割出願を提出することを検討することができる。

(a) 出願の受理または拒絶通知の発行前
(b) 単一性の欠如に関するオフィスアクションへの対応時
(c) 特許の拒絶通知または許可通知の発行前の任意の時点
(d) 再審査期間内(出願人が審査官の拒絶に対して査定不服審判を請求し、この請求が認められた場合、出願は再審査のために審査官に差戻される。この再審査の期間内に分割出願を提出することができる。)
(e) 親出願の取り下げ前
(省令01/2007/TT-BKHCN 17.2、ベトナム特許審査ガイドライン10.2(以下、「特許審査ガイドライン」という。))

 一つの技術的解決策について特許保護を求める企業にとって、その出願を複数の分割出願に分けることで有利になる場合が多いが、出願人は、その親出願がベトナム国家知的財産庁(Intellectual Property office of Vietnam 以下、「IP VIET NAM」という。)に係属している間に限り、分割出願できることに注意しなければならない。

2.特許出願の発明の単一性の欠如を理由とする分割出願
 特許出願の審査中に発明の単一性の欠如が指摘された場合に、分割出願をすることが最も一般的なケースといえる。特許出願は、独自の発明、または独自の発明概念として機能する技術的に密接な関係を有する発明群を主張する場合、単一性の要件を満たすとみなされる(知的財産法第101条第2項、省令01/2007/TT-BKHCN 23.3.b)、特許審査ガイドライン 20)。
 単一性の欠如は、予備審査段階または実体審査において指摘される。予備審査において、発明概念として技術的に密接には関係していない複数の独立クレームが出願に含まれている場合、発明の単一性は満たされていないと見なされる。このような単一性に対する拒絶理由通知は、実体審査で行われる先行技術に基づく審査をせずに提起される。逆に、発明の解決手段が既に先行技術において教示されていると推定された後に単一性が判断される場合には、実体審査において複数の独立クレームで共通する技術的特徴が顕著な特徴かどうかが判断される。
 例えば、独立クレームに記載された発明が、新規性または進歩性の要件を満たしていない場合、その従属クレームに記載された発明の単一性を慎重に検討する必要がある。その場合、当該独立クレームの一つの従属クレームに記載された発明の「顕著な技術的特徴」が、別の従属クレームに記載された発明に存在しない場合がある(特許審査ガイドライン 20)。そのような場合、単一性の欠如に関する拒絶理由が通知される可能性がある。
 上記のような単一性の欠如に対して、出願人は、親出願において審査対象として選択されなかった発明の数に応じて、一つ以上の分割出願に分けることができる。このような場合、出願人は、単一性の欠如の拒絶理由を解消するために、当該オフィスアクションへの応答時に一つ以上の分割出願をすることが要求される。
 さらに、出願人は、一つの分割出願において、親出願において審査対象として選択された発明を除く全部の発明をクレームすることもできる。依然として単一性が満たされない場合、単一性の欠如に関する更なるオフィスアクションが出されるだろう。その場合、出願人は、オフィスアクションへの応答時に、残りのいずれかの主題に関するさらなる分割出願をするよう要求される。知的財産法には明確に規定されていないものの、先に出願された分割出願から更なる分割出願をすることが可能である(いわゆる孫分割出願が許される)。
 なお、実務上この孫分割出願は、分割出願(子分割)が係属中であり、最初の親出願がまだ権利期間内にあるという制約下でのみ行うことができる(最初の親出願と全ての分割出願は同じ出願日を有し、特許が付与された場合、これらの特許は同じ権利期間が与えられる。この権利期間は、特許の場合は出願日から20年、実用新案の場合は出願日から10年である)。

3.特許出願の出願人による自発的な分割出願
 知的財産法の規定に従い、IP VIET NAMが拒絶査定、または特許査定通知を発行する前に、出願人は自発的に自己の出願を分割することができる。先述したように発明の単一性に関する拒絶理由通知に対する分割出願に加え、出願人は、拒絶されたクレームを含むクレームの審査を継続させる目的で、自発的に分割出願することもできる(知的財産法第115条)。
 例えば、ベトナム国内において、「用途」を主題とする発明は製品でも方法でもないため、特許付与可能な発明ではないという理由により、IP VIET NAMは「用途」に関する全ての発明を拒絶できる(知的財産法第4条第12項)。ベトナムにおいて用途クレームが特許適格性を有するかどうかは論争の対象となっているものの、今のところこのような用途クレームを含む特許出願に対して特許は付与されていない。そのため係属中の出願から用途クレームを削除し、分割出願することにより、残りのクレームの特許性審査を長引かせないようにすることが可能である。分割出願を利用する他の場合として、権利の移転や実施許諾の対象となる発明のみを個別に権利化するために行うことなどが考えられる。

4.特許出願の分割出願のクレーム
 ベトナム特許規則に基づき、分割出願のクレームは、下記(a)から(c)の要件を満たさなければならない(特許審査ガイドライン 33.5)。

(a)分割出願のクレームに記載された発明は、最初に出願された親出願に開示されていなければならない。つまり、出願人は権利範囲の狭いクレームを出願した後に、より広いクレームの分割出願をすることができるが、後の分割出願のクレームは、原出願の明細書の開示の範囲に含まれていなければならない。
(b)分割出願のクレームに記載された発明は、分割後の親出願のクレームに記載された発明と異なるものでなければならない。つまり、親出願と分割出願が同一の発明をクレームすることはできない。

5.特許出願の分割出願に関する二重特許
 ベトナムにおいて、一つの発明には一つの特許のみが許可される。同一の発明を保護するために二つの特許は認められない。言い換えると、複数のクレームが同一の範囲または重複した範囲を有することは許されない(特許出願審査規則33.5)。出願当初の一つ以上のクレームを分割出願することができる。しかし、出願人が先の親出願または分割出願において実体審査を受けたクレームと全体的または部分的に同等である一つ以上のクレームを分割出願に含めた場合、IP VIET NAMは、二重特許問題を理由に、特に当該分割出願のクレームに記載された発明が先の親または分割出願の発明と同じであるという理由で拒絶する。
 実際、先の親出願において既に特許付与された発明を、その分割出願に含めることはできない。しかし、親出願において削除されたクレームを分割出願することはできる。それ故、ベトナムにおいて分割出願する場合には、先の親出願または分割出願において実体審査を受けたクレームを考慮して分割出願のクレームを慎重に検討すべきである。

6.特許出願の分割出願に際しての留意事項
 分割出願には新たな出願番号が付与され、親出願と同じ出願日、および(存在する場合)親出願と同じ優先権が与えられる(知的財産法第115条、省令01/2007/TT-BKHCN 17.2および特許審査ガイドライン10.2)。分割出願に際しては、優先権主張に関する料金を除き、親出願と同じ出願料および各所定料金を支払わなければならない。これらの手数料は、優先権主張手数料を除き、元の親出願と同じである(省令01/2007/TT-BKHCN 17.2、特許審査ガイドライン 5.12)。分割出願は、新たな特許出願として扱われ、元の親出願で完了していない手続が引き続き処理される(省令01/2007/TT-BKHCN 17.2)。
 分割出願の実体審査は、所定の期間内(特許出願の場合は、出願日または「優先日から42か月以内(知的財産法第113条、省令01/2007/TT-BKHCN 25.1))に実体審査が請求された場合に限り行われる(特許出願審査規則 33.5)。上記の期間後に分割出願する場合は、分割出願時に実体審査請求しなければならない。実際に、分割出願時に実体審査を請求することは珍しくない。

7.分割出願に関する特許出願と実用新案出願の相違点
 ベトナムでは、日本での特許を「発明特許」、実用新案を「実用新案特許」としている。実用新案特許出願について、分割出願に関する制度は、発明特許と概ね同様であるが、分割出願の実体審査は、出願日または優先日から36か月以内に実体審査が請求された場合に限り行われる、点で相違する。

フィリピンにおける分割出願に関する留意点

【詳細】

1.自発的な分割出願

 自発的な分割出願は、親出願が取り下げられるか、または特許が付与される前であればいつでも行うことができる。特許に関する改正施行規則規定(IRR)の規則611では、自発的な分割出願が以下のように規定されている。

 

「規則611 自発的な分割出願

 出願人は、親出願が取り下げられる前か、または特許が付与される前に、係属中の出願に基づき自発的に分割出願を行うことができる。ただし、分割出願の内容は親出願の内容を超えてはならない。

 自発的な分割出願は、親出願と同じ出願日が付与され、優先権の利益が得られる。(以下、省略)」

 

2.庁指令に応じて行う分割出願

 フィリピン知的財産権局(IPOPHL)の局長は、発明の単一性を満たさない出願に対して単一の発明に限定するよう要求する庁指令(限定要求)を発することができる。限定要求に応じて、出願人は分割出願をすることができるが、その分割出願は限定要求が確定した(*)日から4か月以内に行わなければならない。限定要求に応じて行う分割出願については、IRRの規則604に以下のように規定されている。

 

「規則604 発明の単一性

(a)出願は、一の発明または単一の発明概念を形成する一群の発明に関連しなければならない。(フィリピン知的財産法(IP法)第38条1)

(b)単一の発明概念を形成しない複数の独立した発明が一の出願においてクレームされている場合、局長は、当該出願を単一の発明に限定するよう要求することができる。分割した発明についてなされる後の出願は、最初の出願と同日に出願されたものとみなされる。ただし、分割の要求が確定した後4か月以内、または4か月を超えない範囲で認められる追加期間内に、後の出願がなされることを条件とする。更に、各分割出願は、当初の出願における開示の範囲を超えてはならない。(IP法第38条2)」

 

(*)出願人は限定要求に対して、理由を挙げて、その再考を請求することができる。再考の結果、限定要求が繰り返された場合には、当該限定要求は確定する。(IRR規則606)

 

3.分割出願における審査請求の期限

 IP第44条によれば、分割出願は、実体審査段階の手続に入る前に、IPOPHLの公報において公開される。IP法第48条に基づき、公開から6か月以内に、出願人は書面による実体審査の請求をしなければならない。出願人が6か月以内に実体審査の請求をしなかった場合、分割出願は取り下げられたものとみなされる。

 

4.更なる分割出願

 一つの親出願から複数の分割出願(子出願)を行うことができる。ただし、フィリピンにおける実務では、これら複数の分割出願は全て、親出願の係属中に行わなければならず、分割出願(子出願)から更なる分割出願(孫出願)を行うことは認められていない。

 

5.分割出願のクレーム範囲および二重特許に関する問題

 IRRの規則604および611に従い、分割出願のクレーム範囲は、親出願に開示される範囲、すなわち、親出願の出願時の内容を超えてはならない。

 

 親出願と同一のクレームを含む分割出願は、原則として上記の要件には違反しない。ただし、フィリピンでは、二重特許、すなわち、一つの発明に対して二つの特許を同一の者に付与することは認められていないので、親出願のクレーム範囲と同一範囲のクレームを含む分割出願を行っても、これらの親出願と分割出願の審査は並行して進めることはできない。

 

 したがって、分割出願のクレーム範囲は、親出願のクレーム範囲と重複しないようにすべきである。もし親出願と同一のクレームで分割出願が行う場合には、親出願との二重特許の問題を避けるために、親出願のクレームを補正する必要がある。

ロシア分割出願における留意点

【詳細】

1.分割出願の時期的要件

 ロシアにおける特許出願に関して、単一性欠如の拒絶理由を受けた場合はもちろん、単一性欠如の拒絶理由を受けていない場合でも、出願が係属中であれば自発的に分割出願を行うことができる。分割出願は、遅くとも登録料の納付と同時に行うべきできことを推奨するが、ロシア特許庁は、登録料支払い後でも特許が付与される前であれば、提出する分割出願を受け入れ可能である。また、特許出願に対して拒絶査定が提出された場合、拒絶査定に対する不服申立期間が満了する前までに分割出願を行うことができる。ロシア民法第1381条第4項には、以下のように分割出願の時期的要件が示されている。

 

(1)原出願が取り下げられていないこと(取下擬制取り下げたものとみなされていないこと)

(2)原出願に係る特許が登録されていないこと

(3)原出願について、拒絶査定に対する不服申立期間が満了していないこと

 

2.分割出願の効果

 ロシアでは分割出願の回数は制限されず、例えば、第1の分割出願が係属中であれば、親出願に特許が付与されていても、当該第1の分割出願からさらに分割出願を行うことができる。分割出願における特許存続期間は、何世代目の分割出願であろうと、親出願(最先のロシア出願)の出願日(国際出願の場合は国際出願日)に遡及される。分割出願の審査請求期限は、“分割出願日”から3年であり、親出願の出願日や国際出願日は、審査請求期限の起算にならない。そのため、狭い権利範囲のクレームで特許が付与される場合でも、より広い権利範囲のクレームにて分割出願を行い、特許出願を長期間係属させる戦略を取ることができる。

 

3.二重特許問題

 分割出願は、親出願(国際出願からの移行の場合は、国際出願)にサポートがあれば、如何なるクレームも加えることができる。ロシアにおいて二重特許は認められないが、親出願にて登録されたクレームと同一のクレームで分割出願を行い、審査過程において、二重特許拒絶を回避するための補正を行えば良い。ロシアでは、特許査定または拒絶査定の前であれば、補正を行うことができる(ロシア民法第1378条)。分割出願の発明者を、親出願とは異なる発明者にすることもできる。この場合、出願人と全ての発明者により署名され、分割出願の発明者が正しいことを主張する宣誓書を、ロシア特許庁に提出しなければならない。

 

4.拒絶査定への対応方針

 ロシア特許庁への出願が拒絶された場合に、分割出願は有用な対応であり、出願人は、拒絶査定に対する不服申立ではなく分割出願を検討すべきである。分割出願では、親出願における独立クレームに対して、従属クレームによる減縮だけでなく明細書に記載された特徴を加えることができるが、不服申立中の補正では、従属クレームによる減縮補正しか行うことができない。

ベトナムにおける分割特許出願

【詳細】

○特許出願および実用新案出願の分割の時期的制限

ベトナムの特許実務に基づき、出願人は審査係属中、拒絶査定または特許査定通知の発行日より前であればいつでも、親出願から分割出願をすることができる。また、審査官の拒絶査定に対する不服審判請求の結果、審査官への差戻し審査となった場合の審査中においても分割出願できる。

 

一つの技術的解決策について特許保護を求める企業にとって、その出願を複数の分割出願に分けることで有利になる場合が多いが、出願人は、その親出願がベトナム国家知的財産庁(Intellectual Property office of Vietnam: IP VIET NAM)に係属している間に限り、分割出願できることに注意しなければならない。

 

○発明の単一性の欠如を理由とする分割出願

出願の審査中に発明の単一性の欠如が指摘された場合に分割出願をすることが、最も一般的ケースといえる。

単一性の欠如は、予備審査段階または実体審査において指摘される。予備審査において、発明概念として技術的に密接に関係していない複数の独立クレームが出願に含まれている場合、発明の単一性は満たされていないと見なされる。このような単一性に対する拒絶理由通知は、実体審査で行われる先行技術に基づく審査をせずに提起される。逆に、発明の解決手段が既に先行技術において教示されていると推定された後に単一性が判断される場合には、実体審査において複数の独立クレームで共通する技術的特徴が顕著な特徴かどうかが判断される。

 

例えば、独立クレームに記載された発明が新規性または進歩性の要件を満たしていない場合、その従属クレームに記載された発明の単一性を慎重に検討する必要がある。その場合、当該独立クレームの一つの従属クレームに記載された発明の「顕著な技術的特徴」が、別の従属クレームに記載された発明に存在しない場合がある。そのような場合、単一性の欠如に関する拒絶理由が通知される可能性がある。

 

上記のような単一性の欠如に対して、出願人は、親出願において審査対象として選択されかった発明の数に応じて一つ以上の分割出願に分けることができる。このような場合、出願人は、単一性の欠如の拒絶理由を解消するために、当該オフィスアクションへの応答時に一つ以上の分割出願をすることが要求される。

 

これにより親出願の手続が続行され、より速やかな特許許可が可能になる。一方、出願人は、単一性の欠如が指摘されているクレームが単一性を満たしているという理由を陳述した意見書を提出することもできる。そのような意見書が、単一性の欠如による拒絶理由を撤回するよう審査官を説得できるほど十分な根拠を示していない場合には、更なるオフィスアクションが発行され、出願人は一つの発明を選択し、一つ以上の分割出願をすることが要求される。

 

さらに、出願人は、一つの分割出願において残り全部の発明をクレームすることもできる。依然として単一性が満たされない場合、単一性の欠如に関する更なるオフィスアクションが出されるだろう。その場合、出願人はオフィスアクションへの応答時に、残りのいずれかの主題に関するさらなる分割出願をするよう要求される。特許法には明確に規定されていないものの、先に出願された分割出願から更なる分割出願をすることが可能である(いわゆる孫分割出願が許される)。

 

なお、実務上この孫分割出願は、分割出願(子分割)が係属中であり、最初の親出願がまだ権利期間内にあるという制約下でのみ行うことができる(最初の親出願と全ての分割出願は同じ出願日を有し、特許が付与された場合、これらの特許は同じ権利期間が与えられる。この権利期間は、特許の場合は出願日から20年、実用新案の場合は出願日から10年である)。

 

○出願人による自発的な分割出願

特許法の規定に従い、IP VIET NAMが拒絶査定、または特許査定通知を発行する前に、出願人は自発的に自己の出願を分割することができる。先述したように発明の単一性に関する拒絶理由通知に対する分割出願に加え、出願人は、拒絶されたクレームを含むクレームの審査を継続させる目的で、自発的に分割出願することもできる。

 

例えば、ベトナム国内において、「用途」を主題とする発明は製品でも方法でもないため、特許付与可能な発明ではないという理由により、IP VIET NAMは「用途」に関する全ての発明を拒絶できる。ベトナムにおいて用途クレームが特許適格性を有するかどうかは論争の対象となっているものの、今のところこのような用途クレームを含む特許出願に対して特許は付与されていない。そのため係属中の出願から用途クレームを削除し、分割出願することにより、残りのクレームの特許性審査を長引かせないようにする方が可能である。分割出願を利用する他の場合として、権利の移転や実施許諾の対象となる発明のみを個別に権利化するために行うことなどが考えられる。

 

○分割出願のクレーム

ベトナム特許規則に基づき、分割出願のクレームは、下記(a)および(b)の要件を満たさなければならない。(a)分割出願のクレームに記載された発明は、最初に出願された親出願に開示されていなければならない。つまり、出願人は権利範囲の狭いクレームを出願した後に、より広いクレームの分割出願をすることができるが、後の分割出願のクレームは、原出願の明細書の開示の範囲に含まれていなければならない。(b)分割出願のクレームに記載された発明は、分割後の親出願のクレームに記載された発明と異なるものでなければならない。つまり、親出願と分割出願が同一の発明をクレームすることはできない。

 

○分割出願に関する二重特許

ベトナムにおいて、一つの発明には一つの特許のみが許可される。同一の発明を保護するために二つの特許は認められない。言い換えると、複数のクレームが同一の範囲または重複した範囲を有することは許されない。出願当初の一つ以上のクレームを分割出願することができる。しかし、出願人が先の親出願または分割出願において実体審査を受けたクレームと全体的または部分的に同等である一つ以上のクレームを分割出願に含めた場合、IP VIET NAMは、二重特許問題を理由に、特に当該分割出願のクレームに記載された発明が先の親または分割出願の発明と同じであるという理由で拒絶する。

 

実際、先の親出願において既に特許付与された発明を、その分割出願に含めることはできない。しかし、親出願において削除されたクレームを分割出願することはできる。それ故、ベトナムにおいて分割出願する場合には、先の親出願または分割出願において実体審査を受けたクレームを考慮して分割出願のクレームを慎重に検討すべきである。

 

○分割出願に際しての留意事項

分割出願には新たな出願番号が付与され、親出願と同じ出願日、および親出願と同じ優先権が与えられる。分割出願に際しては、優先権主張に関する料金を除き、親出願と同じ出願料および各所定料金を支払わなければならない。分割出願は、新たな特許出願として扱われる。

 

分割出願の実体審査は、所定の期間内(特許出願の場合は、出願日または「優先日から42か月以内、実用新案出願の場合は、出願日または優先日から36か月以内)に実体審査が請求された場合に限り行われる。上記の期間後に分割出願する場合は、分割出願時に実体審査請求しなければならない。実際に、分割出願時に実体審査を請求することは珍しくない。