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アルゼンチンにおける商標の使用と使用証拠

1.商標の使用
 アルゼンチン商標法第20条の規定に従い、登録商標を更新する際、商標権者は、当該商標の満了日前の5年以内に商取引において当該商標を使用したことを宣誓しなければならない。この使用宣誓は、少なくとも一つの指定商品または役務に関して宣誓すれば良く、宣誓した使用を裏づける証拠を提出する必要はない。

1-1.不使用取消
 商標法第26条の規定に基づき、第三者により不使用取消が請求された日前の5年以内に、区分に関係なくいずれかの所定の商品または役務に関して商標が商取引において使用されていなかった場合、産業財産権庁は当該商標に関して商標の取消を宣言する。商標の取消に関する決定は、決定通知後30就業日以内に連邦民事商事審判所への直接の申立を通じて審判請求することができ、当該審判請求は産業財産権庁宛てに提出するものとする。
 商標の使用とみなされる行為を定義づける規定は存在しない。しかし、上記に引用された商標法の各条項は、商取引において少なくとも一つの商品または役務に関して商標が使用されていなければならないことを明示しており、不使用による商標権の取消は、全部取消し、または、使用されなかった商品または役務に関してのみの部分的取消しを請求することができ、部分的取消し請求が成立した場合、請求された商品または役務に関してのみ商標が取り消されることとなり、この場合、取消が請求されなかった商品や役務に関しては、引き続き登録の範囲として存続する。
 なお、この部分的取消という制度は2018年に改正された商標法により導入されたものである。

 また、商標法第26条の規定に基づき、商標権の使用はアルゼンチン国内で行われていなければならず、かかる商品または役務が、国内市場に存在しなければならない。
 なお、インターネットサイトにおいて商標を表示し、当該商標を付した商品・役務について国内から海外に納品、海外から国内に納品または国内間の納品など国内での商取引を示すことができれば、当該商標の有効な使用として認められる。

1-2.使用証拠
 商標法、商標規則に規定は見られないが、実務上、商標の広告が有効な商標の使用とみなされるには、市場における当該商品または役務の実際の提供が広告後に行われなければならない。販売を伴わない単なる広告は十分ではない。
 一般的な使用証拠は、依頼人、顧客または販売店に対して発行された当該商標が明確に表示されている請求書、または表示されている商品番号等から当該商標を容易に特定できる請求書である。ただし、このような使用が有効であるとみなされるためには、現地での商取引、すなわち、アルゼンチン市場内で行われた取引であることが必要である。
 証拠としてよく用いられる手段として、権利者の商業帳簿を見て明確に使用を判断できる会計処理の専門家証人による宣言書がある。これは請求書と共に、最も効果的な手段である。
 さらに、使用は登録時の商標を用いるものでなければならない。ただし、商標権者が識別性に影響を及ぼさない方法で、自己の登録商標の軽微な変更で、かつ実質的な変更が無い方法で使用する場合には、当該変更後の商標の使用は、登録時の商標の使用とみなされる。これはアルゼンチンが批准したパリ条約の第5条(C)の適用を考慮している。

 取消請求または審判において、商標権者により主張された使用証拠が不十分であった場合、当該商標は取り消され、登録簿から削除されることになる。

2.未登録商標
 アルゼンチンにおいては、商標の登録は義務づけられていない。ただし、未登録の商標を商取引において継続的に使用し、相当の期間にわたり当該商標に関する顧客を生み出している場合、当該商標は事実上の商標(de facto trademark)とされ、これに基づいて、出願の異議申立や、無効請求など、第三者に対する権利行使を行える可能性がある。なお、権利行使可能な当該商標の要件は、個々の事例に応じて判断される。

アルゼンチンにおける商標制度

1.法的枠組み

 

アルゼンチンにおける商標制度は、アルゼンチン商標法および商標規則に規定されている。

 

アルゼンチンは、パリ条約、GATT-TRIPS協定といった知的財産および商標に関する規則および規定を含んでいる国際条約の加盟国でもある。ただし、マドリッドプロトコルには加盟していない。

 

2.商標権の主体

 

国内または外国のいかなる個人または事業体も、アルゼンチンにおいて商標出願を行ない、その商標権者となることができる。複数の権利者が一つの商標を共有することもできる。

 

3.出願の方式要件

 

商標出願を提出するために必要な出願人に関する情報は、次のとおりである。

(1)出願人の正式名

(2)実際の住所および連絡先となるブエノスアイレス市内の法定住所

(3)個人である場合は、国籍および既婚・未婚の区別

 

出願人情報以外の方式要件として、次のものが要求される

(1)商標見本

(2)指定商品または役務

(3)優先権を主張する場合は優先権情報

(4)代理人委任状(公証人およびアポスティーユにより認証されたもの)

 

アルゼンチンは、商品および役務に関するニース国際分類の第11版を適用しているが、1出願に2分類以上の分類を指定する出願は認められていないため、出願人は区分ごとに出願を提出しなければならない。出願は、該当する区分における全ての商品または役務を指定することができる。

 

4.存続期間

 

商標は登録日から10年の存続期間を有し、その後は、更新期日前の5年以内に商取引において使用されていることを条件として、10年ごとに更新することができる。

 

5.保護範囲

 

以下のものが、商標として登録可能である。

(1)意味の有無を問わないあらゆる言葉、および図案

(2)紋章

(3)印章

(4)肖像

(5)商品またはそのパッケージに用いられる色の組合せ

(6)パッケージ

(7)文字と数字の組合せ

(8)識別力のある書体による文字または数字

(9)キャッチフレーズ

 

問題となるのは、商標が識別力を有しているかどうかであるため、匂い、音および立体商標もアルゼンチンにおいて登録可能である。

 

商標法第2条の規定に基づき、指定商品もしくは役務の必然的もしくは一般的な呼称とみなされる、または、指定商品もしくは役務の機能、品質、その他の特徴の説明とみなされる名称および言葉は、商標として認められない。商品の形状も、商標とはみなされない。また、商品本来の色または商品全体に用いられる単一の色も、商標とはみなされない。一般的および日常的に使用されるようになった名称、言葉および語句も、商標として登録できない。

 

さらに、商標法第3条の規定に基づき、先行商標と同じ商品または役務を対象とする同一または類似の商標は、登録できない。同様に、原産地名称、または指定商品もしくは役務の性質、品質、製造技術、機能、出所、その他の特徴に関して誤認を招くおそれのあるいかなる商標も、登録できない。アルゼンチン国家、地方自治体または他の国家および承認された国家により使用されている名称、言葉または象徴も登録できない。営業活動の説明的な呼称も登録することはできない。

 

最も一般的な拒絶理由は、同一または類似の商品または役務に用いられる先行商標との混同のおそれである。

 

商標が先行商標と混同を生じるほど類似しているかどうかを判断するためには下記について検討しなければならない。

 

(1)商標間における外観類似、称呼類似および観念類似があるかどうか。なお、観念上の相違が存在する場合には、外観上または称呼上の類似が存在するかどうかに関係なく、当該商標の登録は許可される。

(2)商品または役務の抵触または類似点が存在するかどうか。

(3)商品または役務の需要者、さらに販売ルートが同じかどうか。

(4)双方の商標が図案を含んでいる場合は、商標の文字部分を比較することが最も重要であること。

 

著名商標は、指定商品または役務の需要者であるかどうかに関係なく、特別な保護を与えられる。したがって、著名商標は、後願と同じ区分に登録されていなくても、後願の登録を阻止することができる。

 

特許庁は著名商標の認定を行わないが、裁判所は、判例を考慮しながら、該当事件で提出された証拠に基づいて、著名商標を認定することができる。ただし、世界的な知名度と評判がある場合、著名性を立証することなく著名商標の認定を受けることができる。

 

6.登録手続

 

商標出願が提出された後、方式審査が行われ、全ての方式要件が満たされていると判断されると、当該商標は商標公報において公告される。

 

公告には、出願された商標、出願人の名前、出願時の指定商品または役務、該当する場合は優先権情報、および出願日が含まれている。

 

公告の日から30日以内に、第三者は異議申立を提起することができるが、異議申立を提起する正当な利害関係がなければならない。

 

異議申立期間が終了すると、特許庁は当該出願の実体審査を行う。実体審査は、異議申立期間の終了から約6ヵ月後に行われる。特許庁は、登録簿において同一区分に同一または類似の商標が登録されているかどうかについて調査する。

 

実体審査において、問題となる先行商標が見つからなければ、特許庁は登録証(現在では電子形式による)を発行し、登録手続が完了する。

 

一方、特許庁が登録簿において問題となる先行商標を見つけた場合、当該先行商標を引例とする拒絶理由通知が出願人に送達される。出願人は、拒絶理由通知に対して150日の応答期間を与えられ、その期間内に先行商標の権利者と友好的に和解する努力を通して、または先行商標の取得により、または和解交渉をより効果的に行う事を目的とした訴訟提起を通して、先行商標の問題を解消する必要がある。この最後の選択肢である訴訟は、先行商標に対する不使用取消訴訟または無効訴訟をいう。

 

特許庁による最終拒絶としての拒絶査定通知に不服の場合、連邦裁判所に提訴することができる。

 

7.不使用取消

 

登録商標を維持するには、商標は登録後5年以内に商取引において使用されなければならない。商標の登録日から6年目の初日以降、当該商標の使用がまだ開始されていない場合には、正当な利害関係を有するいかなる第三者も、当該商標の不使用を理由に取消を請求することができる。この不使用取消請求については、特許庁は決定を下す権限がないため、連邦裁判所に提起しなければならない。

 

不使用取消を避けるためには、上記の5年以内に少なくとも一つの商品または役務に、商標が使用されていなければならない。なお、使用している商品または役務は不使用取消対象とされている当該商標登録の指定商品または指定役務である必要は無いが、かかる使用は商取引において行われなければならない。

 

使用が十分に証明されなかった場合、当該商標は取り消され、登録簿から削除されることになる。

 

8.無効

 

第三者が登録簿から商標を削除するもう一つの手段が、当該商標の無効宣言を求めて無効訴訟を提起することである。第三者の請求に基づいて商標の無効を宣言できるのは、連邦裁判所のみである。

 

無効宣言の理由は、商標法第24条に明確に定められている。

 

第24条

登録商標は次の各場合に該当するときは、無効とする。

(a) 本法の規定に違反するとき

(b) 当事者が登録出願の際に当該商標が第三者に属していることを知っていたとき又は知っているべき立場にあったとき

(c) 登録商標の売却目的で商標登録にかかわる常習者が当該商標の売却目的でこれを登録したとき

 

最も一般的な理由は、商標権者が自己の出願時において当該商標が第三者に帰属することを知っていた、または知っていたはずとの理由に基づく冒認出願である。特に、真正な権利者と何の関係もない者により当該商標が出願された場合が最も多い。

 

無効宣言を獲得するには、当該商標権者がアルゼンチンに出願した時点より前に当該商標が存在していたこと、さらに当該商標権者が当該商標の存在について知っていたことを立証しなければならない。その場合、カタログ、パンフレット、広告、スポンサー契約および請求書などの証拠を用いることができる。

 

この無効訴訟に関しては、提訴時効はない。

 

9.未登録商標

 

アルゼンチンでは、商標の登録は義務づけられていないが、未登録商標が保護されるためには、権利者は継続的に商取引において当該商標を使用しなければならず、相当の期間にわたり当該商標に関する顧客を生み出していなければならない。未登録でも保護され得る商標は、事実上の商標(de facto trademark)と呼ばれており、第三者に対する権利行使が可能である。

アルゼンチンにおける商標の使用と使用証拠

アルゼンチン商標法第20条の規定に従い、登録商標を更新する際、商標権者は、当該商標の満了日前の5年以内に商取引において当該商標を使用したことを宣誓しなければならない。この使用宣誓は、区分に関係なくいずれか一つの商品または役務に関して行えば良い。商標の使用は商標権を維持するための必須条件である。更新時に、商標権者は使用を宣誓しなければならないが、使用を裏づける証拠を提出する必要はない。

 

さらに、商標法第26条の規定に基づき、第三者により不使用取消訴訟が提起された日前の5年以内に、区分に関係なくいずれかの所定の商品または役務に関して商標が商取引において使用されていなかった場合、当該商標は裁判所により取り消されるおそれがある。登録商標の取消しは、連邦裁判所によってのみ審理される。

 

商標の使用とみなされる行為を定義づける規定は存在しない。しかし、上記に引用された商標法の各条項は、商取引において少なくとも一つの商品または役務に関して商標が使用されていなければならないことを明示している。

 

商標権の使用はアルゼンチン国内で行われていなければならず、かかる商品または役務が、国内市場に存在しなければならない。

 

なお、アルゼンチンで立ち上げられたサイトによるインターネット上での商標の使用は、当該商品が海外からの注文で、海外に納品された場合においても、商標の有効な使用として認められている。

 

商標の広告が有効な商標の使用とみなされるには、市場における当該商品または役務の実際の提供が広告後に行われなければならない。販売を伴わない単なる広告は十分ではない。

 

一般的な使用証拠は、依頼人、顧客または販売店に対して発行された当該商標が明確に表示されている請求書、または表示されている商品番号等から当該商標を容易に特定できる請求書である。

 

証拠としてよく用いられる手段として、権利者の商業帳簿を見て明確に使用を判断できる会計処理の専門家証人による宣言書がある。これは請求書と共に、最も効果的な手段である。

 

さらに、使用は登録時の商標を用いるものでなければならない。ただし、商標権者が識別性に影響を及ぼさない方法で、自己の登録商標の軽微な変更で、かつ実質的な変更が無い方法で使用する場合には、当該変更後の商標の使用は、登録時の商標の使用とみなされる。これはアルゼンチンが批准したパリ条約の第5条(C)の適用を考慮している。

 

取消訴訟において、商標権者により主張された使用が不十分であった場合、当該商標は取り消され、登録簿から削除されることになる。

 

未登録商標

 

アルゼンチンにおいては、商標の登録は義務づけられていない。未登録商標の使用は、当該商標を保護する根拠になる。未登録商標が保護されるためには、権利者は継続的に商取引において当該商標を使用しなければならず、相当の期間にわたり当該商標に関する顧客を生み出していなければならない。これら未登録商標に対する保護の要件は、個々の事例に応じて判断される。

 

上記のように未登録でも保護され得る商標は、事実上の商標(de facto trademark)と呼ばれており、第三者に対する権利行使が可能であり、第三者の出願に対する異議申立の根拠としての役割を果たし、無効請求における根拠としての機能も有する。