ホーム 一部審査

韓国における複数意匠登録出願制度について

複数意匠登録制度について下記のとおり詳細を説明する。

(1)複数意匠登録出願できる物品は、意匠法(韓国語「디자인보호법(デザイン保護法)」)施行規則第38条で定める物品の区分(ロカルノ分類)で同一分類の物品でなければならない。複数意匠登録出願された意匠の物品が同一分類に属しない場合には拒絶理由通知がされ、分類が相異する物品に対しては出願の分割または出願取下げをしなければならない。

(2)複数意匠登録出願は100個以内の意匠を1意匠登録出願として出願することができる*1。この場合、図面は1意匠ごとに分離して表現しなければならない。即ち、出願書に意匠一連番号を付与し、その一連番号に沿って意匠図面および説明等を記載しなければならない。複数意匠登録出願された意匠が100個を超過した場合には、拒絶理由通知書を受けることになり、この際に100個を超過する意匠に対しては出願の分割または出願取下げをすることができる。

*1: 2014年7月1日に施行された改正意匠法により、1意匠登録出願として出願することができる意匠の数が20個以内から100個以内へ変更された。(意匠法(韓国語「デザイン保護法」)第41条)

(3)複数意匠登録出願された意匠のうち一部意匠にのみ拒絶理由がある場合、拒絶理由がある意匠の一連番号、意匠の対象になる物品およびその拒絶理由を明示し、拒絶理由(意見提出通知)を通知するようになっている(意匠法(韓国語「デザイン保護法」)第63条2項)。

(4)複数意匠登録出願の一部の意匠にのみ拒絶理由があり、その拒絶理由が解消されない場合、その一部の意匠に対してのみ拒絶決定をすることができるようになっている(意匠法第62条5項)。

(5)複数意匠登録出願された各意匠は、図面または写真のうちのいずれかで統一して表現しなければならない。ただし、複数の3Dモデリング図面を提出する場合には全ての意匠を3次元モデリングファイル形式で提出しなければならない。

(6)複数意匠登録出願された意匠が設定登録されれば、各意匠ごとに独立した意匠権が発生し、各意匠ごとに意匠一部審査登録*2の異議申立または無効審判請求の対象になる(意匠法第68条第1項後段、同法第121条第1項後段)。

*2: 1998年3月1日に無審査登録制度が導入され、2014年7月1日の改正により一部審査登録制度へ変更された。

(7)複数意匠登録出願に対する意匠登録査定を受けた者が登録料を納付する時には、意匠別に放棄することもできる(意匠法第105条1項)。

(8)複数意匠登録された意匠権は、各意匠ごとに分離して移転することができる(意匠法第96条第5項)。

(9)留意事項

複数意匠の登録出願は審査または一部審査物品に関係なく物品区分(ロカルノ分類)における同一物品類でなくてはならず、1出願には100個以内まで含めることが可能である。

韓国における意匠の一部審査登録制度

韓国における、意匠一部審査登録出願について下記のとおり詳細を説明する。

 

  1. 意匠一部審査登録出願の対象物品

意匠一部審査登録出願をすることができる意匠は物品類区分(ロカルノ分類)のうち、産業通商資源部令で定める下記の物品に限られる。

・第2類(衣類およびファッション雑貨用品)

・第5類(繊維製品、人造および天然シート織物類)

・第19類(文房具、事務用品、美術材料、教材)

 

  1. 出願手続および審査

(1)意匠一部審査登録出願の手続は意匠審査登録出願と同一であるが、意匠一部審査登録出願の対象物品は、意匠審査登録出願ではなく意匠一部審査登録出願で出願手続しなければならない。

 

(2)工業上利用することができないか、国内または国外で広く知られている形状・形・色彩またはこれらの結合により容易に創作することができる意匠は登録を受けることができない(意匠法第62条12項)。

 

(3)情報提供がある場合、審査官は客観的な拒絶理由が発見されれば、実体審査をできるように規定されている(意匠法第62条4項)。

 

(4)意匠一部審査登録出願をした場合、所定の方式審査後、拒絶理由がなければ登録になり、出願から登録までは平均3~4か月程度かかる(意匠審査登録出願の場合、出願から登録まで1年程度である)。

 

  1. 意匠一部審査登録出願の登録後の異議申立

(1)意匠一部審査登録出願で登録された意匠権の中には、実体的登録要件が欠如した意匠が存在する可能性があるため、意匠一部審査登録出願で登録された案件については異議申立制度が採用されている(意匠法第68条)。

 

(2)意匠一部審査登録出願で登録された意匠権については、設定登録日から意匠一部審査登録出願の登録が公告された日から3か月になる日までの間、誰でも異議申立が可能である。審査官3人の合議制により審議され、取消理由ありと判断されれば、登録された意匠権は取り消される(意匠法第68条第11項・第70条)。

 

  1. 留意事項

(1)旧法の意匠無審査登録制度では意匠無審査出願の対象品目を18分類において幅広く許容したが、2014年7月1日付施行の改正法(2014年1月21日公布)では名称を意匠一部審査に変更するとともに、この制度の対象品目を3分類(ロカルノ分類 第2類、第5類、第19類)まで大幅に縮小した。したがって、出願時には、意匠出願の対象物品が意匠一部審査登録出願の対象物品に該当するかを確認しなければならない。なお、誤って意匠一部審査登録出願の対象物品を含む意匠審査登録出願をした場合、方式審査で補正指示が出され、意匠一部審査登録出願へ補正することは可能である。

 

(2)意匠一部審査登録出願をして登録となれば、意匠権は発生するが、権利を行使する際には当該権利が本当に有効かどうかを権利者自身が判断しなければならない。明らかな無効事由があるにもかかわらず権利を行使した場合は、権利濫用と判断される可能性もあるので注意が必要である。