韓国における特許分割出願制度の活用と留意点
以下、特許出願の分割出願について詳しく紹介するが、実用新案についても同様である(実用新案法第11条、第15条などにより準用されている)。また、韓国において日本の「査定」に対応するものは「결정」(決定)であり、韓国特許法の和訳においても「決定」と表記されていることから、以下、「査定」ではなく「決定」と表記する。
特許法第52条に分割出願について定めがある。特許法改正(2015.01.28公布、2015.07.29施行)により、2015年7月29日以降に特許決定された出願は、特許決定以降でも、特許決定の謄本の送達日から3か月以内(ただし、設定の登録料を納付する前)においても分割出願が可能である(特許法第52条1項3号)。
1.分割出願ができる期間
(1) 特許決定謄本の送達日前まで明細書等を補正できる期間内に分割出願をすることができる。ただし、拒絶理由通知書(韓国語「의견제출통지서(意見提出通知書)」)を受けた場合は意見書提出期間まで、また、再審査を請求する場合は請求時に分割出願することができる(特許法第52条1項1号)。
(2) 特許拒絶決定謄本を受けた場合は、拒絶決定不服審判を請求することができる期間まで、すなわち特許拒絶決定謄本の送達日から3か月以内に分割出願をすることができる(特許法第52条第1項2号)。
(3) 特許決定または特許拒絶決定取消審決の謄本の送達を受けた日から3か月以内の期間に分割出願をすることができる。ただし、設定の登録料を納付する前でなければならない(特許法第52条第1項3号)。
2.分割出願に求められる要件
分割出願は、親出願の出願当初の明細書および図面に記載された事項の範囲内で分割出願をすることができる。補正によって親出願から削除した内容であったとしてもその内容を分割出願することができる(特許法第52条第1項、特許・実用新案審査基準 第6部第1章3.3)。
3.優先権主張を含む親出願からの分割出願
分割出願の基礎となる特許出願が適法に優先権主張された特許出願の場合には、その分割出願についても優先権主張および証明書類を提出したものとみなされる(特許法第52条第4項)。
4.分割出願の効果
分割出願は親出願を出願する時に出願したものとみなされる(特許法第52条第2項)。
5.分離出願
2022年4月20日から導入された分離出願制度は、既存の分割出願制度とは異なる新しい制度である。分離出願制度により、拒絶決定不服審判で請求棄却された場合に、拒絶決定されていない請求項のみを分離して出願できる。分離出願は審決の謄本の送達を受けた日から30日(審判長が付加期間を定めた場合にはその期間をいう。)以内に行うことができる。また、分離出願は新たな分離出願、分割出願または実用新案法第10条による変更出願の基礎となれない。(特許法第52条の2)
6.留意事項
(1) 審査過程で一発明一出願の要件に違反するという内容の拒絶理由を受けた場合、可能な限り分割出願をすることが望ましい。
(2) 拒絶理由通知書で特許可能な請求項と拒絶対象の請求項が明白に区分して示された場合、拒絶対象の請求項は削除または分割出願し、親出願は特許可能な請求項のみになるように補正して、先に特許を受けることが望ましい。
(3) 拒絶決定を受けた場合、再審査を請求する時に分割出願をすることができるが、この時に拒絶決定の理由となった請求項のさらなる権利化および特許可能な請求項の早期権利化を図る場合は、再審査時に特許可能な請求項のみになるように補正するとともに、必要であれば拒絶決定の理由となった請求項の分割出願を行うことが望ましい。
(4) 再審査で再び拒絶決定された場合には、拒絶決定不服審判を請求する前に、分割出願の必要性を必ず検討することが望ましい。その理由は、拒絶決定不服審判請求時には、明細書や図面に対する補正はできないからである。すなわち、再審査後の再拒絶決定に対して拒絶決定不服審判を請求する際には、特許可能な請求項のみに限定する補正もできないため、拒絶理由が含まれている請求項がある場合、拒絶決定不服審判でも原出願の拒絶理由を解消することができない。したがって、補正した請求の範囲での権利化のためには、拒絶決定不服審判を請求せずに、さらなる補正の機会のある分割出願を検討することが考えられる。
(5) しかし、上記の拒絶決定不服審判と分割出願を同時に行うことはできる。この際に、分割出願の請求の範囲を再拒絶決定された当時の請求の範囲と同一にするのが望ましい。特許請求範囲が両者同一であれば、拒絶決定不服審判が審決されるまで分割出願は審査されない。
(6) 特許決定後3か月以内に分割出願は可能であるが、特許登録料を納付する前に分割出願をしなければならない。