韓国における小売役務の保護の現状
韓国では、2007年以降「特定商品に対する小売業」をニース国際分類第35類の役務に指定して商標登録を受けることができるようになっており、2012年以降は「百貨店業、スーパーマーケット業、大型割引店業」などの総合卸売業および総合小売業も役務として指定可能となっている。まずは、韓国における「小売業(Retail Services)」に関する商標法での保護を沿革的に見た後、現状を説明することとする。
2007年改正商標法施行規則の内容
旧商標法(全部改正 1990.1.13、1990.9.1施行、法律第4210号)第2条では、「サービスマーク」を「役務を営む者」が使用する標章として規定しており、卸売業および小売業を商標法上登録可能な役務としていなかったため、慣行的に「販売代行業、百貨店管理業、スーパーマーケット管理業」などで出願しなければならなかった。
これに関して、特許法院1999.5.27宣言98허(ホ)6612判決では、小売業者が指定役務を「生活必需品販売店管理業」としてサービスマーク登録を受けた後、自分が所有する生活必需品販売店に看板を掲げて直接運営した事案において、「生活必需品販売店管理業とは他人が所有または経営する生活必需品販売店の店舗の数が多いか少ないかに関わらず、役務に含まれないと解釈することが相当である。」と判示して不使用を理由としてサービスマーク登録の取消を認めた。
上記判決により、卸売業または小売業でありながら販売代行業、販売斡旋業または販売店管理業を指定役務として出願して登録を受けた場合、当該役務に対するサービスマーク的使用ではないとしてその登録が取り消される問題が生じた。これに対して、2007年1月1日に施行された改正商標法施行規則では、上記の問題点を解消して国際的な傾向に合わせるようにニース国際分類第9版の採用に合わせて、商標法施行規則別表2の第35類に卸売業と小売業を追加し、卸売業および小売業が商標法上第35類の役務として登録を受けることができるようになった。
2012年改正商標法施行規則の内容
2007年改正商標法施行規則によると、卸売業および小売業を出願するためには「特定商品に対する卸売業および小売業」または「同種の商品群に分類可能な商品集団に対する卸売業および小売業」のように役務の対象を具体的に記載しなければならず、総合卸売業および総合小売業は認められなかった。
しかし、2012年改正商標法施行規則では、ニース国際分類第10版の商品分類および取引実情を反映して、「百貨店業、スーパーマーケット業、大型割引店業」などの総合卸売業および総合小売業を役務として認め、総合卸売業および総合小売業も商標として登録を受けることができるようになった。
2016年全部改正商標法による保護態様
また、2016年9月1日に施行された全部改正商標法は、商標の定義規定を「商標とは自己の商品(地理的表示が使用される商品の場合を除いて、役務または役務の提供に関連したものを含む。以下同じ。)と他人の商品を識別するために使用される標章をいう(第2条第1項第1号)」と改正して、商標とサービスマークの区別を廃止し、多様な形態の商品および役務を商標と一元化して保護できるようにしている。
2016年改正商標法施行規則では、従来包括名称と分類されていた「百貨店業、スーパーマーケット業、大型割引店業」などの総合卸売業および総合小売業を類似群コードS2090から見て狭義の類似群コードに分類して、「特定商品に対する小売業」と「総合卸売業および総合小売業」の区分を明確にした。
小売業に対する保護の現状
現在は、韓国商標法に基づき、ニース国際分類第11版の商品分類基準により第35類の具体的な小売業を指定して商標として出願することができる。出願時に、指定役務を「小売業」と指定した場合には、役務の名称が不明確であるという拒絶理由が通知されるため、指定役務を「特定商品に対する小売業」、「同種の商品群に分類可能な商品集団に対する小売業」または「告示された包括商品名称に対する小売業」などと指定して出願しなければならない。
同種の商品群に分類可能な商品集団の範囲は、該当商品または商品集団の取引実態、需要者の範囲、供給取引先などを総合的に考慮して判断し、告示された商品の名称を基準に出願することが一般的である(例:家具小売業、靴小売業、文房具小売業など)。総合卸売業および総合小売業に対して出願する場合、「百貨店業、スーパーマーケット業、大型割引店業、コンビニエンスストア業、インターネット総合ショッピングモール業、電気通信による通信販売仲介業」の告示された名称を指定して出願することができる。
小売業に対して商標登録を受けた後は、商標としての独占的使用権、他人に対する使用禁止権および登録排除効を有する。特に、使用禁止権および登録排除効に関して、他人の商標および商品または役務と類似判断が問題となることがあるが、審査基準では役務間の類似判断において、総合卸売業および総合小売業である「百貨店業、大型割引店業、スーパーマーケット業、コンビニエンスストア業、インターネット総合ショッピングモール業、電気通信による通信販売仲介業」は互いに類似した役務と推定し、これら「総合卸売業および総合小売業」と「個別商品に対する小売業」は非類似と推定される(例えば、「百貨店業」と「化粧品小売業」は非類似と推定される)。
また、「小売業」と小売業の対象となる「商品」の類似は、商品と役務との間の同種性を基準に判断される。ここで、同種性とは「当該商品がなければ当該役務が存在できないほど極めて密接な関係がある場合」をいうが、特許法院2011.5.19宣告2011ホ1616判決では「ゴルフグローブ、ゴルフボール」と「スポーツ用具小売業」を類似と判断しており、特許法院2011.12.14宣告2011ホ8655判決では「人参ジュース、乳酸菌飲料、ヨーグルト、酵母」と「健康機能食品小売業」を類似と判断した。
したがって、一般的に「小売業」とその対象となる「商品」は、出所混同の恐れがあるとみて類似と判断されており、「小売業」に対する商標出願を行う場合は、小売業の対象となる商品に対する先行商標も調査する必要がある。
また、小売業は商品の流通過程で用役を提供するサービスに該当するため、販売の対象となる商品に商標を付する場合には、「小売業」とその対象となる「商品」の両方を出願することを検討する必要がある。
フィリピンにおける指定商品または役務に関わる留意事項
フィリピン知的財産庁は、指定商品または指定役務に関する一般的なガイドラインとして、「標章の登録のための商品およびサービスの国際分類」(ニース国際分類)の最新版を採用している。
フィリピン知的財産法第124.1条(k)は、商標出願には「ニ-ス国際分類の類に従って群に纏められた登録を求める商品または役務の名称、および、その商品または役務の各群が属するニ-ス国際分類の類の番号」が含まれていなければならないと規定している。
「商標、サービスマーク、商号およびマーキングされた容器に関する規則」(以下、商標規則、2017年改正)に基づき、フィリピン知的財産庁は、商品または役務の記述に関するガイドラインを定めている。
商標規則405は、適用される国際分類は、WIPOが公告するニース分類の最新版に基づくとしている。また、旧版の国際分類に基づいて登録された商標については、更新の際に審査官による書換登録(reclassification)が行われ、書換に伴う区分追加については費用の納付を前提とする旨が規定されている。
商標規則406は、商品、事業または役務を特定する際に広義の用語を使用することを禁じている。一方で、外国登録に基づいて出願する出願人は、当該外国登録が商品、事業または役務を特定する際に広義の用語を使用している全ての場合について、当該外国登録が指定する商品を指定しなければならないと規定している。類見出し(Class headings)の記載は使用できるが、記載が示すとおりの商品役務を指定するものとされ、当該区分に属する全ての商品を指定するものとはされず、また、商品役務の性質について紛らわしくないことを前提とする。
商標規則407は、複数の商品または役務について、これらがニース国際分類の一つの分類に属するか複数の分類に属するかにかかわらず、1件の出願で扱うことができると規定している。ニース国際分類の複数の分類に属する商品または役務を1件の出願が含む場合は、当該出願は、1件の登録を取得することになる。
商標規則408は、複数の分類に属する商品または役務が1件の出願に含まれている場合、2件以上の出願に分割(分割出願)することができると規定している。ただし、同一区分に属する商品を分割出願することはできない。また、同一出願人による複数の商標出願の結合(merge)も請求により可能である。
1. 審査実務
商品または役務の審査は、最新版のニース国際分類に基づいて行われている。フィリピンは、マドリッド・プロトコルに加盟しているため、審査官は加盟以前に比べて商品または役務に関する比較的広義の記述を認めるようになってきている。例えば、「被服、履物および帽子類(clothing, footwear and headgear)」という記述は、現在では認められるようになっている。
ただし、出願がパリ条約による優先権を主張しており、優先権の基礎となる本国出願の指定商品または指定役務が、フィリピン出願の指定商品または指定役務より狭義の記述となっている場合はこの限りではない。その場合、審査官は、フィリピン出願に指定されている広義の商品または役務の記述を補正し、本国出願に指定されている商品または役務の範囲内に限定するよう出願人に要求する。より広義の記述で登録を得るためには、出願人はパリ条約による優先権を主張しないで、フィリピン出願を行なう必要がある。
商品および役務に関する広義の記述は認められておらず、明瞭かつ具体的な商品および役務の記述が要求される。
例えば、「本類に属するその他すべての商品(all other goods in this class)」という記述は、あまりにも広義であるという理由で認められない。
2. 出願料
商品または役務は、ニース国際分類に従って適正に分類されなければならない。出願料は分類の数に基づいて計算され、商標出願に指定された商品または役務の数に基づいて計算されるわけではない。
現在、商標出願時に支払う出願料(1区分あたり)は、保有資産が一億ペソ以下の個人または法人、フィリピン政府関連機関が対象となる「小規模団体」(Small entity)は1,200ペソ、それ以外の出願人は2,592ペソである(IPOPHL MEMORANDUM CIRCULAR NO.17-002 Section16)。
韓国における商標の一出願多区分制度
(1)商標出願は一商標ごとに行わなければならない(一商標一出願)。しかし、出願書に含める商品またはサービス業の区分の数については、制限されない(商標法第38条)。
(2)特許庁に納付する印紙代は、多区分出願の場合でも1区分ごとに計算される(1区分あたり64,000ウォン)。また、指定する商品またはサービス業が20を超過する場合、21個目から超過商品またはサービス業1つあたり2,000ウォンを追加納付しなければならない(特許料等の徴収規則第5条第1項)。20の数え方は一区分ごとに行うので、たとえば、2区分出願で、1区分目が15個の商品、2区分目が10個のサービス業を含んでいる場合、何れの区分も20個以下の商品またはサービス業で構成されているため、超過商品および超過サービス業は存在しないことになる(特許料等の徴収規則第5条第1項第1号)。
(3)区分は商品の区分とサービス業の区分に分けられているが、複数区分の出願である場合、1つの出願書に商品区分とサービス業区分を同時に含めることができる。
(4)指定する商品またはサービス業はハングル表記のみでしなければならない。ただし、指定する商品またはサービス業が理解しにくい場合には、括弧書きで漢字または外国語を併記して表示することができる(商標審査基準第31条)。
(5)出願書に記載した区分が、指定商品または指定サービス業に照らして、ニース国際分類に従っているとはいえず、不適切である場合は、拒絶理由を通知して補正の機会を与える(商標審査基準第2部第4章)。
(6)指定商品または指定サービス業が明確ではない場合にも、拒絶理由を通知して補正の機会を与える。その際には、要旨変更にならない範囲の補正をすれば、認められる。
(7)商品およびサービス業の記載について、韓国は日本に比べて、商品や役務表示について具体的表記を求める傾向があり、日本で認められている商品をそのまま記載すると包括的な記載であるとして拒絶されることもあるので留意が必要である。しかしながら、2007年1月以降、随時、一部商品で包括名称が認められるようになっているので、全ての商品または役務において具体的な記載が必要なわけではない。例えば、2012年1月1日からはデパート業、スーパーマーケット業、コンビニエンスストア業といった総合小売業の記述が認められるようになったため、それ以前のように対象商品を具体的に指定する必要はなくなっている。商品表示や役務表示については、「類似商標・役務審査基準」の商品・役務表示分類名称目録に羅列される例示のように具体的に表示することが求められる。
(8)多区分出願で拒絶理由通知書(韓国語「의견제출통지서(意見提出通知書)」)を受けて意見書を提出した場合、1区分の一部の指定商品または指定サービス業に拒絶理由が存在していれば、多区分出願全体が拒絶査定を受ける。したがって、拒絶理由が解消していないと審査官に判断されるおそれがある場合は、拒絶理由に該当する商品またはサービス業を含む区分について、分割出願を行うことが望ましい。
(9)拒絶理由に該当する区分を分割する場合、分割出願の印紙料として、一増加区分あたり10,000ウォンを納付しなければならない(特許料等の徴収規則第5条第1項第3号)。
【留意事項】
(1)一出願で多区分を指定して拒絶理由通知を受けた場合は、拒絶理由に該当する区分を分割出願手続によって新たな出願に含めるのが望ましい。一つの区分の一部の商品やサービス業に拒絶理由が残れば、出願全体が拒絶になり、拒絶査定不服審判を起こす場合も区分の数に応じて費用を納めなければならないため、無駄な費用がかかることになる。
(2)多区分の商品またはサービス業を指定する場合、使用意思確認制度の適用を受けることもあり得る(使用意思確認制度については、本データベース内コンテンツ「韓国における商標の使用意思確認制度」参照)ので、使用する意思のない商品等を指定することは避けるなど、指定する商品またはサービス業について、よく吟味する必要がある。
中国における小売・卸売役務商標の保護の現状について
記事本文はこちらをご覧ください。
台湾における小売役務の保護の現状
- 台湾における小売役務の保護
台湾では、1997年12月23日から小売役務を指定役務とする商標登録出願の受理が開始され、1998年4月20日に、審査の根拠として「小売サービスマークの登録審査要点」が公告された。「小売サービスマークの登録審査要点」が施行された後、商標法が2回にわたり改正(2010年8月25日改正、2011年6月29日改正)されて「サービスマーク」という名称が削除されたほか、前記の「要点」に記載された小売役務の分類がニース国際分類表と異なったため、知的財産局は、「小売サービスマークの登録審査要点」に代わるものとして2012年4月に「小売役務審査基準」を制定、同年7月に実施し、小売役務の類型や小売役務とその他の商品および役務との類似関係の判断原則などについて詳しく説明し、審査の参考に供した。
「小売役務審査基準」によると、小売役務は、「総合性商品の小売役務」(多様な商品を一括して取り扱う)および「特定商品の小売役務」(特定商品のみを取り扱う)の二つの類型に分けられている。しかし、審査上、「総合性商品の小売役務」「特定商品の小売役務」という指定役務は、不明確で認められないため、経済部商業司が編集した「会社商号の営業項目コード」を参考にし、市場の経営形態に合わせ、受理される具体的な指定役務を例示している。例えば、「総合性商品の小売役務」については、「スーパーマーケット、デパート」が受理される指定役務であるのに対し、「特定商品の小売役務」においては、「時計の小売役務、農産物の小売役務」などが受理される指定役務である。
- 「小売役務」と「その他の商品・役務」との類似性の認定
「小売役務審査基準」で明示された類似関係の判断原則は、以下の通りである。
(1) 「総合性商品の小売役務」vs.「総合性商品の小売役務」
総合性商品の小売役務同士の間には、消費者のニーズを満足させるため、および役務の提供者などの要素において共通または関連するところがあるため、原則的には類似関係を有するものと認められる。
(2) 「総合性商品の小売役務」vs.「特定商品の小売役務」「商品」「その他の役務」
「総合性商品の小売役務」は、「特定商品の小売役務」「商品」「その他の役務」と性質が異なるため、原則的には非類似と認められる。
(3) 「特定商品の小売役務」vs.「特定商品の小売役務」
特定商品の小売役務同士の間は、取り扱う商品が違えば、原則的には非類似と認められる。例えば、「農産物の小売役務」と「家具の小売役務」の間では商品の性質がかなり異なり、明らかに市場を区別することができるので、お互い類似しないものである。しかし、取り扱う商品の種類または性質が極めて近い場合、例えば、「娯楽用品の小売役務」と「運動用品および器具の小売役務」の間は、原則的に類似関係を有するものと認められる。
(4) 「特定商品の小売役務」vs.「商品」
「特定商品の小売役務」については、「特定商品」が概括的なもので範囲が広ければ、原則的には、当該概括的「特定商品」でカバーできる個別の商品まで類似扱いされることはない。例えば、「農産物の小売役務」について、「農産物」は「野菜、果物、花」などの商品をカバーできるものの、「農産物の小売役務」と「野菜、果物、花」とは、原則として非類似と認められる。しかし、一般社会通念および取引の状況に照らして、役務または商品の提供者が同一または関連性があるという誤認が生じやすい場合は、類似関係を有すると認められる。その例としては、「飲料の小売役務」と「炭酸水、清涼飲料」が挙げられる。
知的財産局が公開した「『特定商品の小売役務』と『当該特定商品』の間の類似検索関係参考表」において、類似すると認められているものは、下記の通りである。
(5) 「特定商品の小売役務」vs.「その他の役務」
「特定商品の小売役務」と「その他の役務」は、互いに性質が異なるため、原則的には非類似と認められる。例えば、「販売代行」と「小売役務」は、原則として非類似と認められる。しかし、両者の出所が同一である、または同一ではないが出所の間に関係があるという誤認を容易に消費者に生じさせるものである場合、例えば、「被服の販売代行」と「被服の小売役務」は、原則的には類似するものと認めることができる。
- 商品商標、役務商標と小売役務商標の使用上の相違点
商品商標と役務商標は、保護対象が商品または役務そのものであるのに対し、小売役務商標は、保護対象が出願人の提供する販売に関する一連のサービスである。したがって、商標の使用をするのはどちらに該当するか疑義が発生する可能性がある。以下に事例を挙げて説明する。
(1) 事例1(商品商標との相違点)
「特定商品Aの小売」および「ネットショッピング」を指定して甲商標の登録を取得した場合、実際の甲商標を商品Aに表示し、実店舗およびインターネットで販売することが「特定商品Aの小売」あるいは「ネットショッピング」における商標使用に該当するかが問われた事例においては、商品Aに甲商標を表示し、実店舗およびネットで販売することは、甲商標の商品Aへの使用であって、「特定商品Aの小売」および「ネットショッピング」における使用には該当しないと認められた。
「登録商標の特定商品における使用」とは、例えば、家具、電気製品そのもの、および商品の包装パッケージに登録商標を表示することを指す。一方、「登録商標の小売役務における使用」とは、例えば、業者が実店舗またはインターネットで各種ブランドの家具、電気製品を取り扱い、消費者に選択・購入させるサービスを提供し、当該実店舗またはホームページで登録商標を表示する行為を指す。
(2) 事例2(役務商標との相違点)
「食品、飲料の小売」において商標の登録を取得し、自ら開設するレストランにおいて、客にジュースを販売するサービスを提供することは、「食品、飲料の小売」における使用とは認められない。
「食品、飲料の小売」とは、ある場所で食品、飲料を揃え、消費者にこれらの商品を見せて、選択・購入の便宜を図るサービスのことであり、例えば、食料品店、飲料店がこれに該当する。一方、「レストラン」は料理(食品)、ジュース(飲料)を客に提供(販売)するものの、主には、座席が設けられた環境で、消費者が注文して、その場で食事・喫茶できるというサービスである。両者の性質、効能は異なるため、商標権者は「食品、飲料の小売」において登録を取得したものの、実際にはレストランを開いて、料理、ジュースを提供している場合、「食品、飲料の小売」における商標の使用とは認められない。
- 小売役務に関する制度における日本と台湾の相違
(1) 台湾における政府料金の追加
日本では、小売役務商標を出願する場合、多くの小売役務を指定しても1区分の料金の納付で足りるが、台湾では、特定商品の小売役務を指定する場合、5個以内であれば1区分の料金で、5個を超えた場合は、料金(1個につきNT$500)が追加される。
(2) 日本における商標の使用または商標の使用の意思を確認するための審査
総合小売役務を指定する場合:台湾では、出願人が個人か法人かを問わず、総合小売役務を指定することができるが、日本では、個人が総合小売役務を指定して出願した場合、個人(自然人)が総合小売役務を行うことは通常考え難いという理由により、拒絶理由通知が発せられ、商標の使用または商標の使用の意思を確認するための証拠提出が要求される。一方、法人(会社)が総合小売役務を指定して出願した場合でも、総合小売役務が特定商品の小売役務と異なる特徴があることを理由に、「自己の業務に係る商品または役務についての使用」であるか否かについて調査が行われ、出願人が総合小売等役務を行っていると認められなかった場合、同様に証拠提出が求められる。
類似の関係にない複数の特定商品の小売役務を同時に指定する場合:台湾では、特定商品の小売役務をたくさん指定しても問題ないが、日本では、通常、同時に取り扱わない商品同士を取り扱う小売役務を指定した場合には(例えば、「書籍」と「魚介類」、「飲食料品」と「被服」など、類似する小売役務の分野を超えて複数の類似群に属する小売役務を同時に指定)、その商標を記載された役務に使用しているかまたは使用の意思があるかについて疑問が生じるので、商標の使用または商標の使用の意思を確認するため、拒絶理由通知が発せられ、証拠書類の提出が求められる。
香港における小売役務の保護の現状
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タイにおける小売役務の保護の現状
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マレーシアにおける小売役務の保護の現状
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ロシアにおける小売役務の保護の現状
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