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韓国におけるデザイン一部審査登録制度および対象物品の拡大

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韓国におけるデザイン保護法

 「模倣対策マニュアル韓国編」(2019年3月、日本貿易振興機構(ジェトロ))「第II編 韓国の知的財産制度と関連法 第4章 デザイン保護法」

 

(目次)

第II編 韓国の知的財産制度と関連法

 第4章 デザイン保護法 P.123

  1.保護対象 P.123

  2.登録要件 P.123

  3.デザイン登録を受けるまでの手続の概要 P.125

  4.権利の取得と維持 P.134

  5.デザイン一部審査登録異議申立 P.135

  6.デザイン審判手続 P.136

  7.ハーグ協定による国際デザイン登録出願制度 P.138

日本と韓国の意匠出願における実体審査制度の有無に関する比較

日本における意匠出願の審査

 日本において意匠登録を受けるためには、願書、図面を含む出願書類が所定書式を満たしているかどうかの形式的な審査(方式審査)が行われた後、方式審査を通過した出願に対しては、審査官により意匠登録要件を満たしているかどうかの審査(実体審査)が行われる。実体審査において審査される内容は以下の通りである。

  1. 物品の形状、模様もしくは色彩またはこれらの結合であって視覚を通じて美感を起こさせる意匠であること(第2条1項)
  2. 工業上利用できる意匠であること(第3条1項柱書)
  3. 新規性を有する意匠であること。(第3条1項各号)
  4. 創作非容易性を有すること(第3条2項)
  1. 先願意匠の一部と同一または類似の意匠でないこと(第3条の2)
  2. 公序良俗違反でないこと(第5条1号)
  3. 他人の業務に係る物品と混同を生じる恐れがないこと(第5条2号)
  4. 物品の機能確保のために不可欠な形状のみからなる意匠でないこと(第5条3号)
  5. 最先の出願であること(第9条)

条文等根拠:意匠法第16条、第17条

 

日本意匠法 第16条 審査官による審査

 特許庁長官は、審査官に意匠登録出願を審査させなければならない。

 

日本意匠法 第17条 拒絶の査定

 審査官は、意匠登録出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その意匠登録出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。

一 その意匠登録出願に係る意匠が第3条、第3条の3、第5条、第8条、第9条第1項もしくは第2項、第10条第1項から第3項まで、第15条第1項において準用する特許法第38条または第68条第3項において準用する同法第25条の規定により意匠登録をすることができないものであるとき。

二 その意匠登録出願に係る意匠が条約の規定により意匠登録をすることができないものであるとき。

三 その意匠登録出願が第7条に規定する要件を満たしていないとき。

四 その意匠登録出願人がその意匠について意匠登録を受ける権利を有していないとき。

 

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韓国における意匠出願の審査

韓国におけるデザイン登録出願の審査は、実体審査を経る出願と、実体審査を経ない出願(以下、「デザイン一部審査登録出願」)に分かれている。デザイン一部審査登録出願は、流行性が強く、ライフサイクルが短い特定の物品(知識経済部令で定められている対象物品)のみを対象としたものである。

実体審査を経るデザイン登録出願は、出願書類等に不備があるかどうかの方式審査が行われた後、工業上の利用可能性、新規性、創作容易性、公序良俗違反等の不登録事由等に関する審査(実体審査)が行われる。

一方、実体審査を経ないデザイン一部審査登録出願は、出願書類等に不備があるかどうかの方式審査が行われた後、早期権利化のために工業利用可能性と創作容易性等の一部実体審査が行われるだけである。

条文等根拠:デザイン保護法第58条および第62条

 

韓国デザイン保護法 第58条 審査官による審査

1 特許庁長は、審査官にデザイン登録出願およびデザイン一部審査登録異議申立を審査するようにする。

2 審査官の資格に関して必要な事項は、大統領令で定める。

 

韓国デザイン保護法 第62条 デザイン登録拒絶決定

1 審査官は、デザイン審査登録出願が次の各号のいずれか一つに該当する場合にはデザイン登録拒絶決定をしなければならない。

(1)第3条第1項本文によるデザイン登録を受けることができる権利を有さず、または同項ただし書きによってデザイン登録を受けることができない場合

(2)第27条、第33条から第35条まで、第37条第4項、第39条から第42条までおよび第46条第1項・第2項によってデザイン登録を受けることができない場合

(3)条約に違反された場合

2 審査官は、デザイン一部審査登録出願が次の各号のいずれか一つに該当する場合にはデザイン登録拒絶決定をしなければならない。

(1)第3条第1項本文によるデザイン登録を受けることができる権利を有さず、または同項ただし書きによってデザイン登録を受けることができない場合

(2)第27条、第33条(第1項各号以外の部分および第2項第2号だけ該当する)、第34条、第37条第4項および第39条から第42条までの規定によってデザイン登録を受けることができない場合

(3)条約に違反された場合

3 審査官は、デザイン一部審査登録出願として第35条による関連デザイン登録出願が第2項各号のいずれか一つに該当する場合にはデザイン登録拒絶決定をしなければならない。

(1)デザイン登録を受けた関連デザインまたはデザイン登録出願された関連デザインを基本デザインで表示した場合

(2)基本デザインのデザイン権が消滅した場合

(3)基本デザインのデザイン登録出願が無効・取下げ・放棄され、またはデザイン登録拒絶決定が確定された場合

(4)関連デザインのデザイン登録出願人が基本デザインのデザイン権者または基本デザインのデザイン登録出願人と異なる場合

(5)基本デザインと類似しない場合

(6)基本デザインのデザイン登録出願日から1年が経った後にデザイン登録出願された場合

(7)第35条第3項によってデザイン登録を受けることができない場合

4 審査官は、デザイン一部審査登録出願に関して第55条による情報および証拠が提供された場合には、第2項にもかかわらずその情報および証拠に基づいてデザイン登録拒絶決定をすることができる。

5 複数デザイン登録出願に対して第1項から第3項までの規定によってデザイン登録拒絶決定をする場合、一部デザインにだけ拒絶理由があればその一部デザインに対してのみデザイン登録拒絶決定をすることができる。

 

 

日本

韓国

実体審査

の有無

ただし、デザイン一部審査登録出願では、工業利用可能性と創作容易性等の一部実体審査が行われるだけある。

 

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新興国等知財情報データバンク 調査対象国、地域における実体審査制度については、下記のとおりである。

実体審査制度に関する各国比較

実体審査の有無

実体審査における新規性審査の有無

実体審査における創作容易性審査の有無

評価書請求の有無

JP

BR

CN

HK

ID

IN

KR

MY

PH

RU

SG

TH

TW

VN

韓国における意匠出願の補正

【詳細】

 意匠出願に関する書類の方式、または手数料などに関する手続き上の不備が見つかり、特許庁から手続きに関する補正指令書が発行されることがある。この場合、簡略な補正手続きを行い、手続き上の軽微な不備を修正することができる。しかし、出願意匠の実質的な内容に関する不備があった場合には、その補正において留意しなければならない点がある。

 

(1)補正の要件

(i)補正を行う主体

 出願を補正することができる者は出願人であり、共同出願の場合にはデザイン保護法(日本における意匠法に相当。以下「デザイン保護法」)第13条により共同で補正することもでき、各自が全員を代表して補正することもできる。

 

(ii)補正の対象

 (a)出願書の記載事項、これに添付された図面、写真、または見本(国際意匠登録出願の場合には、写真および見本は除く)および図面の記載事項に対して補正することができる。

 (b)出願(国際意匠登録出願は除く)の区分を変更し、関連意匠登録出願を単独の意匠登録出願に、単独の意匠登録出願を関連意匠登録出願に、意匠一部審査登録出願を意匠審査登録出願に、意匠審査登録出願を意匠一部審査登録出願に変更することができる。

 

(iii)補正をすることができる範囲

 補正は、当初の書類などの誤記や不明確な記載などを訂正、または補充することで、最初の出願の要旨を変更しない範囲内で行うことができる。

 

(iv)補正の時期

 (a)補正は、意匠登録可否決定の通知書が発送される前まで行うことができる。ただし、国際意匠登録出願の場合には、国際登録公開があった日から意匠登録可否決定の通知書が発送される前まで行うことができる。

 (b)デザイン保護法第64条(再審査請求)により再審査を請求する場合には、再審査を請求する際に補正することができる。

 (c)デザイン保護法第120条(意匠登録拒絶決定または意匠登録取消決定に対する審判)により審判を請求する場合には、その請求日から30日以内に補正することができる。補正書が補正の時期を違反して提出された場合には、差し戻される。

 

(2)補正の効果

(i)補正が要件を満たす場合に、該当書類は補正された後の状態で出願当時に提出されたものとみなす。

(ii)補正が最初の出願の要旨を変更するもので、登録可否決定前に認められる場合には却下する。補正却下決定をした場合には、その決定謄本を出願人に送達した日から30日以内にその出願(複数意匠登録出願のうち一部意匠に対して補正却下決定をした場合には、その一部意匠)に対して登録可否決定をしてはならない。出願人がデザイン保護法第119条(補正却下決定に対する審判)により審判を請求した場合には、その審決が確定されるまでその出願(複数意匠登録出願のうち一部意匠に対して審判を請求した場合には、その一部意匠)の審査を中止しなければならない。

(iii)補正が最初の出願の要旨を変更するもので、意匠権の設定登録があった後に認められる場合には、その補正書を提出した際に出願したものとみなす(出願日は遡及しない)。

 

(3)出願の要旨変更

(i)要旨変更の一般的な判断基準

 要旨変更とは、出願書に書かれた意匠の対象となる物品、出願書に添付された図面(3D意匠図面、および見本を含む)および図面の記載事項などを総合的に判断して最初に出願された意匠と補正された意匠との間に同一性が維持されていないことをいう。

 

(ii)要旨変更となる場合の例

図面の補正において

 (a)最初の図面などに表現された形状、模様や色彩上の付加、削減、変更などによって物品の外観に影響を及ぼす場合。ただし、その付加、削減、変更などが外観にほとんど影響を及ぼさない軽微な程度のものは例外とする。

 (b)図面のうち一致しない一図面を中心として、他の図面を訂正することで最初に提出した図面から想起されるものとは異なる意匠となる場合。

 (c)図面には形状のみが描かれ、「意匠の説明」の欄に色区分または色の曇りがあると説明されているものにおいて、その説明のように図面を補正したことがその物品として通常実施される程度の常識的な表現ではない場合。

 (d)複数意匠登録出願の出願書に書かれた意匠の数に合わせて図面を追加で提出する場合。

 (e)図面を補正するか、もしくは追加で提出する場合、最初の出願時に提出した図面から当然導出し得る一般的な形状を示すものでないと判断される場合。

 (f)添付図面から推測して常識的に判断される範囲を超える程度に意匠の説明を補正する場合。

 

物品名の補正において

 (a)意匠の対象となる物品の名称が同一物品外の物品に補正される場合。ただし、最初に提出した図面などを基準に判断して単純な錯誤や誤記を訂正するものと認められる場合には例外とする。

 (b)物品の範囲が包括的な名称をその下位概念に属する具体的な名称に補正する場合(例えば、「屋外照明灯」を「街灯」に変更)。