シンガポールにおける意匠によるコンピュータ生成画像(CGI)の保護
【詳細】
近年、コンピュータ生成画像(CGI)をはじめとする電子的デザインは、意匠登録出願における一般的な主題となっているにもかかわらず、シンガポールでは、その登録可能性に関する考え方が長らく曖昧であった。シンガポール意匠法が定める意匠の定義によると、CGIは、登録可能な意匠にはあたらないように見受けられる。また、現在のところ、シンガポールでは、CGIの登録可能性に関する問題を扱った判例はない。
しかし、2014年12月10日、シンガポール知的財産庁(Intellectual Property Office of Singapore :IPOS)は、2014年実務指令第4号(GUIの登録)を発行し、シンガポールにおいてGUIを含むCGIを意匠登録する際に採用すべき実務を定めている。この実務指令により、シンガポールでは現在、意匠法に基づきGUIを含むCGIの意匠登録が可能である。
シンガポール意匠法第2条(1)によると、「意匠」とは「工業上の方法により物品に適用された形状、輪郭、模様または装飾の特徴」をいい、「物品」とは製造品をいい、次を含む。
(a)物品の一部で、別個に製造および販売されるもの、および
(b)組物
この実務指令は、シンガポールにおける意匠出願の主題としてのGUIの登録可能性について、待ち望んでいた明確な説明を提供するものであるが、関連法はまだ改正されていない。
実務指令の重要な点を以下に紹介する。
(1)出願人は、GUIが適用される物品を指定しなければならない。
意匠法第2条(1)に基づく「意匠」の定義を満たすには、GUIが工業上の方法による製造品に適用されなければならない。したがって、出願人は、GUIに関する意匠登録出願に際して、GUIが適用される物品を、例えば「グラフィカルユーザーインターフェースが用いられる電子機器ディスプレイ」のように指定しなければならない。
(2)出願人は、当該意匠の一連の静的表示として、動的GUIを出願しなければならない。
動的あるいは動画GUIは、意匠出願において、各表示がGUIの動作のストップモーションを示す、一連の静的表現として出願されなければならない。出願人は、GUIの要素を明確に説明するため、例えばこれらの要素の相互作用または起動方法など、各表示について説明書を提出しなければならない。
(3)GUIに関して認められる図面の数
GUIに関する各意匠出願は、保護を求める意匠の外観を完全に開示するために、十分な数の異なる図面を含まなければならず、同一のGUIに関する1件の出願において表現物として提出可能な図面は最大40である。
シンガポールでは、意匠出願について実体審査は行われない。方式審査のみ行われ、方式要件が満たされている場合、当該出願は公告および登録の手続へと進む。GUIに関する登録意匠の有効性については、知的財産庁または裁判所における取消手続においてのみ争うことができる。しかし、これまでに知的財産庁または裁判所が、GUI意匠登録の有効性について審理した事例はない。