ベトナムにおける特許制度のまとめ-手続編
1.出願に必要な書類
特許出願について、願書、クレームを含む明細書、所定の手数料および料金の納付証が、出願受理のために必要な最低限の書類とされる(ベトナム知的財産法第108条、科学技術省通達01/2007/TT-BKHCNを改正する通達16/2016/TT-BKHCN(2018年1月15日付発効)(以下「通達」という)7.1 a))。最低限の書類がそろっている場合には、出願を受理し、出願日を認定する(通達12.2 a))。
関連記事:「ベトナムにおける特許・実用新案出願制度概要」(2019.06.27)
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2.記載が認められるクレーム形式
(1) 認められるクレーム形式
特許審査ガイドライン(QUY CHẾ THẨM ĐỊNH ĐƠN ĐĂNG KÝ SÁNG CHÊ 5.7.3.2 a)には、保護を主張する各請求項は、製品(構造、装置、化合物、医薬品、化粧品、食品など)または工程(製造工程、調製工程、通信方法、加工方法など)の形で、保護が必要な1つの対象物についてのみ言及し、一文で記述しなければならない、と記載されている。
(2) 認められないクレーム形式
原則として、各請求項は独立しており、他の請求項を参照することはできない。ただし、その参照によって、他の請求項の全内容の繰り返しを避けることができる場合を除く。参照する請求項は、参照される請求項の直後に記載しなければならない(通達23.6 c)(viii))。
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3.出願の言語
提出書類はベトナム語により作成されていることが必要である(ベトナム知的財産法第100条第2項、通達7.2 b)(ii))。委任状、特許等を受ける権利の承継を証明する書類、優先権証明書は外国語の原本にベトナム語の翻訳を付すことも可能である。外国語書面出願はない。
関連記事:「日本とベトナムにおける特許出願書類の比較」(2020.04.02)
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4.グレースピリオド
ベトナム知的財産法第60条第3項に規定されているが、特許を受ける権利を有する者またはその者から直接もしくは間接に当該発明について情報を取得した者によって公開されているときは、発明登録出願がベトナムにおいて公開の日から12か月以内に行われることを条件として、グレースピリオドが認められる。
5.審査
(1) 実体審査:あり
(2) 審査請求制度:あり(ベトナム知的財産法第113条)
(a) 審査請求期間:特許出願の場合には出願日または優先日から42か月以内に、出願人またはいかなる第三者も審査請求をすることができる。実用新案出願の場合には、出願日または優先日から36か月以内に同様に審査請求をすることができる。
(b) 請求人:出願人またはいかなる第三者も審査請求をすることができる。
(3) 早期審査(優先審査):あり
日本出願に基づく日ベトナム間の特許審査ハイウェイ(「PPH」)試行プログラムに基づいて、申請要件を満たすベトナム国家知的財産庁(以下、「知的財産庁」という)への出願につき、関連する書類の提出を含む所定手続を行うことで早期審査を申請することができる。
関連情報:日ベトナム特許審査ハイウェイ試行プログラムについて
https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/soki/pph/japan_vietnam_highway.html
(4) 出願を維持するための料金:不要
関連記事:「ベトナムにおける特許審査基準関連資料」(2016.01.29)
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関連記事:「ベトナムにおける特許の早期権利化の方法」(2015.03.31)
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6.出願から登録までのフローチャート
(1) 出願から登録までの特許出願のフローチャート
(2) フローチャートに関する簡単な説明
(A) 方式審査の期間は出願から1か月であり、知的財産庁は出願人にその結果を通知しなければならない。方式審査において不備が認められた場合、出願人に対し2か月の応答期間が与えられ、補正書や意見書の提出が可能である(通達13.6 a))。提出期間は2か月延長が可能である(通達9.2)。
(B) 公開前に審査請求がされた場合は公開の日から18か月の期間内に、公開後に審査請求がされた場合は審査請求の日から18か月の期間内に実体審査を行うと規定されている(ベトナム知的財産法第119条)。ただし、実務上は必ずしも上記の期限内に終わるわけではない。
法の定める保護要件を満たしていない場合、または法の定める保護要件を満たしているが不備がある場合には、実体審査報告を出願人に対して通知する。拒絶理由を明示したうえで、補正の提案を含むこともできる。応答期間は通知から3か月である(請求により3か月の延長可)(通達15.7 a)(i)および(ii)、9.2)。
(C) 登録許可通知から3か月の期間内に、登録料、公報発行手数料、第1年目の特許料の納付などをすべき旨を、出願人に対して通知する(通達15.7 a)(iii))。
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[権利設定前の争いに関する手続]
7.拒絶査定に対する手続
拒絶理由に対し反論や補正を行わない場合、あるいは行ったが拒絶理由が解消しない場合には拒絶査定となる。一般的には、出願人は知的財産庁に対する審判請求を査定受領から90日以内に行い、知的財産庁長官が審決を確定する。審決に不服のある場合には、科学技術省への不服申立を審決受領後30日以内に行い、科学技術大臣が不服申立への決定を行う(政府決議第14条、通達22、Luật khiếu nại(日本語「不服申立法」))。
また、改正された通達22.1において、知的財産庁の処分への審判請求に関し、対象となる決定等の範囲が明確化され、出願の補正や審査段階で提出されなかった新規資料などは、拒絶査定不服審判では検討の対象外となることが規定された(通達22.1 c))。
さらに、改正された通達15.7 b)の第2段落において、「新規資料(審査段階で検討されていない)であって審査結果に影響を与えうるもの」を出願人が提出した場合には、拒絶査定を取り消して、審査を再開すると規定している。ただし、何がここでいう「新規資料」に該当しうるのかといった詳細な規定はないこと、拒絶査定を受けてからいつまでそのような提出が可能なのか規定されていないこと、常にそのような新規資料の提出が可能であれば権利関係の安定性に疑問もあること、といった検討すべき課題もある。
関連記事:「ベトナムにおける特許出願に関する方式審査上の拒絶理由通知」(2015.03.31)
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8.権利設定前の異議申立
あり。出願が公報に掲載された日から登録証付与に関する決定の日までは、如何なる第三者も、当該出願に関する登録許可または拒絶に関して知的財産庁に意見を提示する権利を有する(ベトナム知的財産法第112条)。
9.上記7の判断に対する不服申立
行政訴訟法(Luật tố tụng hành chính)に基づく訴訟により、裁判所で争うことも可能であるが、一般的にはあまり利用されていない。
[権利設定後の争いに関する手続]
10.権利設定後の異議申立
なし
11.設定された特許権に対して、権利の無効を申し立てる制度
(1) 特許は、次の場合に完全に無効とされる。
(i) 出願人が発明の特許を受ける権利を有しないか、または譲渡されていなかった場合
(ii) 発明が特許付与日において保護要件を満たしていなかった場合
(2) 特許の保護対象の一部が保護要件を満たしていないときは、一部無効とされる。
(3) 特許の有効期間中、第三者は所定の手数料の納付を条件として、(1)および(2)の場合、特許の無効を知的財産庁にいつでも請求することができる(ベトナム知的財産法第96条)。
無効理由:特許を受ける権利(ベトナム知的財産法第86条)、特許の一般的要件(同第58条)、特許の保護の対象とならないもの(同第59条)
12.権利設定後の権利範囲の修正
特許権者は、特許請求の範囲を訂正することができる。
ただし、請求項の削除による権利範囲の減縮のみ可能である(通達20.1 b)(iii))
日本の訂正審判に相当する制度は存在しない。
13.その他の制度
産業財産権に関する侵害鑑定等を行う専門機関(VIPRI、http://vipri.gov.vn/)がある(ベトナム知的財産法第201条)。
フィリピンにおける特許制度のまとめ-手続編
1.特許出願および実用新案登録出願に必要な書類
知的財産法第32条、第108条第1項に規定されるように、特許出願や実用新案登録出願は、フィリピン語または英語でなければならず、かつ、特許の付与を求める願書、発明の明細書、発明の理解に必要な図面、1以上のクレーム、要約を含まなければならない。
関連記事:
「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
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「フィリピンにおける実用新案登録出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17567/
「日本とフィリピンにおける特許出願書類の比較」(2015.09.04)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/9413/
2.記載が認められるクレーム形式
発明に関する規則415(d)に規定されるように、クレームは、明細書に記載する発明と一致しなければならない。また、クレームで用いる語句については、明細書中に明確な裏付または先例を記載して、当該明細書を参照することによりクレームの用語の意味を確認することができるようにしなければならない。絶対に必要な場合を除き、発明の技術的特徴に関してクレームが明細書または図面を引用することがあってはならない。特に、「明細書第xxx部に記載したように」または「図面第xxx図に例示したように」等の引用をしてはならない。
また、発明に関する規則415(c)に規定されるように、多項従属クレーム(マルチクレーム)は、他の多項従属クレームの基礎としてはならない。
また、発明に関する規則416に規定されるように、適切な場合、クレームには次の(a)~ (c)のものを含める。
(a) 発明の主題を指定する記述、およびクレームする主題の定義のために必要とするが、組み合わせると先行技術の一部をなす技術的特徴を示す文言
(b) (a)にいう特徴との組合せで保護を求める技術的特徴を、「を特徴とする」または「によって特徴付けられる」との表現を先行させて記述した特徴付けの部分、および
(c) 出願に図面が含まれる場合に、クレームを理解しやすくするときは、クレームに記載した技術的特徴の後に、これらの特徴と関連付ける参照記号を括弧に入れて付すことが望ましい。これらの参照記号は、クレームを限定するとは解されない。
関連記事:
「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
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「フィリピンにおける実用新案登録出願制度概要」(2019.07.23)
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「フィリピンにおけるコンピュータソフトウエア関連発明等の特許保護の現状」(2019.01.17)
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「フィリピンにおけるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの解釈について」(2017.05.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/13691/
3.特許出願および実用新案登録出願の言語
知的財産法第32条、第108条第1項に規定されるように、特許出願や実用新案登録出願は、フィリピン語または英語でなければならない。
関連記事:
「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17565/
「フィリピンにおける実用新案登録出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17567/
「日本とフィリピンにおける特許出願書類の比較」(2015.09.04)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/9413/
4.グレースピリオド
知的財産法第25条に規定されるように、当該出願の出願日または優先日の前12月の間における当該出願に含まれている情報の開示は、(1) その開示が当該発明者によってなされた場合、(2) 特許庁によってなされ、当該情報が、当該発明者がした別の出願に記載され、かつ、当該庁によって開示されるべきではなかったかまたは当該発明者から直接または間接に当該情報を得た第三者により当該発明者の認識もしくは同意なしになされた出願に記載されている場合、または、(3) その開示が当該発明者から直接または間接に当該情報を得た第三者によってなされた場合に該当するときは新規性を失わないものとする。
関連記事:
「フィリピンにおける特許発明の新規性喪失の例外」(2017.06.01)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/13772/
5.審査および年金制度について
5-1.特許出願の実体審査
知的財産法第48条に規定されるように、特許出願の実体審査の請求書は、対応する手数料とともに、特許出願の出願公開の日から6月以内に提出されなければならない。
5-2.早期審査(優先審査)
5-2-1.特許審査ハイウェイ
フィリピン知的財産庁は、日本国特許庁(JPO)、米国特許商標庁(USPTO)、韓国特許庁(KIPO)、欧州特許庁(EPO)と、特許審査ハイウェイプログラムを実施している。
フィリピン知的財産庁において特許審査ハイウェイを申請するためには、特許審査ハイウェイのリクエストフォーム、当該リクエストフォームに含まれているクレーム対応表、ガイドラインに記載されている他の関連文書を提出する必要がある。
5-2-2. ASEAN特許審査協力プログラム
ASEAN特許審査協力プログラム(以下「ASPECプログラム」という。)は、参加地域の特許庁間で特許調査および審査結果を共有することによって業務の効率化を図る制度であり、加盟国は、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイおよびベトナムの9か国である。
ASPECプログラムを申請するためには、ASPECリクエストフォームおよびクレーム対応表と、ASPECプログラムに参加する知財庁の対応する出願における、少なくとも1つのクレームが許可または特許可能であることを示す、特許付与、または、サーチおよび審査の結果を提出する必要がある。
5-3.出願の維持
特許維持年金(Philippine Pesos)
(参照:フィリピン知的財産庁より「SCHEDULE OF FEES ON PATENTS」https://www.ipophil.gov.ph/services/schedule-of-fees/patents/)
年度(公開日より) | 小規模企業 | 大規模企業 |
5 | 1,550.00 | 3,240.00 |
6 | 2,000.00 | 4,320.00 |
7 | 2,580.00 | 5,400.00 |
8 | 3,100.00 | 6,480.00 |
9 | 4,140.00 | 8,640.00 |
10 | 5,170.00 | 10,800.00 |
11 | 6,670.00 | 13,920.00 |
12 | 8,280.00 | 17,280.00 |
13 | 9,770.00 | 20,400.00 |
14 | 11,900.00 | 24,840.00 |
15 | 13,970.00 | 29,160.00 |
16 | 15,980.00 | 33,360.00 |
17 | 18,050.00 | 37,680.00 |
18 | 21,670.00 | 45,240.00 |
19 | 26,040.00 | 54,360.00 |
20 | 31,222.00 | 65,160.00 |
請求項の数が5を超える場合の1請求項毎の追加料金 | 210.00 | 420.00 |
関連記事:
「フィリピンにおける特許審査ハイウェイの実効性に関する調査研究」(2020.03.17)
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「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17565/
「フィリピンにおける特許年金制度の概要」(2018.10.18)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15971/
「フィリピン知的財産権庁の特許審査体制」(2018.08.21)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15666/
「フィリピンにおける特許権早期取得のテクニック」(2016.05.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/11186/
「日本とフィリピンにおける特許審査請求期限の比較」(2015.08.28)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/9372/
「ASEAN特許審査協力(ASPEC)プログラム」(2022.07.26)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/24171/
6.特許出願から登録までのフローチャート
6-1.特許出願から登録までのフローチャート
6-2.フローチャートに関する簡単な説明
特許出願後、知的財産法第42条および特許審査マニュアル2.1に規定されるように方式審査が行われ出願日が付与される。知的財産法第44条および第47条に規定されるように出願日または優先日から18月後、特許出願は、公衆の人々が発明の特許性についての所見を申し立てることができるようにするために、フィリピン知的財産庁の公報に公開される。特許性についての所見が申し立てられた場合、出願人にはその旨が通知され、出願人は見解を述べることができる。
次に、知的財産法第48条に規定されるように特許出願の公開から6月以内に、出願人は所定の手数料を納付して審査請求を行う。これにより特許出願が実体審査される。審査官が拒絶理由を発見した場合、拒絶理由が通知される。知的財産法第50条に規定されるように審査官が拒絶理由を発見しないか、拒絶理由通知に対する出願人の応答によって拒絶理由が解消した場合、すべての手数料を所定の期間内に納付することを条件に特許が付与される。知的財産法第52条に規定されるように特許の付与は、他の関連する情報とともに公報によって公示される。
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「フィリピン知的財産権庁の特許審査体制」(2018.08.21)
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[権利設定前の争いに関する手続]
7.拒絶査定不服申立
2022 年特許・実用新案・意匠に関する改正施行規則(以下、施行規則という。)913に規定されているように、第2回目またはその後の審査もしくは審理において、審査官は拒絶または異論が確定されたと宣言することができる。その際の出願人の応答は、クレームの拒絶の場合は、局長に対し不服申立を行うことができる。クレームの拒絶を伴わない異論の場合は、局長に申請することができる。
また、施行規則905に規定されているように、出願人は、拒絶の確定通知の郵送日から2月以内(延長不可)に、特許局長へ不服申立を行うことができる。
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8.権利設定前の異議申立
施行規則803に規定されるように、特許出願の公開日または出願人が行った実体審査請求の日のいずれか遅い期日から6月以内に、何人も、関連先行技術を引用して、新規性、進歩性、産業上の利用可能性に関する事項を含む、その発明の特許性について、書面により意見を表明することができる。出願人は、当該意見について見解を述べることができる。意見、見解、協議における討議は、当該特許出願の審査において考慮される。
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9.上記7の判断に対する不服申立
施行規則1308および1309に規定されるように、特許局長の決定が審査官による拒絶を支持する場合、出願人は特許局長の決定を受領してから1月以内であれば長官に不服申立できる。不服申立人は、不服申立の通知の提出日から30日以内に、その不服申立を維持するための論拠および主張の準備書面を提出する。
また、施行規則1311に規定されるように、特許局長の決定を覆し出願を認める長官の決定は、直ちに確定される。これに対して、知的財産庁長官の決定が出願を拒絶する特許局長の決定を支持する場合、出願人は、15日以内に上訴裁判所へ上訴することができる(不服申立てに関する改正統一法(庁命令No.41/2020年)11条)。
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[権利設定後の争いに関する手続]
10.権利設定後の異議申立
権利設定後の異議申立制度はない。
11.設定された特許権に対して権利の無効を申し立てる制度
当事者系手続に関する規則3第1条(a)に規定されるように、利害関係人は、発明としてクレームされているものが特許性を有していないものであること、特許が当該技術の熟練者が実施することができる程十分に明確かつ完全な方法では当該発明を開示していないこと、特許が公序良俗に反すること、または特許に出願当時の出願に記載された開示の範囲にない事項が含まれていることを理由として、特許またはその何れかのクレームもしくはクレームの一部の取消を申請することができる。
また、当事者系手続に関する規則3第1条(b)に規定されるように、裁判所の最終命令または決定により特許について権利を有すると宣言された者は、決定が確定した後3月以内に、既に発行されている特許の取消を求めることができる。
申請書は書面によるものでなければならず、認証され、かつフォーラムショッピング(申請者に有利な管轄地の選択)がないことの証明書(certification of non-forum shopping)が添付されていなければならない。申請者は、記録されている被申請者または代表者/代理人への送達の証明とともに、申請書の原本のみを提出する。申請書には、次のものが記載されている必要がある。
(1) 申請者、および被申請者を含むその他の当事者の氏名および住所
(2) 取消を求められた特許、実用新案の登録番号、登録者の名称、および登録日
(3) 申請者の1つまたは複数の訴因および求められる救済を構成する事実。
申請者は、フィリピンの弁護士の委任状、および適切にマークされた証拠の宣誓供述書、文書または客観的証拠を申請書に添付しなければならず、英語以外の文書については英語の翻訳を添付する必要がある。フィリピン国外で作成された文書については、アポスティーユ(公的認証)されているか、領事認証されている必要がある。
関連記事:
「フィリピンにおける特許、実用新案および意匠の無効手続を管轄する組織並びに統計データ」(2018.08.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/statistics/15646/
12.権利設定後の権利範囲の修正
施行規則1209によると、特許の所有者は、当該特許により与えられている保護の範囲を限定すること、明白な錯誤を訂正しまたは事務的な誤りを訂正すること、および、善意でした錯誤または誤りを訂正することを目的として、特許に変更を施すことを特許局に請求する権利を有する。
また、施行規則1210によると、特許の補正または訂正は、庁の印章により認証されて特許局長が署名した補正または訂正の証明書を伴わなければならず、その証明書は、当該特許証に添付するものとする。補正または訂正は、IPOPHL 電子公報において公告し、庁が交付する特許の謄本は、補正または訂正の証明書の謄本を含むものとする。
13.その他の制度
特許権侵害事件において、被告は、特許が無効であるという答弁または反訴を行うことができる。フィリピン知的財産庁より発行された特許証は、矛盾するか、同じものが無効の方法で発行されたことを示す他の証拠によって克服されない限り、有効であると推定される。
関連記事:
「フィリピンにおける知的財産権エンフォースメント」(2020.01.21)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/18187/
「フィリピンにおける産業財産権侵害対策」(2013.09.27)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/4462/
韓国における特許制度のまとめ-手続編
1.出願に必要な書類
(1) 特許出願をする場合には、特許出願書、明細書、必要な図面及び要約書等を提出しなければならない(特許法第42条第1項及び第2項)。
(2) 個別委任状と包括委任状のうち、どちらか一つを提出しなければならない。
関連記事:「韓国における特許・実用新案出願制度概要」(2022.11.01)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/26894/
2.記載が認められるクレーム形式
(1) 認められるクレーム形式
・多項制を採択しており、独立項と従属項を区分し記載する。
・プログラムの場合、“プログラムを記録した記録媒体”、“記録媒体に保存されたコンピュータプログラム(アプリケーション)”の形式が認められる。
(2) 認められないクレーム形式
・請求項の従属項の記載方法に関して、2以上の項を引用した請求項は、その請求項の引用された項が、更に2以上の項を引用する方式(マルチ-マルチクレーム)で記載することができない(特許法第42条第8項及び特許法施行令第5条第6項)。
・コンピュータプログラム言語自体、コンピュータプログラム自体、単純な情報が提示されたデータ、信号等は認められない。
関連記事:「韓国における特許出願の請求項の記載方式」(2013.03.01)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/2406/
関連記事:「韓国におけるコンピュータソフトウエア関連発明等の特許保護の現状および出願実務について」(2019.01.10)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16383/
3.出願の言語
特許出願に関する書類は原則として韓国語で記載しなければならない(特許法施行規則第11条)が、明細書及び図面(図面中の説明部分に限る。)については、英語で記載して提出することができる(特許法第42条の3第1項)。
ただし、英語で特許出願をした場合には、出願日(最優先日)から1年2か月になる日まで明細書及び図面(図面中の説明部分に限る。)の韓国語翻訳文を提出しなければならない(特許法第42条の3第2項)。
関連記事:「韓国における特許・実用新案出願制度概要」(2022.11.01)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/26894/
4.グレースピリオド
特許を受けることができる権利を有する者の発明が、特許を受けることができる権利を有する者によって公知等がされている場合、または特許を受けることができる権利を有する者の意思に反して公知等がされた場合には、その日から12か月以内に特許出願をすれば特許出願された発明に対して新規性及び進歩性を適用する際に、その発明は公知等がされていないものとみなす(特許法第30条)。
関連記事:「韓国の特許・実用新案出願における新規性喪失の例外規定」(2017.07.13)
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5.審査
(1) 実体審査
特許出願は、審査請求があるときに限り審査する。審査請求は、誰でもすることができ、審査請求期間は出願日から3年(2017年2月28日以前に特許出願された場合には5年)である(特許法第59条)。
(2) 早期審査(優先審査)
特許出願が出願公開後、第三者の特許出願された発明の無断実施が認められた場合、または以下の事由に該当する出願について優先審査を申請することができる(特許法第61条)。
1)防衛産業分野の特許出願
2)緑色技術(温室ガス減縮技術、エネルギー利用効率化技術、清浄生産技術、清浄エネルギー技術、資源循環および親環境技術(関連融合技術を含む)等、社会・経済活動の全過程にわたり、エネルギーと資源を節約して効率的に使用し、温室ガス及び汚染物質の排出を最小化する技術を言う)と直接関連した特許出願
2の2)人工知能またはモノのインターネット(IoT)等、第4次産業革命と関連した技術を活用した特許出願
3)輸出促進に直接関連する特許出願
4)国家または地方自治団体の職務に関する特許出願
5)ベンチャー企業の認定を受けた企業の特許出願
5の2)技術革新型中小企業として選定された企業の特許出願
5の3)職務発明補償優秀企業として選定された企業の特許出願
5の4)知識財産経営認証を受けた中小企業の特許出願
6)「科学技術基本法」による国家研究開発事業の結果物に関する特許出願
7)条約による優先権主張の基礎となる特許出願
7の2)特許庁が「特許協力条約」に基づく国際調査機関として国際調査を遂行した国際特許出願
8)特許出願人が特許出願された発明を実施しているか、実施準備中である特許出願
9)電子取引と直接関連した特許出願
10)特許庁長が外国の特許庁長と優先審査することに合意した特許出願
11)優先審査の申請をしようとする者が特許出願された発明に関して調査・分類専門機関のうち、特許庁長が定めて告示した専門機関に先行技術の調査を依頼した場合であって、その調査結果を特許庁長に通知するよう、該専門機関に要請した特許出願
12)65歳以上の者、または健康に重大な異常がある者がした特許出願
※IP5 PPH、グローバルPPH、PCT-PPH等が利用可能である。
(3) 出願を維持するための料金:不要
関連記事:「韓国における審査官の職権再審査制度」(2018.10.02)
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関連記事:「韓国特許庁の審査体制」(2018.07.03)
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関連記事:「韓国における特許・実用新案の審査請求の留意点」(2022.11.29)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/27192/
関連記事:「韓国における審査官との面談(または電話面接)」(2023.04.13)
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関連記事:「韓国における改正特許審査指針書の概要」(2016.02.23)
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6.出願から登録までのフローチャート
(1) 出願から登録までの特許出願のフローチャート
(*) 海外からの出願は、特許法第15条第1項の「交通が不便な地域」に相当するため、2回の延長が可能である。しかし、韓国国内からの出願は「交通が不便な地域」に相当する場合と相当しない場合があり、相当しない場合は1回しか認められない(特許法第15条第1項、実用新案は実用新案法第3条で準用、審判便覧第13編第2章第3節)。
(2)フローチャートに関する簡単な説明
i) 特許決定(査定)の謄本を送達するまで明細書または図面を自発補正することができるが、意見提出通知書(拒絶理由通知)が送達された場合には、意見書の提出期間にのみ補正をすることができる(特許法第47条第1項)。
ii) 意見提出通知書(拒絶理由通知)に対する意見書提出期限は、通知書の発送日から2か月であるが、4か月までの期間延長を申請することができる。期間延長は1か月単位で4回まで、または、必要であれば4か月を超過しない範囲で2か月以上を一括して申請することができる。さらにまた、やむを得ない事由の発生で4か月を超過して指定期間の延長を受けようとする場合には、その事由を記載した疎明書を添付して延長申請をする必要がある(特許法施行規則第16条、特許・実用新案審査事務取扱規定第23条)。
iii) 拒絶決定(査定)謄本の送達を受けた後、補正書を提出し再審査を請求すること(特許法第67条の2)、補正をせずに拒絶決定(査定)不服審判を請求することができる(特許法第132条の17)。再審査を請求した後、再拒絶決定(査定)を受けた場合には、再審査を請求することができず、補正なく拒絶決定(査定)不服審判を請求することができる。
iv) 拒絶決定(査定)謄本の送達を受けた日から3か月以内に再審査請求または拒絶決定(査定)不服審判を請求することができ、上記期間は30日ずつ2回の期間延長を申請することができる(特許法第15条第1項、同第186条第5項、特許法施行規則第16条第4項、同第16条第5項)。
v) 拒絶決定(査定)不服審判の棄却審決の後、審決の謄本の送達を受けてから30日以内に、拒絶されていない請求項のみを分離して出願(分離出願)することができる(特許法第52条の2)。
vi) 特許決定(査定)の謄本を受け取ったら、謄本を受けた日から3か月以内に最初の3年分の特許料を納付しなければならない(特許法第79条、特許料等の徴収規則第8条)。特許料納付期間が経過した後、6か月以内に追納することができるが、追納期間内にも納付しなければ特許出願は放棄したものとみなす(特許法第81条第3項)。
関連記事:「韓国における特許・実用新案出願制度概要」(2022.11.01)
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関連記事:「韓国での特許出願における拒絶理由通知に対する対応」(2013.10.08)
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[権利設定前の争いに関する手続]
7.拒絶決定(査定)に対する不服
特許出願の拒絶決定(査定)に不服がある場合に、決定謄本の送達を受けてから3か月以内に特許審判院に拒絶決定(査定)不服審判を請求することができる(特許法第132条の17)。
関連記事:「韓国における特許出願の拒絶査定不服審判請求時の留意点」(2023.02.14)
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8.異議申立制度
権利設定前の異議申立制度はない。しかし、特許出願が公開された後であれば、その特許出願に関して誰でも拒絶理由に該当し特許されることができないという旨の情報を証拠とともに特許庁長に提供することができる(特許法第63条の2)。
9.上記7の審決に対する不服
特許審判院の審決に対して不服がある場合には、特許法院に訴え(審決取消訴訟)を提起することができる(特許法第186条第1項)。
また、特許法院の判決に不服がある場合には、判決が法令に違反したことを理由に大法院へ上告することができる(特許法第186条第8項)。
関連記事:「韓国における特許・実用新案・商標・意匠の審決取消訴訟制度概要」(2023.04.13)
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[権利設定後の争いに関する手続]
10.権利設定後の異議申立
誰でも、特許権の設定登録日から登録公告日後6か月になる日まで、その特許が特許取消事由に該当する場合、特許審判院に特許取消申請をすることができる(特許法第132条の2第1項)。
特許取消申請の事由は、産業上の利用可能性、国内外の頒布された刊行物等による新規性、進歩性及び先願主義の違反等がある(特許法第132条の2第1項各号)。
関連記事:「韓国における特許取消申請について」(2020.11.12)
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11.設定された特許権に対して、権利の無効を申し立てる制度(無効審判)
利害関係人または審査官は、設定登録された特許権が無効事由に該当する場合、特許審判院に無効審判を請求することができる(特許法第133条第1項)。
無効事由:特許法第25条、第29条、第32条、第36条第1項から第3項、第42条第3項第1号または第4項、第33条第1項、第44条、第47条第2項前段、第52条第1項、第53条第1項、条約違反
関連記事:「韓国における特許無効審判の口頭審理(期日・場所の決定、争点整理など)」(2018.01.09)
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12.権利設定後の権利範囲の訂正審判
特許権者は、請求の範囲を減縮する場合、誤って記載された事項を訂正する場合、または明確に記載されていない事項を明確にする場合に、明細書または図面について特許審判院に訂正審判を請求することができる(特許法第136条第1項)。
特許取消申請、特許無効審判または訂正の無効審判が特許審判院に係属中である場合には、訂正審判を請求することができないが(特許法第136条第2項)、このときは訂正請求制度を利用して、補正が可能である(特許法第132条の3、第133条の2、第137条第3項及び第4項)。
関連記事:「韓国における補正および訂正に関連する制度ならびにその利用実態」(2018.01.16)
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13.その他の制度
・特許決定(査定)の謄本の送達を受けた日から3か月以内の期間内(特許料納付前)に分割出願が可能である(特許法第52条第1項第3号)。
・特許拒絶決定(査定)不服審判の審判請求が棄却された場合、審決の謄本の送達を受けた日から30日以内に、その特許出願の一部を新たな特許出願とする分離出願制度がある(特許法第52条の2)。
関連記事:「韓国における特許分割出願制度の活用と留意点」(2022.12.08)
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関連記事:「日本と韓国における特許分割出願に関する時期的要件の比較」(2022.11.01)
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ブラジルにおける特許制度のまとめ-手続編
ブラジルで特許を出願するために必要な書類は、以下のとおり。
1-1. 必須書類
書類 | 説明 |
要約 | 発明の主な特徴を記載した簡潔なテキストである。 |
明細書 | 出願(発明)の詳細な説明を含む書類である。 |
特許請求の範囲 | 出願(発明)のクレームを含む書類である。 |
1-2. 場合によっては必須となる書類
書類 | 説明 |
図面 | 図面を含む書類であり、実用新案の場合は必須である。 |
生物学的資料の受領書 | ブラジル産業財産庁(INPI)の認定機関に生物学的試料(微生物等)を提出したことを証明する文書であり、生物学的資料を含む場合は必須である。 |
優先権書類 | 加盟国からの優先権の場合、出願人は、出願日から180日以内に、以下の事項を含む書類を提出しなければならない。 ・特許または実用新案出願の第一国名または機関名 ・特許または実用新案の番号および出願日 ・明瞭な翻訳文付きの特許または実用新案出願のコピー 譲渡により優先権を得た場合は、対応書類を添付し、優先権を証明する書類とともに提出しなければならない。 PCT出願の場合、翻訳文および譲渡証書の提出期限は、国内段階の開始日から60日である。 ブラジル国内もしくは国外の同一出願人による優先権主張出願またはPCT出願の場合は必須である。 |
グレースピリオドの宣言 | 出願日前12月以内に発明が公開されたことを証明する書類である。 出願前に発明が公開されたことを出願人が明示する場合は必須である。 |
発明者・著作者情報非開示宣言書 | 情報の非開示を希望する発明者および出願人・所有者またはその法定代理人が署名する必要がある。秘密保持を希望する発明者ごとの宣言が必要である。発明者が複数いる場合、必ずしも全員が非開示を希望しなければならないわけではなく、そのうち1名のみが希望できることに留意されたい。 発明者が自分の情報の非開示を希望する場合は必須である。 |
代理契約 | 申請者がブラジルに居住している自然人でない場合は、出願を行う代理人(または代理行為を行う委任状による代理人)が必要である。 |
譲渡書類 | ブラジルでの権利者を明確にするための書類である。INPIに出願した者と権利者が異なる場合、優先権主張の譲渡書類を送付する際に使用する。 権利を譲渡した場合は必須である。 |
委任状 | 委任状はポルトガル語で作成し、他の言語で作成されている場合は、翻訳文を送付する必要があるが、領事による公証は要求されない。委任状は、ブラジルでの最初の手続から60日以内に提示しなければならない。 委任状による出願および/または代理人による出願の場合は必須である。 |
1-3. オプション
書類 | 説明 |
手数料納付領収書 | 出願手数料の支払証明書の提示は必須ではなく、電子出願様式では支払いに関して納付書番号(GRU)を提示する*。 |
労働契約 | 使用者と発明者の間の労働関係を明確にする契約である。 |
*:【ソース】「発明・実用新案・追加特許の特許保護に関する基本的マニュアル5.5.2 電子出願様式へのアクセス」参照
関連記事:
「ブラジルにおける特許・実用新案出願制度概要」(2019.10.21)
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「ブラジルにおける特許出願制度」(2013.09.20)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/3987/
「ブラジルにおける知的財産の保護方法に関する基本情報」(2020.02.06)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/18254/
「日本とブラジルにおける特許出願書類・手続の比較」(2019.09.26)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17742/
「ブラジルにおける特許・実用新案登録出願の優先権主張の手続」(2020.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/19360/
「ブラジルにおけるパリルート出願とPCTルート出願の手続きの相違点」(2016.05.18)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/11204/
「ブラジルにおける特許制度の運用実態」(2015.12.01)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/10060/
2. 記載が認められる/認められないクレーム形式
2-1. 記載が認められるクレーム形式
特許請求の範囲の文言については、「特許出願の明細書に関する産業財産法-1996年5月14日法律第9279号の規定の説明および遵守のための手続通則」(以下、手続通則という)に規定されている。
2-1-1. 手続通則第4条の概要
クレームの文言に関して、手続通則第4条には、以下の事項が規定されている。
・書き出しは、カテゴリーに対応する名称またはその一部で始まることが好ましい。
・「…ことを特徴とする」という記載を、1回だけ必ず含まなければならない。
・保護される技術的特徴を、明確かつ正確に、積極的に定義しなければならない。
・発明の詳細な説明において完全にサポートされなければならない。
・明細書や図面への言及を含んではならない。
・理解に必要な場合は括弧書きで図面の参照符号を記載すべきだが、これに限定されない。
・ピリオドによる中断なしに(一文で)記載しなければならない。
・説明記載(対象物の利点・簡単な使用方法)を含めてはならない。
2-1-2. 手続通則第5条の概要
独立請求項に関して、手続通則第5条には、以下の事項が規定されている。
・発明に特有かつ本質的な技術的特徴を発明の全体的概念において保護することを目的とする。
・各独立請求項は発明の実施形態に必須な特徴の一つの組み合わせに対応し、同一カテゴリーの複数の独立請求項は、同一の発明概念で関連する、発明の実施形態に必須な特徴の別の組み合わせを定義する場合にのみ認められる。
・カテゴリーが異なる関連する独立請求項の書き出しは、「請求項Xに規定の方法を実施するための装置」のような表現で関連を強調するように記載しなければならない。
・独立請求項は書き出しと「…ことを特徴とする」という記載との間に、発明の定義に不可欠な技術水準を表現する前文を必要に応じて含めるべきである。
・「…ことを特徴とする」という記載の後、請求項は、前文で述べられた側面との組合せにより保護される本質的かつ特定の技術的効果を明記すべきである。
・独立請求項は、1以上の従属請求項の基礎となり、カテゴリーで分けなければならない。
2-1-3. 手続通則第6条の概要
従属請求項に関して、手続通則第6条には、以下の事項が規定されている。
・単一性を維持しつつ他の従前の請求項の特徴の詳細・追加の特徴を規定し、引用する請求項を明示し「…ことを特徴とする」という記載を含まなければならない。
・従属する請求項の特徴の範囲を越えてはならない。
・引用関係は正確かつ理解可能に規定すべきであり、「前の請求項のいずれかにおいて…」(択一的引用)は認められるが「前の請求項おいて…」(非択一的引用)は認められない。
・複数の請求項を引用する請求項(マルチクレーム)は、引用関係から生じるすべての組み合わせを直ちに理解できるような代替または追加形式により引用しなければならない。
・マルチクレームは、引用関係から生じるすべての組み合わせを直ちに理解できるような代替または追加形式により他のマルチクレームの基礎とすることができる。
・マルチクレームは、引用構造を簡潔にする方法でグループ化されなければならない。
2-2. 記載が認められないクレーム形式
INPIは、発明とみなされない主題のクレームを認めない(産業財産法第10条)。
・発見、科学理論、数学的方法。
・純粋に抽象的な概念。
・商業、会計、金融、教育、出版、宝くじまたは財政力の仕組み、計画、原則または方法。
・文学、建築、美術、科学の著作物またはあらゆる審美的創作物。
・コンピュータ・プログラムそれ自体。
・情報の提供。
・ゲームのルール
・人体または動物に用いるための手術または外科技術および治療または診断方法。
・自然の生物の全部または一部、自然界において発見またはそこから分離された場合に、自然の生物のゲノムまたは染色体と遺伝子を含む胚細胞の原形質を含む生物学的材料ならびに自然の生物学的方法。
コンピュータ・プログラムは、コンピュータ・プログラムが実装された産業上の創造物(方法または方法関連製品)で、既存技術の問題を解決しかつコンピュータ・プログラムの記述方法のみに関係するものでない場合は、発明と判断される可能性がある。
審査基準で認められている医薬用途クレームは、スイス型クレームである(第II部1.29)。
関連記事:
「ブラジルにおけるコンピュータソフトウエア関連発明等の特許保護の現状」(2019.01.15)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16389/
「ブラジルにおける医薬用途発明の保護制度」(2018.03.20)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/14724/
3. 出願の言語
登録出願を構成する書類は、産業財産法第101条補項に規定のとおり、ポルトガル語で提出されなければならない。
4. グレースピリオド
ブラジルでは、産業財産法第12条に規定のとおり、12月の猶予期間が設けられている。
5. 審査
5-1. 実体審査
ブラジルでは、産業財産法第33条に規定のとおり、出願日から36月以内に審査請求をしなければならない。
5-2. 早期審査(優先審査)
ブラジルでは、ファストトラック審査が可能であり、現在のファストトラック審査請求ルートは以下のとおりにまとめられる。
5-2-1. 係属中の特許出願の早期審査の主要な可能性
・特許審査ハイウェイ(PPH):連携する特許庁において特許が許可/付与されたと認められる主題を対象とする出願。特に米国、中国、欧州、日本、英国など。
・がん、エイズ、放置された希少疾病に対する治療法を対象とする出願。
・ブラジル市場で入手可能な技術を対象とする出願。
・第三者が無断で複製した主題を対象とする出願。
・代替エネルギー、輸送、省エネルギー、廃棄物管理、持続可能な農業など「グリーン技術」の保護を求める出願。
5-2-2. 係属中の特許出願の早期審査のその他の可能性
・COVID-19の診断、予防、治療のために医療で使用される医薬品、製薬方法ならびに機器および/または材料に関連する発明。
・政府が資金提供する活動に由来する発明、および政府が支援する団体による出願。
・ブラジルにおいて優先権を主張する出願。
・実施されている発明の出願。
・新興企業、中堅・中小企業による出願。
・申請者の年齢を満たす出願(60歳以上)、身体・精神障害に基づく基準を満たす出願。
5-3. 出願を維持するための手数料
ブラジルでは、産業財産法第84条に規定のとおり、出願日から3年目の初めから年金を支払わなければならない。
関連記事:
「ブラジルにおける特許審査ハイウェイの実効性に関する調査研究」(2020.02.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/18317/
「ブラジルにおける特許の早期権利化の方法」(2017.07.20)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/13911/
「ブラジルでの特許審査迅速化および早期特許付与のための手段」(2016.06.30)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/12224/
「ブラジルにおける滞留特許解消の取り組み」(2020.7.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/19358/
「ブラジルにおける特許年金制度の概要」(2018.05.10)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15047/
6. 出願から登録までのフローチャート
6-1. 出願から登録までの特許出願のフローチャート
ブラジルの特許審査は、以下のとおりであり、実線の矢印は必須の経路、点線の矢印は必須でない経路を示す。
6-2. フローチャートの簡単な説明
フローチャートの起点は、ブラジルにおける出願の最初の提出である。
最初の提出の後、最初のステップの処理は出願の方式審査であり、INPIが提出された書類について特許出願を受理するための最低条件に適合するか確認する。
処理の第2段階は、出願公開である。規則により、出願は、出願日または最も早い優先日から18月の間、非公開とされる(産業財産法第30条)。
産業財産法第24条補講に規定される場合、生物試料は産業財産法第30条に基づく公表の時点で公開される。産業財産法第30条の規定のとおり、出願人が求めた場合は18月未満で公開されることは極めて重要である。
産業財産法第33条の規定の通り出願日から36月以内に、特許出願の審査請求をしなければならない。審査請求は出願人または第三者により行われる。出願は、この時に初めて技術審査可能となる。
審査の結果、審査官は以下の書類を発行する。
・特許査定:特許出願が特許性の要件をすべて満たしている場合。
・オフィスアクション:付与のために出願を再修正すべき場合。
・拒絶理由:出願が特許性要件(新規性、進歩性、産業上の利用可能性)を満たさない場合、または出願が特許適格性に適合しない場合(例えば、特許不適格な主題に関する場合)。
オフィスアクションまたは拒絶理由の場合、その通知から90日以内に応答しなければならない。例外的ではあるが、特許審査官は、特許出願の付与決定または拒絶査定の前の審査の過程で、複数のオフィスアクションまたは拒絶理由を発する場合がある。
拒絶査定が出された場合、査定が出されてから60日以内に審判を請求することができる。義務ではないが、INPIは、審判段階でオフィスアクションを発することができる。
関連記事:
「日本とブラジルの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較」(2015.06.05)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/9320/
「ブラジルの特許・実用新案のオフィスアクション対応に係る書類等の調べ方」(2014.01.31)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/etc/5174/
「ブラジルにおける特許出願から特許査定までの期間の現状と実態に関する調査」(2018.01.18)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/14432/
「ブラジルにおける特許審査での審査官面接」(2018.07.05)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/15386/
「ブラジル知財庁の特許審査体制」(2018.06.05)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15321/
[権利設定前の争いに関する手続]
7. 拒絶査定不服審判
ブラジルの審判段階の一般的な手続きは、以下のとおり。
・審判は、拒絶した審査官とは別の審判官によって審理される。審判の決定により行政段階(INPIのレベル)が終了し、以後の手続は裁判所でのみ可能となる。
・ブラジルでは「審判請求書」のような、正式な申立書だけを提出する規定はない。現在の規定では、すべての主張と可能な補正書/書類を審判請求書と一緒に提出しなければならない。
審判請求に関する一般規定は、産業財産法第212条および第214条に記載されている。
関連記事:
「ブラジルにおける特許出願から特許査定までの期間の現状と実態に関する調査」(2018.01.18)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/14432/
8. 権利設定前の異議申立
利害関係人は、「審査の終了」まで審査を補助することができる。すなわち、産業財産法第31条には、「審査補助のための書類および情報が、出願公開から審査終了までの間に利害関係人により提出される場合がある。」と規定されている。さらに、利害関係人は、出願人による審判請求(拒絶査定不服審判)に対して、反論を提出する機会が与えられる(産業財産法第213条)。
関連記事:
「ブラジルの特許・実用新案の登録証その他関連書類の入手方法」(2019.06.20)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/etc/17457/
9. 上記7.の判断に対する不服申立
審判は、拒絶した審査官とは別の審判官によって審理される。
審判の決定により行政段階(INPIのレベル)が終了し、以後の手続は裁判所でのみ可能となる。すなわち、産業財産法第215条には、「審判請求についての決定は、最終決定であり、これに対しては、行政手続きによる不服申し立てをすることはできない。」と規定されている。
[権利設定後の争いに関する手続]
10. 権利設定後の異議申立
権利設定後の異議申立制度はない。
11. 特許を無効にする制度
産業財産法第50条および第51条の規定のとおり、利害関係のある第三者は、特許付与から6月の間に、特許の無効審判を請求することができる。
また、ブラジルでは無効訴訟を起こすこともできる。すなわち、産業財産法第56条および第57条の規定のとおり、正当な利害関係を有する者は、特許存続期間中はいつでも、無効訴訟を起こすことができる。
12. 権利設定後の権利範囲の訂正
特許付与後の自発的な訂正に関する規定は存在しない。特許付与後の請求項は、無効審判または裁判所の判決により特許の一部が無効となった場合にのみ訂正でき、訂正は、通常、は請求項の結合による方法により行われる。
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「ブラジルの特許・実用新案関連の法律、規則、審査基準等」(2019.02.12)
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「ブラジルにおける特許出願の補正の時期的・内容的制限について」(2014.6.27)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/6065/
「ブラジルの法令へのアクセス方法―法情報ポータルサイト」(2019.9.24)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17729/
「ブラジルの知的財産権の法令および審査基準へのアクセス方法」(2019.08.29)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17652/
フィリピンにおける特許制度のまとめ-手続編
1. 出願に必要な書類
知的財産法第32条、第108条第1項に規定されるように、特許出願や実用新案登録出願は、フィリピン語または英語でなければならず、かつ、特許の付与を求める願書、発明の明細書、発明の理解に必要な図面、1以上のクレーム、要約を含まなければならない。
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「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17565/
「フィリピンにおける実用新案登録出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17567/
「日本とフィリピンにおける特許出願書類の比較」(2015.09.04)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/9413/
2. 記載が認められるクレーム形式
発明に関する規則415(d)に規定されるように、クレームは、明細書に記載する発明と一致しなければならない。また、クレームで用いる語句については、明細書中に明確な裏付または先例を記載して、当該明細書を参照することによりクレームの用語の意味を確認することができるようにしなければならない。絶対に必要な場合を除き、発明の技術的特徴に関してクレームが明細書または図面を引用することがあってはならない。特に、「明細書第xxx部に記載したように」または「図面第xxx図に例示したように」等の引用をしてはならない。
また、発明に関する規則415(c)に規定されるように、多項従属クレーム(マルチクレーム)は、他の多項従属クレームの基礎としてはならない。
また、発明に関する規則416に規定されるように、適切な場合、クレームには次の(a)~(c)のものを含める。
(a)発明の主題を指定する記述、およびクレームする主題の定義のために必要とするが、組み合わせると先行技術の一部をなす技術的特徴を示す文言
(b)(a)にいう特徴との組合せで保護を求める技術的特徴を、「を特徴とする」または「によって特徴付けられる」との表現を先行させて記述した特徴付けの部分、および
(c)出願に図面が含まれる場合に、クレームを理解しやすくするときは、クレームに記載した技術的特徴の後に、これらの特徴と関連付ける参照記号を括弧に入れて付すことが望ましい。これらの参照記号は、クレームを限定するとは解されない。
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「フィリピンにおけるコンピュータソフトウエア関連発明等の特許保護の現状」(2019.01.17)
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「フィリピンにおけるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの解釈について」(2017.05.25)
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3. 出願の言語
知的財産法第32条、第108条第1項に規定されるように、特許出願や実用新案登録出願は、フィリピン語または英語でなければならない。
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「フィリピンにおける実用新案登録出願制度概要」(2019.07.23)
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「日本とフィリピンにおける特許出願書類の比較」(2015.09.04)
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4. グレースピリオド
知的財産法第25条に規定されるように、当該出願の出願日または優先日の前12月の間における当該出願に含まれている情報の開示は、(1)その開示が当該発明者によってなされた場合、(2)特許庁によってなされ、当該情報が、当該発明者がした別の出願に記載され、かつ、当該庁によって開示されるべきではなかったかまたは当該発明者から直接または間接に当該情報を得た第三者により当該発明者の認識もしくは同意なしになされた出願に記載されている場合、または、(3)その開示が当該発明者から直接または間接に当該情報を得た第三者によってなされた場合に該当するときは新規性を失わないものとする。
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「フィリピンにおける特許発明の新規性喪失の例外」(2017.06.01)
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5. 審査
5-1. 実体審査
知的財産法第48条に規定されるように、実体審査の請求書は、対応する手数料とともに、特許出願の出願公開の日から6月以内に提出されなければならない。
5-2. 早期審査(優先審査)
5-2-1. 特許審査ハイウェイ
フィリピン知的財産庁は、日本国特許庁(JPO)、米国特許商標庁(USPTO)、韓国特許庁(KIPO)、欧州特許庁(EPO)と、特許審査ハイウェイプログラムを実施している。
フィリピン知的財産庁において特許審査ハイウェイを申請するためには、特許審査ハイウェイのリクエストフォーム、当該リクエストフォームに含まれているクレーム対応表、ガイドラインに記載されている他の関連文書を提出する必要がある。
5-2-2. ASEAN特許審査協力プログラム
ASEAN特許審査協力プログラム(以下「ASPECプログラム」という。)は、参加地域の特許庁間で特許調査および審査結果を共有することによって業務の効率化を図る制度であり、加盟国は、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイおよびベトナムの9か国である。
ASPECプログラムを申請するためには、ASPECリクエストフォームおよびクレーム対応表と、ASPECプログラムに参加する知財庁の対応する出願における、少なくとも1つのクレームが許可または特許可能であることを示す、特許付与、または、サーチおよび審査の結果を提出する必要がある。
年度(公開日より) | 小規模企業 | 大規模企業 |
5 | 1,550.00 | 3,240.00 |
6 | 2,000.00 | 4,320.00 |
7 | 2,580.00 | 5,400.00 |
8 | 3,100.00 | 6,480.00 |
9 | 4,140.00 | 8,640.00 |
10 | 5,170.00 | 10,800.00 |
11 | 6,670.00 | 13,920.00 |
12 | 8,280.00 | 17,280.00 |
13 | 9,770.00 | 20,400.00 |
14 | 11,900.00 | 24,840.00 |
15 | 13,970.00 | 29,160.00 |
16 | 15,980.00 | 33,360.00 |
17 | 18,050.00 | 37,680.00 |
18 | 21,670.00 | 45,240.00 |
19 | 26,040.00 | 54,360.00 |
20 | 31,222.00 | 65,160.00 |
請求項の数が5を超える場合の1請求項毎の追加料金 | 210.00 | 420.00 |
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「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
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「フィリピンにおける特許年金制度の概要」(2018.10.18)
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「フィリピン知的財産権庁の特許審査体制」(2018.08.21)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15666/
「フィリピンにおける特許権早期取得のテクニック」(2016.05.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/11186/
「日本とフィリピンにおける特許審査請求期限の比較」(2015.08.28)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/9372/
「ASEAN特許審査協力(ASPEC)プログラム」(2014.07.18)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/6142/
6. 出願から登録までのフローチャート
6-1. 出願から登録までの特許出願フローチャート
6-2. フローチャートに関する簡単な説明
特許出願後、まず方式審査が行われる。次に、出願日または優先日から18月後、特許出願は、公衆の人々が発明の特許性についての所見を申し立てることができるようにするために、フィリピン知的財産庁の公報に公開される。特許性についての所見が申し立てられた場合、出願人にはその旨が通知され、出願人は見解を述べることができる。
次に、出願公開から6月以内に、出願人は所定の手数料を納付して審査請求を行う。これにより特許出願が実体審査される。審査官が拒絶理由を発見した場合、拒絶理由が通知される。審査官が拒絶理由を発見しないか、拒絶理由通知に対する出願人の応答によって拒絶理由が解消した場合、出願が許可され、登録料の納付後に特許証が発行される。付与された特許は、公衆の情報のためにフィリピン知的財産庁の公報に公開される。
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「フィリピン知的財産権庁の特許審査体制」(2018.08.21)
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[権利設定前の争いに関する手続]
7. 拒絶査定不服
発明に関する規則913に規定されているように、第2回目またはその後の審査もしくは審理において、審査官は拒絶またはその他の処分を確定することができ、その際の出願人の応答は、クレームの拒絶の場合は不服申立または本規則に定める補正に限られる。クレームの拒絶を伴わない異論または要求の場合は、本規則に規定する通り局長に申請することができる。
また、発明に関する規則905に規定されているように、出願人は、出願の審査の決定が確定した場合、決定通知の郵送日から4月以内に、局長へ申請または不服申立を行うことができる。
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8. 権利設定前の異議申立
知的財産施行規則803に規定されるように、出願の公開日または出願人が行った実体審査請求の日のいずれか遅い期日から6月以内に、何人も、関連先行技術を引用して、新規性、進歩性、産業上の利用可能性に関する事項を含む、その発明の特許性について、書面により意見を表明することができる。出願人は、当該意見について見解を述べることができる。意見、見解、協議における討議は、当該特許出願の審査において考慮される。
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9. 上記7の判断に対する不服申立
知的財産施行規則1308および1309に規定されるように、局長の決定が審査官による拒絶を支持する場合、出願人は局長の決定を受領してから30日以内であれば長官に不服申立できる。不服申立人は、不服申立の通知の提出日から30日以内に、その不服申立を維持するための論拠および主張の準備書面を提出する。
また、知的財産施行規則1311に規定されるように、局長の決定を覆し出願を認める長官の決定は、直ちに確定される。これに対して、長官の決定が出願を拒絶する局長の決定を支持する場合、出願人は、15日以外に上訴裁判所へ上訴することができる。
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[権利設定後の争いに関する手続]
10. 権利設定後の異議申立
権利設定後の異議申立制度はない。
11. 設定された特許権に対して権利の無効を申し立てる制度
当事者系手続に関する規則3第1条(a)に規定されるように、利害関係人は、発明としてクレームされているものが特許性を有していないものであること、特許が当該技術の熟練者が実施することができる程十分に明確かつ完全な方法では当該発明を開示していないこと、特許が公序良俗に反すること、または特許に出願当時の出願に記載された開示の範囲にない事項が含まれていることを理由として、特許またはその何れかのクレームもしくはクレームの一部の取消を申請することができる。
また、当事者系手続に関する規則3第1条(b)に規定されるように、裁判所の最終命令または決定により特許について権利を有すると宣言された者は、決定が確定した後3月以内に、既に発行されている特許の取消を求めることができる。
申請書は書面によるものでなければならず、認証され、かつフォーラムショッピング(申請者に有利な管轄地の選択)がないことの証明書(certification of non-forum shopping)が添付されていなければならない。申請者は、記録されている被申請者または代表者/代理人への送達の証明とともに、申請書の原本のみを提出する。申請書には、次のものが記載されている必要がある。
(1)申請者、および被申請者を含むその他の当事者の氏名および住所
(2)取消を求められた特許、実用新案の登録番号、登録者の名称、および登録日
(3)申請者の1つまたは複数の訴因および求められる救済を構成する事実。
申請者は、フィリピンの弁護士の委任状、および適切にマークされた証拠の宣誓供述書、文書または客観的証拠を申請書に添付しなければならず、英語以外の文書については英語の翻訳を添付する必要がある。フィリピン国外で作成された文書については、アポスティーユ(公的認証)されているか、領事認証されている必要がある。
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12. 権利設定後の権利範囲の修正
発明に関する規則1209によると、特許の所有者は、当該特許により与えられている保護の範囲を限定すること、明白な錯誤を訂正しまたは事務的な誤りを訂正すること、および、善意でした錯誤または誤りを訂正することを目的として、特許に変更を施すことを局に請求する権利を有する。
また、発明に関する規則1210によると、特許の補正または訂正は、庁の印章により認証されて局長が署名した補正または訂正の証明書を伴わなければならず、その証明書は、当該特許証に添付するものとする。補正または訂正は、公報において公告し、庁が交付する特許の謄本は、補正または訂正の証明書の謄本を含むものとする。
13. その他の制度
特許権侵害事件において、被告は、特許が無効であるという答弁または反訴を行うことができる。フィリピン知的財産庁より発行された特許証は、矛盾するか、同じものが無効の方法で発行されたことを示す他の証拠によって克服されない限り、有効であると推定される。
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「フィリピンにおける産業財産権侵害対策」(2013.09.27)
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ロシアにおける特許制度のまとめ-手続編
1. 出願に必要な書類
発明または実用新案に関する出願は、以下を含まなければならない。
・特許付与を求める請求書(願書、弁理士が作成する。)
・クレームされた発明(または実用新案)を実施できるよう十分詳細に開示する明細書
・発明(実用新案)の本質的な特徴を記載し、明細書によって完全に裏付けられた特許請求の範囲
・発明(実用新案)を理解するために必要な図面その他の資料
・要約
(連邦民法第4法典第1375条、第1376条)
出願は、1つの発明のみ、または単一の一般的な発明概念を形成するために関連付けられた一群の発明についてのみ行うことができる(発明の単一性の要件)。実用新案登録出願は、1つの実用新案(1つの独立請求項)についてのみ行うことができる。
(連邦民法第4法典第1375条、第1376条)
出願日は、付与を求める請求書、明細書および明細書に図面の記載がある場合は図面を提出した日に成立するものとする。前述の書類が同時に提出されない場合、出願日は、それらの書類のうち最後のものを受領した日に与えられる。
優先権書類の認証謄本は、優先日から16月以内にロシア特許庁に提出しなければならない。
(連邦民法第4法典第1375条、第1376条、第1382条)
関連記事:
「ロシアにおける優先権主張の手続」(2020.12.24)
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「ロシアにおける特許・実用新案出願制度の概要」(2019.11.12)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17907/
「日本とロシアにおける特許出願書類・手続の比較」(2019.09.17)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17715/
2. 記載が認められるクレーム形式
2-1. クレームの許容される形式
以下の請求項が認められる。
・デバイス(装置・製品)のクレーム
・組成物(化合物)のクレーム
・方法(プロセス)クレーム
・プロダクト・バイ・プロセス・クレーム
・用途クレーム
単一請求項と複数請求項の両方が認められる。請求項は、発明の目的を反映した前文と、発明の特徴を含む本文を含むべきである。本文は、特徴の前提部分と特徴部分から構成されてもよい(義務ではない)。特許請求の範囲は、発明の本質を定義し、明細書によって完全に裏付けられなければならない。発明の単一性の要件を満たせば、複数の独立請求項を記載することができる。
独立請求項の数に制限はない。1つの独立請求項は、1つの発明のみを特定すべきである。代替的特徴(マーカッシュ形式による発明特定事項の記載)は、独立請求項と従属請求項の両方で使用することができる。1つの独立請求項は、1文であるべきである。プロダクト・バイ・プロセス・クレームが許容される。
先行する独立請求項を引用する従属請求項が認められる。複数の請求項を引用する請求項は、他の複数の請求項を引用する請求項を引用してはならない(マルチ-マルチクレームは許容されない)。従属請求項は、付加的な特徴および/または詳細化した特徴を含むことができ、詳細化した特徴は、独立請求項の一部の特徴および/または特徴の前提部分の特徴を発展させたものである。従属請求項の数には制限はない。
(2016年5月25日付のロシア連邦経済開発省の命令第316号(以下「命令第316号」という) I.申請書を提出するための一般的な要件、IV.請求項の要件、発明の国家登録と発明特許の付与という公共サービスの提供の枠内での行政手続と行為に関するガイドライン 第5節(発明の単一性))
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「ロシアにおけるプロダクト・バイ・プロセスクレーム解釈のプラクティス」(2017.05.25)
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「ロシアにおける特許の審査基準・審査マニュアル」(2014.11.20)
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2-2. 認められないクレーム形式
複数の請求項を引用する請求項は、他の複数の請求項を引用する請求項を引用してはならない。
(2016年5月25日付のロシア連邦経済開発省の命令第316号 IV.請求項の要件)
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「ロシアにおける特許および実用新案登録を受けることができる発明とできない発明」(2020.12.22)
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3. 出願の言語
特許出願は、外国語で行うことができる。ロシア語の翻訳文は、出願と一緒に提出することができ、正式なオフィスアクションに対応して後から提出することもできる。
(連邦民法第4法典第1374条、第1384条、命令第316号 II.申請書類の審査(第28条))
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「日本とロシアにおける特許出願書類・手続の比較」(2019.09.17)
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4. グレースピリオド
出願日の6月前までのグレースピリオドが適用される。発明者、出願人、または発明者もしくは出願人から直接もしくは間接に情報を得た者による発明に関する情報の公開は、その情報が公開されてから6月以内に特許庁に発明が出願されれば、その発明の特許性を喪失させない。立証責任は出願人にある。
(連邦民法第4法典1350条第3項)
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5. 審査
5-1. 方式審査
特許出願は、方式審査の対象となる。方式審査では、以下の要件がチェックされる。
a) 必要な出願書類がすべて提出されており、すべての書類が方式要件を満たしていること。いずれかの要件が満たされていない場合、出願人に通知され、不備を修正するための3月の期間が与えられる(手数料の支払いで、期間延長を請求することができる)。出願人が期限内に不備を修正できない場合、修正または不足する書類を提出できない場合、出願は取下げられたものとみなされる。
b) 手数料が正しく支払われていること。
c) 発明の単一性の要件が満たされていること(発明の内容は確認されず、明らかな矛盾点のみが判断される)。発明の単一性の要件が満たされない場合、出願人は、審査官の要請により3月以内に請求された発明のどれを審査すべきかを示すことができる。この期間内に出願人が審査すべき発明を示さない場合、審査は最初にクレームされた発明に関してのみ行われる。
d) IPC(国際特許分類)が付されている場合、正しく付されていること(付されていない場合は、審査官が付与する)。
(連邦民法第4法典第1384条、命令第316号 II.申請書類の審査(第23条、第31条、第32条)およびIII.規則第3条に基づく請求書の審査(第108条))
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「ロシアにおける特許・実用新案出願制度の概要」(2019.11.12)
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5-2. 実体審査
出願が方式審査に合格すると、出願人は実体審査請求書を提出し、手数料を支払わなければならない。ロシアでは、発明の繰延べ審査制度がある。
審査請求は、出願人または第三者が行う。審査請求は、出願時または出願日(PCTの場合は国際出願日)から3年以内に行わなければならない。審査請求期間は,2月延長することができる。前記期間内に審査請求が行われなかった場合、出願は放棄される。期間徒過は、期間徒過の日から1年間は回復することができる。
再審査および異議申立は行われない。しかし、ロシア特許庁によって出願中の発明に関する情報が公表された後、何人もロシア特許庁に対して発明の特許性に関する意見を提供する権利を有し、意見は出願の実体審査において考慮される。ただし、当該意見の提出は、出願の審査における手続上の権利を当該者に与えるものではない。
(連邦民法第4法典第1386条、1389条、命令第316号 I.発明の国家登録に関する法的措置の根拠となる文書の作成および提出(第8条))
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「日本とロシアの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較」(2019.08.29)
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「ロシアにおける特許制度」(2017.07.04)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/statistics/13867/
5-3. 早期審査(優先審査)
特許出願から特許権取得までの期間は、短縮される傾向にあるが、案件によって大きく異なる。平均では、1年またはそれ以下となる場合もある。
ロシアはPPH(特許審査ハイウェイ)制度に加盟している。ロシア特許庁は、オーストリア、カナダ、中国、デンマーク、ドイツ、エストニア、欧州(EPO)、ハンガリー、イスラエル、チリ、ペルー、ポルトガル、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、アイスランド、日本、韓国、ノルウェイ、ポーランド、フィンランド、スウェーデン、コロンビア、スペイン、トルコ、英国、米国の27か国・地域の特許庁と、PPH協定およびPPH-MOTTAINAI協定を締結している。また、上記27か国・地域から中国を除く26か国・地域の特許庁とPCT-PPH協定を、上記27か国・地域から中国、欧州(EPO)、トルコを除き北欧特許庁およびヴィシェグラード特許機構を加えた26か国・地域の特許庁とGlobal PPH協定を締結している。
注)2022年5月10日、日本国特許庁(JPO)は、ロシア連邦知的財産・特許・商標庁(ROSPATENT) の間の特許審査ハイウェイ(PPH)を一時停止することを決定いたしました。
参考情報:https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/soki/pph/japan_russia_highway.html
関連情報:
「PPHプログラム」(ロシア特許庁の公表、ロシア語)(2021.02.20)
https://rospatent.gov.ru/ru/activities/inter/bicoop/pph/patent-prosecution-highway
「PCT-PPHプログラム」(ロシア特許庁の公表、ロシア語)(2021.02.20)
https://rospatent.gov.ru/ru/activities/inter/bicoop/pph/pct-pph
「PPH-MOTTAINAIプログラム」(ロシア特許庁の公表、ロシア語)(2021.02.20)
https://rospatent.gov.ru/ru/activities/inter/bicoop/pph/pph-mottainai
「グローバルな優先特許手続(Global PPH)」(ロシア特許庁の公表、ロシア語)(2021.02.20)
https://rospatent.gov.ru/ru/activities/inter/bicoop/pph/gpph
「PPHネットワーク」(JPOの公表、日本語)(日付不明)
https://www.jpo.go.jp/toppage/pph-portal-j/network.html
※Global PPH加盟国については次の情報を参照されたい。
「PCT-特許審査ハイウェイプログラム(PCT-PPHおよびグローバルPPH)」(WIPOの公表、英語)(2022.01.26)
https://www.wipo.int/pct/en/filing/pct_pph.html
関連記事:
「ロシアにおける特許権早期取得のテクニック」(2016.06.21)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/11804/
「ロシアにおける特許および実用新案に関する統計」(2018.06.21)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/statistics/15360/
6. 出願から登録までのフローチャート
6-1. 出願から登録までの特許出願のフローチャート
6-2. フローチャートの簡単な説明
発明に対する特許は、発明毎にされた特許出願の審査の肯定的な結果に基づいて、連邦知的財産庁(ロスパテント、ロシア特許庁、RUPTO)により特許証が発行される。特許出願は、一般に、出願に応じて作成された願書、明細書、図、請求の範囲および要約書を含み、願書はすべてロシア語で、その他の出願書類はロシア語または他言語(ロシア語による翻訳文を添付)で作成されなければならない(連邦民法第4法典第1374条)。
出願は、ロシア特許庁に直接、郵送またはオンラインで行うことができる。
発明の出願がロシア特許庁に受理された後、その出願は審査に付される。審査は、方式審査(連邦民法第4法典第1384条)および実体審査(連邦民法第4法典第1386条)から構成される(上記5.を参照)。
発明の出願は、ロシア特許庁への出願日から18月を経過した後に公開される(連邦民法第4法典1385条)。実用新案出願は公開されず、方式審査を通過後、直ちに実体審査に移行する。
出願公開後は、誰でも出願書類(審査経過を含む)を閲覧することができ、出願書類の写しを取り寄せることができる。
特許審査ハイウェイ(PPH)は、ロシアで利用できる効率的な早期審査の機会であり、よく利用されている。PPHは、実体審査前または実体審査請求時に請求することが望ましい。
最終的な決定に先立ち、通常、1~2回のオフィスアクションまたは通知が行われ、最初のオフィスアクションまたは通知(または、それがない場合は、肯定的な決定自体)は、通常、実体審査の開始から6~7月で行われる。前記早期審査を採用した場合、ロシア特許庁からの最初のコミュニケーションは2~3月で行われる。
特許付与または拒絶の最終決定(および出願を取下げたとみなす決定)は、出願に関するそれぞれの決定の送付日から7月以内にロシア特許庁に審判請求することにより争うことができる(連邦民法第4法典第1387条第3項)。
ロシアの法律では、実体審査の請求、オフィスアクションに対する応答の提出、またはロシア特許庁の決定に対する審判の提出のための期間を、期間徒過時から1年以内に再び延長するオプションがある(連邦民法第4法典第1389条第1項、2項)。
(連邦民法第4法典第1374条、第1384条~第1387条、第1389条)
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「ロシアにおける特許制度の運用実態」(2015.11.24)
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「ロシアにおける特許制度」(2017.07.04)
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[権利設定前の争いに関する手続]
7. 拒絶査定に対する手続
審査官の決定に対する不服審判は、決定の日から7月以内にロシア特許庁に提出できる。不服審判は、審判部のメンバーおよびロシア特許庁の対応する審査部の審査官の双方から選ばれた3~5名の審査官/審判官で構成される審判体により審理される。ヒアリングには、出願人および審判請求された決定を出した審査官の双方が参加する。
審理の結果、以下のような決定がされる。
拒絶査定に対して不服がある場合:
- 請求を認容し、既存の請求項に対し特許の決定を下す。
- 請求を不成立とし、ロシア特許庁の決定を維持する。
- 請求を認容し、補正された請求項に対し特許の決定を下す。
特許査定に対して不服がある場合:
- 請求を認容し、付与決定を取り消し、出願を追加審査に付す。
- 請求を不成立とし、ロシア特許庁の決定を維持する。
- 請求を一部認容し、補正された請求項に対し特許の決定を下す。
取り下げ決定に対して不服がある場合:
- 請求を認容し、出願を回復させる。
- 請求を不成立とし、ロシア特許庁の決定を維持する。
決定は、ヒアリングにおいて審判部によって言い渡され、その後、ロシア特許庁の書面による決定が2月以内に作成されて出願人に送付される。
(連邦民法第4法典第1387条、第1389条)
8. 権利設定前の異議申立
法律には、特許出願に対する異議申立に関する規定はない。しかし、出願公開後、何人もファイルを閲覧し、出願の特許性に関して意見をロシア特許庁に提出することができる。意見書を提出するための手数料はかからない。これらの意見は、審査官が審査手続において考慮する。意見の提出をした者は、出願を審査する際の手続には参加しない。
(連邦民法第4法典第1386条第5項)
9. 上記7.の判断に対する不服申立
審決は、3月以内に知的財産権裁判所(IPR裁判所)で争うことができる。その結果、知的財産権裁判所は決定を支持するか、破棄することができる。破棄する場合、知的財産権裁判所は通常、ロシア特許庁に各請求を再度審理するよう命ずる。
(連邦憲法(ロシア連邦の仲裁裁判所について)第43条第4項、ロシア連邦仲裁手続法第198条)
なお、上記「仲裁裁判所」(арбитражный суд)および上記「ロシア連邦仲裁手続法」(арбитражный процессуальный кодекс российской федерации)は、英語では、それぞれ「Commercial Court」および「Commercial Procedure Code」と表記される。
[権利設定後の争いに関する手続]
10. 権利設定後の異議申立
ロシアには、付与後の異議申立制度はない。特許付与後、特許を無効とすることができる。
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11. 設定された特許権に対して、権利の無効を申し立てる制度
連邦民法第4法典第1398条によれば、発明に対する特許は、以下の場合に、その有効期間中いつでも、全部または一部を無効とすることができる。
(a) 特許された主題が特許性の条件を満たさないとき。
(b) 付与された特許請求の範囲が、当初の明細書および特許請求の範囲に出願日時点で存在しなかった特徴を含んでいる場合。
(c) 特許が、同一の優先日を有する同一の発明に対する複数の出願に対して付与された場合。
(d) 発明者または特許権者の表示を誤ったまま特許が付与された場合。
(a)、(b)、(c)を理由とする無効の提起は、ロシア特許庁に提出する。
(d)の無効の提起は、知的財産権裁判所に提出する。
当事者(特許権者、異議申立人)および特許付与決定を行った審査官もヒアリングに参加する。
無効の提起を検討した結果、以下の決定を下すことがでる。
- 無効の提起を不成立とし、特許を全て有効なまま残す。
- 無効の提起を認容し、特許を全て無効とする。
- 無効訴訟を一部認容し、特許を一部無効とする。特許が一部無効となった場合、新たな特許が付与される。 このような無効関連の審理期間の目安は、4~6月である。
無効に関するロシア特許庁の決定は、知的財産権裁判所に出訴することができる。その結果、知的財産権裁判所は決定を支持するか、破棄することができる。破棄する場合、知的財産権裁判所は通常、ロシア特許庁に各請求を再度審理するよう命ずる。
(連邦民法第4法典第1398条)
関連記事:
「ロシアにおける権利無効手続の統計データ」(2018.02.15)
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12. 権利設定後の権利範囲の修正
無効の提起の審理中(上記11.参照)、特許権者は、それによって定義された範囲を拡張することなく、請求項を訂正する権利を有する。訂正された請求項が認容されると確認された場合、提起された特許の代わりに、上記請求項を有する新たな特許が付与されたものとする。
(ロシア特許庁による紛争の検討および解決のための規則、パラグラフ40)。
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「ロシアにおける特許のクレームの変更」(2014.06.27)
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13. その他の制度
ロシアで技術的解決策に対して得ることができるもう一つのタイプの法的保護は、実用新案特許(UM)である。このような特許の有効期間は10年であり、延長の可能性はない。実用新案として保護されるのは、デバイス/装置のみである(空間的に分散したシステム(例:構造的に一体でない装置)は、実用新案として保護されるデバイス/装置として識別されてはならないことに留意されたい)。すべての実用新案特許出願のクレームは、1つの実用新案にのみ関係するものでなければならない(すなわち、代替語句のない1つの独立請求項のみが認められる)。一般的に、実用新案特許出願と特許は、基本的には発明に関する要件と同様の要件に従い、その詳細はすでに述べたとおりである。両者の根本的な違いは、実用新案の特許性基準には産業上の利用可能性と新規性だけが含まれることであり、すなわち、進歩性がない実用新案特許もあり得る。
ロシアの現行法は以下のようなオプションを提供しており、これらは柔軟に利用することができる。
- 未公開の発明の出願を実用新案出願に変更することができる(例:発明の進歩性に疑問がある場合)。
- ロシア特許庁が発明に対する特許の無効審判を検討している間、所定の基準を満たせば、その特許を実用新案特許に変更するよう請求することができる。
ロシアはユーラシア特許条約(EAPC)およびユーラシア特許条約の工業意匠の保護に関する議定書に加盟しており、ユーラシア特許庁(EAPO)が発行するユーラシア発明特許およびユーラシア意匠特許は、国内(RU)の発明特許および意匠特許と同様にロシアで有効である。
(連邦民法第4法典第1351条、第1363条、第1376条、第1379条)
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「ロシアにおける特許取得-ユーラシア特許制度」(2017.07.11)
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香港における特許制度のまとめ-手続編
1. 出願に必要な書類
標準特許(O):特許条例の第37L条および特許規則の第31M~31S条は、標準特許(O)の適用のために提出される文書の要件を提供する。
標準特許(R):標準特許(R)を取得するための再登録システムには、「記録請求」を提出する段階1と「登録および付与請求」を提出する段階2の2つの段階がある。段階1の文書要件は、特許条例の第15~16条および特許規則の第8条に規定されており、段階2の申請に必要な文書は、特許条例の第23および特許規則の第19条に規定されている。
短期特許:短期特許の適用に関する文書要件は、特許条例の第113条および特許規則の第58~64条に記載されている。短期特許の特筆すべき点は、国際調査機関または指定された3つの特許庁のうちの1つが発行した発明に関する調査報告書を提出して、出願をサポートする必要があることである(特許条例第113条)。
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「香港における特許の権利取得手続」(2021.09.23)
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「香港における特許の独自付与制度導入に向けた動きの近況」(2020.04.07)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/18428/
「香港における特許出願および意匠出願の優先権主張の手続(外国優先権)」(2020.04.07)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/18432/
「香港における実用新案(短期特許)出願制度概要」(2019.07.02)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17521/
「香港における特許出願制度概要」(2019.07.02)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17519/
「香港の特許・実用新案関連の法律、規則等」(2019.02.14)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16532/
「日本と香港における特許出願書類の比較」(2015.11.20)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/9392/
2. 記載が認められるクレーム形式
特許条例は、特定の許容可能なクレームの形式を指定しておらず、特許可能な発明、特許されない発明を規定している。
(1) 認められる発明
特許条例の第9A条(1)は、発明が新規であり、進歩性を伴い、産業上の利用可能性がある場合、その発明は特許を受けることができると定めている。
(2) 認められない発明
特許条例の第9A条(2)~(6)は、以下は発明とみなされないと定めている。
・発見、科学理論または数学的方法
・美的創造
・精神的行為を実行する、ゲームをプレイする、またはビジネスを行うためのスキーム、規則、方法、またはコンピュータ・プログラム
・情報の提示
・人または動物の医学的治療方法および診断的方法
・公序良俗に反する発明
・植物または動物の品種、または植物または動物の生産のための生物学的なプロセス
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「香港における特許を受けることができる発明とできない発明」(2020.08.20)
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「香港における実用新案(短期特許)出願制度概要」(2019.07.02)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17521/
「香港の特許・実用新案関連の法律、規則等」(2019.02.14)
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3. 出願の言語
特許条例の第104条では、特許の申請は公用語(中国語または英語)のいずれかで提出する必要があると規定しているが、特許条例には、出願人が指定された特許出願と同じ言語で標準特許(R)出願を提出することを要求する規定はない。
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4. グレースピリオド
特定の状況下では、発明の開示は不利益とはならない開示として扱われ、考慮されない。特許条例の第11A条、第37B条、および第109条は、それぞれ標準特許(R)、標準特許(O)、および短期特許の不利益とはならない開示の条件を次にように定めている。
・開示は、出願のみなし出願日または出願日の6月前までに行われるものであり、
・開示は、発明の出願人または所有者に関する明らかな悪意によるものであるか、または、
・発明の出願人または所有者が当面の間、所定の展示会または会議(すなわち、香港に適用される、1928年11月22日パリで署名された国際展示会条約の条件に該当する公式または公式に認められた国際展示会)で発明を展示した場合。
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5. 審査
(1) 一般の審査
3種類の特許出願について、方式審査はいずれの場合でも必須であるが、実体審査の要件は、特許の種類によって異なる。
・標準特許(O)
方式審査の詳細は、特許条例第37P条に記載されている。標準特許(O)には特許が適用される発明の特許性について実体審査も義務付けられており、登録官は出願が特許条例第37U条に定められた要件に準拠しているか否かを審査する。標準特許(O)の実体審査の詳細は、特許条例第37S条~第37Y条、および特許規則第31ZC条~第31ZP条に記載されている。
・標準特許(R)
標準特許(R)を取得するための再登録制度は2段階(「記録請求」と「登録および付与請求」)であるため、合計2回の審査があり、「記録請求」は特許条例第18~19条および特許規則第8条に、「登録および付与請求」は特許条例第25~26条および特許規則第19条に記載がある。一方、標準特許(R)は、指定特許庁(中国特許庁、英国特許庁、英国を指定した欧州特許の場合の欧州特許庁)による対応する特許の付与に依存しているため、実体審査は行われない。
・短期特許
特許条例第115条、第117条および特許規則第68条に短期特許の方式審査の詳細が記載されている。短期特許の付与には実体審査は必要ないが、特許権者または第三者は、付与後に実体審査の実施を要求することができる。特許権者が短期特許に基づき、執行措置を開始する場合、実体審査が前提条件とされる(特許条例第127A条~第127C条、特許規則第81A条~第81O条)。
(2) 早期審査(優先審査)
早期審査(優先審査)の規定はない。
(3) 出願の維持
特許条例の第33条に基づき、出願人は、指定特許出願が記録請求の公開から5年後に付与に進んでいない場合、係属中の標準特許出願(R)に対して年間維持費を支払う必要がある。年間維持費の支払い期日は、指定特許出願日と同月日である。
標準特許(O)および短期特許は、登録前の維持費用は存在しない。
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「香港知的財産局の特許審査体制」(2018.08.09)
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「香港における微生物寄託に係る実務」(2018.04.10)
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6. 出願から登録までのフローチャート
(1) 出願から登録までの特許出願フローチャート
・標準特許(O)
・標準特許(R)
・短期特許
(2) フローチャートに関する簡単な説明
・標準特許(O)
出願書を提出した後、登録官は出願書を調べて、出願書の記載要件および支払い要件に準拠しているかどうかを確認する。問題がなければ、出願日が与えられる。その後、登録官は、特許条例の第37L条に従って方式要件を検討する。出願が方式要件に準拠していることを確認した場合、出願を公開し、香港知的財産ジャーナルに公告を掲載する。
出願人は、出願日または優先権主張の最も早い日から3年以内に実体審査を申請する必要があり、実体審査請求がなければ出願は取り下げられたと見なされる。
登録官は、実体審査請求と所定の手数料を受け取った後、実体審査を実施し、出願が審査要件に準拠していない場合、その見解を出願人に通知し、出願人は、意見書を提出し、補正を要求することができる。登録官は、審査結果に応じて標準特許(O)を付与して公告するか、拒絶する。
詳細については、特許条例の第37L~37Y条、および特許規則の第31M~31ZP条を参照のこと。
・標準特許(R)
標準特許(R)を出願するための出願プロセスは、(1)指定された特許出願の記録請求の提出と(2)登録および付与の請求の2つの段階に分けられる。
<段階1(記録請求)>
出願人は、指定特許庁で指定された特許出願が公開されてから6月以内に記録請求を提出する必要がある。標準特許(O)と同様に、登録官は、出願人によって提出された書類を審査し、出願日を付与し、その後、方式要件について審査する。欠陥がないか、欠陥が修正された場合、記録請求は公開される。
<段階2(登録および付与請求)>
出願人は、記録請求の公開または指定特許庁による特許の付与後6月以内に、登録および付与請求を提出する必要がある。請求が提出されると、提出日と方式要件の審査が行われる。問題がなければ、登録官は指定された特許を登録し、標準特許(R)として特許を付与し、香港知的財産ジャーナルに公告する。
詳細については、特許条例第15~27条、および特許規則第8~24条を参照のこと。
・短期特許
標準特許と同様に、短期特許も出願時に出願日および方式要件の審査が行われる。登録官は、問題がないか、適正に補正された場合、短期特許を付与し、香港知的財産ジャーナルに公告する。
短期特許は、要求がなければ、実体審査は行われない。
詳細については、特許条例第112A~118条、および特許規則第58~68条を参照のこと。
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7. 付与前後の特許の有効性に異議を申し立てる手順
特許条例第49条は、何人も、付与された香港特許の有効性について、本発明の公表または実施が公序良俗または道徳に反することを根拠として、異議を申し立てることができ、登録官は、この特定の理由で、付与された特許を取り消す権限あることを規定している。
特許条例第91条は、裁判所が、何人かの申請に基づき、付与された特許を取り消すことができる理由を規定している(特許条例第91条(1)(a)~(f)を参照のこと)。
上記の根拠は、3種類の特許に適用されるが、以下に述べるように、特許の種類ごとに付与の前後に異議を申し立てる方法を規定する条項がある。
・標準特許(O)
特許条例第37R条は、標準特許(O)出願の公開時に、発明の特許性に異議を申し立てるために第三者の所見を登録官に提出することができると規定している。付与された標準特許(O)を無効にする具体的な理由については、特許条例の第91条を参照していただきたい。
・標準特許(R)
標準特許(R)に異議を申し立てるための付与前の規定はない。標準特許(R)の付与が指定特許庁の指定特許に基づいていることを考慮し、指定特許庁での所定の異議申立または取消手続の後に指定特許が取り消された場合、標準特許(R)の所有者は取消命令またはその他の所定の文書の検証済みコピーを登録官に提出する義務がある。このような状況では、標準特許(R)は取り消され、効力がなかったものとして扱われる(特許条例第44条)。
・短期特許
短期特許は、付与されるまで公開されず、付与前に異議を申し立てる条項はない。特許条例第126A条は、短期特許出願が特許付与、公開となった後、特許性に関して第三者は所見を登録官に提出できると規定している。
さらに、特許権者または合理的な理由または正当な事業利益を有する当事者が、特許の有効性を判断するための付与後の実体審査を申請するための規定がある(特許条例第127A~127C条、および特許規則第81A~81G条まで)。標準特許(O)と同様に、登録官が短期特許とその補正がすべての審査要件に準拠していないと判断した場合、登録官は特許を取り消さなければならない(特許条例第127G条)。登録官は、短期特許を取り消す暫定決定を発行し、暫定取消通知を発行する(特許規則第81H条)。特許権者は、暫定取消通知の日から2月以内に所定の手数料とともに取消に関する仮決定を検討するよう登録官に請求することができる(特許規則第81I条)。登録官が、それでもなお審査要件に準拠していないと判断した場合は、特許所有者に応答を要求する所見を発行する(特許規則第81J~81K条)。
登録官が必要であると判断した場合(特許規則第81L~81M条)、さらに数回の所見を通知することができる。特許が審査要件を満たせなかったと登録官が判断した場合、短期特許を取り消す最終決定を下し通知する(特許規則第81N条)。
特許所有者は、短期特許を取り消すという登録官の最終決定に対して第一審裁判所に控訴することができる(特許条例第130条)。
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「香港の特許・実用新案関連の法律、規則等」(2019.02.14)
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8. 権利設定後の権利範囲の修正
・標準特許(O)
権利所有者は、付与後に特許の明細書を修正するように登録官または裁判所に申請することができる(特許条例第46条、および特許規則第38A条)。
・標準特許(R)
権利所有者は、異議申立または取消手続の後に指定特許庁で対応する指定特許の仕様に対する同じ修正が行われたことに基づいて、特許の修正を裁判所に申請するものとする。(特許条例第43条、46条、および特許規則第35条)。
・短期特許
権利所有者は、特許の実体審査の請求を提出するとき、実体審査中に庁指令に応答するとき、または実体審査証明書の発行後いつでも、特許の明細書の修正を登録官または裁判所に申請できるものとする(特許条例第46条、第127B条、第127D条、および特許規則第81P条)。
関連記事:
「香港における特許の権利取得手続」(2021.09.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/statistics/20880/
「香港における実用新案(短期特許)出願制度概要」(2019.07.02)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17521/
「香港における特許出願制度概要」(2019.07.02)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17519/
「香港の特許・実用新案関連の法律、規則等」(2019.02.14)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16532/
9. その他の制度
特になし。
インドネシアにおける特許制度のまとめ-手続編
1. 出願に必要な書類
特許法2016年の第25条、第30条、第33条、第34条、第35条および第122条、特許規則2018年第4、5、18、29、36、45、83、85および86条、および法務人権省通達HKI.3-KI.05.01-247に関連する記載がある。
特許の最小要件は次のとおりである。
(1) 出願書(発明者および出願人の氏名、住所、市民権/国籍、発明のタイトル、優先権を主張して出願する場合は優先権書類、PCT出願から派生した国内段階出願の場合はPCTデータを含む)
(2) 英語の特許明細書(詳細な説明、請求項、要約、図面、および配列リスト)
(3) 公費の領収書(申請料、請求項が10項を超える場合は追加料金、明細書が30ページを超える場合は追加料金)
出願後に提出してもよい書類およびその期限
明細書のインドネシア語翻訳 | 出願後30日以内 |
委任状 | 方式審査拒絶理由通知から3月以内(2月の延長、手数料支払いによりさらに1月の延長可) |
発明者による発明の所有権の宣言1 | |
譲渡証2 | |
微生物寄託証(該当する場合) | |
優先権主張出願の場合、優先権証明書の写しとその表紙の英訳 | 優先日から16月以内 |
1:発明者が何らかの理由で署名を提出できない場合の代替の文書
a.発明者が元従業員である場合は、雇用契約書の写し、休暇申請書、または発明者が作成した書類等
の従業員としての発明者の状況を証明する書類(機密情報でも可。発明者の氏名と署名が必要)。
b.他の発明者の署名により裏付けられた、発明者の署名が欠落している理由を説明する出願人による
声明および理由を裏付ける書類。
c.優先権出願の譲渡書類の写し。
2:発明者の署名を提出できない場合、上記1と同様
実用新案(簡易特許)の最小要件は次のとおりである。
(1) 出願書(発明者および出願人の氏名、住所、市民権/国籍、発明のタイトル、優先権を主張して出願する場合は優先権書類、PCT出願から派生した国内段階出願の場合はPCTデータを含む)、審査請求。
(2) 英語およびインドネシア語の特許明細書(説明、クレーム、要約、図面、および配列リスト)
(3) 公的手数料(出願料、実体審査料、クレームが10項を超える場合は追加料金、明細書が30ページを超える場合は追加料金)
(4) 発明者による発明の所有権の宣言
(5) 譲渡証
(6) 微生物寄託の証明(該当する場合)
(7) 優先権を主張して出願する場合は、優先権証明書の写しとその表紙の英訳
出願後に提出可能なその他の要件として、委任状の提出があり、提出期限は出願日から28日である。
関連記事:
「日本とインドネシアにおける特許出願書類・手続の比較」(2019.12.05)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17977/
「インドネシアにおける特許制度の概要」(2014.10.24)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/6834/
2. 記載が認められるクレーム形式
特許規則2018年第7条、第8条は、請求項は発明の本質を明確かつ一貫して表現しなければならず、明細書によって裏付けられなければならないと規定している。請求項には表および/または化学式、数式が含まれてもよい。また、請求項は、発明の単一性を形成するために相互に関連しているものとされ、独立請求項および/または従属請求項の形式が可能である。
容認されない請求項の形式として、特許規則2018年第7条は、請求項に図面やグラフを含めてはならないと規定している。
関連記事:
「インドネシアにおけるコンピュータソフトウエア関連発明等の特許保護の現状」(2019.01.15)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16393/
「インドネシアにおけるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの解釈の実務」(2018.09.27)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/15857/
「インドネシアにおける医薬用途発明の保護制度」(2018.03.29)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/14761/
3. 出願の言語
特許法2016年第24条は、特許出願はインドネシア語で提出されなければならいと規定している。
関連記事:
「日本とインドネシアにおける特許出願書類・手続の比較」(2019.12.05)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17977/
「日本とインドネシアにおける特許出願書類の比較」(2015.07.10)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/9396/
4. グレースピリオド
特許規則2018年第44条は、PCTに基づく出願は、国際出願日また最も早い優先日から最大31月以内に出願されなければならいと規定している。申請書とともに追加手数料を支払うことにより、3月から12月の期間延長が認められる場合がある。
関連記事:
「インドネシアにおける特許出願制度概要」(2019.06.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17465/
「インドネシアにおける特許発明の新規性喪失の例外」(2017.04.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/13623/
「インドネシアにおけるパリ条約ルート出願とPCTルート出願の手続きの相違点」(2015.03.31)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/8372/
5. 審査
(1) 実体審査
特許法2016年第51条は、特許の審査請求は、出願日から36月以内に提出しなければならないと規定している。実体審査は公開期間が終了した後に行われる。実用新案については、特許法2016年第122条に規定があり、出願時に審査請求を提出する必要がある。
特許法2016年第62条および特許規則2018年第73条、第74条は、出願人は実体審査報告書の日付から3月以内に回答する必要があると規定している。出願人は応答期間を2月、さらに手数料の納付により1月延長することができる。
また、特許法2016年第62条は、緊急事態の場合は、出願人は6月の応答期間の延長を受けられると規定している。
(2) 早期審査(優先審査)
特許規則2018年第80条、第81条は、地域(ASPEC、関連記事参照)および2国間(PPH、関連情報参照)協力に基づく実体審査の早期審査について規定している。早期審査申請は、実体審査報告書の発行前に提出しなければならない。
(3) 出願の維持
特許法2016年第21条、第126条および政府規則2019年第28号に規定があり、特許が付与された場合、特許の維持年金は出願日に遡っての支払いが必要であり、出願日から付与後1年までの費用を、付与通知から6月以内に支払う必要がある。
特許維持年金
年(出願日より) | 特許費用(IDR) | 請求項費用 |
1~3 | 1,000,000 | 75,000 |
4,5 | 1,250,000 | 100,000 |
6 | 1,750,000 | 175,000 |
7,8 | 2,250,000 | 225,000 |
9 | 3,000,000 | 300,000 |
10 | 4,000,000 | 300,000 |
11~20 | 6,500,000 | 500,000 |
実用新案維持年金
年(出願日より) | 特許費用(IDR) | 請求項費用 |
1~4 | 750,000 | 50,000 |
5 | 1,250,000 | 50,000 |
6 | 1,700,000 | 50,000 |
7 | 2,300,000 | 50,000 |
8 | 2,800,000 | 50,000 |
9 | 3,500,000 | 50,000 |
10 | 4,000,000 | 50,000 |
関連記事:
「インドネシアにおける特許の早期権利化」(2021.06.22)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/20273/
「インドネシアにおける特許審査ハイウェイの実効性に関する調査研究」(2020.02.27)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/18319/
「日本とインドネシアにおける特許審査請求期限の比較」(2019.12.10)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17983/
「インドネシアにおける特許出願の実体審査と特許庁からの指令書に対する応答期間」(2019.09.03)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17669/
「インドネシアにおける特許年金制度の概要」(2018.10.16)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15967/
「ASEAN特許審査協力(ASPEC)プログラム」(2014.07.18)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/6142/
関連情報:
「日インドネシア特許審査ハイウェイ試行プログラムについて」
https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/soki/pph/japan_indonesia_highway.html
6. 出願から登録までのフローチャート
(1) 出願から登録までの特許出願フローチャート
(2) フローチャートに関する簡単な説明
出願後、方式審査が行われる。提出された書類に不備がある場合、拒絶理由通知が出され、すべての正式な書類が完備されている場合は承認通知が出される。その後、公開される。公開期間は6月であり、第三者の異議申立があれば、法務人権大臣に提出する。
実体審査は、公開期間終了後に行われ、拒絶理由通知への応答期間は3月、延長の場合はさらに2月、または手数料の支払いによりさらに追加の1月が認められる。
拒絶査定となった場合、出願人は拒絶の通知から3月以内に審判請求ができる。
特許査定となった場合、特許付与通知後、2月以内に証明書が交付される。
関連記事:
「インドネシア特許出願における条約に基づく優先権主張の手続」(2021.01.05)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/19667/
「インドネシアにおける実用新案出願制度概要」(2019.06.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17467/
「インドネシアにおける特許出願制度概要」(2019.06.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17465/
「インドネシアにおける特許権の取得」(2018.11.15)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16141/
[権利設定前の争いに関する手続]
7. 拒絶査定不服
実体審査により拒絶査定となった場合、出願人は、特許法2016年第68条に規定されるように、拒絶の通知から3月以内に特許審判委員会に不服審判を請求できる。特許審判委員会は、審判請求から1月以内に審判の審理を行う。決定は審理から9月以内に下される。
関連記事:
「インドネシアにおける特許権の取得」(2018.11.15)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16141/
8. 権利設定前の異議申立
特許法2016年第49条は、付与前の異議申立は、公開期間中に第三者により法務人権大臣に提出することができると規定している。出願人は、大臣からの異議申立通知から30日以内に、異議申立に対する回答を提出することを求められる。
関連記事:
「インドネシアにおける特許出願制度概要」(2019.06.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17465/
9. 上記7の判断に対する不服申立
拒絶査定不服審判の審決に不服がある出願人は、特許法2016年第72条に規定されるように、特許審判委員会の拒絶の審決に対し、商務裁判所に訴訟を起こすことができる。訴訟手続きは、特許法2016年第144条に規定されている。
関連記事:
「インドネシアにおける特許出願制度概要」(2019.06.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17465/
[権利設定後の争いに関する手続]
10. 権利設定後の異議申立
権利設定後の異議申立制度はない。
11. 設定された特許権に対して、権利の無効を申し立てる制度
特許付与後、第三者は、特許法2016年第70条に規定されているように、付与日から9月以内に、付与された特許に対して特許審判委員会に審判請求ができる。
特許審判委員会は、審判請求が提出されてから1月以内に審判の審理を行い、審理後9月以内に決定が下される。
特許の無効化は、特許法2016年第132条、第133条、第138条、第142条、および第144条で規定されている。
第三者または検察官は、次の場合、商務裁判所を通じて特許権者に特許無効化を申し立てることができる。
1.特許性の規定を満たしていない
2.発明は付与された他の発明と同じである
3.特許権者または強制ライセンシーによる特許の実施は、公共の利益にとって有害である
4.特許権者は特許実施の義務を果たしていない
特許無効化に対する訴訟は、被告居住地域の商務裁判所に提起される。いずれかの当事者が海外に居住している場合、中央ジャカルタ商務裁判所に訴訟が提起される。特許の無効化が1つ以上の特定の請求項にのみ関係する場合、無効化は関連する請求項に対してのみ行われ、その決定には永続的な法的効力がある。
関連記事:
「インドネシアにおける特許実施の延期申請について」(2020.09.17)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/19472/
12. 権利設定後の権利範囲の修正
特許付与後の明細書、請求項および/または図面の訂正に関する審判請求は特許法2016年第69条に規定されており、付与後の3月以内に請求することができる。訂正は、請求項の減縮は可能であるが、発明の保護範囲を広げることはできない。
関連記事:
「インドネシアにおける特許出願の補正の制限」(2019.10.21)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17812/
13. その他の制度
特になし。
ベトナムにおける特許制度のまとめ-手続編
1. 出願に必要な書類
特許出願について、願書、クレームを含む明細書、所定の手数料および料金の納付証が、出願受理のために必要な最低限の書類とされる(知的財産法第108条、科学技術省通達01/2007/TT-BKHCNを改正する通達16/2016/TT-BKHCN(2018年1月15日付発効)以下、通達7.1 a))。最低限の書類がそろっている場合には、出願を受理し、出願日を認定する(通達12.2 a))。
関連記事:「ベトナムにおける特許・実用新案出願制度概要」(2019.6.27)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17469/
2. 記載が認められるクレーム形式
(1)認められるクレーム形式
特許審査ガイドライン(QUY CHẾ THẨM ĐỊNH ĐƠN ĐĂNG KÝ SÁNG CHÊ 5.7.3.2 a)には、クレームの1項ずつは、保護されるべき製品型の発明(構造、設備、化合物、薬品、化粧品、食物など)またはプロセス型の発明(生産方法、調整方法、通信方法、処理方法など)の1つのみに言及されるべきことが説明されている。
(2)認められないクレーム形式
相互に異なる対象についての独立クレームは、他のクレームを援用できない。ただし、その援用によりその他の項の内容全部の繰り返しを回避できる場合を除く(通達23.6 c) (viii))。
関連記事:「ベトナムにおけるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの解釈の実務」(2017.5.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/13679/
3. 出願の言語
提出書類はベトナム語により作成されていることが必要である(知的財産法第100条第2項、通達7.2 b)(ii))。委任状、発明特許等を受ける権利の承継を証明する書類、優先権証明書は外国語の原本にベトナム語の翻訳を付すことも可能である。外国語書面出願はない。
関連記事:「日本とベトナムにおける特許出願書類の比較」(2020.04.02)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/18403/
4. グレースピリオド
知的財産法第60条第3項に規定されているが、グレースピリオドが認められるのは、出願が公開から6か月以内に行われ、かつ以下の(a)~(c)のいずれかの条件を満たす場合である。
(a)特許を受ける権利を有する者の許可なしに他人により公開された
(b)特許を受ける権利を有する者により科学的提示の形態で公開された
(c)特許を受ける権利を有する者によりベトナム国内博覧会または公式若しくは公認の国際博覧会で展示された
関連記事:「ベトナムにおける特許出願の新規性喪失の例外」(2015.5.29)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/8630/
5. 審査
(1)実体審査:あり
(2)審査請求制度:あり(知的財産法第113条)
(a)審査請求期間:発明特許出願の場合には出願日または優先日から42か月以内に、出願人またはいかなる第三者も審査請求をすることができる。実用新案特許出願の場合には、出願日または優先日から36か月以内に同様に審査請求をすることができる。
(b)請求人:出願人またはいかなる第三者も審査請求をすることができる。
(3)早期審査(優先審査):あり
日本出願に基づく日ベトナム間の特許審査ハイウェイ(「PPH」)試行プログラムに基づいて、申請要件を満たすベトナム国家知的財産庁(以下、知的財産庁)への出願につき、関連する書類の提出を含む所定手続を行うことで早期審査を申請することができる。
https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/soki/pph/document/japan_vietnam_highway/shinsei_tetsuzuki_20190401.pdf
(4)出願を維持するための料金:不要
関連記事:「ベトナムにおける特許審査基準関連資料」(2016.1.29)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/10250/
関連記事:「ベトナムにおける特許の早期権利化の方法」(2015.3.31)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/8498/
6. 出願から登録までのフローチャート
(1)出願から登録までの特許出願のフローチャート
(2)フローチャートに関する簡単な説明
(A)方式審査の期間は出願から1か月であり、知的財産庁は出願人にその結果を通知しなければならない。方式審査において不備が認められた場合、出願人に対し2か月の応答期間が与えられ、補正書や意見書の提出が可能である(通達13.6 a))。提出期間は2か月延長が可能である(通達9.2)。
(B)公開前に審査請求がされた場合は公開の日から18か月の期間内に、公開後に審査請求がされた場合は審査請求の日から18か月の期間内に実体審査を行うと規定されている(知的財産法第119条)。ただし、実務上は必ずしも上記の期限内に終わるわけではない。
法の定める保護要件を満たしていない場合、または法の定める保護要件を満たしているが不備がある場合には、実体審査報告を出願人に対して通知する。拒絶理由を明示したうえで、補正の提案を含むこともできる。応答期間は通知から3か月である(請求により3か月の延長可)(通達15.7 a)(i)および(ii)、9.2)。
(C)登録許可通知から3か月の期間内に、登録料、公報発行手数料、第1年目の特許料の納付などをすべき旨を、出願人に対して通知する(通達15.7 a)(iii))。
関連記事:「ベトナムにおける特許・実用新案出願制度概要」(2019.6.27)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17469/
[権利設定前の争いに関する手続]
7. 拒絶査定に対する手続
拒絶理由に対し反論や補正を行わない場合、あるいは行ったが拒絶理由が解消しない場合には拒絶査定となる。一般的には、出願人は知的財産庁に対する審判請求を査定受領から90日以内に行い、知的財産庁長官が審決を確定する。審決に不服のある場合には、科学技術省への不服申立を審決受領後30日以内に行い、科学技術大臣が不服申立への決定を行う(政府決議第14条、通達22、Luật khiếu nại(日本語「不服申立法」))。
また、通達で改正された22.1において、知的財産庁の処分への審判請求に関し、対象となる決定等の範囲が明確化され、出願の補正や審査段階で提出されなかった新規資料などは、拒絶査定不服審判では検討の対象外となることが規定された(通達22.1 c))。
さらに、通達で改正された15.7 b)の第2段落において、「新規資料(審査段階で検討されていない)であって審査結果に影響を与えうるもの」を出願人が提出した場合には、拒絶査定を取り消して、審査を再開すると規定している。ただし、何がここでいう「新規資料」に該当しうるのかといった詳細な規定はないこと、拒絶査定を受けてからいつまでそのような提出が可能なのか規定されてないこと、常にそのような新規資料の提出が可能であれば権利関係の安定性に疑問もあること、といった検討すべき課題もある。
関連記事:「ベトナムにおける特許出願に関する方式審査上の拒絶理由通知」(2015.3.31)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/8516/
8. 権利設定前の異議申立
あり。出願が公報に掲載された日から登録証付与に関する決定の日までは、如何なる第三者も、当該出願に関する登録許可または拒絶に関して知的財産庁に意見を提示する権利を有する(知的財産法第112条)。
9. 上記7の判断に対する不服申立
行政訴訟法(Luật tố tụng hành chính)に基づく訴訟により、裁判所で争うことも可能であるが、一般的にはあまり利用されていない。
[権利設定後の争いに関する手続]
10. 権利設定後の異議申立
なし
11. 設定された特許権に対して、権利の無効を申し立てる制度
(1)特許は、次の場合に完全に無効とされる。
(i)出願人が発明の特許を受ける権利を有しないか、または譲渡されていなかった場合
(ii)発明が特許付与日において保護要件を満たしていなかった場合
(2)特許の保護対象の一部が保護要件を満たしていないときは、一部無効とされる。
(3)特許の有効期間中、第三者は所定の手数料の納付を条件として、(1)および(2)の場合、特許の無効を知的財産庁にいつでも請求することができる(知的財産法第96条)。
無効理由:特許を受ける権利(知的財産法第86条)、特許の一般的要件(知的財産法第58条)、特許の保護の対象とならないもの(知的財産法第59条)
12. 権利設定後の権利範囲の修正
特許権者は、特許請求の範囲を訂正することができる。
ただし、請求項の削除による権利範囲の減縮のみ可能である(通達20.1 b)(iii))
日本の訂正審判に相当する制度は存在しない。
13. その他の制度
産業財産権に関する侵害鑑定等を行う専門機関(VIPRI、http://vipri.gov.vn/)がある(知的財産法第201条)。
インドにおける特許制度のまとめ-手続編
1. 出願に必要な書類
特許権を受けようとする者は、以下の書類および手数料を提出しなければならない。
(1) 有効出願日を確保するために必要な書類
・願書
・明細書(直接出願の場合、完全明細書または仮明細書。条約出願や国内段階出願の場合、完全明細書)
・発明者である旨の宣言書
・手数料
(2) 必要に応じて提出する書類
・出願権の証拠(出願人が発明者ではない場合)
・委任状(現地代理人に代理権を与える場合)
・外国出願に関する陳述書および誓約書(インド特許出願と実質的に同じ内容の外国出願がある場合)
・優先権書類と、その翻訳文(優先権を主張する場合)
関連記事:「インドにおける特許出願制度概要」(2019.6.13)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17416/
関連記事:「日本とインドにおける特許出願書類の比較」(2015.7.24)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/9398/
2. 出願の言語
ヒンディー語または英語(特許規則9)。外国語出願制度はない。
3. グレースピリオド
(1) 意に反する公開:出願人から取得され、その者の意に反して発明が公開された場合であって、その公開後、速やかに特許出願が行われた場合、当該発明は新規性を失わない(特許法29条(2)、特許法29条(3))。
(2) 政府への伝達:特許出願に係る発明は、当該発明もしくはその価値を調査するため政府もしくは政府により委任された者に当該発明を伝達した場合であっても、新規性を失わない(特許法30条)。
(3) 博覧会などにおける発表:特許出願に係る発明は、以下の行為が行われても、その最初の発表後12か月以内に特許出願を行った場合に限り、新規性を失わない(特許法31条)。
(i) 中央政府によって官報で指定された博覧会において、真正かつ最初の発明者、または発明者から権原を取得した者の同意を得て行われた発明の展示、またはその開催場所において当該博覧会を目的としてその者の同意を得て行われた発明の実施
(ii) 博覧会における発明の展示または実施の結果としての当該発明の説明の公開
(iii) 発明が博覧会において展示もしくは実施された後、および博覧会の期間中、真正かつ最初の発明者などの同意を得ないで何人かが行った発明の実施
(iv) 真正かつ最初の発明者が学会において発表した論文に記載されまたはその者の同意を得て当該学会の会報に公表した発明の説明
(4) 試験目的の実施:特許出願に係る発明は、特許出願の優先日前1年以内に、出願人またはその同意を得た者が、特許出願に係る発明の適切な試験目的のためにインドにおいて公然と実施したとしても、新規性を失わない(特許法32条)。ただし、発明の内容に鑑み、その試験を公然と実施する合理的必要性があった場合に限る。
(5) 仮出願の後の実施および公開による先発明:仮出願を行った場合、仮出願後、仮明細書に記載された事項がインドで実施され、またはインドまたは他の地域で公開されても新規性を喪失しない(特許法33条)。
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4. 審査
(1) 実体審査
実体審査:あり
審査請求制度:あり(特許法11B条(1))
審査請求期間:出願日(優先日)から48か月以内(特許法11B条(1))
請求人:出願人および利害関係人(特許法11B条(1))
(2) 早期審査(優先審査)
以下の要件のうちのいずれかに該当する場合、早期審査請求を行うことができる(特許規則24C条(1))。
(a) 出願人が国際出願の国際調査機関または国際予備審査機関としてインド特許意匠商標総局(the Office of the Controller General of Patents, Designs & Trade Marks (CGPDTM)、以下「インド特許庁」)を選択したこと
(b) 出願人が、インド国内外を問わず、スタートアップ企業であること(スタートアップ企業の定義:設立から5年以内で、年間売上高が2億5千万ルピー(約3億8千万円)未満の事業体、規則2(fb))
(c) 出願人が小規模団体(small entity)である
(d) 出願人が、全員が自然人であって、そのうち女性が含まれている
(e) 出願人が政府系機関である
(f) 出願人が、中央政府もしくは州政府によって設立された機関であって、中央政府が所有もしくは管理する機関である
(g) 出願人が会社法2013の項目45の2条に定義される「政府系企業」である
(h) 出願人が、政府が実質的に資金を提供している機関である
(i) 政府の要請に基づいて指定された産業に関連する出願である
(j) 出願人がインド特許庁と他国特許庁との合意に従って出願を処理するための資格を有する(いわゆるPPHを申請している)
(3) 出願を維持するための料金
特許権を維持するためには所定の納付期間内に更新手数料を納付しなければならない(特許法53条(2))。
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5. 出願から登録までのフローチャート
(1) 出願から登録までの特許出願のフローチャート
(2) フローチャートに関する簡単な説明
ⅰ) 特許出願の種類は、直接出願(本出願および仮出願)、国際出願、国際出願の国内段階移行出願、パリ条約に基づく条約出願がある。
ⅱ) 特許出願の出願日(優先日)から18か月が経過すると、特許出願は公開される。特許出願は公開される前に取下げることができる。
ⅲ) 審査請求がなされた出願は審査(方式的、実体的)される。審査請求を行わなかった場合、出願は取下げられたものとみなされる。
ⅳ) 審査の結果は、最初の審査報告(FER: First Examination Report)として出願人に通知される。FERの発送日は、拒絶理由解消期間(6か月)の起算日になる。出願人は、拒絶理由解消期間内に、特許出願が許可される状態にしなければならない(特許法21条)。後続の審査報告(SER: Subsequent Examination Report)が発行されても拒絶理由解消期間は延びない。拒絶理由解消期間は、最長3か月延長できる。特許出願が許可される状態にするというのは、すべての拒絶理由を解消するような応答書(意見書、補正書)を提出することを意味する。
ⅴ) 応答書が提出されていればインド特許庁はもう一度審査を行う。拒絶理由があり、拒絶理由解消期間が経過していない場合はSERが出願人に通知され、拒絶理由解消期間が経過している場合で出願人から聴聞申請があれば聴聞通知が出願人に発送される。聴聞が行われた後に、出願人に応答書(意見書、補正書)を提出する機会が与えられる。
ⅵ) 拒絶理由がすべて解消すると、特許査定(Notice of Grant)が通知され、特許公報(Publication of Grant)が発行される、特許証が交付され、設定登録によって特許権が発生する。拒絶理由が残っている場合、拒絶査定(Notice of Refusal)が通知される。
ⅶ) 特許権の存続期間は出願日(優先日)から20年である。特許権をこの存続期間維持するためには、特許権者は、更新手数料を納付しなければならない。
ⅷ) 何人も特許出願に対して、出願公開後、特許権付与前までに付与前異議申立て(特許法25条(1))を請求することができる。付与後異議申立ては、利害関係人が、特許公報発行後、1年以内に請求することができる(特許法25条(2))。
ⅸ) 特許庁の決定、指示、指令に対して不服がある場合、決定、指示、指令の通知日から3か月以内に知的財産審判委員会(IPAB: Intellectual Property Appellate Board)に審判請求を行うことができる(特許法117A条)。
ⅹ) 利害関係人は、所定の無効理由の1つまたは複数に基づいて、特許の取消をIPABに審判請求することができる(特許法64条(1))。
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[権利設定前の争いに関する手続]
6. 拒絶査定に対する不服
出願人は、特許庁の(特許出願を拒絶する)決定に対して不服がある場合、決定の通知日から3か月以内にIPABに審判請求を行うことができる(特許法117A条)。
関連記事:「インドにおける特許出願から特許査定までの期間の現状と実態に関する調査」(2018.1.18)
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7. 権利設定前の異議申立て
何人も特許出願に対して付与前異議申立て(特許法25条(1))を行うことができる。付与前異議申立ては、出願公開後、特許権付与前までに請求することができる。
8. 上記6の判断に対する不服申立て
IPABによる拒絶査定維持の審決に不服がある場合、出願人は、この審決に対して高等裁判所に裁量不服申立て、または最高裁判所に特別許可申請を行うこともできる。IPABによる拒絶査定取消の審決に対して原則として不服を申し立てることはできない。
[権利設定後の争いに関する手続]
9. 権利設定後の異議申立て
利害関係人が、特許公報発行後、1年以内に付与後異議申立てを請求することができる。
関連記事:インドにおける特許無効手続きに関する統計データ(前編:特許付与後の異議申立て)」(2018.3.15)
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10. 設定された特許権に対して、権利の無効を申し立てる制度
利害関係人が、所定の無効理由の1つまたは複数に基づいて、特許の取消をIPABに審判請求することができる(特許法64条(1))。
関連記事:「インドにおける特許無効手続に関する統計データ(後編:取消請求および訴訟)」(2018.3.15)
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11. 権利設定後の権利範囲の修正
特許出願の願書および明細書などの補正は、特許権付与前はもちろんのこと、特許権付与後においても行うことができる(特許法57条(1))。しかし、拒絶査定がなされた後は補正を行うことができない。明細書の補正は、権利の部分放棄、訂正、または釈明による方法で行わなければならず、事実の挿入を目的とするものでなければならない(特許法59条(1))。
特許権付与後に補正申請が行われた場合、特許庁は、その補正の内容が本質的(実体的)なものか否かを審査し、補正内容が本質的なものである場合、補正申請の内容を公告する(特許法57条(3)、特許規則81条(3)(a))。補正内容が形式的なものである場合でも、管理官の裁量によって公告することもできる(特許法57条(3))。利害関係人は、補正の内容に異議がある場合、補正申請の公告の日から3か月以内に異議申立てを行うことができる(特許法57条(4)、特許規則81条(3)(b))。
12. その他の制度
(1) 外国出願許可(特許法39条)
特許法は、外国へ特許出願を行おうとする「インドに居住する者」に対して、外国出願許可(FFL: Foreign Filing License)の取得を義務付けている。インドに居住する者は、原則として外国出願許可を取得しなければインド国外で特許出願を行い、またはさせてはならない(特許法39条(1))。また、当該発明が国防目的または原子力に関連する判断した場合、特許庁は、中央政府の事前承認なしに外国出願許可を付与できない(同第39条(2))。発明者および出願人の一人でもインドに居住する者であれば本法は適用される。ただし、保護を求める出願がインド国外居住者によりインド以外の国において最初に出願された発明に関しては本法は適用しない(同第39条(3))。外国出願許可の規定に違反した場合、対応するインド特許出願は放棄されたものとみなされ、付与された特許権は無効理由を有する(特許法64条(1)(n))。また、外国出願許可の規定に違反した者は、禁固もしくは罰金に処され、またはこれらが併科される(特許法118条)。
(2) 国内実施報告制度(特許法146条)
インドには、特許発明の商業的実施状況を定期的に報告することを毎年、特許権者および実施権者に義務付ける独自の制度が存在する。排他的権利を有する特許権者に対してインドにおける特許発明の適正な実施を促すための制度である。実施状況の報告を怠ると罰金の対象となり、実施状況の虚偽報告を行った者には罰金刑または禁固刑、またはこれらが併科される。インド特許庁は、実施の状況を公開することができる。インドにおいて適正に実施されていない特許に対して、利害関係人が強制実施権を申請できる。
(3) 拒絶理由解消期間(特許法21条)
特許法においては、所定の期間内(拒絶理由解消期間)に特許出願を特許権付与可能な状態にしなければ、特許出願は放棄されたものとみなされる。拒絶理由解消期間は、最初の審査報告(FER:First Examination Report、日本の拒絶理由通知書に相当)の発送日(The date of issue (dispatch):FERに記載された日)から6か月である(特許法21条、特許規則24B条(5))。
(4) 聴聞(特許法14条)
インドにおいて聴聞(Hearing)は、特許審査手続を構成する重要な手続の1つである。出願人から聴聞の申請があれば、インド特許庁は出願人に不利な決定を行う前に出願人に聴聞を受ける機会を与えなければならない。インド特許庁は職権で聴聞を設定することもできる。出願人は、拒絶理由解消期間内に応答書を提出し、聴聞の申請を行えば、拒絶査定が行われる前に聴聞を受ける機会が出願人に付与され(特許法14条)、拒絶理由解消期間経過後も特許出願をインド特許庁に係属させることができる。
関連記事:「日本とインドの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較」(2019.10.31)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17841/
関連記事:「インド国内で生まれた発明の取扱い―インド国外への特許出願に対する制限」(2019.9.26)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17745/
関連記事:「インドにおける特許の実施報告制度」(2015.3.31)
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