ロシアにおける意匠の出願制度
【詳細】
意匠権は、物品の外観を決定する、工業的にまたは職人により製造された当該物品の審美的表現およびデザイン表現に対して与えられる。なお、以下に該当するものに対しては、意匠権は付与されない。
・専ら技術的機能により決定されるもの
・建築の著作物(小規模の建築形態を除く)、工業的構築物、水力技術に関する構築物等の定着物に関連するもの
・液体、気体、乾燥物質等といった不安定な形状の物体に関連するもの
・公共の利益、人間性または道徳に反するとみなされるもの
・(1)公共のシンボルまたは標識(例えば、旗、記章、紋章、銀行券)、(2)国際的組織および政府間組織の名称または旗、記章およびその他シンボルと標識、(3)管理および保障の正式な表示又は品質証明または純度証明極印(ホールマーク)、シール、賞およびその他の紋章を複製するか模倣するもの
・物品の製造者、物品の製造場所、または物品の容器、包装またはラベルにより、商品に関して消費者の誤解を招くもの
以下は、工業意匠として保護可能である。
・二次元(2D)物品(例、ラベル)
・三次元(3D)製品(例、包装)
・複合物品
・全体物品から独立した部品
・組物、および
・内装
○意匠出願の審査手続
意匠出願はロシア特許庁に出願する。意匠出願に際して、出願人は以下を提出する必要がある。
(提出書類)
・願書:意匠の名称、出願人の氏名および住所、創作者の氏名、住所、ならびに条約優先権に関する情報を記入する
・図面(例えば、写真、線画、CG画像):物品の外観の詳細図を提供しなければならない
・説明
・該当する場合、優先権主張の根拠となる出願の認証謄本(出願日から3ヶ月以内に提出することができる)および
・該当する場合、委任状(委任状の提出条件は規定されていない)
出願日を確保するためには、意匠の願書をその表示および説明とともに特許庁に提出する必要がある。意匠を電子出願することはできない。
発明特許出願と同様に、意匠出願については、方式審査と実体審査が行われる。
方式審査においては、以下の点がチェックされる
・出願資料の完全性と正確性
・請求される工業意匠の、工業意匠としての適格性
・工業意匠としての分類の正確性
・単一性要件および
・料金の納付
これらの条件の1つでも遵守されていない場合、特許庁はオフィス・アクションを発行する。オフィス・アクションへの応答期間は、発行日から3ヵ月間であり、延長が可能である。
方式審査を通過すると自動的に実体審査が開始され、実体審査には以下が含まれる。
・優先権の確立
・追加提出資料が出願意匠の本質を変更しているか否かの検証および
・意匠登録要件を遵守しているか否かの検証
これらの条件の1つでも遵守されていない場合、特許庁は拒絶理由通知書を発行する。拒絶理由通知への応答期間は、発行日から3ヶ月間であり、延長が可能である。
意匠がすべての登録要件を満たしている場合、意匠権付与決定書が発行される。付与料金が納付されると、当該意匠は登録および公告される。
特許庁が意匠出願を拒絶した場合、出願人は、その決定に対して不服申立をすることができ、ロシア特許庁はその不服申立を審理するための専門家委員会を指名する。
意匠の出願は、1つの意匠、またはそれが単一の創作的概念を形成する範囲において相互に関連する意匠群に関するものでなければならない(意匠の単一性の概念)。
○グレースピリオド
工業意匠の創作者、出願人または(特に、展示会での工業意匠の開示の結果として)これらの者から当該情報を入手したあらゆる個人による意匠に関する情報の開示は、当該情報の開示から12ヶ月以内に意匠が出願されることを条件として、意匠の登録を妨げない(新規性喪失の例外)。
○新規性
製品イメージに反映され、かつその有意な特徴のリストに示される意匠の有意な特徴の全体が、意匠の優先日以前に国内または国外で公知となっている情報から知り得ない場合に、当該意匠は新規性を有するものとみなされる(絶対的新規性)。有意な特徴とは、形状、構成、装飾および色彩パターンを含む製品の外観の審美的特性および人間工学的特性を決定する特徴である。
さらに、請求される意匠は、いわゆる「先行する権利」に対して新規でなければならない。先行する権利とは、すなわち、各出願日の優先日以前に他者がロシア特許庁に出願した係属中の(未公告の)すべての意匠出願(ただし、これら意匠出願が後に公告されることを条件とする)、およびロシア連邦内で登録された意匠をいう。
○創作性
物品の特徴の創作的性質によりに請求される意匠の有意な特徴が生じている場合、当該意匠は創作性を有するとみなされる。
○保護期間
意匠権の保護期間は5年間であり、さらに5年毎に4回にわたり延長することができる。最大保護期間は25年間となる。
○不服申立
特許庁が意匠出願を拒絶した場合、出願人は、拒絶決定に対して不服を申し立てることができ、特許庁は、その不服申立を審理するために専門家委員会を指名する。不服申立は、拒絶決定の発行日から7ヶ月以内に行わなければならない。