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イランにおける商標出願時の商品役務記述の留意点

 イランでは、商品および役務に関するガイドラインとして、ニース国際分類の第9版を採用しているが、第33類(ビールを除くアルコール飲料)および第32類のアルコール飲料は、イランでは登録できない。

 

 イランにおいては、一出願多区分制度を採用しているため、一つの出願に複数の区分を含める出願が認められている。

 

 現在、IIPOの商標局における商標登録手続は、電子出願システムにより遂行されている。この電子出願システムは、登録手続の迅速化を目指しており、出願の受理および出願番号の付与は、完全なペーパーレス化により事実上即時に遂行されている。

 

 この電子出願システムにおける商品および役務は、ニース国際分類に従い45の区分に分けられているが、上記に挙げた第33類および第32類のアルコール飲料は除かれている。

 

 イランにおける電子出願システムの利点は、出願人により直接情報が入力されるため、IIPOにおいて再び手動で入力する事による入力ミスがない事である。ただし、出願時に何らかの不備があった場合、出願後に出願内容を修正することはできない。

 

 IIPOは、電子出願システムの採用により、出願時における指定商品および役務に関して任意の記述を受け入れなくなったため、商標出願人は、必ず指定商品または役務をWIPOのニース協定に基づく「商品およびサービスの国際分類」における商品または役務の一覧表から選択して、各指定商品または役務についての正確なWIPO索引番号を提示する必要がある。ただし、今のところ、イランの電子プラットフォーム上の商品および役務一覧は、全てのWIPO索引番号を完全には網羅していないので、電子プラットフォーム上でWIPO索引番号が付されていない商品または役務に関しては、指定することができないため、実務上、このような商品または役務を指定した出願をすることはできない。

 

 商標出願人または商標権者が、イランにおける出願、登録または更新の時点で、商標の使用または使用意思を証明しなければならないという明示的要件は存在しない。ただし、登録商標がイランにおいて3年以上にわたり使用されていない場合、当該登録は不使用を理由として第三者により不使用取消訴訟を受ける可能性がある。登録商標を用いて提供される商品もしくは役務に重大な変更が行われた場合に、この不使用取消訴訟を提起されると、当該登録商標は不使用取消の対象となり得る。ただし、登録商標の指定商品もしくは役務と変更後の商品もしくは役務が、実質的に類似の商品もしくは役務に関して使用される場合には、商標権者は当該商標に対する権利を維持することができる。

 

 登録商標の指定商品もしくは役務に関する軽微な変更は、新規の出願を提出しなくても許容されるが、商品もしくは役務の実質的な変更が行われた場合は、当該商標の保護を望む商標権者は、新規の出願を検討する必要がある。

アラブ首長国連邦における商標出願時の商品役務記述の留意点

 UAEにおいて、商標を規律する法令は、アラブ首長国連邦商標法である。同法は、ガイドラインとして、ニース国際分類の第10版を採用しているが、33類(ビールを除くアルコール飲料)、32類のアルコール飲料および29類の豚肉を指定商品とする商標は登録が禁止されている。

 

 現在、UAE商標局における商標出願は、オンライン手続であるが、依然として一部の書類の提出が必要である。委任状および優先権証明書のコピーと一緒に、電子出願をオンライン文書管理システムにアップロードするが、電子出願の完了後に、出願書および付属書類の紙面コピーを商標局に提出する必要があり、登録手続が完全にペーパーレスではない。

 

 商品および役務は、ニース国際分類に従い45の区分に分けられているが、上記に述べた33類は除かれている。また、指定商品および役務の記述には制約があり、出願人は、商標局が承認しているニース国際分類の第10版に明記された文言しか使用できない。したがって、優先権を主張する場合においても、優先権上の指定商品または役務の記載ではなく、商品または役務の記載はニース国際分類の第10版の記載を使用する必要がある。

 

 重要な点として、商標局は、ニース国際分類の類見出し(クラスヘディング)の記載を使用した場合であっても、不明確または曖昧すぎるという理由で拒絶することはない。したがって、出願人は、具体的な商品もしくは役務を記述することなく、区分全体の類見出し(クラスヘディング)を指定して出願することができる。ただし、指定商品もしくは役務の区分ごとに別個の出願を提出しなければならず、複数の分類を一出願で指定する出願は認められていない。

 

 商標の出願人または商標権者が、UAEにおける出願、登録または更新時に商標の使用または使用意思を証明しなければならないという明示的要件は存在しない。しかし、登録日から連続する5年以内に商標を使用しない場合、不使用を理由に商標登録が取り消されるおそれがある。登録商標を用いて提供される商品もしくは役務に関して、重大な変更が行われている場合、不使用取消訴訟において当該商標は指定商品もしくは役務に関して使用されていないと判断される可能性がある。ただし、登録商標の指定商品もしくは役務と変更後の商品もしくは役務が実質的に類似している商品もしくは役務に関して使用される場合には、商標権者は当該登録商標に対する権利を保持することができる。

 

 登録商標の指定商品もしくは役務に関する軽微な変更は、新規の出願を提出しなくても許容されるが、商品もしくは役務の実質的な変更が行われた場合においては、権利確保のためには、別途、新規の出願が必要である。