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メキシコ商標制度概要

 メキシコにおける商標制度は、産業財産法およびその施行規則に準拠している。さらにメキシコは様々な国または地域との間で協定および条約を締結している。知的財産に関する規定を含む複数の自由貿易協定(FTA)に加え、1995年に知的所有権の貿易関連側面に関する協定(TRIPS協定)、2013年にマドリッド協定議定書に加盟している。なお、NAFTA(北米自由貿易協定)は廃止され、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)が2020年7月に発効した。商標については第II部第20章第C節第20.17条~第20.27条に記載されている。また、1976年に工業所有権の保護に関するパリ条約、1900年にメキシコ‐フランス間の工業所有権の相互保護に関する条約にも署名している。

1.未登録商標
(1) 未登録商標の保護
 メキシコにおいて、商標の使用は登録を得るための要件ではないが、未登録商標の使用は商標権侵害を提起されたときに先使用権の抗弁としての権利をもたらす(産業財産法第175条、第258条)。

(2) 未登録商標の使用の要件
 未登録商標の使用が、先使用権として商標権侵害への抗弁として認められるためには、未登録商標が継続的に善意で使用されていなければならない(産業財産法第175条(1))。産業財産法は、要求される使用期間について定めていないが、かかる使用が通常の取引慣行にしたがって行われており、抵触する登録商標の出願日または主張された使用開始日より前の少なくとも3から6か月間にわたり使用されていることが望ましい。

 未登録商標を根拠として第三者の登録商標の有効性を争う場合、その未登録商標の所有者は、登録商標の出願日または主張された使用開始日より前に、その未登録商標を継続的に使用していたことを立証しなければならない(産業財産法第258条(2))。この場合、当該所有者はその未登録商標の善意の使用を立証する必要はない。

2.登録商標
(1) 商標出願
 何人もメキシコにおいて商標出願することができる(産業財産法第170条)。ただし、メキシコでは一商標多区分出願(複数分類をカバーする出願)が認められていないため、同一商標を複数の分類に出願する場合は、各々の分類ごとに別々の出願をしなければならない(産業財産規則第57条)。

 メキシコで商標出願に必要な書類および情報は、以下のとおりである(産業財産法第31条、第214条、第219条)。

(a) 出願人の名前、国籍および住所
(b) 商標名およびカラーの商標見本(該当する場合)
(c) 指定商品または役務(ニース国際分類に準拠)
(d) メキシコにおける商標の使用開始日(該当する場合)
(e) 優先権を主張する場合、優先権情報(優先権の基礎となる出願番号および原出願国)
(f) 委任状

(2) 保護の範囲
 2018年の改正法までは、文字商標・図形商標・結合商標・立体商標という伝統的な商標以外は保護を受けることが困難であった。しかし、改正後、非伝統的商標(新しいタイプの商標)の保護について、従来の視覚による認識可能性(つまり、商標権の保護対象は目に見えるものでなければならない)という要件がなくなった。改正法には、視覚により認識可能なもの(ホログラムの図を含む)、音、匂い、トレードドレスが商標として登録されることが可能であることが明記された(産業財産法第172条第5項、第6項、第7項)。

 商標としての保護が認められない標章に関して、産業財産法第173条には、商標出願を拒絶する法律上の理由が規定されている。以下に拒絶理由の一部を示す。

・標章がその商品または役務の品質、原材料、効能、用途、数量等を表す記述的語句または一般名称である場合(第4項)
・標章が特定の商品の製造と関連する地理的表示または地名を含んでいる場合(第11項)
・標章が一般に使用されている形状・標識、または商品の性質もしくは機能から生じる形状のみからなる場合(第2項)

 ただし、多くの拒絶理由は、先行する類似商標(同一または密接に関連した商品または役務をカバーしている商標)の登録または出願による混同の虞に基づくものである(産業財産法第173条第18項)。

 特定の商標が先行商標と混同を生じるほど類似しているかどうかを判断する基準は、連邦裁判所の判例に示されている。したがって、審査官は判例に基づいた下記の6項目を考慮に入れなければならない。

 ・商標の外観上、称呼上および観念上の類似点
 ・全体として考慮した場合における商標の類似点
 ・指定商品または指定役務の類似点
 ・商品または役務と関連する分野の需要者
 ・流通経路
 ・図案と文字の組み合わせ商標の場合、図案より文字部分を重要な識別要素として考慮すること

 さらに、メキシコにおいて有名な商標は、認知度が高いレベルの「著名商標」と「著名商標」より認知度が低いレベルの「周知商標」のうち、いずれか一方のレベルで保護を受けることができる(産業財産法第190条)。メキシコにおいて一般的に有名な商標は、著名商標とみなされる。周知商標は、より限定された範囲で有名な商標であって、例えば特定の分野の需要者または取引業界においてのみ有名な商標が挙げられる。

 メキシコ産業財産庁(Instituto Mexicano de la Propiedad Industrial (IMPI))は、商標が著名または周知である旨の証明書を発行する権限を与えられている(産業財産法第191条)。

3.審査手続
 商標出願されると、審査官は最初に方式審査を行うが、その際に指定商品または役務の分類についても審査する。産業財産法では分類に関する最終決定権はIMPIにあるとしている。

 方式審査後、出願の公告が行われる。異議申立期間は、出願公告の翌日から1か月以内であり、利害関係人は異議を申し立てることができる(産業財産法第221条)。

 異議申立がなく異議申立期間が満了した場合、実体審査が開始される(産業財産法第225条)。実体審査において拒絶理由が見つかると、審査官は拒絶理由通知を送達し、出願人には応答書を提出するための期間が与えられる(産業財産法第225条)。

 IMPIは応答書を審査し、最終的に登録証または拒絶査定書を送達する(産業財産法第230条)。拒絶査定に対して不服がある場合、出願人はIMPIまたは裁判所のいずれかに不服申立を提起することができる(産業財産法第329条、第407条)。

 特筆すべき重要な点として、IMPIは可能な限り拒絶理由通知の送達回数を抑えようとしているものの、産業財産法には特段制限が設けられていないため、方式審査と実体審査のいずれの段階において何度も拒絶理由通知が送達される可能性がある。

4.異議申立
 出願の公告後、利害関係人は公告日から1か月以内に異議申立書を提出することができる(産業財産法第221条)。
 
 異議申立があった場合、出願人が妥当とみなす証拠を述べ、かつ、提示することができるように、異議申立について出願人にも通知される。出願人に、異議申立に関して出願人の権利が妥当なものであることを明示するために、出願人に2か月の期間が付与される(産業財産法第225条)。
 異議申立手続は、単独では審理されない。異議申立を受けた出願は、通常の審査手続が保留されることなく、異議申立人の異議理由および出願人の答弁に関しては通常の実体審査の中で検討される(産業財産法第224条、第225条)。

 当該出願が拒絶された場合、産業財産庁は異議申立人に対して当該出願の拒絶を通知する(産業財産法第230条)。当該出願が登録された場合も、産業財産庁は異議申立人に対して当該出願の登録を通知する。

5.登録
 商標出願に対して異議申立がなく異議申立期間が満了し、その後の実体審査において拒絶理由が発見されなかった場合、または出願に対して異議申立が行われたが出願が承認された場合、IMPIは、当該商標出願の出願日の日付で商標を登録し,登録証を出願人に交付する(産業財産法第230条、第231条)。商標出願に対する拒絶理由通知が送達されなかった場合、出願日から6か月以内に登録証が交付される。

 商標登録は登録日から10年間有効に存続し、10年毎に更新することができる(産業財産法第178条)。商標登録の更新出願は、満了日の6か月前から6か月後までの間に申請することができる(産業財産法第237条)。この期間内での申請であれば、満了日を過ぎていても公費の追加発生は無い。更新出願するには、更新出願時にメキシコにおいて当該商標が使用されていなければならない。

6.使用の宣誓
 商標の権利者は、IMPIに対して、商標が使用されている指定商品又は役務を示して、その実際かつ有効な使用を宣言し、この宣言には、所要な手数料の納付を伴わなければならない(産業財産法第233条)。宣言は、登録が付与された時点から第3年目の終了後、3か月以内に、IMPIに提出されなければならない。
 登録の保護範囲は、使用が宣言されている商品又は役務に限って存続し、権利者が使用の宣言を行わない場合、登録は、IMPIの処分を必要とすることなく法律により失効する。

7.登録の抹消
(1) 放棄
 商標権者は、IMPIに申請書を提出することにより、自己の商標登録を自発的に抹消することができる(産業財産法第262条)。

(2) 取消
 指定商品または指定役務に関して商標が継続して3年間使用されていない場合、下記の場合を除き、その登録は不使用を理由に取り消され、商標登録簿から抹消される(産業財産法第260条)。

・正式な使用許諾を受けた使用者(専用使用権者や通常使用権者)が、取消請求の提起日の直前の継続する3年間に当該商標を使用していた場合(産業財産法第235条)

・商標権者に不使用の正当な理由がある場合(例えば、当該商標の指定商品または指定役務に適用される輸入制限その他の行政規制)(産業財産法第235条)

・実際かつ有効な使用の宣言が、第233条の条件に基づいてなされていない場合(産業財産法第260条)

(3) 無効
 商標登録は、下記のいずれかの無効理由に基づき、商標登録簿から抹消される(産業財産法第258条)。

・登録商標が、当該商標の出願日より前にメキシコまたは外国において同一または類似の商品または役務に関して使用されていた別の商標と同一または混同を生じるほど類似している場合。ただし、先使用の権利を主張する当事者は、登録商標の出願日または主張された使用開始日より前にメキシコまたは外国において継続的に自己の商標を使用していたことを立証しなければならない(産業財産法第258条(2))。かかる訴訟の出訴期限は、当該登録の公告日から5年以内である。

・願書に宣言された最初の使用日の信憑性を登録の権利者が証明せず、出願書類に記載された虚偽の情報に基づいて登録が付与された場合(産業財産法第258条(3))。かかる訴訟の出訴期限は、当該登録の公告日から5年以内である。

・既に同一または類似の商標が、同一または類似の商品または役務に関して登録されていた場合(産業財産法第258条(4))。かかる訴訟の出訴期限は、当該登録の公告日から5年以内である。

・外国で登録されている商標の商標権者から同意を得ていない代理人、代表者、使用者または販売業者により、当該商標の登録が取得された場合(産業財産法第258条(5))。かかる訴訟に適用される出訴期限はない。

・産業財産法または登録付与時に有効な法律に違反して、登録が付与された場合は、当該登録を取り消す一般的根拠が存在するので、かかる訴訟に適用される出訴期限はない。

・2018年の改正は、商標登録の無効化の原因として、「不誠実に得られた商標出願」を理由の1つに加えた(産業財産法第258条(6))。どのような場合に、登録を失効させる原因としての「不誠実」とみなされるのかはまだ明確ではない。同一または類似の商品またはサービスに使用された同一または混同の虞のある商標の、メキシコまたは海外での早期および継続的使用に起因する無効化訴訟を提起する制限条項に規定されている期間は、メキシコの商標登録の官報の発行日から「3年以内」であったものが「5年以内」に延長された。期間の延長に起因する失効は、出願日に関係なく、2018年8月10日以降に官報が発行された商標登録にのみ影響する。

8.未登録商標の権利
 商標登録は、当該登録商標の出願日または宣誓された使用開始日より前に同一または類似の商標を継続的に善意で使用していた第三者に対しては、対抗力を有しない(産業財産法第175条(1))。

 第三者による無許可の使用に対して、未登録の権利を直接行使することはできない。ただし、トレードドレスなどの識別性のある標識に対する権利は、登録を得ずとも、不正競争行為を理由に、権利行使することができる。

9.所有権の変更
 メキシコにおいて、商標の所有権の変更を登録する場合、所有権の変更を証明する書類を提出する必要がある(産業財産法第250条)。

 メキシコで作成された書類については認証の必要はないが、外国で作成された書類や外国知的財産官庁において作成された書類は、当該国のメキシコ領事による認証またはアポスティーユによる認証が必要となる。ハーグ条約締約国で作成された書類の場合は、「外国公文書の認証を不要とする条約(略称:認証不要条約)」(1961年10月5日のハーグ条約)に基づく付箋(=アポスティーユ)による外務省の証明を以って、当該国にある大使館・(総)領事館の領事認証があるものと同等のものとして、提出先国で使用することができる。

 公的ではない私的な所有権の変更が記されたライセンス契約書および譲渡契約書のような書類は、形式を問わず有効である。ただし、外国で作成された場合は、公証人による認証のみならず、さらに当該国のメキシコ領事による領事認証またはアポスティーユによる認証が必要となる。

 所有権の変更の登録は、IMPIによる変更申請書類の受領通知から約2か月を要する。

メキシコ商標制度概要

メキシコにおける商標制度は、1991年産業財産法(改正)およびその施行規則に準拠している。さらにメキシコは様々な国または地域との間で、知的財産に関する規定を含む複数の自由貿易協定(FTA)に加え、1995年に知的所有権の貿易関連側面に関する協定(TRIPS協定)、1976年に工業所有権の保護に関するパリ条約、1900年にメキシコ‐フランス間の工業所有権の相互保護に関する条約にも署名している。

 

1. 未登録商標

1-1. 未登録商標の保護

メキシコにおいて、商標の使用は登録を得るための要件ではないが、未登録商標の使用は、第三者に対して権利行使可能な権利、および商標権侵害を提起されたときに先使用権の抗弁としての権利をもたらす。

 

1-2. 未登録商標の使用の要件

未登録商標の使用が、先使用権として商標権侵害への抗弁として認められるためには、未登録商標が継続的に善意で使用されていなければならない。産業財産法は、要求される使用期間について定めていないが、かかる使用が通常の取引慣行にしたがって行われており、抵触する登録商標の出願日または主張された使用開始日より前の少なくとも3から6か月間にわたり使用されていることが望ましい。

未登録商標を根拠として第三者の登録商標の有効性を争う場合、その未登録商標の所有者は、登録商標の出願日または主張された使用開始日より前に、その未登録商標を継続的に使用していたことを立証しなければならない(先使用権)。この場合、当該所有者はその未登録商標の善意の使用を立証する必要はない。

 

2. 登録商標

2-1. 商標出願

何人もメキシコにおいて商標出願することができる。ただし、メキシコでは一商標多区分出願(複数分類をカバーする出願)は認められていないため、同一商標を複数の分類に出願する場合は、各々の分類ごとに別々の出願をしなければならない。

メキシコで商標出願に必要な書類および情報は、以下のとおりである。

(a)出願人の名前、国籍および住所

(b)商標名およびカラーの商標見本(該当する場合)

(c)指定商品または役務(ニース国際分類に準拠)

(d)メキシコにおける商標の使用開始日(該当する場合)

(e)優先権主張する場合、優先権情報(優先権の基礎となる出願番号および基礎出願国)

(f)委任状

 

2-2. 保護の範囲

2018年の改正法までは、文字商標・図形商標・結合商標・立体商標という伝統的な商標以外は保護を受けることが困難であった。しかし、改正後、非伝統的商標(新しいタイプの商標)の保護について、従来の視覚による認識可能性(つまり、商標権の保護対象は目に見えるものでなければならない)という要件がなくなった。改正法には、視覚による認識可能なもの(ホログラフィックの図を含む)、音、匂い、トレードドレスが商標として登録されることが可能であることが明記された(産業財産法第89条第5項、第6項、第7項)。改正法の規則や審査基準がまだ公開されていないため、登録可能となる新しいタイプの商標の出願方法については未定である。しかし、近年、世界的に新しいタイプの商標を認める国がますます増えてきている。メキシコが保護を認めるようになったことで、ラテンアメリカ諸国の中で保護を明確に認めていないのはブラジルだけとなった。

 

商標としての保護が認められない標章に関して、産業財産法第90条には、商標出願を拒絶する法律上の理由が規定されている。以下に拒絶理由の一部を示す。

・標章がその商品または役務の品質、原材料、効能、用途、数量等を表す記述的語句または一般名称である場合

・標章が特定の商品の製造と関連する地理的表示または地名を含んでいる場合

・標章が一般に使用されている形状・標識、または商品の性質もしくは機能から生じる形状のみからなる場合

ただし、多くの拒絶理由は、先行する類似商標(同一または密接に関連した商品または役務をカバーしている商標)の登録または出願による混同の虞に基づくものである。

 

特定の商標が先行商標と混同を生じるほど類似しているかどうかを判断する基準は、連邦裁判所の判例に示されている。したがって、審査官は判例に基づいた下記の6項目を考慮に入れなければならない。

・商標の外観上、称呼上および観念上の類似点

・全体として考慮した場合における商標の類似点

・指定商品または指定役務の類似点

・商品または役務と関連する分野の需要者

・流通経路

・図案と文字の組み合わせ商標の場合、図案より文字部分を重要な識別要素として考慮すること

 

さらに、メキシコにおいて有名な商標は、認知度が高いレベルの「著名商標」と「著名商標」より認知度が低いレベルの「周知商標」のうち、いずれか一方のレベルで保護を受けることができる。メキシコにおいて一般的に有名な商標は、著名商標とみなされる。周知商標は、より限定された範囲で有名な商標であって、例えば特定の分野の需要者または取引業界においてのみ有名な商標が挙げられる。

 

メキシコ産業財産庁(Instituto Mexicano de la Propiedad Industrial (IMPI))は、商標が著名または周知である旨の証明書を発行する権限を与えられている。

 

3. 審査手続

商標出願されると、審査官は最初に方式審査を行うが、その際には指定商品または役務の分類についても審査する。産業財産法では分類に関する最終決定権はIMPIにあるとしている。

方式審査後、出願の公告が行われる。異議申立期間は、出願公告の翌日から1か月以内であり、何人でも異議を申し立てることができる。

異議申立がなしに異議申立期間が満了した場合、実体審査が開始される。実体審査において拒絶理由が見つかると、審査官は拒絶理由通知を送達し、出願人には応答書を提出するための期間が与えられる。

IMPIは応答書を審査し、最終的に登録証または拒絶査定書を送達する。拒絶査定に対して不服がある場合、出願人はIMPIまたは裁判所のいずれかに不服申立を提起することができる。

特筆すべき重要な点として、IMPIは可能な限り拒絶理由通知の送達回数を抑えようとしているものの、産業財産法には特段制限が設けられていないため、方式審査と実体審査のいずれの段階において何度も拒絶理由通知が送達される可能性がある。

 

4. 異議申立

出願の公告後、何人も公告日から1か月以内に異議申立書を提出することができる。1か月の異議申立期間の満了後に、異議申立を受けた出願は、10営業日以内に公報に公告され、当該出願人は、当該公告日から1か月以内に異議申立に対する答弁書を提出することができる。答弁書を提出しなかった場合でも、異議申立の理由を認めたとみなされることはない。

異議申立手続は、単独では審理されない。異議申立を受けた出願は、通常の審査手続が保留されることなく、異議申立人の異議理由および出願人の答弁に関しては通常の実体審査の中で検討される。

当該出願が拒絶された場合、産業財産庁は異議申立人に対して当該出願の拒絶を通知する。当該出願が登録された場合も、産業財産庁は異議申立人に対して当該出願の登録を通知する。

 

5. 登録

商標出願に対して異議申立がなく異議申立期間が満了した場合、または出願に対して異議申立が行われたが出願が承認された場合、IMPIは、当該商標出願の出願日の日付で商標を登録し,登録証を出願人に交付する。商標出願に対する拒絶理由通知が送達されなかった場合、出願日から6か月以内に登録証が交付される。

商標登録は出願日から10年間有効に存続し、10年毎に更新することができる。商標登録の更新出願は、満了日の6か月前から6か月後までの間に申請することができる。この期間内での申請であれば、満了日を過ぎていても公費の追加発生は無い。更新出願するには、更新出願時にメキシコにおいて当該商標が使用されていなければならない。

 

6. 登録の抹消

6-1. 放棄

商標権者は、IMPIに申請書を提出することにより、自己の商標登録を自発的に抹消することができる。

 

6-2. 取消

産業財産法第130条および第152条(II)の規定に従い、指定商品または指定役務に関して商標が継続して3年間使用されていない場合、下記の場合を除き、その登録は不使用を理由に取り消され、商標登録簿から抹消される。

・正式な使用許諾を受けた使用者(専用実施権者や通常実施権者)が、取消請求の提起日の直前の継続する3年間に当該商標を使用していた場合

・商標権者に不使用の正当な理由がある場合(例えば、当該商標の指定商品または指定役務に適用される輸入制限その他の行政規制)

 

6-3. 無効

商標登録は、産業財産法第151条に定められた下記のいずれかの無効理由に基づき、商標登録簿から抹消される。

・登録商標が、当該商標の出願日より前にメキシコまたは外国において同一または類似の商品または役務に関して使用されていた別の商標と同一または混同を生じるほど類似している場合。ただし、先使用の権利を主張する当事者は、登録商標の出願日または主張された使用開始日より前にメキシコまたは外国において継続的に自己の商標を使用していたことを立証しなければならない。かかる訴訟の出訴期限は、当該登録の公告日から3年以内である。

・メキシコにおける商標の使用開始日等、出願書類に記載された虚偽の情報に基づいて登録が付与された場合。かかる訴訟の出訴期限は、当該登録の公告日から5年以内である。

・既に同一または類似の商標が、同一または類似の商品または役務に関して登録されていた場合。かかる訴訟の出訴期限は、当該登録の公告日から5年以内である。

・外国で登録されている商標の商標権者から同意を得ていない代理人、代表者、使用者または販売業者により、当該商標の登録が取得された場合。かかる訴訟に適用される出訴期限はない。

・産業財産法または登録付与時に有効な法律に違反して、登録が付与された場合は、当該登録を取り消す一般的根拠が存在する。かかる訴訟に適用される出訴期限はない。

・2018年の改正案は、商標登録の無効化の原因として、悪意の商標出願を理由とした。どのような場合に、登録を失効させる原因としての「悪意」とみなされるのかはまだ明確ではない。同一または類似の商品またはサービスに適用された同一または混同の虞のある商標の、メキシコまたは海外での早期および継続的使用に起因する無効化訴訟を提起する制限条項に規定されている期間は、メキシコの商標登録の官報の発行日から「3年以内」であったものが「5年以内」に延長された。期間の延長に起因する失効は、出願日に関係なく、2018年8月10日以降に官報が発行された商標登録にのみ影響する。

 

7. 未登録商標の権利

産業財産法第92条(I)の規定に基づき、商標登録は、当該登録商標の出願日または主張された使用開始日より前に同一または類似の商標を継続的に善意で使用していた第三者に対しては、対抗力を有しない。

第三者による無許可の使用に対して、未登録の権利を直接行使することはできない。ただし、トレードドレスなどの識別性のある標識に対する権利は、登録を得ずとも、産業財産法第213条(I)および(IX)に定められた不正競争行為を理由に、権利行使することができる。

 

8. 所有権の変更

メキシコにおいて、商標の所有権の変更を登録する場合、所有権の変更を証明する書類を提出する必要がある。

メキシコで作成された書類については認証の必要はないが、外国で作成された書類や外国知的財産官庁において作成された書類は、当該国のメキシコ領事による認証またはアポスティーユによる認証が必要となる。ハーグ条約締約国で作成された書類の場合は、「外国公文書の認証を不要とする条約(略称:認証不要条約)」(1961年10月5日のハーグ条約)に基づく付箋(=アポスティーユ)による外務省の証明を以って、当該国にある大使館・(総)領事館の領事認証があるものと同等のものとして、提出先国で使用することができる。

公的ではない私的な所有権の変更が記されたライセンス契約書および譲渡契約書のような書類は、形式を問わず有効である。ただし、外国で作成された場合は、公証人による認証のみならず、さらに当該国のメキシコ領事による領事認証またはアポスティーユによる認証が必要となる。

所有権の変更の登録は、IMPIによる変更申請書類の受領通知から約2か月を要する。

 

アルゼンチンにおける商標制度

1.法的枠組み

 

アルゼンチンにおける商標制度は、アルゼンチン商標法および商標規則に規定されている。

 

アルゼンチンは、パリ条約、GATT-TRIPS協定といった知的財産および商標に関する規則および規定を含んでいる国際条約の加盟国でもある。ただし、マドリッドプロトコルには加盟していない。

 

2.商標権の主体

 

国内または外国のいかなる個人または事業体も、アルゼンチンにおいて商標出願を行ない、その商標権者となることができる。複数の権利者が一つの商標を共有することもできる。

 

3.出願の方式要件

 

商標出願を提出するために必要な出願人に関する情報は、次のとおりである。

(1)出願人の正式名

(2)実際の住所および連絡先となるブエノスアイレス市内の法定住所

(3)個人である場合は、国籍および既婚・未婚の区別

 

出願人情報以外の方式要件として、次のものが要求される

(1)商標見本

(2)指定商品または役務

(3)優先権を主張する場合は優先権情報

(4)代理人委任状(公証人およびアポスティーユにより認証されたもの)

 

アルゼンチンは、商品および役務に関するニース国際分類の第11版を適用しているが、1出願に2分類以上の分類を指定する出願は認められていないため、出願人は区分ごとに出願を提出しなければならない。出願は、該当する区分における全ての商品または役務を指定することができる。

 

4.存続期間

 

商標は登録日から10年の存続期間を有し、その後は、更新期日前の5年以内に商取引において使用されていることを条件として、10年ごとに更新することができる。

 

5.保護範囲

 

以下のものが、商標として登録可能である。

(1)意味の有無を問わないあらゆる言葉、および図案

(2)紋章

(3)印章

(4)肖像

(5)商品またはそのパッケージに用いられる色の組合せ

(6)パッケージ

(7)文字と数字の組合せ

(8)識別力のある書体による文字または数字

(9)キャッチフレーズ

 

問題となるのは、商標が識別力を有しているかどうかであるため、匂い、音および立体商標もアルゼンチンにおいて登録可能である。

 

商標法第2条の規定に基づき、指定商品もしくは役務の必然的もしくは一般的な呼称とみなされる、または、指定商品もしくは役務の機能、品質、その他の特徴の説明とみなされる名称および言葉は、商標として認められない。商品の形状も、商標とはみなされない。また、商品本来の色または商品全体に用いられる単一の色も、商標とはみなされない。一般的および日常的に使用されるようになった名称、言葉および語句も、商標として登録できない。

 

さらに、商標法第3条の規定に基づき、先行商標と同じ商品または役務を対象とする同一または類似の商標は、登録できない。同様に、原産地名称、または指定商品もしくは役務の性質、品質、製造技術、機能、出所、その他の特徴に関して誤認を招くおそれのあるいかなる商標も、登録できない。アルゼンチン国家、地方自治体または他の国家および承認された国家により使用されている名称、言葉または象徴も登録できない。営業活動の説明的な呼称も登録することはできない。

 

最も一般的な拒絶理由は、同一または類似の商品または役務に用いられる先行商標との混同のおそれである。

 

商標が先行商標と混同を生じるほど類似しているかどうかを判断するためには下記について検討しなければならない。

 

(1)商標間における外観類似、称呼類似および観念類似があるかどうか。なお、観念上の相違が存在する場合には、外観上または称呼上の類似が存在するかどうかに関係なく、当該商標の登録は許可される。

(2)商品または役務の抵触または類似点が存在するかどうか。

(3)商品または役務の需要者、さらに販売ルートが同じかどうか。

(4)双方の商標が図案を含んでいる場合は、商標の文字部分を比較することが最も重要であること。

 

著名商標は、指定商品または役務の需要者であるかどうかに関係なく、特別な保護を与えられる。したがって、著名商標は、後願と同じ区分に登録されていなくても、後願の登録を阻止することができる。

 

特許庁は著名商標の認定を行わないが、裁判所は、判例を考慮しながら、該当事件で提出された証拠に基づいて、著名商標を認定することができる。ただし、世界的な知名度と評判がある場合、著名性を立証することなく著名商標の認定を受けることができる。

 

6.登録手続

 

商標出願が提出された後、方式審査が行われ、全ての方式要件が満たされていると判断されると、当該商標は商標公報において公告される。

 

公告には、出願された商標、出願人の名前、出願時の指定商品または役務、該当する場合は優先権情報、および出願日が含まれている。

 

公告の日から30日以内に、第三者は異議申立を提起することができるが、異議申立を提起する正当な利害関係がなければならない。

 

異議申立期間が終了すると、特許庁は当該出願の実体審査を行う。実体審査は、異議申立期間の終了から約6ヵ月後に行われる。特許庁は、登録簿において同一区分に同一または類似の商標が登録されているかどうかについて調査する。

 

実体審査において、問題となる先行商標が見つからなければ、特許庁は登録証(現在では電子形式による)を発行し、登録手続が完了する。

 

一方、特許庁が登録簿において問題となる先行商標を見つけた場合、当該先行商標を引例とする拒絶理由通知が出願人に送達される。出願人は、拒絶理由通知に対して150日の応答期間を与えられ、その期間内に先行商標の権利者と友好的に和解する努力を通して、または先行商標の取得により、または和解交渉をより効果的に行う事を目的とした訴訟提起を通して、先行商標の問題を解消する必要がある。この最後の選択肢である訴訟は、先行商標に対する不使用取消訴訟または無効訴訟をいう。

 

特許庁による最終拒絶としての拒絶査定通知に不服の場合、連邦裁判所に提訴することができる。

 

7.不使用取消

 

登録商標を維持するには、商標は登録後5年以内に商取引において使用されなければならない。商標の登録日から6年目の初日以降、当該商標の使用がまだ開始されていない場合には、正当な利害関係を有するいかなる第三者も、当該商標の不使用を理由に取消を請求することができる。この不使用取消請求については、特許庁は決定を下す権限がないため、連邦裁判所に提起しなければならない。

 

不使用取消を避けるためには、上記の5年以内に少なくとも一つの商品または役務に、商標が使用されていなければならない。なお、使用している商品または役務は不使用取消対象とされている当該商標登録の指定商品または指定役務である必要は無いが、かかる使用は商取引において行われなければならない。

 

使用が十分に証明されなかった場合、当該商標は取り消され、登録簿から削除されることになる。

 

8.無効

 

第三者が登録簿から商標を削除するもう一つの手段が、当該商標の無効宣言を求めて無効訴訟を提起することである。第三者の請求に基づいて商標の無効を宣言できるのは、連邦裁判所のみである。

 

無効宣言の理由は、商標法第24条に明確に定められている。

 

第24条

登録商標は次の各場合に該当するときは、無効とする。

(a) 本法の規定に違反するとき

(b) 当事者が登録出願の際に当該商標が第三者に属していることを知っていたとき又は知っているべき立場にあったとき

(c) 登録商標の売却目的で商標登録にかかわる常習者が当該商標の売却目的でこれを登録したとき

 

最も一般的な理由は、商標権者が自己の出願時において当該商標が第三者に帰属することを知っていた、または知っていたはずとの理由に基づく冒認出願である。特に、真正な権利者と何の関係もない者により当該商標が出願された場合が最も多い。

 

無効宣言を獲得するには、当該商標権者がアルゼンチンに出願した時点より前に当該商標が存在していたこと、さらに当該商標権者が当該商標の存在について知っていたことを立証しなければならない。その場合、カタログ、パンフレット、広告、スポンサー契約および請求書などの証拠を用いることができる。

 

この無効訴訟に関しては、提訴時効はない。

 

9.未登録商標

 

アルゼンチンでは、商標の登録は義務づけられていないが、未登録商標が保護されるためには、権利者は継続的に商取引において当該商標を使用しなければならず、相当の期間にわたり当該商標に関する顧客を生み出していなければならない。未登録でも保護され得る商標は、事実上の商標(de facto trademark)と呼ばれており、第三者に対する権利行使が可能である。

メキシコ商標制度概要

【詳細】

メキシコにおける商標制度は、1991年産業財産法(改正)およびその施行規則に準拠している。さらにメキシコは様々な国または地域との間で、知的財産に関する規定を含む複数の自由貿易協定(FTA)に加え、1995年に知的所有権の貿易関連側面に関する協定(TRIPS協定)、1976年に工業所有権の保護に関するパリ条約、1900年にメキシコ‐フランス間の工業所有権の相互保護に関する条約にも署名している。

 

1.未登録商標

1-1.未登録商標の保護

メキシコにおいて、商標の使用は登録を得るための要件ではないが、未登録商標の使用は、第三者に対して権利行使可能な権利、および商標権侵害を提起されたときに先使用権の抗弁としての権利をもたらす。

 

1-2.未登録商標の使用の要件

未登録商標の使用が、先使用権として商標権侵害への抗弁として認められるためには、未登録商標が継続的に善意で使用されていなければならない。産業財産法は、要求される使用期間について定めていないが、かかる使用が通常の取引慣行にしたがって行われており、抵触する登録商標の出願日または主張された使用開始日より前の少なくとも3‐6ヵ月間にわたり使用されていることが望ましい。

未登録商標を根拠として第三者の登録商標の有効性を争う場合、その未登録商標の所有者は、登録商標の出願日または主張された使用開始日より前に、その未登録商標を継続的に使用してきたことを立証しなければならない(先使用権)。この場合、当該所有者はその未登録商標の善意の使用を立証する必要はない。

 

2.登録商標2-1.商標出願

何人もメキシコにおいて商標出願することができる。ただし、メキシコでは一商標多区分出願(複数分類をカバーする出願)は認められていないため、同一商標を複数の分類に出願する場合は、各々の分類ごとに別々の出願をしなければならない。

 

メキシコで商標出願に必要な書類および情報は、以下のとおりである。

(a)出願人の名前、国籍および住所

(b)商標名およびカラーの商標見本(該当する場合)

(c)指定商品または役務( ニース国際分類に準拠)

(d)メキシコにおける商標の使用開始日(該当する場合)

(e)優先権主張する場合、優先権情報(優先権の基礎となる出願番号および基礎出願国)

(f)委任状

 

2-2.保護の範囲

産業財産法第89条の規定により、視認可能なすべての標識は十分な識別性を有し、特定の事業者の商品または役務と他の事業者の商品または役務とを識別できる限り、商標としての保護を受けることができる。匂い商標および音商標は、視認可能な標識とはみなされないため保護を受けられない。一方、立体商標は視認可能な標識であるため保護を受けられる。

 

商標としての保護が認められない標章に関して、産業財産法第90条には、商標出願を拒絶する法律上の理由が規定されている。以下に拒絶理由の一部を示す。

・標章がその商品または役務の品質、原材料、効能、用途、数量等を表す記述的語句または一般名称である場合

・標章が特定の商品の製造と関連する地理的表示または地名を含んでいる場合

・標章が一般に使用されている形状、または商品の性質もしくは機能から生じる形状のみからなる場合

ただし、多くの拒絶理由は、先行する類似商標(同一または密接に関連した商品または役務をカバーしている商標)の登録または出願による混同の虞に基づくものである。

 

特定の商標が先行商標と混同を生じるほど類似しているかどうかを判断する基準は、連邦裁判所の判例に示されている。したがって、審査官は判例に基づいた下記の6項目を考慮に入れなければならない。

・商標の外観上、称呼上および観念上の類似点

・全体として考慮した場合における商標の類似点

・指定商品または指定役務の類似点

・商品または役務と関連する分野の需要者

・流通経路

・図案と文字の組み合わせ商標の場合、図案より文字部分を重要な識別要素として考慮すること

 

さらに、メキシコにおいて有名な商標は、認知度が低いレベルの「周知商標」と認知度が高いレベルの「著名商標」のうち、いずれか一方のレベルで保護を受けることができる。メキシコにおいて一般的に有名な商標は、著名商標とみなされる。周知商標は、より限定された範囲で有名な商標であって、例えば特定の分野の需要者または取引業界においてのみ有名な商標が挙げられる。

 

メキシコ産業財産庁(Instituto Mexicano de la Propiedad Industrial (IMPI))は、商標が周知または著名である旨の証明書を発行する権限を与えられている。

 

3.審査手続

商標出願されると、審査官は最初に方式審査を行うが、その際には指定商品または役務の分類についても審査する。産業財産法では分類に関する最終決定権はIMPIにあるとしている。

方式審査後、審査官は実体審査として絶対的拒絶理由および相対的拒絶理由の審査を行う。

方式審査での不備または実体審査での拒絶理由が見つかると、審査官は拒絶理由通知を送達し、出願人には応答書を提出するための期間が与えられる。

IMPIは応答書を審査し、最終的に登録証または拒絶査定書を送達する。拒絶査定に対して不服がある場合、出願人はIMPIまたは裁判所のいずれかに不服申立を提起することができる。

特筆すべき重要な点として、IMPIは可能な限り拒絶理由通知の送達回数を抑えようとするものの、産業財産法は制限を設けていないため、方式審査と実体審査のいずれの段階においても何度も拒絶理由通知が送達される可能性がある。

 

4.異議申立

現行の産業財産法は、異議申立制度を有していない。しかし、産業財産法第151条に定められた取消理由に基づき、商標登録を取消すことができる。

 

5.登録

商標出願に対して異議申立がなく異議申立の通知期間が満了したとき、または出願に対して異議申立が行われたが出願が承認されたとき、IMPIは、登録出願の日付で商標を登録し,登録証を出願人に交付する。商標出願に対する拒絶理由通知が送達されなかった場合、出願日から6ヵ月以内に登録証が交付される。

商標登録は出願日から10年間有効に存続し、10年毎に更新することができる。商標登録の更新出願は、満了日の6か月前から6か月後までに申請することができる。この期間内での申請であれば、満了日を過ぎていても公費の追加発生は無い。更新出願するには、更新出願時にメキシコにおいて当該商標が使用されていなければならない。

 

6.登録の抹消

6-1.放棄

商標権者は、IMPIに申請書を提出することにより、自己の商標登録を自発的に抹消することができる。

 

6-2.取消

産業財産法第130条および第152条(II)の規定に従い、指定商品または指定役務に関して商標が継続して3年間使用されない場合、下記の場合を除き、その登録は不使用を理由に取り消され、商標登録簿から抹消される。

・正式な使用許諾を受けた使用者(専用実施権者や通常実施権者)が、取消請求の提起日の直前の継続する3年間に当該商標を使用していた場合

・商標権者に不使用の正当な理由がある場合(例えば、当該商標の指定商品または指定役務に適用される輸入制限その他の行政規制)

 

6-3.無効

商標登録は、産業財産法第151条に定められた下記のいずれかの無効理由に基づき、商標登録簿から抹消される。

・登録商標が、当該商標の出願日より前にメキシコまたは外国において同一または類似の商品または役務に関して使用されていた別の商標と同一または混同を生じるほど類似している場合。ただし、先使用の権利を主張する当事者は、登録商標の出願日または主張された使用開始日より前にメキシコまたは外国において継続的に自己の商標を使用していたことを立証しなければならない。かかる訴訟の出訴期限は、当該登録の公告日から3年以内である。

・メキシコにおける商標の使用開始日等、出願書類に記載された虚偽の情報に基づいて登録が付与された場合。かかる訴訟の出訴期限は、当該登録の公告日から5年以内である。

・既に同一または類似の商標が、同一または類似の商品または役務に関して登録されていた場合。かかる訴訟の出訴期限は、当該登録の公告日から5年以内である。

・外国で登録されている商標の商標権者から同意を得ていない代理人、代表者、使用者または販売業者により、当該商標の登録が取得された場合。かかる訴訟に適用される出訴期限はない。

・産業財産法または登録付与時に有効な法律に違反して、登録が付与された場合は、当該登録を取り消す一般的根拠が存在する。かかる訴訟に適用される出訴期限はない。

 

7.未登録商標の権利

産業財産法第92条(I)の規定に基づき、商標登録は、当該登録商標の出願日または主張された使用開始日より前に同一または類似の商標を継続的に善意で使用していた第三者に対しては、対抗力を有しない。

第三者による無許可の使用に対して、未登録の権利を直接行使することはできない。ただし、トレードドレスなどの識別性のある標識に対する権利は、登録を得ずとも、産業財産法第213条(I)および(IX)に定められた不正競争行為を理由に、権利行使することができる。

 

8.所有権の変更

メキシコにおいて、商標の所有権の変更を登録する場合、所有権の変更を証明する書類を提出する必要がある。

メキシコで作成された書類は認証の必要はないが、外国で作成された書類や外国知的財産官庁において作成された書類は、その外国においてメキシコ領事による認証またはアポスティーユによる認証が必要となる。ハーグ条約締約国で作成された書類の場合は、「外国公文書の認証を不要とする条約(略称:認証不要条約)」(1961年10月5日のハーグ条約)に基づく付箋(=アポスティーユ)による外務省の証明を以って、当該国にある大使館・(総)領事館の領事認証があるものと同等のものとして、提出先国で使用することができる。

公的ではない私的な所有権の変更が記されたライセンス契約書および譲渡契約書のような書類は、形式を問わず有効である。ただし、外国で作成された場合は、公証人による認証のみならず、さらに領事認証またはアポスティーユによる認証が必要となる。

所有権の変更の登録は、IMPIによる変更申請書類の受領通知から約2ヵ月を要する。