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ウガンダにおける知的財産保護の現状

【詳細】

1.知的所有権を保護する法律および加盟条約

 ウガンダで知的所有権を保護する法律は以下の通りである。

 (1)2014年工業所有権法

 (2)2010年商標法

 (3)2006年著作権および著作隣接権に関する法律

 (4)2009年企業秘密保護法

 

 また、ウガンダは知的所有権に関するいくつかの国際条約に加盟している。これらには以下がある。

 (1)工業所有権の保護に関するパリ条約(1965年6月14日)

 (2)特許協力条約(1995年2月9日)

 (3)世界貿易機関(WTO)を設立するマラケシュ協定(1995年1月1日)

 (4)世界貿易機関(WTO)-知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)(1995年1月1日)

 (5)アフリカ広域知的財産機関(ARIPO)の創設に関するルサカ協定(1978年8月8日)

 (6)アフリカ広域知的財産機関(ARIPO)の枠組み内の商標に関するバンジュール議定書(2000年11月21日)

 (7)アフリカ広域知的財産機関(ARIPO)の枠組内の特許および意匠に関するハラレ議定書(1984年4月25日)

 

2.商標

 商標は、ウガンダにおける知的所有権という点で明らかに重要な役割を果たしている。これは、2015年の特許出願件数が10件であるのに対し、商標登録出願件数は2,792件にのぼることから明らかである。

 商標は、商品とサービスの両方について登録することができ、国際商標分類が採用されている。保護を求める分類ごとに個別の出願を行う必要がある。優先権を主張することができ、代理人を使う際には委任状(公証は不要)が必要である。

 ウガンダにおける商標法は、英国商標法に準じて定められている規定と、ウガンダでの独自の規定が混在する。以下のような特徴は、英国商標法の影響を受けている点である。

 (a)登録簿はパートAとパートBに区分され、パートBは識別力の低い商標に充てられている。

 (b)誠実な同時使用がなされている場合、先行商標と抵触する商標の登録が可能である。

 (c)権利の部分放棄を課すことができる。

 (d)同一または類似する商標の登録を相互に「連合させる」規定がある。-連合商標制度 (連合商標制度:類似関係にある商標を連合商標とし、分離移転を制限する制度。日本においては、平成8年に廃止された。)

 (e)「防護」商標登録の規定がある。

 (f)存続期間は最初は7年間で、更新後は10年間である。

 (g)不使用取消審判を回避するために商標を使用しなければならない期限は3年間である。

 

 一方、以下の点が、ウガンダで新たに規定された。

 (a)電子出願が規定されている。

 (b)識別力は、生来的識別力であれ使用による識別力であれ、識別能力を有する「標識」によって定義される。

 (c)形状が商品自体の性質から生じる場合、技術的成果を得るために必要な場合、または商品に本質的価値を与える場合は、形状を登録することはできない。

 (d)真正商品(並行輸入)の場合に商標権者が訴訟を提起することが制限される。

 (e)商標法は、商標の偽造などの行為を犯罪と規定する。

 (f)裁判所は、すべての偽造品を没収および廃棄する命令を下すことができ、偽造品と疑われる品は、商標権者による申請に基づいて税関当局が押収することができる。

 

3.著作権

 著作権および著作隣接権に関する法律は、文学、科学、芸術作品、録音物、フィルム、コンピュータープログラム、電子データベース、伝統的フォークロア(「民間伝承」や「民俗文化財」等と呼ばれ、ある社会の構成員が共有する文化的資産である伝統的文化表現)および知識などの広範な作品について著作権の保護を規定している。作品は物質的形態に変換されなければならないという事実から、創作性は、独自性というより技能と労力を投入することにより生み出されるものであり、著作権の要件である。解説、批評、ニュース報道などについては、公正な慣行において、例外が設けられている。

 ウガンダでは著作権登録は可能だが、必須事項でない。しかし、著作権登録は著作権の推定的(一応の)証拠と見なされる。

 著作権の存続期間は、著作者の死後50年間までである。著作者は通常最初の著作権者であるが、雇用関係等の要件を満たしている場合には、この限りではない。著作権侵害については民事訴訟および刑事訴訟が可能である。

 

4.特許

 施行規則等の下級法規は整備が進められていないが、2014年工業所有権法において、特許による保護が規定されている。その主な特徴は以下の通りである。

 (1)PCT国際段階および国内段階の出願が認められている。

 (2)同法は特許が付与されないものを規定しており、一般的な不特許事由の他、天然物から精製、合成、または他の方法で抽出された天然物質(ただし、かかる天然物質を元の環境から抽出するプロセスはこの限りでない) 、人体およびすべての人体要素の全部または部分も、特許の対象とならないことが規定されている。

 (3)医薬品および試験データは、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)の施行を担当する理事会により採択された通り、2033年1月1日まで特許保護から除外される。

 (4)明細書には、ウガンダ領土内で採取され、発明の完成に直接または間接的に使用された遺伝資源または生物資源について、ならびに、伝統的知識に関しては、遺伝資源または生物資源に関連するか否かにかかわらず、伝統的知識の創作者からの事前の情報に基づく同意なしに、発明の完成に直接または間接的に使用される場合には、その出所を明確に示さなければならない。

 (5)現在、特許の存続期間は出願の日から20年間で、期間の延長はできない。

 

5.実用新案

 2014年工業所有権法が適用される。その主な特徴は以下の通りである。

 (1)実用新案は、新規性と産業上の利用可能性を有する小発明と定義される。

 (2)特許出願は、登録または拒絶の前のいつでも実用新案に変更することができ、逆も同様である。

 (3)実用新案の保護期間は付与日から10年間である。

 

6.意匠

 2014年工業所有権法が適用される。その主な特徴は以下の通りである。

 (1)同法は、国の意匠保護制度を導入し、英国の意匠登録が自動的にウガンダに拡張される制度を廃止するものである。同法の施行直前まで、英国で登録されたいかなる意匠の登録所有者も旧英国意匠(保護)法に基づいてウガンダにおいて権利を享受しており、かかる権利は英国法に基づいてそれらが存続しなくなるまで継続するものとなっていた。

 (2)「意匠(industrial design)」とは、実用品の側面で、装飾性または審美性を有し、物品の形状もしくは表面のような三次元的特徴、または模様、線、色彩などの二次元的特徴から成るものを意味する。

 (3)意匠出願は、国際意匠分類で同じ分類に属する、または同じ物品の組物または構成物に属する2つ以上の意匠について行うことができる。

 (4)保護期間は出願から5年間であり、さらに2回にわたってそれぞれ5年間の延長が可能である。

 

7.テクノベーション

 2014年工業所有権法の第14部に「テクノベーション」を規定している。「テクノベーション」とは、技術分野における特定の問題に対する解決方法であり、ウガンダにおける企業の従業員が企業による使用のために提案したもので、当該企業の活動に関連しているが、提案日の時点で当該企業により使用されていなかった、または使用を積極的に検討されていなかったものを意味する(2014年工業所有権法第81条)。

 従業者は企業に対して、自らのなしたテクノベーションに対して、企業からテクノベーションの証明書の発行を申請することができ(2014年工業所有権法第83条)、企業はテクノベーションの証明書を発行する場合、そのテクノベーションを以後に使用するか否かの意思表示を同時に通知しなければならず(2014年工業所有権法第85条)、使用を通知する場合には、テクノベーションの提案者は、報奨を受け取る権利を有する(2014年工業所有権法第86条)。

 

8.技術移転

 投資法(Cap 92)は、技術移転取決めの登録を規制および規定している。同法は、とりわけ、外国の技術または専門知識の移転契約は契約終了後も譲受人が当該専門知識の使用を継続することを許可するものとし、技術移転契約は競合技術の使用を制限することはできないと規定している。

 実際には技術移転契約を登録する投資家は非常に少なく、同法は無効とされるものと考えられている。

 

9.企業秘密

 企業秘密保護法は、企業にも政府機関にも適用される。同法は、秘密情報に関する慣習法に影響を及ぼさず、他の知的財産を損なうものでもない。同法は「企業秘密」を、商業価値を有し、所有者が内密にしておこうとする情報と定義している。

 たとえば施設への無許可の立入、詐欺的不実告知、盗聴、電子的手段、契約違反として情報が明らかにされた場合は、侵害があるとされる。しかし、当該情報が独立的にまたはリバースエンジニアリングによって明らかにされた場合は、侵害はないとされる。情報の所有者は侵害について訴訟を提起することができ、裁判所は差止命令、損害賠償、利益計算、懲罰的損害賠償を認めることができる。

 

10.ウガンダの裁判所

 ウガンダにおいて、知的所有権に関わる侵害訴訟はすべて、高等裁判所(High Court of Uganda)で審理を行う(2014年工業所有権法第2条)。控訴は控訴裁判所に提起することができ、上告は最高裁判所に提起することができる。