国別・地域別情報

ホーム 国別・地域別情報 アジア 統計 | その他参考情報 特許・実用新案 | 意匠 中国における専利局の審査体制および審査状況

アジア / 統計 | その他参考情報


中国における専利局の審査体制および審査状況

2023年02月23日

  • アジア
  • 統計
  • その他参考情報
  • 特許・実用新案
  • 意匠

このコンテンツを印刷する

■概要
中国国家知識産権局のホームページ上で公開された情報、および元審査官へのインタビューにより得られた情報に基づき、専利局の内部機構、各内部機構の役割、内部機構間の流れ、審査が行われる地域の担当分け、審査の品質評価体制、審査状況等を紹介する。
■詳細及び留意点

1.中国専利局の内部機構
 専利局は国家知識産権局に直属しているもので、その内部には以下の組織図のように事務室、人事教育部、審査業務管理部、複審および無効審理部(拒絶査定不服審判および無効審判の審理を担当する専利複審委員会は、2019年に専利局に編入され、専利局の内部機構の一つとなった)、方式審査(形式審査)およびプロセッシング管理部、機械発明審査部、電気発明審査部、通信発明審査部、医薬バイオ発明審査部、化学発明審査部、光電技術発明審査部、材料工程発明審査部、実用新案審査部、意匠審査部、特許文献部、自動化部、党委員会、審査協力北京センター(2001年設立)、審査協力江蘇センター(2011年9月設立)、審査協力広東センター(2011年9月設立)、審査協力河南センター(2012年11月)、審査協力湖北センター(2013年1月設立)、審査協力天津センター(2013年9月設立)、審査協力四川センター(2013年10月設立)、中国特許技術開発公司の25の内部機構が設けられている。

図1:中国専利局組織図

2.専利(特許、実用新案、意匠)の審査に関わる各内部機構の役割
 上記25の内部機構のうち専利出願の審査と直接関係する部門は、審査業務管理部、方式審査およびプロセッシング管理部、複審および無効審理部、機械発明審査部、電気発明審査部、通信発明審査部、医薬バイオ発明審査部、化学発明審査部、光電技術発明審査部、材料工程発明審査部、実用新案審査部、意匠審査部、審査協力北京センター、審査協力江蘇センター、審査協力広東センター、審査協力河南センター、審査協力湖北センター、審査協力天津センター、審査協力四川センターとなっている。これらの内設機構には各々多くの役割を有しているが、専利審査手続における主な役割は以下のとおりである。

審査業務管理部 専利審査手続における各業務部門間および代理機構との調整、出願書類の移送および管理、関係データの収集、期限の管理、および統計作業等
方式審査およびプロセッシング管理部 出願関係書類の受理、特許の方式審査、専利出願書類の管理、専利証書の発行、専利公報の編集および出版、出願に関わる庁費用の管理、特許と実用新案の分類等
複審および無効審理部 専利出願や集積回路配置図設計登録出願の拒絶査定不服審判、専利権無効審判、集積回路配置図設計専有権の取消審判、審決取消訴訟への応訴、専利や集積回路配置図設計に係る権利確定および権利侵害に関する技術判定の調査業務、裁判所や専利管理部門からの依頼を受けた場合の専利に係る権利確定および権利侵害事件の処理に関する専門意見の提出
機械発明審査部
電気発明審査部
通信発明審査部
医薬バイオ発明審査部
化学発明審査部
光電技術発明審査部
材料工程発明審査部
各技術分野の特許出願に対する実体審査等
実用新案審査部 実用新案出願の方式審査、出願書類の管理等
意匠審査部 意匠出願の分類・審査・登録、登録前後のプロセッシング管理および事務処理、意匠出願および出願書類の管理、意匠に関する庁費用の管理、書誌事項の修正等
審査協力北京センター
審査協力江蘇センター
審査協力広東センター
審査協力河南センター
審査協力湖北センター
審査協力天津センター
審査協力四川センター
専利出願の実体審査、PCT出願の国際段階の予備審査等

3.特許出願が専利局に提出された後、専利局の各内部機構間での通常の流れ
 通常、特許出願が専利局に提出されると、まず方式審査およびプロセッシング管理部にて受理され、公開手続のための情報の編集と加工(分類番号の付与、要約の編集等)が行われる。実体審査着手のための条件が充たされると、管理システム上は「実体審査待ち」の旨の標識が付与され、各実体審査部門の審査官が管理システムから取り出しうる状態になる。

 各審査部門に属する審査官は、担当分野等に応じて、あらかじめ割当てられた管轄分類番号に基づき、管理システムからランダムに案件を取出し、実体審査を行う。実体審査完了後、案件は方式審査およびプロセッシング管理部に戻され、関係通知書(拒絶理由通知書、補正通知書、特許査定通知書または拒絶査定通知書等)が発行されることになる。専利出願が拒絶査定された場合または登録を受けた専利権に対して無効審判が請求された場合、これらの審判は複審および無効審理部の審理管轄となる。

4.専利局本庁にある各発明審査部と各地方に設けられた審査協力センターの担当分け
 専利局本庁にある各発明審査部と各地方に設けられた審査協力センターは、いずれも特許出願を審査する役割を担っているが、特許出願は以下の基準で審査部門が決められる。
 現在、専利局本庁にある各発明審査部は、主にPCT出願の審査、新人審査官への業務指導、課題研究およびPCT出願以外の出願の一部について実体審査を担当している。
 各地方の審査協力センターは、主に特許出願の実体審査や課題研究を担当し、PCT出願の国際段階の検索と予備審査作業の一部を担当している。また、一部の地方センターは拒絶査定不服審判作業にも関与している。各審査協力センターは、その所有する審査官の所属分野の状況等に応じて担当技術分野に偏りがある。例えば、湖北センターは武漢光谷に設立されており、光通信技術に強い審査官が相対的に多いため、この分野の特許出願の審査は湖北センターの審査官により担当される可能性が高くなる。

5.専利局における審査の品質評価体制
 専利局には、審査の品質評価体制がある。通常、4段階の品質検査が設けられており、1段階目は処(審査部内でさらに技術分野に応じて細分化した単位)内での品質検査、2段階目は審査部レベルの品質検査、3段階目は審査協力センターレベルの品質検査、4段階目は局レベルの品質検査となっている。
 処内での検査に関しては、審査官間の相互検査であり、互いに審査の問題を検査および解決することを図る。
 審査部レベルの品質検査に関しては、部内に副部長が統括する品質検査グループが設けられており、当該品質検査グループにより所定の抽出率で部内の案件をサンプリングして検査し、問題が発見されると、即時に審査官にフィードバックされる。審査官の担当案件に問題が多く発見されると、部長からの個別面談を受けるのみならず、年間評価にも反映される。
 審査協力センターレベルの品質検査は、主に審査部レベルで検査を受けた案件の一部を対象として再検査を実施するものである。この段階の品質検査で発見された問題は、その審査部にフィードバックされ、当該審査部の年間評価に反映される。
 局レベルの品質検査は、主に専利局長官への報告用のものであり、各審査協力センターや審査部門、審査官にフィードバックされない。
 上記4段階の品質検査のうち、1、2段階は関係オフィスアクションの発行前に実施される検査であるため、事前検査と呼ばれる一方、3、4段階は関係オフィスアクションの発行後に実施される検査であるため、事後検査と言われる。
 以上のような体制で特許審査の品質が保証される。

6.専利局の審査状況
 近年、中国専利局は専利の審査周期を短縮するために審査スピードを速めつつある。2022年1月6日に開催された全国知識産研局局長会で発表された情報(https://www.cnipa.gov.cn/art/2022/1/7/art_53_172646.html)によれば、特許出願の平均審査期間は、2016年の約22か月から2021年の約18.5か月、高価値特許*1出願の平均審査期間は2021年に13.3か月と大幅に短縮されていた。また、2022年3月16日に公表された「知的財産権の高品質の発展を促進するための年間作業ガイドライン(2022)」(「推动知识产权高质量发展年度工作指引(2022)」)(https://www.cnipa.gov.cn/art/2022/3/21/art_551_174161.html)によれば、2022年末の審査期間の目標は、16.5か月、高価値特許は13.8か月である。

*1: 2021年4月26日に中国知識産権局が開催した第2四半期の記者会見において、中国知識産権局戦略企画司、葛樹司長が、「高価値特許とは、中国の重点産業の発展方向に相応しく、特許の品質が高く、価値の高い有効特許をいい、主には以下の5種類のものを含む:(1)戦略的新興産業に該当する特許、(2)海外でファミリ出願を有する特許、(3)10年間以上も有効維持した特許、(4)高い融資金額で質権を設定した特許、(5)国家科学技術賞または中国特許賞を受賞した特許。」と示した(https://www.cnipa.gov.cn/col/col2599/index.html)。

図2から図4は、専利局の公開データ(专利统计年报等)に基づいた出願件数の遷移グラフである。

図2:中国専利出願件数の遷移(2013~2021年)

図3:中国PCT国際出願受理件数の遷移(2013~2021年)

図4:中国専利登録件数の遷移(2013~2021年)

■ソース
・中国国家知識産権局
https://www.cnipa.gov.cn/  〇組織図
 https://www.cnipa.gov.cn/col/col2172/index.html
 〇「国家知识产权局局长申长雨在2022年全国知识产权局局长会议上的工作报告(摘编)」
 (2022年国家知識産権局長会議における国家知的財産局長のシェン・チャンユ氏のワーキング・レポート(抜粋))
 https://www.cnipa.gov.cn/art/2022/1/7/art_53_172646.html
 〇「推动知识产权高质量发展年度工作指引(2022)」(「知的財産権の高品質の発展を促進するための年間作業ガイドライン(2022)」)
 https://www.cnipa.gov.cn/art/2022/3/21/art_551_174161.html
 〇国家知识产权局2021年第二季度例行新闻发布会(「2021年第2四半期国家知識産権局の定例記者会見」)
 https://www.cnipa.gov.cn/col/col2599/index.html
 〇2013年专利统计年报
 https://www.cnipa.gov.cn/tjxx/jianbao/year2013/indexy.html
 〇2014年专利统计年报
 https://www.cnipa.gov.cn/tjxx/jianbao/year2014/indexy.html
 〇2015年专利统计年报
 https://www.cnipa.gov.cn/tjxx/jianbao/year2015/indexy.html
 〇2016年专利统计年报
 https://www.cnipa.gov.cn/tjxx/jianbao/year2016/indexy.html
 〇2017年专利统计年报
 https://www.cnipa.gov.cn/tjxx/jianbao/year2017/indexy.html
 〇2018年专利统计年报
 https://www.cnipa.gov.cn/tjxx/jianbao/year2018/indexy.html
 〇2019年专利统计年报
 https://www.cnipa.gov.cn/tjxx/jianbao/year2019/indexy.html
 〇2020年专利统计年报
 https://www.cnipa.gov.cn/tjxx/jianbao/year2020/indexy.html
 〇2021年专利统计年报
 https://www.cnipa.gov.cn/tjxx/jianbao/year2021/indexy.html
■本文書の作成者
北京天達共和法律事務所
■協力
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2022.11.07

■関連キーワード