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ロシアにおける特許および実用新案に関する統計

2018年06月21日

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■概要
過去10年間(2007年から2016年)のロシアにおける特許出願および実用新案出願に関する統計を説明する。
■詳細及び留意点

1.特許出願および実用新案出願に関する統計

1-1.特許出願

 表1に2007年から2016年までのロシアにおける特許出願件数を表す。

 

表1:2007年から2016年までの年別の特許出願件数

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 2007年から2016年までの過去10年間を通じて、ロシアにおける特許出願件数は、38,500件から45,500件の間で推移している。ロシア特許庁への特許出願件数は五大特許庁(アメリカ合衆国特許商標庁(USPTO)、欧州特許庁(EPO)、日本国特許庁(JPO)、中国国家知識産権局(SIPO)、韓国特許庁(KIPO))と比べて著しく少ない。2016年のロシアにおける特許出願件数は前年比で8.6%減少している。

 

 外国の出願人による特許出願件数は、合計件数の35%程度である。ロシアで最も活発に特許出願を行っている外国は、アメリカ合衆国、ドイツ、日本、中国であり、この3か国に続き、以下、フランス、スイス、オランダの順である。

 

 外国の出願人による特許出願件数は、2009年から2015年にかけて毎年増加していたが、2016年には9%減少している。2016年の外国の出願人による特許出願件数は以下のようになっている。

  • アメリカ合衆国の出願人による特許出願件数は13%減少
  • ドイツの出願人による特許出願件数は12%減少
  • オランダの出願人による特許出願件数は21%減少

 

 それに対し、中国の出願人による特許出願件数は2016年に前年比で36%増加した。中国の出願人による特許出願件数は、2013年には458件であったが、2016年には1,171件に増加した。しかし、ロシアで最も活発に出願を行っているのはアメリカ合衆国の出願人である。アメリカ合衆国の出願人による2016年の特許出願は、主要な技術分野すべてにわたっており、その特許出願件数は4,296件に達している。

 

1-2.実用新案

 表2は、2007年から2016年までのロシアにおける実用新案出願件数を表す。

 

表2:2007年から2016年までの年別の実用新案出願件数

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 ロシアの実用新案制度が外国の出願人に広く知られていないためか、表2の2016年のデータを見ると、外国の出願人による実用新案出願件数は469件に過ぎない。これに対し、ロシアの出願人にロシアの実用新案制度は広く知られているようであり、ロシアの出願人による実用新案出願件数は、2008年以降毎年10,000件を超えている。

 

 ロシアでは、2009年以降、毎年11,000件を超える実用新案出願がされているが、外国の出願人による割合は全体の4%未満にとどまっている。

 

 ロシア特許庁は、2015年の年初から実用新案出願に対して新規性に関する実体審査を実施している。新規性に関する実体審査を経て付与された実用新案権は、新規で産業上利用可能な製造物に対する保護形態として妥当な強さを備え、ロシアの企業および法人によって尊重されている。

 

 さらに、実用新案出願の審査期間が短いという点にも注目すべきである。通常、実用新案出願から権利付与までに要する期間は12か月未満であり、特許出願の審査と比較して短く、費用の総額も安く抑えられる。実用新案権の短所は、保護の最長期間が特許権よりも短いこと(特許権の存続期間が20年であるのに対して、実用新案権の存続期間は10年)と、保護の対象が機器または装置に限定されることである。複雑なシステム、方式、方法、化合物、または微生物の菌株などは実用新案権によっては保護されない。

 

2.特許出願の実体審査-係属期間および迅速審査のオプション

2-1.実体審査請求の期限

 実体審査の段階に入った特許出願件数は、提出された特許出願件数と概ね相関している。ただし、ロシアでは実体審査の繰り延べが認められているため、明白な遅延が存在する。実体審査請求の期限は以下の通りである。

 

  • PCT出願の国際出願日から3年以内
  • パリ条約に基づく優先権期間の12か月以内にロシアで願書が提出された優先権主張を伴う特許出願の出願日または優先権主張を伴わない特許出願の出願日から3年以内

 

2-2.審査段階にある特許出願

 表3は、2007年から2016年までの、審査段階にある特許出願件数を表す。

 

表3:2007年から2016年までの年別の審査段階にある特許出願件数

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 2016年に実体審査の段階にあった特許出願件数は46,206件であった。この数は前年比で8.82%増加している。ロシア特許庁の年次報告書によれば、実体審査の請求から最初の拒絶理由通知の発行までに要した期間は、2016年の平均で見ると10.5か月である(2015年の平均は10.3か月)。通常、審査請求が提出された日から最初の拒絶理由通知の発行までの期間は10か月から11か月である。

 

 最初の拒絶理由通知に対する応答書が提出されてから2回目の拒絶理由通知または特許査定に至るまでの期間は、数か月から1年である。拒絶理由通知に対する応答書の提出期限が当該拒絶理由通知の発行日から3か月であることと、出願人は応答書の提出期限を最大10か月まで延長できることを考慮すると、ロシア特許庁の業務処理の状況だけでなく出願人自身の行為や延長期間の合計によっても、実体審査段階での所要期間に大きな違いが生じてくる。

 

2-3.早期審査

 2017年10月1日付で新たな規定が施行された。この規定によれば、出願人が特許出願の時点で実体審査請求を行い、審査請求料に公定の追加料金を上乗せした金額を支払った場合、ロシア特許庁は出願から7か月以内に調査報告書を発行しなければならない。この迅速な処理は、通常の処理と比較して所要時間が数か月短い。通常であれば、調査報告書の発行と出願人への送達は、出願から10か月から11か月以内に最初の拒絶理由通知の発行と同時に行われる。

 

 ロシアにおいて可及的速やかな特許権の取得を希望する出願人は、グローバル特許審査ハイウェイ(PPH)プログラムの要件を出願が満たしているのであれば、同プログラムを通じた早期審査の申請を検討してもよい。グローバルPPHを通じた早期審査には公定の追加料金が課されない。

 

 日本国特許庁のPPHポータルに公表された統計によれば、ロシア特許庁がPPH申請を審査した日から最初の拒絶理由通知の発行までに要する期間は平均で3.09か月である。PPHの申請から最終決定(特許付与または拒絶の決定)に至るまでに要する期間は平均して3.45か月である。ロシア特許庁は2017年2月に欧州特許庁(EPO)との間でPPH試行プログラムを開始した。

 

3.特許付与または拒絶の決定

 表4は、2007年から2016年までの特許付与の決定に関する統計をロシアの出願人と外国の出願人とで比較した表である。また、表5は、2007年から2016年までの拒絶の決定に関する統計をロシアの出願人と外国の出願人とで比較した表である。

 

表4:2007年から2016年までの年別の特許付与の決定件数

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表5:2007年から2016年までの年別の拒絶の決定件数

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 2016年に外国の出願人が受けた特許付与の決定は、全体(ロシアおよび外国両方の出願人を含む。)の38.6%を占めており、同年に外国の出願人が受けた拒絶の決定は、全体の22.8%に過ぎない。ロシアの出願人の場合、2016年に受けた特許付与の決定は全体の61.4%、同年に受けた拒絶の決定は全体の77.2%である。外国の出願人の場合、ロシアでの特許出願を決意する前に、国際調査報告または対応国出願の審査経過等に基づき、特許付与の可能性を検討しているようであり、それが上記の数字に表れている。

 

 参考までに、2007年から2016年までの年別の特許発行数を表6に示す。

 

表6:2007年から2016年までの年別の特許発行数

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4.特許出願の取下げ

 表7は、2007年から2016年までの取下げとなった特許出願件数を表す。表7に示す取下げとなった特許出願件数は、出願人が出願の取下げを請求したことにより、または期限を順守しなかったために(実体審査請求または拒絶理由通知に対する応答書の提出を怠った場合等)、取下げたものとみなされた特許出願の数を示す。

 

表7:2007年から2016年までの年別の取下げとなった特許出願件数

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 外国の出願人は、ロシアの出願人に比べて出願を放置したままにすることが多い。表7に示す2016年のデータによれば、外国の出願人による特許出願のうち取下げたものとみなされた件数は3,844件であるが、ロシアの出願人の場合には3,563件であった。

■ソース
ロシア特許庁の年次報告書
日本国特許庁のPPHポータル 
https://www.jpo.go.jp/ppph-portal-j/statistics.htm
■本文書の作成者
PAPULA-NEVINPAT(フィンランドを本拠地としロシアに支部を有する特許事務所)
■協力
日本技術貿易株式会社
■本文書の作成時期

2018.01.26

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