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マレーシアにおける特許出願の係属状況に関する統計
2018年06月07日
■概要
過去11年間のマレーシア知的財産公社(MyIPO)における特許出願および特許登録に関する統計を説明する。■詳細及び留意点
図1は、2006年から2017年8月までの各年のマレーシア国内出願人および外国出願人の特許出願および特許登録の各件数を示すグラフである。図2は、2006年から2017年8月までの各年の特許出願と特許登録の件数を比較するグラフである。
図1 特許出願および特許登録(マレーシア国内出願人および外国出願人)
図2 特許出願および特許登録
2007年に外国出願人の出願が急激に減少したのを除けば、2006年から2015年にかけて全体として特許出願件数は着実に伸びていた。2016年に、マレーシア国内出願人および外国出願人の特許出願はそれぞれ11.3%および5.5%減少した。2017年もマレーシア国内出願人および外国出願人の特許出願が全体的に減少すると予測できる。
過去2年間にマレーシアにおける特許出願が減少傾向にある一方で、この時期の特許登録は増えている。その背景には、マレーシアのイノベーション活動を後押しすることを目指したマレーシア知的財産公社(MyIPO)による特許登録手続の効率化および合理化がある。
2016年における特許出願減少の原因は、マレーシアにおける特許出願の大半を占めている外国出願人の出願が減少したことにある。2006年から2016年において外国出願人の出願が特許出願全体に占める比率は80%以上であったが、2007年と2009年はそれぞれ72%と78%に留まっている。この差異は、多国籍企業の寄与するところが大きく、マレーシアへの外国直接投資を奨励する政府の政策の結果といえる。
2016年から2017年8月までの全体的な出願件数の減少にもかかわらず、この期間の特許登録件数は増加している。2017年8月の時点で、2016年以降に登録された特許は15.7%増えている。
図2から、2006年と2007年に登録された特許の合計数が、同年に提出された特許出願の合計数をはるかに凌いでいることが分かる。また、2007年は特許出願件数もかなり低かった。このような状況は、それ以前の数年間における特許出願の未処理案件の蓄積に起因する。
2010年に特許登録の件数が急激に減少したものの、その後は2017年8月まで着実に持ち直している。その要因として、ワークシェアリングプログラム、すなわち参加国の出願人が迅速かつ効率的に対応特許を取得できるように参加庁間で審査結果を共有するASEAN特許審査協力(ASPEC)プログラムの導入が挙げられる。ASPEC申請に基づく最初のオフィスアクションは、2014年11月22日にMyIPOにより作成された。
審査手続を迅速化するもう一つの取組が、特許審査ハイウェイ(PPH)の導入である。PPHプログラムに基づき、出願人は、自己の出願のクレームが第1庁により特許可能と判断された場合、対応出願の早期審査を申請できる。言い換えると、MyIPOは特許審査を行う際に他の特許庁による審査結果を利用できるため、業務の重複を減らし、特許登録件数を増やすことができる。このプログラムは2014年10月1日に導入された。
一方、上記プログラムの導入以前の2011年にMyIPOは、出願人が出願の審査を請求し、その請求から8週間以内に審査報告が出される早期審査ルートを導入した。ただし、基礎出願国における特許を許可または付与された適切な対応クレームセットを提出できなければ、早期審査を申請しても、不利な審査報告が出される可能性がある。このような拒絶理由のない特許および登録の早期審査に対して、2011年からISO認証MS ISO 9001:2008が与えられている。明らかにこれらの要因が、過去数年間における特許登録件数の着実な増加に寄与している。
また、先行技術調査に関してMyIPO外部の専門家を活用できれば、近い将来、より質の高い審査報告および特許登録を増やすことができる。マレーシアにおける技術イノベーションサポートセンター(TISC)ネットワークが2016年3月21日に創設され、オンライン特許資料、オンライン非特許(科学技術)資料およびIP関連刊行物など、質の高い技術情報へのアクセスおよび関連サービスを提供している。さらに技術情報の調査および検索の支援、ならびに技術および競合者のモニタリングを含む、データベース調査の訓練が予定されている。
マレーシアでは、一般的には出願から特許登録まで約4年を必要とする。また、特許出願の処理および審査期間は、複数の要因によって変わる。例えば、審査請求が速やかに提出されるかどうか、または審査官が審査時に依拠できる、基礎出願国において特許が許可もしくは付与された適切な対応クレームセットが存在するかどうかといった要因によっても所要期間が異なる。
技術分野に関して、図3に示すように、化学、冶金および生活必需品は、2016年に登録された特許全体の半分以上を占めていた。2016年に登録された特許としては、化学および冶金が最も多い1045件(31.2%)であり、次が生活必需品の688件(20.5%)、処理操作および運輸の472件(14.1%)と続いている。2010年以降、全ての技術分野において特許登録件数が着実に増加している。
図3 登録された特許(技術分野別)
以上をまとめると、全体的に見て、提出される特許出願の件数は、マレーシア国内出願人の出願より外国出願人の出願の方が圧倒的に多い。技術およびイノベーション産業への外国直接投資を奨励する政府の取組により、外国出願人の登録件数が多い。
■ソース
アセアン知的財産ポータルの公式ウェブサイトhttps://www.aseanip.org/Services/ASEAN-Patent-Examination-Co-operation-ASPEC/What-is-ASPEC マレーシア知財庁の公式ウェブサイト
http://www.myipo.gov.my/en/patent-prosecution-highway-pph/ http://www.myipo.gov.my/en/statistic-application-registration/#toggle-id-1 MyIPO Statistical Booklet 2016
■本文書の作成者
Shook Lin & Bok, Malaysia■協力
日本技術貿易株式会社■本文書の作成時期
2018.01.22