欧州 / 統計
ロシアにおける意匠出願に関する統計
2018年05月22日
■概要
ロシア連邦特許庁(以下「特許庁」と称する)は、その業務の一環として年次報告書を公表している。年次報告書は2000年から作成され、特許庁のホームページで公開されている。以下の意匠出願に関する統計データは2007年から2016年までの特許庁の年次報告書に基づくものである。■詳細及び留意点
- 意匠特許出願の件数
以下の表1は、年度別に見た意匠出願の総件数、ロシアの出願人による出願件数、外国の出願人による出願件数を示したものである。
表1 2007年から2016年までの年度別の総出願件数(出典:特許庁の年次報告書)
過去10年間の意匠出願件数は、毎年5000件前後で推移している。ただし、2009年と2010年は例外で、この2年間の出願件数は年間およそ4000件であった。これは、2008年に端を発する世界的な経済危機が2009年と2010年の出願件数に影響したものと考えられる。
だが、2011年以降は出願件数はほぼ毎年増加している。この10年の最初の年に当たる2007年の出願件数を2016年の出願件数と比較してみると、この10年間で出願件数が13.3%増加していることが分かる。この増加に主に寄与するのは外国の出願人である。外国人による出願は47.7%も増加している。それに対し、ロシアの出願人による出願は12.8%減少している。この減少はロシアの経済危機によるものと思われるが、現時点での意匠出願件数の増加傾向は、外国の出願人とロシアの出願人の両方の増加を示している。
外国人の意匠出願件数で1位から7位までを占めているのは、米国、ドイツ、日本、フランス、スウェーデン、イタリア、韓国である。
- 出願および実体審査
以下の表2は、実体審査の段階で審査対象となっている出願の総数と、登録査定、拒絶査定および取下げ決定の総数を示したものである。それぞれの決定について、ロシアの出願人と外国の出願人に関する数字を個別に示している。
表2 2007年から2016年までの年度別の審査対象となっている出願の総数と、
登録査定、拒絶査定および取下げ決定の各件数(出典:特許庁の年次報告書)
表2を見ると、拒絶査定の数が過去10年間で明らかに減少していることが分かる。2008年には179件の出願が拒絶されているのに対し、2016年に拒絶された出願は99件のみである。ロシアでは意匠出願が拒絶される割合は極めて小さく、2016年に実体審査段階で審査対象となった出願5312件のうち拒絶されたものはわずか1.9%であった。
- 意匠特許の付与
以下の表3は、登録意匠の総件数(ロシアの出願人に付与された意匠登録と外国の出願人に付与された意匠登録を含む)に関する統計を示したものである。さらに、各年度の終了時に有効であった意匠登録と、保護期間が満了した意匠登録もしくは維持年金の未払いによって失効した意匠登録を併せて示している。
表3 2007年から2016年までの年度別の登録された意匠の総件数と
有効であった登録意匠の件数(出典:特許庁の年次報告書)
- 出願から最初の拒絶理由通知発行までの期間
ロシア民法によれば、出願に関する実体審査請求は願書と同時に提出され、方式審査が完了すると直ちに実体審査が開始されることになっている。方式審査において特許庁は出願文書が形式的要件を満たしていることを確認し、複合出願の場合には意匠の単一性に関する要件が満たされていることを確認する。
過去10年間を対象とした出願から最初の拒絶理由通知発行までの期間に関する公式な統計は提供されていないが、実際には、出願の形式的要件について不備がある場合、特許庁は出願日から1か月以内に正式な拒絶理由通知を発行するのが普通である。実体審査の後で拒絶理由通知が発行される場合、その時期は平均して出願日から6か月以内である。
2014年に法が改正され、意匠登録の対象となる一連の本質的特徴の記載が出願の要件から外されてから、実体審査後の拒絶理由通知の数は劇的に減少した。特許庁はもはや意匠登録の対象となる特徴のリストの補正を要求する必要がなくなったのである。特許庁が発行した拒絶理由通知(形式的要件と実体的要件のいずれに基づくかを問わない)の数については、公式な統計が提供されていない。
- 出願から意匠登録までの期間
現時点での実状を言えば、出願から特許付与までの平均的な期間は10か月程度であるが、特許庁はこれについて公式な統計を提供していない。
- 審判請求
特許庁の決定に不服がある場合の審判請求は、「特許紛争評議会」と呼ばれる特許庁の特別な部署によって審査される。
審判請求の提出から「特許紛争評議会」による審決までに要する平均期間については、2010年から公式な統計が提供されている。2010年にはこの期間は8か月であった。2011年になると、自動化されたペーパーレス文書回覧システムが実施されたおかげで、この期間は著しく短縮されて5.3か月となり、2012年にはわずか4か月となった。ところが2013年以降、この期間は毎年確実に長くなり、2013年には5.5か月、2014年には8.4か月、2015年には9.3か月、2016年には10.3か月となっている。この審決までに要する期間の長期化の傾向の一因として、「特許紛争評議会」に提出される審判請求の増加が挙げられる。
以下の表4は、意匠出願に関する特許庁の決定を不服として提出された審判請求の件数を年度別に示すとともに、肯定的な審決の数と否定的な審決の数を併せて示したものである。ロシアの出願人と外国の出願人に対して発行された審決の数については、公式な統計が存在しない。
表4 2007年から2016年までの年度別の審判請求の件数と肯定的な審決の件数
(出典:特許庁の年次報告書)
■ソース
ロシア連邦特許庁ホームページhttp://www.rupto.ru/about/reports
■本文書の作成者
Papula-Nevinpat■協力
日本技術貿易株式会社■本文書の作成時期
2018.01.10