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インドにおける知的財産訴訟の統計データ

2017年05月30日

  • アジア
  • 統計
  • 審判・訴訟実務

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■概要
1991年、新政策の導入によりインド経済は開放され、国際資本や、外国企業の技術や製品がインド市場に参入できるようになり、蔓延する類似品、模倣品および海賊品を市場から一掃するため、知的財産権の役割が重要視されるようになった。このような背景から、簡潔かつ迅速な紛争解決システムを実現するための司法改革も行われ、1990年代以降、インドの裁判所はこれまでになく多数の知的財産訴訟を受理することとなった。2004年までは、知的財産訴訟の大半は商標(商標権侵害または詐称通用)、著作権および意匠権に関連した紛争であったが、2005年にインド特許法に物質特許制度が導入されてからは、特許権訴訟も急増した。
■詳細及び留意点

1. 分析方法および分析期間

 インドの知的財産訴訟に関しては、すべての裁判所の訴訟情報を一本化したデータベースは存在しない。そのため、論文として報告された知的財産事件の経過を確認するとともに、デリーおよびボンベイ高等裁判所の公式ウェブサイトにおいて訴訟記録を調査した。両裁判所で、インドの知的財産訴訟のおよそ85%を処理すると推定されている。2014年、2015年および2016年(8月まで)について、データを可能な限り包括的なものとした。なお、各裁判所の公式ウェブサイトでの訴訟情報の公表状況は、訴訟全件の公表を前提としているものではなく、データの統計的な正確性を保証するものではない。

 

2. 新たに提起された知的財産訴訟の分析

 

 以下の図および表は、2014年、2015年および2016年8月までにおいて新たに提起された知的財産訴訟件数である。

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 2014年、2015年および2016年(8月まで)は、平均して毎年約650件の訴訟が提起されている。2014年に新たに提起された知的財産訴訟の約70%は、商標(商標権侵害または詐称通用(パッシング・オフ、他人の商品と偽って通用させる行為))に関するものであった。2015年におけるこの数字は67%であり、2016年では8月までに提起された知的財産訴訟のうち、報告された商標事件は49%のみであった。

 

 著作権・著作隣接権事件の割合は、2014年の22%および2015年の25.4%から、2016年には41%へと著しく増加している。

 

 提起された特許権および意匠権訴訟は、商標および著作権と比べてかなり少ない。2014年の集計では、提起された知的財産訴訟全体のうちわずか7%が特許権および意匠権に関する事件であったが、2015年では約7.6%、2016年(8月まで)は8%に増加している。

 

 

3. 提起された知的財産訴訟において認められた仮差止命令の分析

 

 以下の表は、2014年、2015年および2016年8月までにおける差止請求に対する処分の内訳を示している。

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 2014年から2015年までの傾向として、裁判所は仮差止命令を出すことを通常の実務としていた。

 各年に提起された知的財産訴訟のうち、2014年に提起された訴訟の約62.6%において裁判所は仮差止命令を出していた。2015年には判決が出るまで原告の権利を守るために仮差止命令を出した比率は約50.8%だった。しかし、2016年8月までの時点では35.5%に減少していた。

インドの裁判所は、一般に、知的財産訴訟において仮差止命令を下すことには慎重な態度を取るが、一応の論拠に基づき、権利所有者が侵害を立証できる場合には、積極的かつ迅速に仮差止命令を認め、捜索活動を遂行する地域検査官(Local Commissioner)を任命する。

 

4. 知的財産訴訟の最終解決の分析(2014年-2016年8月)

 

 以下の表は、2014年、2015年および2016年8月までにおける差止請求に対する結果を示す数である。

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 インドの裁判所は、多くの事件において早期の裁判外の和解を推奨する傾向が見られる。インドに提起された知的財産訴訟の大半は、当事者が望む場合には、調停その他の紛争解決手段に付託されている。2014年に処理された事件全体のうち66.7%で当事者による和解または取り下げが行われている。2015年は約62%の事件が取り下げられるか、和解されている。2016年では8月までに知的財産事件の47%で、当事者が最終解決のために和解または取り下げ手続を選択している。

 

5. まとめ

 インドにおける知的財産訴訟の統計データは、とりわけ著作権の権利行使に関して、2016年に知的財産訴訟の提起がかなり増加していることを示している。また、知的財産権所有者は知的財産関連の紛争を効果的に解決するために、インドの裁判所に訴える傾向が強いことがうかがえる。長年にわたり裁判所は、知的財産事件における紛争の早期解決を図るために調停手続も奨励している。この手続のおかげで裁判所は、裁判待ちの数多くの未処理件数をさばくことが可能になった。知的財産事件を新しい商事裁判所法に基づく商事事件として分類することにより、裁判所が事件の早期解決に向けて新しい方法を適用する可能性が広がっている。これらの措置は、権利所有者の時間と資金を節約するだけでなく、失われた市場の回復にも功を奏する知的財産事件の迅速な解決に向けて、インドの裁判所が真摯に取り組んでいることを物語っている。

■ソース
デリー高等裁判所ウェブページ
http://delhihighcourt.nic.in/casehistory.asp ボンベイ高等裁判所ウェブページ
http://bombayhighcourt.nic.in/ord_qrywebcase.php
■本文書の作成者
LexOrbis (インド法律事務所)
■協力
日本技術貿易株式会社
■本文書の作成時期
2017.02.17
■関連キーワード
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