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フィリピンにおける捜索令状発行の根拠としての情報の適法性

2015年03月31日

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■概要
本件は、調査員がフィリピン国家警察の協力の下、違法ソフトウェアの使用に関する調査を行い、その調査結果に基づき捜査令状が発効され、捜査および押収が行われたことに対して、捜査令状の無効が求められ、根拠となった情報の適法性について扱われた事件である。最高裁は、情報提供者から入手した情報等は、原告により追跡調査および事実の確認がされれば、捜索令状発効の根拠とすることができると判断した。
■詳細及び留意点

【詳細】

 Microsoft Corporation(「マイクロソフト社」)およびAdobe Systems Incorporated(「アドビ社」) 対Samir Farajallah、Virgilio D.C. Herce、Rachel P. Follosco、Jesusito G. MorallosおよびMa. Geraldine S. Garcia(New Fields (Asia Pacific), Inc.の取締役および役員)事件(G.R.第205800号、2014年9月10日)において、最高裁判所は、捜索令状を無効とした控訴裁判所の判決を破棄し、密告者から入手した情報等は、情報を受領した原告により追跡調査および事実の確認がされれば、捜索令状発行の根拠とすることができると判示した。

 

事件の概要

 マイクロソフト社およびアドビ社 (以下「原告」と総称)は、New Fields (Asia Pacific), Inc.(被告)がソフトウェアの非ライセンス版を違法に作成および使用しているとの情報を密告者から入手し、原告は調査会社(Orion Support, INC)と契約し、調査員2名がこの情報を確認することになった。原告は調査員に違法コピーの見分け方についてトレーニングを行った。原告はフィリピン国家警察にも協力を求めた。調査員は合法的なアプローチを通じて、警察官とともに、被告が所有するコンピュータを確認し、被告が正規の証明書がない90台のコンピュータを所有していることを確認した。

 

 調査会社を通じて、調査結果の報告を受けた後、原告であるマイクロソフト社とアドビ社は、被告に対してマイクロソフトおよびアドビ製品を複製し、違法コピーを作成することを許諾していない旨の証明書を発行した。

 

 上記の調査に同行した警察官により、捜索令状が申請され、被告に対して送達された。その後、被告の従業員は、当局により実施された捜索に立ち会い、複数の物品が押収された。これに対して、被告は送達された捜索令状の無効を求める申立てを行った。

 

地区裁判所の判断

 地区裁判所は捜索令状を無効とし、すべての押収製品を返却するように命じる裁判所命令を発行した。命令の発行に際して地区裁判所は、原告はどのコンピュータに違法ソフトウェアがインストールされているのかを特定しておらず、また物品の押収から数週間が経過したにもかかわらず、刑事告発もされていないと理由づけた。また、原告は、被告による捜索令状の無効申立は裁判所規則である「3日前の通知」を遵守していないと主張していたが、地区裁判所は、原告には捜索令状の無効申立について事前に知らされていたとして、この主張を退けた。その後、原告は控訴裁判所に控訴した。

 

控訴裁判所の判断

 控訴裁判所は、原告および証人が密告者からの情報として入手した、被告が原告のソフトウェアを使用している事を示すスクリーンショット(パソコンの画面コピー)にのみに依拠して送達された捜査令状を無効とした地区裁判所の判断を支持した。その後、原告は、最高裁判所に上告した。

 

最高裁判所の判断

(1)「3日前の通知」規則の遵守

 最高裁判所は、「3日前の通知」規則の厳格な遵守は本件において緩和することができると判示し、原告の主張を退けた。「3日前の通知」規則は絶対的なものではなく、その目的は、適正手続に対する不利益を被る当事者の権利を保護することである。したがって、申立によって不利益を被る当事者に対して、当該申立の内容を確認し、反対するための合理的な機会が与えられた場合、「3日前の通知」規則の厳格な遵守は不要としてよいとされた。

 

(2)捜索令状を発行する相当の理由の存在

 最高裁判所は、捜索令状を無効とした控訴審の判決を破棄した。控訴審の判決自体は、密告者からの伝聞情報等は、情報受領者(原告、事前に調査を行った調査員および警察官)により追跡調査され、事実の確認がされれば、捜索令状の発行の根拠として十分であると述べていた。

 

本件において、事前に調査を行った警察官は、一部のコンピュータにインストールされたアドビ社およびマイクロソフト社のコンピュータソフトウェアプログラムのプロダクトキーまたはプロダクト識別番号を確認したと述べた。2名の調査員は、被告から一部のコンピュータについて使用することが許されていたため、データを引き出すことができた。警察官は、調査員が使用したコンピュータのモニターから必要な情報を積極的に読み出し、注意深く観察した。さらに、警察官は、違法に複製されたアドビおよびマイクロソフトソフトウェアの見分け方について訓練を受けた。

 

 したがって、提出された証拠によれば、原告、事前に調査を行った調査員および警察官が、密告者から入手した情報について、事実確認することができたことを明確に示しており、捜索令状を発行する合理的な理由があったことを示している。よって、捜索令状を無効とした控訴審の判決を破棄した。

■本文書の作成者
Rouse & Co. International (Philippines) Ltd
■協力
日本技術貿易株式会社 IP総研
■本文書の作成時期

2014.12.25

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