アジア / 審決例・判例
韓国において商標登録後の使用による識別力の獲得が認められた判例
2015年03月31日
■概要
登録商標と対象標章の類否判断をするための要素となる登録商標の識別力の判断基準は、商標権の権利範囲確認審判および審決取消請求事件の審決時である。登録商標の識別力が、登録査定時には微弱であったとしても、登録商標を全体として、または一部の構成部分を分離して使用することにより、権利範囲確認審判の審決時点に至っては、消費者にとって商品の出所が顕著に認識される程になり、強い識別力を持つようになっている場合には、これを基に商標の類否判断をしなければならないと判示された事例を紹介する。■詳細及び留意点
【詳細】
対象標章の使用者、韓国企業Unistar(以下「ユニスタ社」)は、米国ニューバランス社(英文名 New Balance Athletic Shoe, Inc. 以下「ニューバランス社」)を相手取り、対象標章はニューバランス社の登録商標の権利範囲に属しないことの確認を求める権利範囲確認審判を請求し、特許審判院(日本における審判部に相当。)および特許法院(日本における知的財産高等裁判所に相当。)はこの主張を認める審決を下した。しかしながら、大法院(日本における最高裁判所に相当。)では、以下の理由で特許法院の判断を破棄し、事件を特許法院に差し戻した。

対象標章

登録商標
大法院における判断
「商標の類否判断は、外観、称呼、観念を客観的、全体的、隔離的に観察して指定商品の取引で、一般の需要者が商標について感じる直観的な認識を基準に商品の出所に関して誤認混同を引き起こす恐れがあるか否かにより判断しなければならない。また、その判断に際しては、自他商品を区別することができるようにする識別力の有無と強弱が需要な考慮要素となるが、商標の識別力は、商標が持っている観念、商品との関係、当該商品が取引される市場の性質、取引の実態および取引の方法、商品の属性、需要者の構成、商標使用の程度などによって変わり得る相対的・流動的なものであるため、これは商標の類否判断と同一の時点を基準にその有無と強弱を判断しなければならない。
したがって、商標権の権利範囲確認審判、および審決取消請求事件で登録商標と対象標章の類否判断するための要素となる登録商標の識別力は、商標の類否判断する基準時である審決時を基準に判断しなければならない。よって、登録商標の全部または一部の構成が登録決定当時には識別力がないか微弱であったとしても、登録商標を全体として、または一部の構成部分を分離して使用することで、権利範囲確認審判の審決時点に至っては消費者にとって商品の出所が認識される程となり、識別力を持つようになった場合には、これを基に商標の類否判断をしなければならない。」
権利範囲確認審判で商標の類否判断を行い、登録商標の構成のうち登録決定当時に識別力がなかった部分は、審決当時に使用による識別力を取得したとしても、登録商標で識別力を持つ要部になり得ない旨を判示していた大法院2007年12月13日付宣告第2005HU728号判決は、本判決により判例変更がなされたことは大きな意義がある。
■ソース
・韓国大法院2014年3月20日付宣告第2011HU3698号全員合議体判決http://glaw.scourt.go.kr/wsjo/panre/sjo100.do?contId=2142424&q=2011%ED%9B%843698&nq=&w=panre§ion=panre_tot&subw=&subsection=&subId=&csq=&groups=&category=&outmax=1&msort=s:6:0,d:1:1,p:2:0&onlycount=&sp=&d1=&d2=&d3=&d4=&d5=&pg=0&p1=&p2=&p3=&p4=&p5=&p6=&p7=&p8=&p9=&p10=&p11=&p12=&sysCd=&tabGbnCd=&saNo=&joNo=&lawNm=&hanjaYn=N&userSrchHistNo=&poption=&srch=&range=&tabId=・韓国特許法
■本文書の作成者
河合同特許法律事務所■協力
日本技術貿易株式会社 IP総研■本文書の作成時期
2015.01.16