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フィリピンにおける商標の共存と類似性に関する判断

2015年03月10日

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■概要
本件は、ワニの図形を付した商標を所有する商標権者が、CROCODILE(ワニ)文字および図形を構成要素とする商標の所有者に対して、混同を生じるとして異議を申し立てた事件である。フィリピン特許庁長官室(the Office of the Director General of the IPO :ODG)において、両商標の間には、顕著な文字を組み入れることにより明確な差異があり、各国において長年共存しているものであり、関連する公衆(消費者)の購入行動にも鑑みて、混同を生じるような類似性は認められないと判断された。
■詳細及び留意点

【詳細】

 フィリピン特許庁長官室(the Office of the Director General of the IPO :ODG)は、La Chemise Lacoste S.A. (以下、「Lacoste社」)対Crocodile Int’l Pte Limited(以下、「Crocodile社」)(不服申立第14-2013-0042号、2014年10月7日)に関する決定を下し、両当事者が提示した数々の証拠や議論は、被申立人であるCrocodile社が、長年にわたりLacoste社のワニの図形商標と共存してきたCROCODILE文字および図形の標章の所有者であることを示すものであり、異議却下の決定に対する不服申立は退けられ、被申立人の商標登録は認められるべきであると判断した。

 

事件の概要

 Lacoste社は、自社のワニの図形と混同を生じるほど類似または同一であるとして、ワニの図形に関するCrocodile社の商標に対して異議申立を提起した。Crocodile社は、自社の商標はLacoste社の商標と同一でなく、混同を生じるほど類似もせず、両商標はフィリピン国外において共に登録され共存しているとして反論した。

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 フィリピン特許庁法務局(Bureau of Legal Affairs of the IPO :BLA)は、異議申立を退け、Crocodile社が所有する商標においてワニの図形の上部における様式化されたフォントによる「Crocodile」という語の組み込みは、顕著な相違をもたらすとの判断を示した。

 

 その後、Lacoste社はODGに対して異議却下に対する不服申立を行い、両商標間の混同を生じる類似性を主張した。Lacoste社は、ワニの図形は同一の商品に使用される両商標の主たる特徴で、両者の間に混同を生じるほどの類似性をもたらすものであり、公衆における混同は、商品の実際かつ直接的な購入者に限られず、潜在的な購入者および通常の消費者も含まれると主張した。一方、Crocodile社は、両商標は世界中のさまざまな国や地域において、混同を生じることなく66年間にわたり共存してきており、フィリピン知的財産庁は自社のCROCODILE文字及び図形が国際的に著名な標章であることを確認していると主張した。

 

 Crocodile社は、自社が世界中において数十年にわたりCROCODILE文字及び図形を継続して使用していることを示す証拠を提示し、さらに同社は、フィリピンから2002年以降CROCODILEブランドの製品を輸出している。

 

ODGによる結論(混同を生じるほどの類似性はない)

 ODGは、「LACOSTE」という語を含む商標が付された商品は、Lacoste社と容易に関連付けられる一方、”CROCODILE”という語が付された商品はLacoste社とは関連付けられず、Crocodile社に由来するものとして見なされると判断した。

 

 Lacoste社はODGへの不服申立において、CROCODILE文字および図形が長期間にわたり使用されているとの主張については議論せず、商標の所有権に関する混同または誤りを立証する証拠を提示しなかった。一方、Crocodile社は、商標の共存を立証する証拠を提出し、混同または欺瞞に関するLacoste社の主張に反論した。

 

 ODGは、文字および図形の商標が付された商品の出所または所有権について、購入者たる公衆に混同を招くとは言えないと以下のように結論づけた。

 

「CROCODILE文字および図形の商標が付された高価で価値のある商品は、通常、慎重な比較や分析を行った上でのみ購入される。両当事者の商品は、安価な値段で購入される日用品または家庭用品ではないため、購入者は商品の性質および値段について注意深く慎重になる。したがって、Lacoste社またはCrocodile社の商品の購入者は、他者の商品であるという誤った認識において商品を購入するのではなく、当該商品を自ら購入する意図をもっている。

 

LACOSTEブランドはフィリピンにおいて著名であり、その商標および商品はCrocodile 社の商品から容易に識別することができる。標章が文字と図形から構成され、文字と図形が明瞭に表示されている場合、購入者は、その図形を単に見ただけで購入を決めるのではなく、文字も読んだ上で購入を決める。したがって、顕著なCROCODILE文字が存在することにより、消費者にとってその見分けは難しくはない。」

 

 ODGは、両当事者が提示した数々の主張および議論は、Crocodile社が、長年にわたりLacoste社のワニの図形商標と共存してきたCROCODILE文字および図形の商標の所有者であることを示し、異議申立は退けられるべきであり、被控訴人Crocodile社の商標は認められるべきであると結論した。

■本文書の作成者
Rouse & Co. International (Philippines ) Ltd.
■協力
日本技術貿易株式会社 IP総研
■本文書の作成時期

2014.12.25

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