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中国における翻訳著作物の表現同一性について

2015年02月20日

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■概要
中国において、外国の著作物を中国語に翻訳して出版した後、他社から同様の翻訳作品が出版され、その翻訳内容の9割以上が同様の表現であることが判明した。この様な場合、翻訳著作物に関する著作権はどのように扱われ、侵害問題はどのように扱われるのだろうか。相談者からの相談内容とそれに対する中国代理人事務所による分析をQ&A形式で紹介する。
■詳細及び留意点

【詳細】 Q:当社(X)は、外国の有名漫画シリーズを中国語に訳して中国国内で出版しました。しかし、最近、別会社(Y)が自社のウェブサイトで当該漫画シリーズの中国語版を連載し始めたことを知りました。連載されたこの中国語版の漫画作品を当社の翻訳作品と比較してみたところ、中国語訳の9割以上が同様の表現となっていることが判明しました。   これについてYに説明を求めたところ、Yは、自社HPに連載している漫画作品は自社で翻訳したもので、当社の翻訳作品を剽窃したものではないとの回答がありました。また、翻訳者にはもともと著作権がないうえ、当該漫画に使用されている言語表現はいずれも日常的に使用される言語表現であるため、誰が訳しても同様の訳語となるので何ら問題はない、などと主張してきました。中国では、翻訳著作物の著作権は保護されるのでしょうか。それとも、Yが主張するように、漫画のように日常的な言語表現が多用される作品の翻訳については、表現がほとんど同じでも権利侵害にならないのでしょうか?   A:まず、中国法上の規定を見てみましょう。中国著作権法第12条は、「著作物の改編、翻訳、注釈、整理によって生まれた著作物の著作権は、改編、翻訳、注釈、整理した者が享有する。ただし、著作権行使にあたり原著作物の著作権を侵害してはならない」と規定しています。   つまり、中国法は、翻訳著作物の著作権を保護しています。中国著作権法第12条によれば、契約中に特別の取り決めがない場合には、翻訳著作物の著作権は翻訳者が享有するとされています。 また、中国著作権法第14条は「複数の著作物、著作物の一部または著作物を構成しないデータまたはその他の材料を編集し、内容の選択又は編集に独創性が見られる著作物は、編集著作物であり、その著作権は編集者が享有する。但し、著作権の行使にあたり原著作物の著作権を侵害してはならない」と規定しています。   ここで、編集を経たものが全て著作権を伴う著作物であるとは限りませんが、「独創性を有する編集物」に限って、編集著作物として著作権が生じると定めている点が第12条の規定(翻訳著作物)との大きな違いであるといえます。   そこで、前記第12条と第14条の規定を対照すれば、第12条の立法趣旨について、著作物を翻訳した成果物は当然ながら翻訳著作物になり、特に独創性を有することを証明しなくても、翻訳者は翻訳著作物の著作権を有するもの、と解釈するほうが自然であると考えられます。   次に、中国でも、翻訳の剽窃にあたるかどうかをめぐって裁判で争われたケースは少なくありません。そのうち、元の翻訳者が勝訴したケースも珍しくありません。しかしながら、裁判所から認められた損害賠償金額は決して高くないというのが現状です。   例えば、「绿山墙的安妮」(「Anne Of Green Gables」の中国語訳)の権利侵害事件((2014)三中民终字第04098号)では、原告(馬愛農氏)の翻訳著作物である「绿山墙的安妮」は人民文学出版社から出版されています。その後、2013年7月になって、原告は、中国婦女出版社が出版した同名の書籍を発見し、かつ訳文を対照比較したところ、訳文の97%が馬氏の翻訳したものと同じであることがわかりました。   そこで、馬氏は、中国婦女出版社を相手取って北京市朝陽区人民法院に訴訟を提起しました。その結果、原告側が勝訴しました。裁判所は、出版・発行行為の停止および公に謝罪することを命じるとともに、3万元(人民元)の損害賠償を支払うよう被告に命じました。   上記判決から次の2つのメッセージを読み取ることができます。 (1)二つの翻訳作品において、同一の表現がかなり多い場合、原翻訳者の著作権侵害と認定される可能性が高い。 (2)翻訳の剽窃に当たるかどうかは、2つの翻訳物の表現の同一性がどの程度あるのかに大いに関係する。但し、裁判の判断基準を数値で明確に示すことは難しいため、ケースバイケースの判断となり、主として裁判所の裁量に委ねられる。   以上のように、本件では、当該漫画シリーズを中国国内で初めて翻訳・出版したのはXであるため、特別な事情がなければ、Xが当該漫画の中国語版の翻訳者・出版者としての著作権を有すると考えることができます。したがって、Yの行為は、Xが有する翻訳著作権を侵害したと認定される可能性があります。   しかしながら、権利侵害であることが最終的に認定されるかどうかは、2つの翻訳作品の表現の同一性の対比結果によります。これについては、ケースバイケースとなりますが、中国の裁判実務を踏まえれば、翻訳に使用された言語表現が9割以上同じであれば、権利侵害であると認定される可能性が高いと言えます。

■ソース
・中国著作権法
■本文書の作成者
天達共和法律事務所 弁護士 呉 婷
■協力
日本技術貿易株式会社 IP総研
■本文書の作成時期
2014.12.30
■関連キーワード
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