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(韓国)英文字とその音訳したハングル文字の登録商標に関して従来の判例を覆した事案
2014年07月04日
■概要
本件は、英文字とその音訳のハングルを上下二段併記した登録商標について、英文字部分とハングル部分のいずれか一方を省略して使用されたとしても、一般需要者や取引者に通常的に登録商標と同一に呼称されるとみられる限り、その登録商標の英文字部分又はハングル部分のみの商標を使用することは、取引通念上登録商標と同一とみられる形態の商標に該当すると判示し、これまでの判例を覆した事案である。■詳細及び留意点
【詳細】
従来の判例では、英文字とその音訳表示のハングルが併記された商標のうち、英文字又はハングルのみを使用した場合、登録商標を使用しているとはいえないとして、不使用取消審判による商標登録の取消しの対象となることが認められてきたが、大法院2013年9月26日宣告2012フ2463(한국 대법원 2013.09.26 선고 2012 후 2463 판결)判決において、異なる判断が下された。
(1) 大法院における英文字・ハングル併記の商標の使用に関する判断
大法院は、まず、英文字とハングルが併記された登録商標の使用が、韓国商標法第73条第1項第3号、第4項で規定されている不使用取消審判の取消しの対象となるか否かに関して、以下の通り判示した。
「英文字とこれを単純に音訳したハングルが結合した登録商標において、その英文字自体の意味から認識される観念のほかに、その結合によって新しい観念が生じず、英文字部分とハングルの音訳部分のうちいずれか一部分が省略されたまま使用されたとしても、一般需要者や取引者に通常的に登録商標それ自体と同一に呼称されるものとみられる限り、その登録商標のうち英文字部分又はハングル音訳部分のみで構成された商標を使用することは、取引通念上、登録商標と同一にみることができる形態の商標を使用することに該当し、これをもって登録商標取消事由である登録商標を使用しないことと考えることはできない。」
参考:「영문자와이를단순히음역한한글이결합된등록상표에서, 그영문단어자체의의미로부터인식되는관념외에그결합으로인하여새로운관념이생겨나지않고, 영문자부분과한글음역부분중어느한부분이생략된채사용된다고하더라도일반수요자나거래자에게통상적으로등록상표그자체와동일하게호칭될것으로보이는한, 그등록상표중에서영문자부분또는한글음역부분만으로구성된상표를사용하는것은거래통념상등록상표와동일하게볼수있는형태의상표를사용하는것에해당하며, 이를두고등록상표취소사유인등록상표를사용하지아니한것이라고볼수없다.」
また、従来のこれとは異なる判断を示していた大法院1992.12.22.宣告92フ698判決、大法院1992.12.22.宣告92フ711判決、大法院2002.9.27.宣告2001フ2542判決、大法院2004.8.20.宣告2003フ1437判決、大法院2004.8.20.宣告2003フ1673判決等をはじめとする同様のケースに関する判決は、本判決の見解に反する範囲内で全て変更されることとされた。
(2) 本件へのあてはめ
本案において問題となった本件登録商標は、指定商品をゴムブイベルトとする、英文字「CONTINENTAL」とこれを単純に音訳したハングルの「콘티넨탈」が二段で併記されている形態からなっており、実使用商標は、本件登録商標のうち上段の英文字部分だけが表示された形態であった。
大法院は、上記のような本件登録商標について、「…英語の普及水準を考慮すれば、本件登録商標の上段の英文字部分と下段のハングル音訳部分は、どちらも一般需要者や取引者に大陸(風)という意味でのみ観念され、その結合によって新しい観念が生じるものではないといえるものであり、また、英文字部分のCONTINENTALは、そのハングル音訳部分の콘티넨탈が併記されていなくてもコンチネンタルと同一に呼称されるものとみることができるため、本件登録商標のうちの上段の英文字部分だけからなる実使用商標は、一般需要者や取引者に本件登録商標それ自体と同一の呼称と観念を呼び起こすと言えるものである。そうであるなら、実使用商標の使用は、取引通念上、本件登録商標と同一とみることができる形態の商標使用に該当するとみるのが妥当である。」と判示した。
参考:「…영어보급수준을고려하면, 이사건등록상표의상단영문자부분과하단한글음역부분은모두일반수요자나거래자에게대륙(풍)의라는의미로관념될뿐그결합으로인하여새로운관념이생겨나지는아니한다고할것이고, 또영문자부분 CONTINENTAL은그한글음역부분콘티넨탈의병기없이도콘티넨탈로동일하게호칭될것으로보이므로, 이사건등록상표중상단의영문자부분만으로된실사용상표는일반수요자나거래자에게이사건등록상표그자체와동일한호칭과관념을일으킨다고할것이다. 그렇다면실사용상표의사용은거래통념상이사건등록상표와동일하게볼수있는형태의상표사용에해당한다고봄이타당하다.」
【留意事項】
従来は、英文字とこれを単純に音訳したハングルを商標出願する場合、他人の不使用取消審判による登録商標の取消を免れるために、やむを得ず英文字とハングルを別々に出願していた。しかし、本判決によれば、英文字とハングルを上下二段併記して1出願で登録を受けた後に、英文又はハングルのみを使用しても取消されるおそれはないものと思われる。
■ソース
・韓国商標法・大法院2013年9月26日宣告2012フ2463判決
http://glaw.scourt.go.kr/wsjo/panre/sjo100.do?contId=2132383
■本文書の作成者
崔達龍国際特許法律事務所■協力
一般財団法人比較法研究センター 不藤真麻■本文書の作成時期
2014.01.21