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韓国における特許請求の範囲の「実質的に成る(consisting essentially of)」という記載が明確でないと判断された事例
2025年01月16日
■概要
韓国大法院判決2007年10月11日付2007후1442において、大法院は、特許発明の請求項に「発明が明確で簡潔に記載されていること」を要求する旧特許法(2007年1月3日法律第8197号に改正される前のもの、以下同じ。)第42条第4項第2号(現行法においても条文項号の番号は変わらない。)は、請求項には明確な記載だけが許容され、発明の構成を不明瞭に表現する用語は原則的に許容されないという意味であり、これに照らしてみれば、特許請求項に記載された「実質的に成る(consisting essentially of)」という表現は、その意味が不明であり、これは記載不備に該当する旨判断した。■詳細及び留意点
「癌関連抗原をコードする単離核酸分子、その抗原およびこれらの用途」という発明の名称を有する本件出願発明(PCT出願の国内移行出願、韓国特許出願10-1999-7002853)の請求項第1項は、拒絶査定前は「・・・ヌクレオチド54~593に列挙されたヌクレオチドの配列を『含む』(韓国語「포함하는」)単離された核酸分子・・・」とされていたが、審査官による拒絶査定の後、原告は、不服審判を提起しながら上記の第1項の「含む」を「필수적으로 이루어지는(consisting essentially of)」(日本語の意味「実質的に成る」)」に補正した。前置審査官は、上記の補正内容も不明確であるという趣旨の意見提出通知をさらに出したが、原告はこれについて追加の補正を行なわず、その後、拒絶査定に対する審判(特許審判院審決2006年5月30日付2004원2564)および訴訟手続きが開始された(特許法院判決2007年3月22日付判決2006허5751)。特許法院が原告の主張を認容し特許すべきとの決定を下すや、被告特許庁側はこれを不服として大法院に上告した。
大法院は、米国の場合、特許発明の請求範囲解釈において特許請求項のうち、前提部と本体部などを連結する転換部用語を3種類に分けているところ、その3種類の連結部は開放形式(請求項に記載された構成要素とその他の追加構成要素を有することを権利範囲に含む記載形式)と解釈される「comprising」と、閉鎖形式(請求項に記載された構成要素以外の他の構成要素を含まない記載形式)と解釈される「consisting of」、その中間の「consisting essentially of」に区分していることを認めつつ、「韓国語部分の記載の場合、本来必須構成要素でのみ記載することになっている請求項に上記のように『成る』という表現に『実質的に』という単語を付加・維持することにより、『その構成要素が実質的にその請求項に記載された塩基配列だけから成る』という意味であるのか、それとも『その請求項に記載された構成要素が実質的に含まれ、その他の別の構成要素追加を許容する』という意味であるかが不明である」と判示した。
また、大法院は、追加で、「本件出願発明の用途などの内容、本件拒絶査定を前後に行われた何回かの意見提出通知およびその補正過程で示された出願人の考え方などに照らしてみれば、本件出願発明の請求範囲解釈と関連した第1項発明の係争部分は、米国式の特許クレームの開放形式か、少なくとも半開放形式である「consisting essentially of」を念頭に置いたものと見られるが、原告は、原審においてこれとは異なり単純に「成る」の意味に過ぎないと主張しているところ、本件係争部分の英文部分として、このような原審における原告の主張と一見相反する米国式の特許請求項の半開放形式として理解される「consisting essentially of」が括弧して併記されており、むしろ塩基配列に対する本件出願発明の請求範囲に関して不明瞭な韓国語部分の意味を、さらに不明瞭にしているという理由で、旧特許法第42条第4項第2号の明細書記載要件を具備しておらず、記載不備に該当する」と判示した。
■ソース
・韓国大法院判決2007年10月11日付2007후1442(韓国語)https://glaw.scourt.go.kr/wsjo/intesrch/sjo030.do?q=2007후1442&tabGbnCd=#//
・特許法院判決2007年3月22日付判決2006허5751
(韓国語)https://www.scourt.go.kr/portal/dcboard/DcNewsViewAction.work?bub_name=¤tPage=&searchWord=&searchOption=&gubun=44&seqnum=1670&cbub_code=000700
・特許審判院審決2006年5月30日付2004원2564
(韓国語)http://kdtj.kipris.or.kr/kdtj/grrt1000a.do?method=biblioJMFrame&masterKey=2004101002564&index=1&kindOfReq=J&valid_fg=N
・韓国特許法
(韓国語)https://www.law.go.kr/법령/특허법
(日本語)https://www.choipat.com/menu31.php?id=14&category=0&keyword=
・韓国特許出願10-1999-7002853「癌関連抗原をコードする単離核酸分子、その抗原およびこれらの用途」
下記の関連記事を参照して、KIPRIS(http://eng.kipris.or.kr/enghome/main.jsp)からこの出願番号で検索されたい。
関連記事:「韓国における特許検索方法-特許情報検索サービス(KIPRIS)」(2022年10月20日)https://www.globalipdb.inpit.go.jp/etc/26764/
■本文書の作成者
特許庁総務部企画調査課 中村敬子特許庁総務部企画調査課 古田敦浩
※ 2012年7月の記事公表時における作成者の所属を示す。(なお、本稿は、2012年7月31日付で公開された記事を一部修正(「ソース」中のURL修正・追加等)して再公開するものである。)
■協力
崔達龍国際特許法律事務所日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期
2024.10.28